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2013/09/10

豪雨被害 関電小水力再生 グループ、地域思い一つ【電気新聞:2013/09/0】

◆“電気の谷”息吹再び

 2011年9月、紀伊半島を襲った台風12号による豪雨の影響で、甚大な被害を受けた関西電力大里発電所(三重県紀宝町)。運開から数え今年で110年目を迎えるこの小水力は、建屋が冠水、えん堤も土石流で埋没し、導水路や排砂設備などは完全に使用不能の状態に陥っていた。開発適地の乏しくなった貴重な水力発電所とはいえ、設備は再起不能に近いありようで、関電の台所事情を勘案すれば「閉鎖」の二文字が選択肢に挙がるのも自然な流れといえた。(上田顕史)

◆再建へ知恵

 自社の創業よりもはるかに古いこの設備を守ろうと、第一線職場で設備を保守する新宮電力システムセンター(SC)と、土木工事を受け持つ田辺電力SCが復旧計画の検討に乗り出す。厳しい収支状況をにらみながら、運用後の保全を含めた合理化策に知恵を絞り、発電所再建への道筋を示した。前新宮電力SC所長の山本修(現滋賀支店設備計画グループチーフマネジャー)は「発電所の存続が伝えられた時、所員全員が歓喜した」と涙ながらに述懐する。

 原動力となったのは、現場を支える所員らの「マイプラント意識」だ。公益色の強い企業文化に育まれながら、脈々と受け継がれてきたこの価値観は、電力会社の財産の一つといっていい。経営トップとの対話活動の場で直訴を試みる所員もおり、発電所再生への英断を後押しした。

◆入れぬ現場

 だが、死者78人・行方不明者16人の被害を出した未曾有の災害だけに「大里復旧に至るまでの道のりは険しかった」(山本前所長)。新宮電力SCエリアは、氾濫した川沿いの地域がのみ込まれ、主要道路も土砂崩れで寸断。4日間で大阪市の年間降雨量に匹敵する雨が降った地区もあった。陸の孤島と化した地域では自治体の備蓄食料が放出され、被害を確認しようにも、水も引かない発電所には近づくことさえできなかった。

 災害発生から約2週間。土木設備の被害状況を調べに和歌山県内を走り回った田辺電力SC課長(土木)の中村博久は、復旧が遅々として進まぬ通常ルートを迂回(うかい)し、ようやく大里に入った。そこで目にしたのは、航空写真では判別できなかった被害の実態だった。

 土石で埋没するえん堤、下部がえぐり取られた岸壁で宙吊り状態になった導水路…。「本当に直せるのか」。中村はがく然とした。大型重機が投入できれば一気に片が付く。が、そもそも大型重機を運ぶ道がない。コスト削減が求められる折、同様の自然災害に耐え得る設備を造ろうにも、条件はすべて費用増に傾いている。

 「これまで以上の設備を最低限の予算で建設する」。ベテランのみせる熱気に、次第に若手も感化されていく。こう長1キロメートルに及ぶ索道の採用、土石流に強いチロリアン方式の取水口の開発など、関係者間で議論を重ねながら、復旧計画をまとめ上げた。

 だが、土木工事の入札は不調に終わった。

◆傘下の協力

 工事の担い手がいない――。東日本大震災の影響で工事価格の高止まりが続き、豪雨の被害にあった地元でも、職人や重機などの工事力は町のインフラ復旧に回され、なかなか確保できずにいた。

 最終的に1番札を取ったグループ会社、環境総合テクノスが関電の協力要請に応じた。「できない」があらかた許されない電気事業において、グループ会社は時として「最後の砦(とりで)」の役目を担う。電力会社にとって、運命共同体となるグループ会社、協力会社が欠かせぬゆえんだ。事実、東京電力福島第一原子力発電所では事態収束に向け、グループ会社や協力会社も電力社員とともに命を賭する覚悟をみせた。

 現場代理人を務めた同社土木部土木インフラグループマネジャーの西浦利青は「何とかしたい気持ちはグループである我々も同じ」と話す。同社も会社を挙げ、コストダウン方策の検討・支援に乗り出す。水圧鉄管を想定した当初案に現地作業の少ないU字・蛇腹タイプの工場加工製品を採用する代替案を提案、付き合いの深い地元業者にも協力を仰ぎ、関電が示す予算水準にまで引き下げた。

