2016/03/09
2016年3月9日
中部電力は7日、阿智村清内路の天竜川水系に清内路水力発電所を建設することを決定し、発表した。黒川、小黒川から取水する流れ込み式の中規模発電所で、出力は5600キロワットを見込む。2018年春に着工し、22年夏の運転開始を目指す。
中電の計画によると、黒川は飯田市の大平宿の南東の地点に、小黒川は同村清内路の上流域にえん堤を設け、最大で毎秒2・5トンを取水。計約5キロメートルの導水路で両えん堤間を結ぶとともに、有効落差約272メートルの水圧管路に水を運び、落水地点に発電所を設けて水車を回し、発電する。
発電所は国道256号線沿いで、旧清内路中学校の北約200メートルの地点に半地下型で設置。脇を流れる清内路川に排水する。
想定する年間の発電量は約2700万キロワット時で、一般家庭約7100世帯分の年間使用量に相当する。
飯田市役所で開いた会見で、同社発電本部土木建築部の開発・技術グループ長は「水力発電は再生可能エネルギーの中でも安定した発電電力量を期待できる」と強調。年間1万3000トンの二酸化炭素を削減できるとした。
中電が流れ込み式の水力発電所を開発するのは、1996年に運開した平谷水力発電所以来20年ぶり。ダム式や小水力も含め、県内では83カ所目の水力発電所となる見通し。
計画地の一部はJR東海のリニア中央新幹線のトンネル区間と重なり、両えん堤を結ぶ導水路トンネルがリニアルートと地中で交差する。
同部長は、導水路がリニアのトンネルより300メートルほど上部になるとし、「振動などの問題はないと判断している」とした。
掘削で出る土の量は数万立方メートルを見込み、運搬せず計画地周辺に置きたい考え。工期が重なるリニア計画については「JR東海と調整し、工事用車両の運行計画を平準化し、ピークだてしない努力をするなど、地元の方への影響が小さくなる計画を立てたい」とした。
JR東海広報部は本紙の取材に「工事の時期が重なることが想定されるため、工事用車両の運行計画について今後、具体的な調整が必要」との認識を示し、「まずは住民の方への負担を低減できるよう、検討を進めたい」とした。
同社は同日、飯田市や阿智村、下伊那漁業協同組合に開発計画の申し入れをした。阿智村の熊谷秀樹村長は「まずは住民に対し、丁寧な説明を求めたい」とし、同社に対しても同様の要請をした。
漁協の下島保徳組合長は「黒川は人気の高い釣り場で県内外から多数が訪れている。できることなら避けて欲しいが、自然エネルギーに対する国民の要請が高まっていることも理解できる。月内の理事会で執行部としての対応策を真剣に考え、6月の総代会に掛けたい」と語った。
中電は月内にも、住民を対象にした説明会を開きたい考えだ。
2016/03/07
2016年3月7日号掲載
西粟倉村(にしあわくらそん)は岡山県の北東部、兵庫県及び鳥取県と県境を接する人口1520人の山村で、面積57.93km2のうち95%を森林が占めている。2004年8月、近隣地域との合併協議会を住民投票の結果に基づき離脱、それ以来、村面積の大半を占める森林を軸とした地域活性化を通じて、小規模自治体としての生き残りを模索してきた。
西粟倉発電所「めぐみ」は、農山漁村電気導入促進法に基づき、昭和41年3月から小水力発電を開始している。西粟倉村農業協同組合による経営であったが、平成16年の農協合併に伴い西粟倉村に移譲された。水圧管の漏水など設備の老朽化に加え、発電機の空冷化が必要となったため、平成22年度に重要な設備の更新工事を計画した。
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2016/03/03
2016年3月3日
国土交通省の有識者検討会は、資源としての河川利用の促進に向けた「課題の整理と進めるべき方策」として、小水力発電事業の各種事例を広く周知することなどを盛り込んだ報告書を取りまとめた。
