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2016/06/29

自然エネルギーで地域経済が元気になる!?長野県が仕掛ける自然エネルギーによる地域経済活性化プラン【greenz.jp】

2016年6月29日掲載
 全国をめぐりワクワクするエネルギーの取り組みを伝えている、ノンフィクションライターの高橋真樹です。全国で始まっている自然エネルギーを活かしたユニークなまちづくりの様子は、著書『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)でも紹介しています。
 今回は「自治体とエネルギー」をテーマにお伝えします。エネルギー分野の動きでは、民間企業の活躍が目立っています。動きが迅速で、斬新なアイデアも実現しやすいという理由からです。
 しかし、自治体にも重要な役割があります。たとえば、民間だけが取り組んでも広がりには限界がありますが、自治体がうまいサポート体制をつくることで、地域への広がり方は断然ちがってきます。そう考えると、自治体にしかできないことが数多くあることがわかってきます。
 今回は、「環境と経済の好循環」をめざして次々と画期的なエネルギー政策を進めている長野県の取り組みを紹介しながら、「自治体にできること」について考えてみます。

  なぜ長野県はエネルギー政策に熱心なのか?

 豊富な水の流れや好条件でふりそそぐ太陽光など自然資源に恵まれた長野県は、2015年現在、すでにエネルギー自給率が70%もあります(※1)。県はこの豊かな資源を活かし、地域経済の活性化にも結びつけようというコンセプトで政策を進めてきました。
 長野県が積極的にエネルギー政策に取り組んできた理由は、単に県内に自然エネルギーの発電所を増やしたいからではありません。県は、長い議論を経て2013年に「環境エネルギー戦略」を策定しましたが、その中で、「エネルギー政策を通して、地域経済を活性化する」というビジョンを掲げています(※2)。
 「地球温暖化対策として、エネルギーについて考えよう」という自治体は数多くありますが、経済と絡めているところはほかにありません。長野県はなぜ、エネルギー政策によって経済成長をめざそうというのでしょうか?
 長野県に限ったことではありませんが、多くの地域では電気やガス、灯油やガソリンなど、生活にかかわるほとんどのエネルギーを地域の外から購入しています。
 特に長野の冬は寒く、冬の灯油やガス代金は家計を圧迫します。エネルギーのほとんどを地域外に頼ることは、地域経済を高いリスクにさらすことにも繋がります。
 長野県全体では、県内の主要産業の生産額と同じ程度のお金がエネルギーの費用として地域外や海外に出ていっています。つまり、せっかくつくった農産物などを販売して得たお金が、エネルギーを買うためになくなってしまっているのです。エネルギー輸入量の多い日本ではかなりの数の自治体がそうなってしまっています。
 そこで長野県では、地域資源を活用してエネルギーを生産し、エネルギーを購入するために出ていくお金を、地域の中で循環させようという戦略を立てました。
 具体的には、発電設備をつくって売電収入を得る、暖房の燃料を地域内でまかなうことで資金を循環させる、省エネ機器や省エネ住宅に投資することで光熱費を減らしながら地域の雇用を生む、といったことを実現しようというのです。
 とはいえ、単に自然エネルギー設備をつくるだけでは、地域内で経済が循環するわけではありません。同じような設備をつくっても、利益の大半が地域の外に出ていく場合と、利益が地域内で循環する場合の2通りがあります。
 長野県は、利益が地域内で回るように、地域の人たちが主導権を握る事業を後押ししようとしています。

※1 県内の最大電力需要(年間のうちもっとも電気を使った瞬間)に対して、再生可能エネルギー発電設備(自然エネルギー発電設備+既存の水力発電設備)の発電能力が、県内にどれだけ存在するか、その割合を見る指標です。
※2 2013年2月に策定された長野県の環境エネルギー戦略(第三次長野県地球温暖化防止県民計画)。この戦略は議論を重ね、1年半のプロセスを経てようやく策定された。

