2016/06/02
2016年6月2日
岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)に、農業用水を活用した小水力発電所「石徹白番場清流発電所」が完成した。同地区約100戸のほぼ全戸が出資した「石徹白農業用水農業協同組合」が主体となり2年前から整備してきた発電所で、全国的にも珍しい事例という。1日に通電式があり、稼働した。
最大出力125キロワット、年間発電量は約61万キロワット時で、一般家庭130世帯分の年間使用電力量に相当する。総事業費は約2億3千万円で県、市の補助も受けた。
明治時代に住民が手で堀った農業用水を活用。電気は全量を売電し、年間約2千万円の収益は、耕作放棄地を活用した農業を進めるなど、地域振興に活用する予定。
通電式には約50人が出席。上村源悟同組合組合長や高木敏彦県農政部長、地元の野島征夫県議らがスイッチを押した。上村組合長は「ここからが本当の仕事になる。この地域を後世につないでいくため、頑張っていきたい」と話した。式典後、組合の平野彰秀参事が施設の概要説明を行った。
同地区では、県が昨年整備した「石徹白1号用水発電所」も稼働しており、2発電所の年間発電量は、集落の年間電気使用量の2倍以上に相当するという。
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20160602/201606020914_27393.shtml
2016/06/02
2016年6月2日掲載
上水道の水流エネルギーを活用
ダイキン工業株式会社は、2016年5月26日、上水道の管水路の水流エネルギーを利用して発電する超小型マイクロ水力発電システムを、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環で、神戸市水道局と共同開発すると発表した。
超小型マイクロ水力発電システム
小水力発電は年間発電力が多く、安定的に発電する再生可能エネルギーとして期待されるが、100キロワット以下のマイクロ水力発電の場合、機器のサイズが大きく設置場所が限定されることや導入コストが課題だった。
同社は、横型マイクロ水力発電システムの約半分の面積に設置でき、導入コストを削減した22キロワットクラスと75キロワットクラスの縦型マイクロ水力発電システムの開発・実用化に成功している。
圧力調整用バルブの代替システムとして
今回、同社と神戸市水道局は、上水道施設に設置された圧力調製用バルブに置き換える目的で、10キロワット以下の超小型マイクロ水力発電システムの開発に取り組む。バルブはまち全体に供給する水を適切な水圧に調整する機能をもつ。
これをマイクロ水力発電システムに置き換えると、上水道の水圧調整と同時に、利用されていなかった水流エネルギーを発電に活用できる可能性がある。さらに、鉄・紙、化学品、薬品、飲料品など生産過程で工業用水を使用する工場に同システムを導入することも想定している。
同社は、共同研究で、超小型システムの開発と合わせて、神戸市水道局福谷(ふくたに)中層配水池に22キロワットのマイクロ水力発電システムを設置し、遠隔制御機能や長期的な性能、メンテナンスなどの運用コストを検証する。
2016/05/31
2016年5月31日掲載
登別市は、学習用のらせん式小水力発電装置を今夏、鉱山町のネイチャーセンターふぉれすと鉱山敷地内の水路に設置する。施設を利用する小学生らの環境学習に役立てる目的。実際に発電した電力は、装置を照らす照明(外灯)に役立て、発電の様子を分かりやすく紹介する。
登別市は多雨で豊富な水資源を有することから、かつて鉱山町や登別温泉町などに水力発電施設があったことでも知られる。1908年(明治41年)に開設された幌別鉱山発電所が有名だ。
市は世界的に再生可能エネルギーが普及する中、道企業局や民間事業者の協力を得ながら、「登別らしい」小水力発電事業の可能性を探ってきたが、「適地を見いだせず」動きが止まっている。
ただ、市地域エネルギービジョン2004年(平成16年)でも「小水力発電を使った学習プログラムの展開」を位置付けており、小型装置による環境学習機会の提供へ、装置導入を決めた。
四角い筒形(縦40センチ、横30センチ、長さ1・1メートル)で、中に長さ70センチのらせん形の羽根、発電機が組み込まれている。主に農地の水路で照明などに利用されているもので、価格は約9万円。
市は7月にも、ふぉれすと鉱山敷地内にある幅1・1メートル、高さ90センチ、水深約50センチの水路に設置する。どのような形で環境学習に役立てていくかの具体策については、今後市教委と協議していく。
観光経済部の井上昭人総括主幹は「ふぉれすと鉱山は小学生の利用も多く、通学合宿なども行われています。登別の水力発電の歴史なども合わせながら、幅広く教育面で活用していきたい」と話している。
2016/05/30
2016年5月30日掲載
はじめに
昭和25年から20年間に中国地方5県では地域経営の自家用小水力発電所が90カ所(1万2,200kW)建設され、そのうち82カ所は、全量売電式で農村の経済効果のみならず戦後の厳しい電力不足に大きく貢献している。
