2014/08/25
大鹿村は、小水力発電施設を鹿塩の小塩地区に設置した。地すべり危険区域にあり、地すべり防止用工事で水抜きされた水を活用。発電した電力は再生可能エネルギー固定価格買い取り制度を活用し、全量売電する。すでに国の認定を受け、現在は中部電力に申請中。早ければ10月から売電を開始する。排水を利用した新たな取り組みで今後、注目を集めそうだ。 小塩地区では1994(平成6)年、国の直轄事業として地すべりを防止するためのトンネル(小塩第一隧道)が掘られ、そこから黒いパイプを通して水抜きしている。一定量の水を近くの小塩沢川に流しており、村は発電に必要な水を確保できると判断。取水用のパイプを新たに取り付け、水車型の小水力発電システムを設置した。村道沿いの急斜面に位置し落差は約30メートル。
白いステンレスカバーで覆われた箱状の装置内には直径30センチ、幅6センチのステンレス製の水車があり、注ぎ込まれた水を使って回転させることで水車の脇にある発電機を稼働させる。出力は平均2・4キロワット、最大3キロワット。使用水量は毎秒16リットル。水車は1分間におよそ750回転する。総事業費は530万円。 3月までに設置し、現在は発電量を確認するランプを置いて定期的に計測している。住民税務課によると、発電電力は全て売電する計画で、年間の収入は約50万円を見込む。 村内は水源が豊富で急峻な地形のため、落差を利用した小水力発電が期待できる。柳島貞康村長は「ほかにも適地があり、売電収入は今後の研究に充てたい」と話した。 小水力発電は、自然河川を利用した1000キロワット未満も水力発電。東日本大震災の原発事故以降、国は太陽光や風力とともに再生可能エネルギーに位置付け、普及を図っている。固定価格買い取り制度の対象で、高低差と豊富な水量が確保できる山間部などが好適地とされる。
2014/08/24
豊田市羽布町の羽布ダムで23日、県内最大規模の小水力発電施設の起工式が行われ、大村秀章知事ら約80人が出席した。2016年の完成予定で、一般家庭約900世帯分の年間消費量に相当する電力を供給する。
羽布ダムは1963年に完成した農業用水の取水施設で貯 水量は約1万8500トン。最大45メートルの放流落差を利用し、水車を使って電気を生み出す。最大出力は854キロ・ワットで年間電力量は320万キ ロ・ワット時。発電した電力はすべて売電され、年間約1億円の売電収益は同ダムの水を使っている6市町の水利施設の管理費などに充てられる。事業費は9億 930万円。
式典後、放流施設を視察した大村知事は「豊富なダムの水を1日も早く有効活用していきたい」と話していた。
http://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20140823-OYTNT50134.html
2014/08/23
フランシス水車(中央)を前に、共同研究開発の内容を説明する和久社長(右)
水力発電機器製造の芦野工業(山形市)と東北小水力発電(秋田市)は22日、発電効率を高めたフランシス水車の研究、開発に共同で取り組むと発表した。2017年3月の発売を目指す。小水力発電の売電量を増やし、事業の採算性を高めることで小水力発電の普及拡大を図る。
フランシス水車は国内の水力発電所で最も多く採用される種類で、羽根付きの車(ランナー)を水の圧力で回転させる。研究開発では、流水エネルギーに対する発電効率を既存の90%前後から、95%まで高める。
東北小水力発電が持つコンピューター流体解析ソフトで、ランナー内に渦ができるなど発電効率を低下させる細かい要因を分析。水の流れを乱さない羽根の形状などを研究する。
2社は出力1万キロワット以下、発電効率95%のモデル水車を水の流量、落差の違いに合わせて数種類開発し、販売に乗り出す。計画では5年後に年間20台販売、売り上げ40億円を実現する。
小水力発電は国内に未開発の適地が多くあり、原発13基に相当する1330万キロワットの発電能力が眠ると言われる。ただ、1カ所の出力は1000キロワット未満と小さく、コストに見合う売電収入が得られず、普及していない。
2社は高効率水車の開発で発電事業の採算性が高まれば、市場は拡大するとみる。新設発電所に加え、全国1900カ所の既存発電所の老朽化や出力増強に伴う水車更新に狙いを定める。
東北小水力発電の和久礼次郎社長は山形県庁で記者会見し、「小水力発電は貴重な純国産の再生可能エネルギーだ。2社の強みを生かし、業界トップレベルの性能向上を実現したい」と語った。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140823_72064.html
2014/08/14
東京都建設局は、再生可能エネルギー導入の可能性調査に着手する。小水力発電の可能性検討調査を実施するほか、2014年度中には太陽光発電や潮力発電など、さまざまな手法について可能性を検討し、各施設に適切な発電手法などを調査する。
4日に希望制指名競争入札で公告した「再生可能エネルギー活用検討委託(その2)」では、木下川排水機場の小水力発電の可能性検討を実施する。希望申請は11日まで受け付ける。27日に指名通知し、9月4日に開札する予定だ。