  メガソーラープロジェクト事業費総額の87%が県内で循環

 そのコンセプトは、県がすすめている自然エネルギー事業にも表れています。県がコーディネートして、2013年から稼働している事業が「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」です。
 これは、県の公共施設の屋根を民間企業に貸し、およそ1メガワット(一般家庭およそ300世帯分の電力)の太陽光発電を設置するものです。諏訪湖のほとりにある県の下水処理場の屋上にメガソーラーを設置した事業者は、岡谷酸素株式会社というエネルギー関連の地元企業です。
 自治体が公共施設の屋根を貸し出し、太陽光発電を設置することは珍しくはありませんが、長野県は岡谷酸素にある条件をつけました。
 その一つが、長野県の他の地域がモデルにできるように、技術面や運営面など事業にかかるデータやノウハウを、原則としてすべてオープンにするというものです。
 また、長野県内に自然エネルギーを広めるためのネットワーク組織である「自然エネルギー信州ネット(※3)」に、売電収入の一部を提供することにもなっています。信州ネットは、岡谷酸素からの情報やデータを整理分析して、県内にノウハウをわかりやすく広める役割を担っています。
 この事業では、発電所がもたらす地域への経済効果も分析しています。一般的には、一度つくってしまえばあまり手のかからない太陽光発電設備は、地域への経済効果が少ないと考えられてきました。
 しかし、県の協力の元で「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」の調査を行った立命館大学のラウパッハ・スミヤ・ヨーク教授らの研究によると、地域の外の事業者が中心になるケースと、地域内の事業者が中心になるケースとでは、地域への経済効果がおよそ2倍ほど違ってくることがわかりました。
 このプロジェクトでは、関連事業のほとんどを地域内の事業者に発注したこともあって、ランニングコストも含めて事業費総額の87%が県内に回り、地域への経済効果が20年間トータルで10億円近くになるとされています。ラウパッハ教授は、地域のエネルギープロジェクトに資金を投資する価値をこのように語ります。

??ラウバッハさん 同じ金額を使うにしても、自治体が国債を購入した場合は地域経済への付加価値はほとんどゼロです。一方、地元のお金を自然エネルギーに投資すれば、資金を回収できるだけでなく、地域に新たな価値を生むことになります。
このプロジェクトは、地域内でお金を回す仕組みをつくることがいかに大切かを証明しているのです。

※3 自然エネルギー信州ネットは、市民・企業・大学と行政機関が長野県内における自然エネルギーの普及を目指す協働ネットワーク。

  地域のエネルギー事業を育てるユニークな補助金制度

 地域で自然エネルギー事業に取り組もうとしたとき、課題となるのがお金の問題です。実績のある事業者ならともかく、小規模な農山村の自治体や地域住民が主体になるプロジェクトの場合、ほとんどが初めて手掛けるような状態です。銀行も簡単には融資をしてくれません。
 そこで長野県では、単独では資金調達が難しいような、地域に根ざした事業を対象にして、「収益納付型補助金」というユニークな制度をつくりました。これは、事業の成果が出たら補助したお金を返還してもらう制度です。補助金を出すかどうかの審査は、有識者が決めます。
 事業者としては、大きな壁となる初期投資を一部補助してもらえることで、事業が始めやすくなります。また、金融機関も自治体が審査して補助金を出していることが信用となり、融資をしやすくなります。現在、この補助制度に基づいて太陽光や小水力など複数の発電所が建設中、または建設予定になっています。
 一般的に自治体が出すエネルギー関連の補助金といえば、戸建て住宅の屋根にソーラーパネルを設置する際に補助することがほとんどです。この方法は、自治体として手っ取り早く成果を示せることに加え、補助金を受ける住民には喜ばれます。
 しかし、このような「出すだけの補助金」では、予算がなくなれば終わりなので、広がりは限定されます。長野県は、個人の住宅ではなくもっと地域全体で自然エネルギーを増やすために、このような「地域事業を支援する」という形で補助金を使う方針にしました。
 この「収益納付型補助金」の制度が始まったのは2015年度からで、成果が数字で出るまでにはしばらく時間がかかりますが、すでに想定を越える数の申請が来るなど、地域でエネルギー事業に取り組む人々に好評です。そのことからも、こうした制度が地域エネルギー事業の大きなサポートになっていることがわかります。