◆地元の愛着 願い結ぶ

 災害発生から約1年を経て、工事は始まった。出水があれば中断せざるを得ないのが水力の現場だ。そのため「できるうちにやっておく」(西浦マネジャー)と、工程の前倒しが基本スタンスとなるが、ひと山またぐ大規模な索道建設は、人海戦術に頼らざるを得ない山中での作業になっただけに、出だしは若干遅れ気味に。

 それでも竣工予定の7月に間に合わせようと、発注者、受注者ともに休日返上で作業に臨む。まだ幼い子のいる西浦だが、ほとんど自宅に帰らず、現場に向き合った。

 関係者はそれぞれの持ち場・立場で工事に全力を注ぐも、制御できない自然を前に、復旧作業は一進一退を繰り返す。

 仮設道路は春先の爆弾低気圧で流され、発電所にかけた仮設の橋も再び濁流にさらわれた。無慈悲な自然災害に打ちひしがれる町にあって、発電所の復旧にゴムボートで向かう所員の執念に、胸を熱くした住民も少なくなかった。

 この間、上位機関の和歌山支店、和歌山電力所も新宮、田辺両電力SCを全面的に支援した。そして2013年7月、難工事を無事故・無災害で乗り切り、悲願の有水試験の日を迎えるに至る。設備をほぼ一から築く復旧作業は、技術継承の点でも重い意味があった。

◆明るさ戻る

 営業運転への最終ステップとなるフル出力での負荷試験は「増水頼み」となるだけに、実施時期は現時点で見通せないものの、有水試験を終えた発電所には実質的な戦力としての活用が期待できる。震災以降試練が続く関電だが、幾多の困難を乗り越え、無事に有水試験入りを果たした現場はひとときの明るさを取り戻した。

 着工から約10カ月に及ぶ所員の労をねぎらい、この日、和歌山支店長の戸神良章も現場に駆け付けた。「限られた予算の中で知恵を絞って頂き、やっとここまでこぎつけた。自然環境自体が厳しくなっているが、せっかく復活させた発電所だ。末長く維持・運営できるよう、引き続き力を尽くしてほしい」。感慨を込め、関係者らにあらためて謝意を示しつつも、戸神は「地元の方々の協力があったからこそ」とくぎを刺した。

 大里発電所の存続は、実は地域住民の強い願いでもあった。2キロメートル先の上流にある天然記念物「甌穴」(おうけつ)、かんがい用の堰(せき)がつくる下流の「自然プール」に並び、大里発電所は「電気の谷」の愛称で地域に親しまれている。三重県最古の発電所とあって、誇りにする住民も多い。当時、崩壊した遊歩道を迂回(うかい)し、すぐさま山道をたどって発電所に駆け付けた住民の数も、一人や二人ではなかったという。

 大里区長の古屋敷良は当時をこう振り返る。「我々の生まれる前からあった愛着の深い発電所だ。今度こそ閉鎖されるのではないかと、本当に多くの区民が心配していた。関電さんから発電所の存続が決まったと伝えられた時、復旧作業には全面的に協力すると約束した。思い入れの強い電気の谷を守ってくれるのだから、こんなにうれしいことはない」

◆強い思い入れ

 時に濁水の生じる可能性もある復旧作業に、農家は田植えの時期をずらして協力した。子どもの時分、川へ飛び込んだ発電所に架かるつり橋は、今回の災害で頑強な鋼橋に変わってしまったものの、それでも渡り初め(わたりぞめ)の日には仕事を休んで多くの住民が駆け付け、関電社員を驚かせた。区民たちのアイデアで、この橋は地域一帯の名称にちなんで「小登橋」と名付けられた。

 地域との信頼関係は、電気事業を成り立たせる最も重要な要素の一つだ。マイプラント意識からくる現場の行動原理は、結果として地域とのきずなを守る重要な役割を果たした。

 また「最後の砦」として機能したグループ会社の献身も、大里再生プロジェクトを実現に至らせる大きな支えになった。現行の電気事業制度の優れた構造を理解する上でも、このエピソードは示唆に富む。(文中敬称略)(随時掲載します)

※電気新聞紙面より転載

2013/09/10

小水力発電 制度変更 普及へ追い風 「許可制」から「登録制」 【日本の業新聞:2013/09/08】

 年内に施行予定の改正河川法で、農業用水を利用した小水力発電が「許可制」から「登録制」に変更になる。農業用水を用いて小水力発電をする場合、煩雑だった手続きが簡素化されるため、水利権を持つ農家や土地改良区が発電に取り組みやすくなる見込みだ。普及に取り組む団体は「法改正を機に、地域還元型の小水力発電がさらに広がってほしい」と期待を寄せる。