これを踏まえて、同省では、「小水力発電設置のための手引き」を改定し、未掲載であった慣行水利権を利用した従属発電の実施事例などを追加掲載した。
小水力発電の普及拡大に関する議論の取りまとめ内容の概要等は下記のとおり。
(続きは、転載元HPにて会員登録のうえお読みいただけます)
2016/03/01
2016年3月1日公開
2015年12月、絶滅の危機にあるスマトラトラやスマトラサイが生息するスマトラ島ブキ・バリサン・セラタン国立公園に隣接した小さな村で、森から流れる川を利用した、7機の小水力発電機が設置されました。村の住民は、この川の流れを維持するため、流域の森林を開発せず、長期にわたって保全することに合意。国立公園の森と希少種の保全につながることが期待されています。WWFでは今後、この事例を他の地域に広げる取り組みを目指しています。
森を守る、クリーンで安価な電力
インドネシア スマトラ島の南東部に位置するブキ・バリサン・セラタン国立公園は、スマトラサイやスマトラトラをはじめとする絶滅危惧種の貴重な生息域であり、ユネスコの世界自然遺産「スマトラの熱帯雨林」の中心的なエリアの一つにも指定されています。
しかし、同国立公園では、違法な農園開拓による森林伐採が進行しており、2011年には世界遺産危機リストに掲載され、ユネスコから森林保全・回復の改善策に取り組むよう勧告されています。
こうしたことから、WWFでは、これまでブキ・バリサン・セラタン国立公園の森林と絶滅危惧種を保全するための活動を支援してきました。
そして、2015年1月、国立公園に隣接するスカ・バンジャール村で、住民に自然エネルギーを供給することで、地域主体の森林保全を促す、新たな取り組みを開始しました。
このプロジェクトは、森から流れる川を利用した小水力発電機を設置することにより、住民約100世帯にクリーンな電力を供給することを目的にしています。
自然エネルギーによる小水力発電は、これまで村で使われてきたディーゼル発電機の燃料(軽油)を定期的に購入するよりもメンテナンスの費用が安く、住民の経済的な負担を抑えられる上、温暖化の原因になる二酸化炭素の排出を抑えることにも貢献します。
そして何よりも、小水力発電機を長期間にわたり持続的に使用していくためには、流域の森林を保全し、川に泥が流れ込んで堆積するのを防ぐことが欠かせません。
こうしたことから、WWFではプロジェクトの開始にあたり、スカ・バンジャール村の住民の方々に小水力発電の利点と、住民が自ら森林保全に取り組む必要性を説明しました。
スマトラ島固有亜種のスマトラトラ。推定個体数は300頭ほどといわれる。
スカ・バンジャール村の位置図
小水力発電機の設置に向けて
プロジェクトでは、まず村内のどこに森林が残っているのかを把握するために、衛星画像の分析と現地調査を実施し、村の土地利用図を作成しました。
その結果、村の南部はパーム農園や水田に転換されているが、国立公園に隣接する北東部には比較的森林が残されていることが判明。
まずは、村の北東部を流れるタタサン川とシリンバラック川に5~10kwの小水力発電機を4機と3機設置することに決定しました。
そして、発電機ごとに受益世帯をグループにし、それぞれから発電機の管理や運営を担う委員長と書記、経理の3名を選出してもらいました。
これらグループのメンバーは、特別に発電機の技術研修と組織の運営研修を受け、発電機の操作方法や、メンテナンスのための徴収額の設定方法、財務記録の作成・保管方法などを学びました。
また、発電機の設置にあたっては、各世帯が流域の森林を農地に転換せず、川の源流を保全することで、小水力発電に必要な水質を維持することに合意。
その内容は文書化され、各世帯と村長、コミュニティ組織の委員長の3名が署名し、村全体として森の保全に取り組む意志を明らかにしました。
この文書には、これらの合意事項に違反した場合、小水力発電の使用資格を失うことなども含まれています。
設置された発電機
116世帯にクリーンな電力を供給!