  省エネ住宅を推奨し、発電だけでなく節電にも取り組む

 発電だけではありません。長野県は、省エネについても熱心に取り組んでいます。その中のひとつとして、建物のエネルギー効率を良くする省エネ住宅を推奨することで県民の光熱費を削減し、健康の向上にもつなげようという取り組みが行われています。
 「住宅のエネルギー性能」と言われてもピンと来ないと思いますが、たとえば最近の車には燃費性能、冷蔵庫には省エネ性能が表示されています。これからは住宅もそんなふうに、数値ですぐにわかるエネルギー表示をしていこうという考え方があります。
 住宅のエネルギー性能を高める要素の一つは気密性と断熱です。家の気密性と断熱が悪いと、どんなにエアコンなどで暖めても、空気が外に出ていってしまって温まりません。
 一般的に長野県の住宅は、断熱などの面で室内が寒いとされています。現在は光熱費をたくさん使って暖めているのですが、県の政策として住宅そのものの性能を見直し、光熱費がかからないようにしていこうという方針が掲げられています。
 県はまず建築事業者に「建物の断熱性能や自然エネルギー導入の検討に必要な情報を提供してほしい」とお願いし、そこから建築主に伝えてもらうようにしています(※4)。事業者が建築主に分かりやすく説明できるよう、講習会もたびたび実施してきました。
 こうした地道な取り組みを通じて、建築事業者の意識を高めることはもちろん、一般の人も自分の家のエネルギー性能を理解できるようになっていきます。
 建築主にとっては、断熱材を多めに入れるなど初期投資が増えますが、光熱費を削減できるので、長い目で見ればそちらを選んだほうが得になります。また、事業者にとっても1件あたりの受注額が増えるというメリットがあります。
 さらに地域で回すお金の量も増えるので、住宅とエネルギーを考えることが、地域経済にとってもプラスになります。
 建物のエネルギ―性能を報告することについては、300平方メートル以上の大きな建物については、国レベルで義務化されています。しかし戸建の住宅については検討の義務さえありません。2016年5月現在、そこに取り組んでいる自治体は長野県だけです。

※4 正式には、県が新築の建物を建てる際に、建築主に対して、省エネ性能や自然エネルギー設備の導入について検討することを義務づけている(2015年4月から)。しかし、たいていの建築主は一般の人なので、県が提供した分かりやすい評価ツールを用いて、事業者が建築主に説明することになっている。

  持続可能な地域に必要なのは「長期的な視野に基づく政策」

 こうした具体的な活動が評価され、長野県は2016年2月に「低炭素杯2016『ベスト長期目標賞 大賞 (自治体部門)』」を受賞しました。
 エネルギー政策について、以前は県の環境エネルギー課が中心的に担ってきましたが、最近では部署の枠組みを越えて意識が変わり、県庁全体の取り組みに変わってきているとのこと。環境エネルギー課企画幹(課長級)の田中信一郎さんは、この取り組みを他の自治体にも参考にしてもらえればと語ります。

??田中さん 長野県がやっていることは、長野県でしかできないことではありません。日本全国どこの自治体でもできるはずです。

 面白いと思える政策があったらどんどんマネをしてもらいたいと思います。長野県も、もともとは東京都の環境エネルギー政策を参考にさせていただいています。また、環境政策と地域経済の相乗効果を生み出す仕組みについては、ドイツやオーストリアなど海外の事例にも学んでいます。
 このような分野では、他の取り組みを参考にしながら、地域の実情に合わせて改良していくという姿勢がうまくいくのではないかと思います。
 太陽や風などの自然エネルギー資源は、全国どこにでもあります。しかも現代社会では「不便」「何もない」と言われるところにこそ豊富に存在しています。しかし単に発電所をつくって満足してしまっては、「何キロワット発電しています」というだけで終わり、地域活性化には結びつきません。
 長野県の話ですごいと思うところは安易に「手っ取り早い成果」を求めず、持続可能な地域のために何が必要か、長期的な視野に基づいて政策を進めている点です。
 そしてこの取り組みは、田中さんが言うように長野以外の地域でもできることです。長野県のように地域が主体になった事業を育て、地域内のエネルギーと経済を循環させる仕組みづくりに着目すれば、今よりもっと地域のエネルギー利用が、効果的な地域活性化につながっていくようにも思います。
(Text: 高橋真樹)

