2014/02/11
岩田地崎建設(札幌市中央区)は、ルソン島北部のイフガオ州アシプロで小水力発電所の建設を進めている。同社が小水力発電所の建設を手掛けるのは、これが初めて。国際協力機構(JICA)の無償資金協力事業で、世帯電化率が約65%と全国平均の約80%を下回っている同州の電力供給体制を整備するとともに、売電収入を世界遺産に登録されている棚田の保全に充てる。稼働は来年3月ごろを予定している。
総事業費は8億9,300万円。岩田地崎建設の担当者がNNAに説明したところによると、同事業では、取水ダムと沈砂池、導水路(約1,800メートル)、水槽、水圧管路(約155メートル)、発電所を整備する。発電所には、日本のメーカーが製造した水車と発電機を2セット設置。出力は計820キロワット(kW)となる見通しだ。工事に当たり、日本人社員2~3人を現地に派遣する。同社のほか、東電設計(TEPSCO、東京都江東区)が、詳細設計コンサルティング・サービスを請け負い、施工監理を行う。
小水力発電所はイフガオ州が管理・運営し、同州の電力協同組合を通じて、一般家庭に電力を供給する。売電収入は、発電所のメンテナンス費用や人件費などを除き、すべて世界遺産に登録されている同州の棚田の保全事業に充てられる。JICAフィリピン事務所の担当者は、同発電所の稼働により、年間365万7,000キロワット時(kWh)の電力量が見込まれるとした上で、「1kWh当たり4ペソ(約9円)程度で電力を取引すると想定した場合、年間約1,500万~2,000万ペソの売電収入が見込める」と説明した。
1995年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産リストに登録された同州のコルディリエラ棚田群では、浸食被害が深刻化している。棚田群を適切に維持管理・保全していくためには、年間約3,000万~5,000万ペソが必要とされているが、資金不足により実際の支出は数百万ペソにとどまっており、同発電所の売電収入に期待がかかっている。
■ODA事業で実績
岩田地崎建設は、1922年に創業した土木建築請負業者、岩田組を起源とする。2007年に建設会社の地崎工業と合併し、現在の社名に変更した。本拠地の北海道を中心に、橋りょうやダム、トンネル、空港、教育・研究施設、商業施設、住宅などの施工実績を持つ。フィリピンでは、12年に無償資金協力事業として、「マヨン火山周辺地域避難所整備計画」を受注。このほか、ペルーのチャビン国立博物館、ブルガリアの東ロドピ山トラキア美術博物館センターなどの建設を手掛けた。「今後も積極的に政府開発援助(ODA)事業に参加していく方針」(同社担当者)という。
今回の小水力発電所の建設事業は、昨年3月に日本とフィリピンが交換公文に署名した環境・気候変動対策無償資金協力2案件の一つで、日本の中小企業の国際展開を支援するとともに、フィリピンのエネルギー源の多様化を図ることを狙いとしている。もう1件は、北陸精機(富山県魚津市)が受注しており、同社の担当者は先に、ルソン島北部イサベラ州で3月をめどに、農業用水の落差を利用した小水力発電機(出力25kW)2基の設置工事を開始すると説明している。
2014/02/10
農業用水を活用した小水力発電や売電が広がっている。足元の電力を集落の施設で使ったり、売電収入を電気代に充てたりする「電力の地産地消」。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度導入で初期投資に見合う収入が見込めるようになり、水路を管理する自治体や土地改良区にとっては、思わぬ“金の卵”となりそうだ。
岐阜県中津川市加子母(かしも)の小郷(おご)地区。特産のトマトやシクラメンの栽培に欠かせない農業用水が山肌に沿って勢いよく流れる。白川から水を引き、市が管理するこの小郷用水が今春、毎年四千九百万円を生む発電所に生まれ変わる。