9か月にわたる事前調査と準備を経て、2015年10月に小水力発電の設置作業が行なわれました。
小水力発電では、通常の水力発電のように大規模なダムは建設せず、川の一部せき止めて、そこから川をバイパスする水管へと取水し、タービンに水を流し込むことで発電します。
こうした堰の建設や水管・発電機の設置作業は、各グループのメンバーが協力して実施。
そして12月、雨期で川の水量が増す前に、全7機の発電機の設置が完了し、計画を上回る116世帯にクリーンな電力を供給することができました。
また、発電機の運用・管理は、各グループで決めた曜日毎の担当者が実施。定期的な発電機の点検と取水口の掃除を行なっています。
今後プロジェクトでは、森の保全につながるスカ・バンジャール村の取り組みを、ブキ・バリサン・セラタン国立公園周辺の他の地域に広げてゆくため、このプロジェクトを題材とした動画や手引きを作成し、周辺の村落や政府機関に配布する予定です。
さらに、県知事や国立公園長を招いたシンポジウムの開催も計画しています。
発電機は村の人たちが協力して設置
スマトラ島の森を守るために、日本の消費者に求められる行動
ブキ・バリサン・セラタン国立公園をはじめ、スマトラ島の国立公園で起きている違法伐採や違法な農園開拓は、日本とも深いつながりがあり、問題解決のためには、日本の消費者にも行動が求められています。
スマトラ島における森林破壊の主な原因は、オイルパーム農園の開拓と紙・パルプ用の人工植林であり、こうして生産されたパーム油や紙は日本にも輸出されています。
パーム油は、日本の消費者が直接目にする機会は少ないですが、チョコレートやカレールーの一部、スナック類やインスタント麺の揚げ油、石鹸や化粧品の原材料など、身の回りの様々な商品に使われており、パーム油なしで日常生活をするのは不可能なほど広範に利用されています。
また、日本で使用されるコピー用紙の3分の1がインドネシアで生産されたものです。
日本で使用されているパーム油や紙の中には、破壊的な大規模伐採の跡地で生産されたものも含まれており、日本の消費者がこうした商品を購入することで、知らず知らずのうちにスマトラ島の森林破壊に加担している可能性があります。
しかし、消費者個人が商品やその原材料の生産方法まで遡って、追跡するのは困難です。
そこで、環境破壊的な方法で生産された商品の購入を避けるために、最も簡単で効果的な方法は、「RSPO認証」や「FSC認証」が付いた商品を購入することです。
これらの認証は、パーム油や林産物が環境、社会、経済的に持続可能な方法で生産されたことを証明する国際的な制度です。
日本の消費者がRSPO認証やFSC認証が付いた商品を意識的に選択することで、スマトラ島の破壊的な森林伐採に対して厳しい態度を示し、持続可能な生産を支援することになります。
WWFは、今後もスマトラ島の現場で森林と絶滅危惧種の保全に取り組むと同時に、日本の企業や消費者に対して、環境に配慮して生産された原材料の購買・調達を働きかけていきます。
※この小水力発電の設置プロジェクトは、トヨタ自動車株式会社のトヨタ環境活動助成プログラムの助成を受けて実施しています。
アブラヤシのプランテーション
2016/03/01
2016年3月1日掲載
高知県安芸郡馬路村が馬路村朝日出地区に建設を進めている馬路村直営の小水力発電施設が、4月から稼働する見通しとなった。馬路村は年間約2千万円の売電収入を見込んでおり、2月下旬に四国電力と20年間の売電契約を締結した。高知県内で自治体直営の小水力発電は高岡郡梼原町に続き2例目。馬路村は収益分を地方創生の各施策に充当していく考えだ。
馬路村は2012年3月から再生可能エネルギーの利用を本格的に検討し、年間3千ミリを超える全国有数の降水量を生かそうと、小水力発電の事業化を決めた。
安田川沿いの馬路村有地で、2014年9月から発電施設の建設工事に着手し、高低差約75メートル、長さ約120メートルの導水管(内径30センチ)を敷設した。安田川に流れ込む細井谷から取水して施設内の発電機に水を流して発電する。総事業費は約2億3千万円。
当初は2015年9月に完成する予定だったが、配管工事の遅れなどからずれ込んでいた。現在は配管工事も終了し、発電施設内の電気系統の整備などを進めており、3月中に完成する見込みとなった。
最大出力は145キロワットで、年間発電量は約56万キロワット時。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づき、20年間にわたって売電する。年間維持管理費約900万円を差し引いた約1100万円を、少子化対策などの事業費に充てる。
上治堂司村長は「再生可能エネルギールギーで得た収益を地方創生を推進する各施策に活用していきたい」としている。