高橋真樹(たかはし・まさき)
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。世界70カ国をめぐり、持続可能な社会をめざして取材を続けている。このごろは地域で取り組む自然エネルギーをテーマに全国各地を取材。雑誌やWEBサイトのほか、全国ご当地電力リポート(主催・エネ経会議)でも執筆を続けている。著書に『観光コースでないハワイ~楽園のもうひとつの姿』(高文研)、『自然エネルギー革命をはじめよう~地域でつくるみんなの電力』、『親子でつくる自然エネルギー工作(4巻シリーズ)』(以上、大月書店)、『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など多数。

http://greenz.jp/2016/06/29/nagano_pref_energy/

2016/06/28

エネルギー列島2016年版(10)群馬:エネルギー自給率40%超へ、営農型の太陽光発電にも挑む 【スマートジャパン】

2016年6月28日掲載
群馬県では再生可能エネルギーを大幅に増やして、電力の自給率を2030年に40%以上へ高める計画を推進中だ。農地で営農型の太陽光発電が始まり、山間部では豊富な水量を生かせる中小水力発電が活発に進んでいる。森林の間伐材を利用した木質バイオマス発電も地域の安定した電力源になる。[石田雅也,スマートジャパン]

 日本列島のほぼ真ん中に位置する群馬県は険しい山と流れの急な川が多く、山間部には大規模な水力発電所が点在している。水力発電だけで県内の電力消費量の20%を供給することが可能だ。それに加えて太陽光発電やバイオマス発電の導入量が拡大中で、2014年度の時点で電力の自給率は26%まで上昇した。
 引き続き太陽光を中心に小水力・バイオマス・風力発電の導入量を拡大して、2030年度に自給率を42%まで高める方針だ。国が設定した2030年度の目標は再生可能エネルギーの比率を22~24%に増やすことで、その2倍の水準を目指す意欲的な計画である。
 続々と運転を開始した太陽光発電設備の中では、北部の沼田市にある「沼田市利根町太陽光発電所」がユニークだ。発電能力1.1MW(メガワット)で2015年7月に稼働したメガソーラーだが、同じ場所で農作物も栽培する。営農型の太陽光発電設備では国内最大の規模を誇る。
 広さが4万平方メートルの用地はもともと鹿の放牧地で、農作物の栽培には使われていなかった。新たに農業と太陽光発電を両立させる「ソーラーシェアリング」に取り組むため、放牧地を農地に改良したうえで、上部の空間に太陽光パネルを設置した。細長い形状の太陽光パネルを高さ3.5メートルの支柱の上に並べて、農地にも十分な太陽光が当たる。
 太陽光パネルの枚数は合計で1万1000枚になり、年間の発電量は140万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して約400世帯分に相当する。太陽光パネルの下ではトラクターを使うことも可能で、通常の農地と変わりなく農作物を栽培できる。
 農地を借り受けた地元の建設会社が2015年の夏からソーラーシェアリングを実施中だ。1年目は菜の花、クローバー、そばを栽培して、そば粉を使った新商品の開発にも取り組んだ。2年目はレンゲを追加して4種類に増やした。再生可能エネルギーの拡大と同時に、農業と新しい産業を組み合わせた6次産業化を推進していく。
 沼田市と隣り合う昭和村では、山のふもとの広大な土地に大規模なメガソーラーの建設工事が進んでいる。バブル経済の崩壊でゴルフ場の開発計画を中止した場所である。82万平方メートルに及ぶ用地に17万枚の太陽光パネルを設置して、2018年1月に運転を開始する予定だ。発電能力は関東で最大級の43MWになる。
 年間の発電量は5000万kWhに達する見込みで、一般家庭の1万4000世帯分に相当する電力を供給できる。昭和村の総世帯数(2700世帯)の5倍以上に匹敵する。この一帯は山から流れ出る川で作られた扇状地のため、大雨による洪水の被害を受けてきた。メガソーラーの敷地内に調整池と排水路を設けて周辺地域の防災にも役立てる。