ここでは昭和21年中国配電(現中国電力)役員を辞任した「織田史郎」(イームル工業創立者)が、地域の小河川を利用した小水力発電が有力な電源として役立つことを考案し、その開発に生涯をかけた活動をまとめたものである。
織田史郎の略歴と人となり
織田史郎は明治29年、4男2女の長男として広島県海田町に生まれた。家庭の経済状況から早く仕事につくため職工学校(現広島県立工業高校)へと進んでいる。織田史郎の弟は1,928年アムテルダムオリンピックにおいて、三段跳びで日本初の金メダリストに輝いた織田幹雄。幹雄の10歳上の兄である織田は、広島陸上界のホープである弟を、自らの資金援助により早稲田大学に通わせている。この時の織田は、学歴無しの入社ながら、電力会社で第一種電気主任技術者の資格をとるほどの優秀な社員で、破格の待遇を受けていたという。
織田の賢人ぶりを思わせるエピソードが残っている。職工学校2年生の時、朝鮮人観光団の学校視察の折、生徒たちが教室のドアーに微電流を流し、案内の校長がノブに手をかけて発覚、激怒するといういたずら事件が起こった。
織田は首謀者として放校された。しかし、実際は織田があまりに勉強家で、教科書以外にも海外の電気技術書を自習し、教師も知らないことを質問し困らせていたことが要因とされている。
学歴は尋常高等小学校卒となったものの、職工学校で群を抜いて優秀な生徒がいるとの評判は、電力会社に伝わっていた。織田は、広島呉電力会社に就職、入社後も海外書を英語・ドイツ語辞書で読むなど猛勉強し、難関の電検一種合格したのは28歳だ。すでに対官庁では役員級の対応を受ける貴重な技術者であった。発電建設部長から42歳で取締役技術部長に昇格。豪邸を建てたが、書物が入りきらず、別棟に書庫を建てたという逸話も残っている。
昭和20年の敗戦時には50歳、中国配電筆頭理事の要職にいたが、敗戦濃い20年初めにロケットの制御技術担当責任者として軍に招集されている。
しかしこれが仇となって昭和21年11月マッカーサー追放令の対象者となり、退職金無しで同社を辞任した。
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2016/05/30
2016年5月30日掲載
神戸市は海岸近くに人口が集中するものの、六甲山地の北部や西部でも都市化が進んでいる。さまざまな高度に位置する住宅に水道を供給しようとすると、水圧の調整が難しい。この問題を解決できる「超小型マイクロ小水力発電システム」の共同研究を、ダイキン工業と神戸市が共同で開始した。
[畑陽一郎,スマートジャパン]
神戸市とダイキン工業は2016年5月26日、出力が10キロワット(kW)以下という「超小型マイクロ小水力発電システム」の共同研究を開始したことを発表した。
環境省の実証事業として3年間で進める*1)。10kW以下の発電システムの技術開発を2年目までに完了し、神戸市の水道施設へ試作機を設置、実証実験を完了する予定だ。
神戸市水道局には解決したい問題が2つある。環境負荷低減と、水道の水圧調整だ。超小型マイクロ小水力発電システムを導入することで、2つの問題を同時に解決する絵を描いている。
環境負荷低減は分かりやすい。水道には水圧があり、水圧を利用できれば水車を回して発電できる。「1998年から1999年にかけて、太陽光発電や小水力発電など未利用エネルギーが活用できないか、検討を開始し、2002年には北区の千苅(せんがり)浄水場に180kWと規模の大きな小水力発電の導入工事を開始、2004年には供用を開始した」(神戸市水道局事業部施設課)*2)
*1) 環境省は予算総額65億円で「平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」を公募。ダイキン工業が「既設管水路の未利用エネルギーを最大限活用するマイクロ水力発電システムの開発と実証」として採択された。環境省の内示額は1億2000万円。神戸市は水道設備内の機器設置場所を無償で貸し出し、水運用のノウハウを提供する。神戸市としての予算措置は必要ないとした。
*2) 水道以外でも小水力発電を導入している。「公共部門における小水力発電システム導入の先駆けは、下水道事業だ。2002年に完成した湊川ポンプ場(出力85kW、1日の発電量2000kWh)である」(神戸市環境局環境政策部環境貢献都市課)。下水の高度処理水を用いた発電だ。
「さらに小水力発電の導入を進めようとしたものの、費用対効果などに課題があり、計画が中断していた。近年、国の補助率が上がったこと、固定価格買取制度(FIT)が始まったこと、小水力発電システムの価格が下がったこと、小型の機器が登場したことによって、小水力発電の導入計画を再スタートすることができた」(同施設課)。
水圧問題を解決したい
住宅に水道水を供給する際、一定以上の水圧を保つことができないと、水の出が悪くなり、使い勝手が大幅に下がる。逆に水圧が高すぎると、漏水の原因になる。
神戸市の課題は、標高931mの六甲山を擁する六甲山地が大阪湾に面する市街地から約3kmまで迫っていること。六甲山地の北側や西側を含め、さまざまな高度に住宅が広がっており、全ての住宅に適切な水圧で送水することが難しい。