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=23258

2013/09/10

中遠農林 小水力発電建設用地の測量委託【建通新聞:2013/09/06】

静岡県中遠農林事務所は、地域用水環境整備として新エネ大井川右岸地区の測量その3をグリーン(島田市)に委託した。納期は9月27日。早ければ9月末にも工事発注する見込み。
委託概要は地図転写2・54㌶や境界測量0・42㌶など。

http://www.kentsu.co.jp/webnews/html_top/130902100047.html

2013/09/06

「ゲゲゲのふるさと」を利用、鳥取で小水力発電所が完成【スマートジャパン:2013/09/06】

小水力発電はそれまで使っていなかった水の位置エネルギーを利用する優れた発電方式だ。鳥取県が主導した出力260kWの小水力発電所も、発電用途ではないダムの水を使いつつ、本来のダムの用途を損なわれないものだ。
[畑陽一郎,スマートジャパン]
 とっとり県民債「ゲゲゲのふるさと」で調達した資金などを使った小型の水力発電所「賀祥(かしょう)発電所」(鳥取県南部町、出力260kW)が、2013年9月に運転を開始した(図1、図2)。

 鳥取県企業局は工業用水道事業や埋立事業と合わせて再生可能エネルギーを生産する電気事業を進めている。8つの水力発電所(3万7400kW)の他、風力発電所(3000kW)と太陽光発電所(200kW)を各1カ所運転中だ*1)。2012年に募集したとっとり県民債の発行総額10億円のうち、1億円を再生可能エネルギー発電所の建設に利用。今回の賀祥発電所にも5000万円を投じている。

*1) この他、倉庫の屋根を利用したFAZ倉庫太陽光発電所(出力500kW、2013年10月運転開始予定)と浄水場の敷地を利用した企業局東部事務所太陽光発電所(出力120kW、2014年2月運転開始予定)を建設中だ。

 「賀祥発電所の総事業費は3億2000万円、県民債の他、公営企業債を発行することで資金を調達した。ダム関連の土地を利用したため、土地関連の出費はない」(鳥取県企業局)。土木や建物、発電機、電気工事などをそれぞれ担当する6社に建設を発注し、2012年6月に建設を開始している。今後は企業局が賀祥発電所を所有し、運営する。

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2013/09/06

[記者ノート]水力の成熟技術目を向けよ【電気新聞:2013/09/05】

ここ数年、自然エネルギーといえば、風力や太陽光が脚光を浴びるようになった。あたかも、原子力発電への依存を打破するエネルギーの主役に躍り出た格好だ。

一方、そのブームに押され、影を潜めてしまったのが水力発電だ。電力供給の確実さや規模を比べたら、風力や太陽光に劣るどころか、はるかに上回る力があるのだが。

豊かな水資源に恵まれる北海道では今、老朽化した水力発電所の改修、改良が進んでいる。

十勝川水系では、さかのぼること71年前に運転を始めた岩松発電所を撤去し、出力増強を図った新岩松発電所に建て替えられる。

発電に使える水量を毎秒37・5立方メートルから同45・0立方メートルに増やし、発電の最大出力を1万2600キロワットから1万6千キロワットに拡大することができる。

建て替えによる出力の増加は3400キロワット。これを風力や太陽光でつくろうとしたら、膨大なコストと広大な土地の確保が必要だ。道内で古くなった水力発電所の改修を一つずつ進めていけば、千キロワット単位で自然エネルギーを積み上げることができる。

水力発電は様々な方法で出力アップを図れるのが特徴だ。使う水の量を増やす、落差を広げる、水の落下をより効率よく回転力に変えるなど、技術や設備の改善で伸びしろを生み出せる。これらの技術が進歩する限り、発電能力を高めていけるわけだ。

風力や太陽光に比べ、長い開発の歴史を経た水力発電は自家薬籠(やくろう)中の技術に近い。これに対し、天気に翻弄され、目まぐるしく発電能力が変わる風力や太陽光を思いのまま使えるようにするには、まだまだ試行錯誤が続く。

途上技術の可能性を追うばかりでなく、成熟した技術の安定感にもう少し価値を見いだしてもいいのではないか。(保)

電気新聞本紙より転載

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