  世界最大級の揚水式発電所を建設中

 群馬県は古くから水力発電が活発で、最近では中小水力発電の導入プロジェクトも増えてきた。県営の水力発電所だけで大小を合わせて現在32カ所ある。その中で最も新しい水力発電所は、東部を流れる渡良瀬川(わたらせがわ)の上流域に建設した「田沢発電所」である。2016年5月20日に運転を開始したところだ。
 田沢発電所は川の上流から水を取り込んで、山中に埋設した導水路と水圧管路を使って約1キロメートル先にある水車発電機まで水を送る。これで水流の落差は142メートルになる。最大で1.85立方メートル/秒の水量を生かして2MWの発電が可能になった。大きな落差と豊富な水量を生かせる横軸フランシス水車で発電する。
 年間の発電量は770万kWhになる見込みで、2100世帯分の電力を供給できる。発電した電力は固定価格買取制度で売電する方針だ。買取価格は1kWhあたり24円(税抜き)になり、年間に1億8500万円の収入を得られる。
 買取期間の20年間で売電収入は37億円になる想定だが、一方で建設費に35億円かかった。さらに毎年の運転維持費がかかる。買取期間が終了した後でも運転を続ければ十分に採算をとることが可能だ。水力発電は同じ設備のまま長期間にわたって運転を続けられるメリットがある。
 群馬県の北西部にある東吾妻町(ひがしあがつままち)では、珍しい湧水を利用した小水力発電事業を推進中だ。森林を流れる「箱島(はこしま)湧水」の水量は1日あたり3万トンにのぼり、町内の飲料水や農業用水に使われている。
 この湧水を発電にも利用する。取水口と発電所のあいだに生まれる85メートルの落差を使って、最大で170kWの電力を供給できる。2017年5月に運転を開始する予定だ。東吾妻町は発電事業を実施するにあたって、民間企業の資金とノウハウを生かせるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式を採用した。
 群馬県内では壮大な水力発電所の建設プロジェクトも進んでいる。山岳地帯に造成した2つのダムを組み合わせた揚水式の発電所だ。東京電力が1997年に建設を開始した「神流川(かんながわ)発電所」である。合計で6基の水車発電機を設置して、282万kWの電力を供給する。揚水式の発電所では世界で最大級の発電能力になる。
 揚水式は川の上流と下流に2つのダムを設けて、そのあいだを太い水圧管路でつないで水車発電機に大量の水を送り込む。下流のダムにたまった水を夜間の余剰電力で上流のダムまでくみ上げ、昼間の電力需要が増える時間帯に水を流して発電する方式だ。2つのダムの落差は650メートルにもなり、地中には直径6.6メートルの水圧管路を1キロメートルにわたって埋設した。
 6基で構成する発電設備のうち1号機と2号機は運転を開始した。残る3~6号機は2022年度以降に運転を開始できる見通しだ。6基すべてが稼働すると、発電に利用する水量は1秒あたり510立方メートルにのぼる。
 神流川発電所が全面稼働して282万kWの電力を供給できるようになれば、1世帯あたりの電力需要を3kWと想定して94万世帯をカバーできる。群馬県の総世帯数(76万世帯)をはるかに上回る規模で、特に夏の昼間に電力需要がピークに達した時の有効な電力源になる。

木質バイオマスの電力を東京にも送る

 群馬県では太陽光・中小水力・バイオマスの3種類の再生可能エネルギーによる発電設備が拡大中だ。これまでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は260万kWを超えている。このうち約3分の1が運転を開始して、すでに28万世帯分の電力を供給できる状態になった。
 バイオマス発電では2011年に運転を開始した「吾妻木質バイオマス発電所」の規模が大きい。地域の森林で発生する間伐材のほか、街路樹の剪定枝や建築物の廃材などをチップに加工して燃料に利用する。発電能力は13.6MWで、年間に1億1000万kWhの電力を供給できる。一般家庭で3万世帯分の電力に相当する。
 県内の他の地域でも木質バイオマス発電所を新設するプロジェクトが始まっている。北部の川場村(かわばむら)にある森林コンビナートの構内で、2017年1月に運転を開始する予定だ。燃料の木質バイオマスは地域の森林から間伐材を調達するほか、製材所から出る端材も活用する。当初の発電能力は40kWである。
 川場村は面積の88%を森林が占めていて、主な産業は農業である。豊富にある森林資源を生かして地域を活性化する「グリーンバリュープログラム」に、2012年度から官民一体で取り組んでいる。木質バイオマス発電の規模を拡大しながら、発電時の排熱を野菜の温室栽培にも利用する計画だ。
 さらに発電した電力を150キロメートル離れた東京都の世田谷区に供給する。川場村と世田谷区は35年前から協力関係を結んで人材交流などを進めてきた。再生可能エネルギーの利用拡大に取り組む世田谷区に木質バイオマス発電所の電力を供給することで、2つの地域が連携してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減していく。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1606/28/news031.html