参加資格は土木・水系関係調査業務、河川・水理調査のA-C格付けなど。公共工事において、河川・ダム・農業用水・上水道用水・砂防施設のいずれかの小水力発電の設計業務と、都内河川における治水計画検討もしくは護岸改修の設計業務実績も求める。
調査では諸元データの収集・整理、発電設備レイアウトの検討を含む水路ルートと、水車・発電機の選定、工事費の積算などを実施し、発電可能性を評価する。
9月中旬までに中間とりまとめを報告する。
委託期間は2015年1月30日まで。
都建設局は小水力発電以外の再生可能エネルギーについても今後可能性検討調査を実施する予定だ。
2014/08/14
富山県は険しい地形と豊かな水量が特色で、水力エネルギーの利用可能量では全国で第2位だ。電力会社が運転する大規模な水力発電所の周辺には、用水路を活 用した小水力発電所が続々と動き出している。温泉地では用水路を使って発電した電力でバスを走らせる地産地消の取り組みも始まった。
[石田雅也,スマートジャパン]
全国47都道府県のうち、水力発電だけで県内の電力需要の大半をカバーできるところは富山県しかない。すでに2011年度の時点で、県内の需要の 84%に相当する電力を水力発電で生み出している。その大半は北陸電力と関西電力の水力発電所だが、自治体を中心に小水力発電所が県内各地に勢いよく広 がってきた。
富山県は水力エネルギーの利用可能量が全国で2番目に多い(図1)。そのうち約8割のエネルギーは開発済みで、残りが2割ある。すべてを開発でき れば、水力発電だけで県内の需要を満たすことが可能だ。これから再生可能エネルギーを拡大する第1の重点施策として、「水の王国とやま 小水力発電導入促進プロジェクト」を推進している。
このプロジェクトの目標は県内23カ所で稼働している小水力発電所の数を、7年後の2021年度までに45カ所へ倍増させることだ。水力エネル ギーは河川のほかに、県内各地をめぐる農業用水路にも大量に存在する。小水力発電の開発余地は大きく残っていて、現在でも5カ所で建設計画が進んでいる (図2)。
農業用水路を活用した代表的な事例は、県西部の南砺市(なんとし)で2013年3月に運転を開始した「山田新田用水発電所」に見ることができる。 農村地帯を流れる川から引き込んだ用水路の水が再び川へ戻るまでのあいだに、25メートルの落差を生かして発電する構造になっている(図3)。
この用水路は周辺の水田に水を供給するため、稲作の時期にあたる4月から9月まではほぼ全量を水田に送る必要がある。それ以外の季節は大半の水が不要になる。そこで余剰分の水流をヘッドタンクと呼ぶ貯水槽を使って分岐させて、発電所に水を送るようにした。
発電能力は520kWあって、年間の発電量は257万kWhを見込む。一般家庭で約700世帯分の電力使用量に相当する。季節によって利用できる 水量が大きく変動するために、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は小水力発電では低めの56%になる。それでも発電した電力の売電収入によっ て、用水路の維持管理費を軽減できるメリットは大きい。
こうした農業用水路を活用した小水力発電所は、古くから水力発電が盛んな県東部の黒部市でも広がってきた。黒部市では2012年に「宮野用水発電所」の運転を開始したのが最初の取り組みだ。この発電所は水を取り込むまでの経路に特徴がある(図4)。
元をたどると、温泉地で有名な宇奈月温泉の近くにある「宇奈月ダム」に行き着く。そのダムからの水流で関西電力の「宇奈月発電所」(発電能力2万 kW)が電力を作った後に、山の中腹に設けられた水槽まで水が運ばれていく。そこから3本の水路に分かれて、うち2本は別の発電所へ、残りの1本が宮野用 水になって近隣の水田へ水を送り届ける。
この用水路の途中に宮野用水発電所を設置した。水槽からの約50メートルの落差を利用して、最大で780kWの電力を供給することができる。年間 の発電量は530万kWhになり、約1500世帯分の電力使用量に相当する。しかも設備利用率は78%と極めて高い。もともと農業用水路として4月から 11月までの水量を多く確保できていたため、年間を通じて発電に使える水量がさほど増減しない利点がある。
黒部市では宇奈月温泉でも小水力発電所が稼働している。温泉街を流れる防火用水路の途中に水車発電機を設置して発電する方式だ(図5)。毎秒0.04立方メートルの少ない水量から、10メートルの落差を使って2.2kWの電力を作ることができる。
年間の発電量は1万5000kWhで、一般家庭の4世帯分の電力使用量にしかならない。わずかな電力だが、温泉街を循環する電動バスに電力を供給 するほか、発電所の周辺にある防犯灯の電源として利用している。規模は小さいながらも、エネルギーの地産地消を実践して、環境に優しい「エコ温泉」をア ピールするのに役立てる狙いだ。
富山県の再生可能エネルギーの導入量を見ると、新たに固定価格買取制度で認定を受けた発電設備の規模は全国でも2番目に少ない(図6)。今後は小 水力に続いて風力や太陽光、さらに地域の森林資源を生かしたバイオマス発電も増える見込みだ。既存の水力発電に新しい再生可能エネルギーの電力が加わっ て、火力や原子力に依存しないエネルギー供給体制を着実に実現していく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1408/12/news024.html