徐々に下る用水路と並行して水圧管路を埋設。用水路から貯水槽にためた水を六十二メートル下まで落とし、水車を回す。最大出力二百二十キロワット。年間で一般家庭四百世帯分の千六百八十メガワット時を発電できる。電気は市が一キロワット二十九円(税抜き)で全量を中部電力に売る。
県が三億四千万円で整備。半分を国が補助、残りを県と市が折半した。県が市に無償譲渡し、十日に発電を開始。収入は農業用施設などの電気代や維持管理費に充てる。発電所は固定価格買い取り制度導入前の二〇一〇年度に計画。当時は一キロワット十五円程度を見込んでいた。
「順調なら、七年ほどで事業費の元は取れる」と担当者。発電機の耐用年は固定価格の適用と同じ二十年。電気代に充てた売電収入で浮く税金を、農業振興に役立てる。
農業用水路の総延長が全国三位で「小水力発電で日本一を目指す」(大村秀章知事)という愛知県が今春、豊田市で着工予定の小水力発電所(最大出力九百キロワット)も完成後、毎年約一億円の収入を見込む。
県によると、二十年前にも検討されたが、当時は採算の見通しが立たずに断念。固定価格買い取り制度と国の補助で、約九億円の事業化にこぎつけた。
◇
政府は「農業の体質強化」として一二年三月、農業用水で小水力発電を計画する地域を一六年度までに千地域にする目標を設定。整備や調査などの補助制度があり、農林水産省によると現在、愛知や神奈川など二十三道府県が発電できる用水路の調査を行い、整備計画を作成しつつある。
岐阜大の大西健夫准教授(水文学)は「日本は農業用水が張り巡らされ、発電ポテンシャルは高い」と指摘。「小水力発電は地形や水量などに合わせた設備のオーダーメードが必要で、製造コストが高く、多くが買い取り制度と公共事業に支えられている。制度終了後も持続可能な仕組みづくりが必要」と話す。
◆河川法の改正で手続きが簡素化
資源エネルギー庁によると、固定価格買い取り制度導入後、昨年十月までに認定された再生可能エネルギーの設備容量は太陽光が約二百四万キロワットなのに対し、中小水力は約十三万キロワット。理由の一つが水利権をめぐる複雑な規制と手続きだが、昨年十二月施行の改正河川法で、農業用水の水利権を得ている水路での導入は手続きが簡素化された。
従来は新たな許可が必要で、申請から五カ月程度かかった。改正後は一定の要件を満たせば必要な項目を登録するだけでよく、審査も一カ月程度になった。
国土交通省は個人や団体が小水力発電を行う場合の河川法手続きの支援も各地方整備局で行っている。
(山本真嗣)
2014/02/07
農業用水路を活用した小水力発電の可能性を検討する上伊那地域農業生産基盤再生可能エネルギー活用研究会(会長・青木一男上伊那地方事務所長)の第4回会議が6日、伊那合同庁舎で開かれ、これまでの検討結果が報告された。上伊那地域4土地改良区の用水路における小水力発電導入の可能性を検討してきたが、伊那市の春富と美和(長谷)両土地改良区は立地、規模、費用対効果などの面から採算性があると判断。国県の補助金を活用する両土地改の発電施設建設計画が示された。
春富土地改は、1988年から小水力発電の検討が進められてきたが費用対効果から一度は導入を断念。しかし2012年からの電気の固定価格買取制度の施行で売電価格が上がり、売電で維持管理費の捻出が可能になったため、同研究会は採算性があると判断した。
設置場所は春富6号地区桜井分水工で、有効落差は21.9メートル。管路延長は40メートルで、最大可能出力は約190キロワットを見込む。発電期間は田畑を潤すかんがい期を想定する。発電所の建設は、県が2014~21年度にかけて県営かんがい排水事業として実施。老朽化した用水路約3キロ区間の更新とともに建設し、総事業費は約8億9000(発電分約3億4000)万円を見込む。
美和土地改は、用水路維持管理費の農家負担の軽減を目的に小水力発電を導入する。有効落差は10.2メートル、管路延長は70メートルで、最大可能出力は約12ワット。発電期間はかんがい期とする予定。事業主体は同土地改で、団体営地域用水環境整備事業を導入し、14~16年度にかけて整備する計画。総事業費は9500万円が見込まれる。