2016/06/28

オーストリアの小水力発電用水車メーカー GUGLER社との業務提携協議および「第11回再生可能エネル ギー世界展示会」への共同出展のお知らせ【時事ドットコム】

2016年6月28日発表
[自然電力株式会社]
 自然電力株式会社(本社:福岡県福岡市中央区荒戸/代表取締役:磯野謙、川戸健司、長谷川雅也、以下「自然電力」)は、GUGLER Water Turbines GmbH(本社:オーストリア共和国ゴールドヴェルト /CEO:アロイス・ググラー 、以下「GUGLER(ググラー)社」)と、小水力発電事業における業務提携の協議を進めています。なお、2016年6月29日~7月1日に横浜で開催される「第11回再生可能エネルギー世界展示会」に、共同でブースを出展いたしますので、あわせてお知らせいたします。

 自然電力は、グループとして、開発からEPC(設計・調達・建設)、O&M(運営・保守)まで日本全国で累計約700メガワット(2015年12月末時点)の太陽光発電事業に携わった実績を持ちます。自然エネルギーの国内における定着化・安定供給化の施策とし、2015年からは風力・小水力事業にも積極的に取り組んでいます。小水力発電は、起伏に富み降水量の多い日本に適しており、昼夜、年間を通じて安定した発電が可能な自然エネルギーです。一方で、水車の供給不足等により、事業化が進みづらいという実情を抱えてきました。自然電力では、この課題を解決し、国内での小水力発電事業の早期実現を達成するため、小水力発電事業で先行する欧州において、実績および知見の豊富なパートナー企業を探してまいりました。

 GUGLER社は、オーストリア共和国に本社を置く約100年の歴史を持つ企業です。5キロワットから20メガワットの小水力発電に適したカプラン水車、フランシス水車、ペルトン水車といった各タイプの水車と、小水力発電に必要な電気・機械装置のグローバルサプライヤーであり、水車の供給実績は全世界において800基を超えています。今回、GUGLER社が日本へ本格進出するにあたり、当社の太陽光発電事業のEPC、O&Mにおけるjuwi(ユーイ)株式会社(本社:ドイツ連邦共和国ヴェルシュタット/CEO:フレッド・ユン グ)との共同事業が順調であり、グローバルビジネスに関する知見や対応力が十分であること、太陽光発電事業における開発事業者および事業主(IPP)として国内に幅広いネットワークを持つこと等の実績を評価頂き、パートナーシップに向けた協議を進めるに至りました。本業務提携により、自然電力は、当社が開発する小水力発電事業へのGUGLER社製水車・関連機器の導入のみならず、日本国内における同社製機器の供給とエンジニアリング技術の提供を行う予定です。特に、多くの需要が見込まれる100キロワット以上の水車については、GUGLER社からの日本国内への輸入及び再販売を自然電力が優先的に実施することを計画しております。

 なお、自然電力とGUGLER社の取り組みを業界の皆様に広く知っていただくため、自然エネルギーの全分野を網羅した日本最大の展示会である「第11回再生可能エネルギー世界展示会」に、共同でブースを出展いたします。

 自然電力は、GUGLER社とのパートナーシップを通じ、GUGLER社が持つ小水力発電用水車機器とエンジニアリング技術の日本市場への導入を促進し、国内の小水力発電用水車の供給不足の解消を図り、日本各地域のニーズに適した小水力発電事業の普及と持続可能な社会の構築に貢献することを目指します。

【第11回再生可能エネルギー世界展示会 概要】
1. 名称:第11回再生可能エネルギー世界展示会
2. 日程:2016年6月29日(水)~7月1日(金) 10:00~17:00
3. 会場:パシフィコ横浜
4. 主催:再生可能エネルギー協議会
5. 共同出展ブース:R-1502
6. 出展社名:自然電力株式会社
7. 公式HP:http://www.renewableenergy.jp/2016/

【GUGLER Water Turbines GmbHについて】
1919年設立。オーストリアに本社を置き約100年の歴史を持つ水力発電機器のグローバルサプライヤー。カプラン水車、フランシス水車、ペルトン水車など各タイプの水車と小水力発電に必要な電気・機械装置を製造し、これまで800基以上の水車の供給実績を持つ。
・本社:オーストリア共和国ゴールドヴェルト
・CEO:アロイス・ググラー(Alois Gugler)
・URL:http://www.gugler.com
・事業内容:小水力発電所において使用されるカプラン、フランシス、ぺルトン水車ならびに電気・機械装置一式のグローバルサプライ