このほか駒ケ根市の上の井と小城川での導入も検討したが、いずれも新たに整備する管路延長が長く、最大使用水量も少ないなど課題がある。費用対効果の面からもメリットが少ないと判断され、駒ケ根、大田切の両土地改は現時点での導入を見送った。
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=30577
2014/02/07
東北電力は3日、福島市内で建設している小水力発電の飯野発電所(出力230キロワット)の運転開始時期を、当初予定の今月から6月に延期すると発表した。基礎を設置する岩盤が想定より固く、掘削工事に時間がかかったのが要因。
飯野発電所は、既存の蓬莱水力発電所(福島市)のダムから阿武隈川に流す水で発電する設備。ダムから放水した水を使用するタイプの発電所の建設は東北電として初めて。
2014/02/07
■県が小水力発電の事業者を募集
こんにちは、もんじゅ君です。今週は栃木県がとりくんでいる、小水力発電のお話をご紹介するよ。
栃木では今月の14日まで、「小水力発電をやりたい会社はいませんか?」と県が事業者を募集しているんだよ。こんなふうに、再生可能エネルギーを手がける会社を自治体が募る、ということ自体はめずらしいことではないのね。けれど栃木のやり方でおもしろいのは、くわしく県内のいろんな場所の地形や水量を調べて「ここなら小水力発電をやるのにぴったりですよ!」というポイントを公表していることなんだ。
■発電に向いた場所を公表
これは栃木県の「河川活用発電サポート事業」というプロジェクトなんだけれど、鹿沼市と日光市のあわせて九つの河川について、15カ所の適地を発表しているの。場所だけではなくて、そこで発電に使えそうな落差や水量はどれくらいか、じっさいに発電機を設置するのにいくらかかるか、年間でどれほどコストがかかって、どれくらい売電収入がありそうかなど、事業をはじめるのに必要なデータもいろいろと公表しているんだよ。
■ぴったりな場所を見つけるのが大事だから
自然エネルギーによる発電っていうのは、火力発電や原発とはちがって、燃料がいらないのがいちばんのメリットでしょ。だけどそのぶん「ぴったりな場所」でやることが重要なんだ。太陽光、風力、小水力など、どれにしても地形や気候の合った場所じゃないと、採算があうだけの発電量を確保できないケースがあるんだよ。
だから、再生可能エネルギーの発電所をつくるときには「場所選び」がとても大切なんだけれど、調べてみてから「だめだった」とわかることも考えられるし、調査にもノウハウや知見も必要だから、いきなり始めるのはちょっとむずかしい。
そこで栃木では、「県がかわりに下調べをしますよ」「いい場所を見つけましたから、あとは県内、国内のやりたい企業がぜひ手を挙げてくださいね」という方式をとっているんだね。
■お金は出さず、情報やサポートを提供する
これまでもほかに山梨や山口、岡山などで小水力発電のポテンシャルの高い場所を探して公表する、ということはおこなわれてきたんだけれども、栃木のとりくみはひと味ちがっていて、発電を始める会社が決まったあとも「河川を利用するための認可手続きや、地元の人たちとの話し合いについても県が手伝いますよ」「国や県に使えそうな融資制度や補助があれば教えてあげますよ」といっているんだ。
このプロジェクトでは、県は直接的にはお金を出さないけれど、かわりに事前の調査をし、必要な情報や手助けをしていくんだね。
■他の県にとってもヒントに
都会にくらべると、地方は自然がゆたかなぶん、再生可能エネルギーのポテンシャルが高い場所がたくさんあるんだ。けれど地方自治体の予算では、それほどたくさん自然エネルギー普及にお金を出せないという事情もあるし、県内の事業者だって中小企業が中心で、大企業にくらべればそんなに予算がない、ということも多いでしょ。
だから、この栃木の「適地の調査は県がします。情報も出します。やると決まったあともお手伝いしますよ」という方式で成功例がひとつでもふたつでも出れば、他の県にとってもきっとよい例になるんじゃないかな。そう思って興味ぶかくニュースを見ているよ。