【自然電力株式会社について】
2011年6月設立。日本全国でグループとして約700メガワット(2015年12月末時点)の太陽光・風力発電事業に携わった実績を持つ。2014年から発電事業(IPP)も開始。2015年より、風力・小水力事業を本格始動。2013年より、世界的な風力・太陽光発電事業のディベロッパー・EPC(設計・調達・建設)企業であるドイツのjuwi(ユーイ)株式会社とジョイント・ベンチャーを立ち上げ、グループとして自然エネルギー事業の開発・EPC・O&M(運営・保守)をワンストップサービスで提供することを特徴としている。
・本社:福岡県福岡市中央区荒戸 1-1-6 福岡大濠ビル3F/6F
・代表取締役:磯野謙、川戸健司、長谷川雅也
・代表電話番号:092-753-9834
・URL:http://www.shizenenergy.net
・事業内容:太陽光・風力・小水力等の自然エネルギー発電所の発電事業(IPP)、事業開発・資金調達等 (2016/06/28-12:21)

http://www.jiji.com/jc/article?k=000000051.000007130&g=prt

2016/06/27

地域に「エネルギー」を 郡上市で小水力発電講座【岐阜新聞】

2016年06月27日
 小水力発電事業の推進と地域の活性化策を考える、住民対象の勉強会「郡上市自然エネルギー学校」の本年度第1回講座が26日、岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)で開かれた。本年度は高鷲町向鷲見と大和町上栗巣の2地区が対象で、住民らが適地を探る。

 学校は、NPO法人地域再生機構(岐阜市)と郡上市の共催。同機構の副理事長で、石徹白に住みながら小水力発電事業を支える平野彰秀さんが、主に講師を務める。昨年度は同市明宝寒水地区で実施した。

 講座には、2地区の住民ら約50人が参加。平野さんは小水力発電の仕組みのほか、石徹白地区のほぼ全戸が出資し、6月1日に稼働した「石徹白番場清流発電所」を紹介。「地域にプラスになる発電所にするため、自治会中心に半年かけて議論し、事業を進めてきた」と振り返った。また、売電収入で新たな農業事業を進める方針であることも説明した。

 住民からは、事業主体を農協とするメリットとデメリット、水利権、採算性などの具体的な質問が上がった。

 座学後、石徹白で稼働している発電施設を見学した。

http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20160627/201606270900_27543.shtml

2016/06/24

垂れ流していた水が5000世帯分の電力に、新潟県でダム式水力発電【スマートジャパン】

2016年6月24日掲載
東北電力は新潟県魚沼市の藪神ダムに、最大出力4500kWの水力発電所「第二薮神発電所」を新設した。これまで年間300日以上ダムから放流していた水を活用して発電する。年間の発電量は1825万kWhを見込んでいる。
[陰山遼将,スマートジャパン]

 東北電力は2016年6月23日、新潟県魚沼市に建設を進めていた水力発電所の「第二薮神発電所」が同日より営業運転を開始したと発表した。

 第二薮神発電所は魚沼市にある「藪神ダム」の右岸に新設した、ダム式の小水力発電所である。藪神ダムは東北電力が所有する発電専用のダムで、既に左岸では最大出力8800kW(キロワット)「藪神発電所」が発電を行っている。こちらの発電所はダム水路式である。

 新設した第二薮神発電所の大きな特徴が、藪神ダムと藪神発電所がこれまで「使い切れていなかった水」を利用して発電する点だ。年間300日以上もダムゲートから放水していた未利用の放流水を活用する。この放流水が発生していた理由は、上流にある電源開発の「黒又川第一発電所」の最大使用水量が藪神発電所より多かったためだ。

 第二薮神発電所では有効落差17.85メートルと、未利用だった放流水を最大で毎秒30立方メートルを活用して発電する。最大出力は4500kWで、年間の発電量は1825万kWh(キロワット時)を見込んでいる。未利用エネルギーを活用することで、約5000世帯分の年間発電量を賄うことができる計算だ。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1606/24/news036.html

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