「高度30mごとに池や水槽からなる『配水池』を配置して、自然流下で水道水を供給している。神戸市には126カ所に配水池がある。これは日本有数だと考えている。さらに配水池を増やした方がよいのだが、費用対効果から難しい。現在は圧力調整用のバルブ(弁)を設置することで対応しているものの、流量が変動すると水圧が安定しにくいという課題がある」(同施設課)。
そこで小水力発電システムを使う。「住宅と配水池の間に出力10kW以下の小水力発電システムをバルブの代わりとして導入し、遠隔調整できれば、費用対効果が最も良くなる」(同施設課)。
10kW対応の機器を選択できない
神戸市の水道システムをごく単純化すると、次のようになる。まず、上水用のダムなどから取水し、浄水場に送る。水質を調整した後、ポンプアップして、最初の配水池に送る。幾つかの配水池を経由して、住宅に水道水が届く。
「水道局としては、複数種類の小水力発電システムを利用したい。ダムから上水場の間は水量も多いため、大型の小水力発電システムを導入済みだ。浄水場から供給を受ける配水池以降は100kW以下が適する。配水池から住宅へ供給する部分では10kW以下が望ましい。しかし、これまで水道局が調査したところ、10kW以下に対応する小水力発電システムを見つけることができなかった。出力100kW以下の小水力発電システムを実用化したダイキン工業が、次に10kW以下の開発を進めるため、共同研究を始めることになった」(同施設課)。
水力発電システムの最大出力は、水の流量と有効落差の2つから決まる。ダイキン工業が開発済みの発電システムでは、図4に示した範囲で導入可能だ。
流量や有効落差が小さくなればなるほど、出力は小さくなるものの、導入可能な箇所は増える。機器の出力をどの程度に決めるかが重要だ。
「10kW以下の超小型マイクロ水力発電システムとして実際に開発する試作機の仕様は、今後、神戸市と共同で実施する詳細調査によって決定する。これまでの基本調査からいったん5.5kWクラス(出力範囲2.2~5.5kW)を想定している」(ダイキン工業)*3)。
*3) ダイキン工業の小水力発電システムは、既存の水道配管の間に挟みこむ形を採る。その場合、どの程度の直径の配管に接続するかを決めなければならない。「詳細調査の後に決めるものの、5.5kWクラス試作機では直径50~100mmと考えている」(ダイキン工業)。
開発済みの発電システムを検証する
今回の共同研究では2つの研究を並行して進める。10kW以下機の開発の他に、ダイキン工業が開発済みの小水力発電システム(出力22kW)の導入だ*4)。「住宅に供給される水道水に影響が出ないよう、2つの配水池の間にある福谷中層配水池(西区櫨谷町)に導入する」(同施設課)。
最大出力は24.1kW。年間発電可能な電力量は211MWhだ。一般家庭約65軒の年間消費電力をまかなう電力量だという。図5中央に描かれている「マイクロ水力発電(100kW以下)」が、この22kWの設備だ。
なぜ開発済みの機器を導入するのだろうか。
理由は3つある。第1に、ダイキン工業が新規に開発した遠隔制御機能を確認する。「この機能は、今回福谷中層配水池に設置するにあたって新たに開発した。水道事業者がマイクロ水力発電システムの発停や流量を遠隔で操作するために使う。神戸市水道局が上水の使用状況に応じて配水池への流量を柔軟に調整することを可能にするためだ」(ダイキン工業)。
「遠隔監視機能は役立つと考えている。流量変化はもちろん、現状ではバルブ・弁の故障も分かりにくい。故障発見にも使えそうだ。今後は水質も把握できるとうれしい。なぜなら水運用ではなんといっても水質を維持することが重要だからだ」(同施設課)。
第2に長期的な性能を検証する。第3に、メンテナンスなどの運用コストを検証する。「マイクロ水力発電システム本体は、適切なメンテナンスを適宜実施することが必要だ。耐用年数は20年程度と想定している。長期運転実績を踏まえて再検討したい」(ダイキン工業)。
*4) 2013~2015年度の環境省の実証事業で開発・実証済み。
導入コストを引き下げる工夫とは
ダイキン工業は出力22kWや77kWの小水力発電システムを製品化する際、小型軽量化、高い発電性能、低コスト化を重視した。
河川などに設置する小水力発電システムとは異なり、配管に接続する発電システムでは設置場所に余裕がない。設置面積を少なくすればするほど、導入できる場所が増える。
そこで、発電機本体の上にコントローラーを載せる形状を工夫した。永久磁石同期発電機と縦型インラインポンプ逆転水車、発電コントローラー(コンバータ、系統連系インバーター)を全て一体化した形だ。設置面積は従来の横型マイクロ水力発電機の半分以下となった*5)。一体化を進めたものの、分解しなくても摩耗部品を交換可能であり、メンテナンス性は高いという。
*5) 制御盤を除くシステム本体の寸法は高さ1280mm、フランジの面管936mm、奥行き545mm。重量は500kg。
発電性能を高めるため、社内の別事業で開発した技術を応用した。発電機とコントローラーには、空調技術と油圧機器事業で改善を重ねたモーター技術やインバーター技術を適用した。水車の流量制御機能によって、落差(圧力)が変動しても安定した運転ができるという。
周波数変動を吸収する仕組みを盛り込む 発電機は交流を出力するものの、水車に流入する水の落差・流量条件によって、永久磁石同期発電機の回転数が変動し、発電機からの出力である交流の周波数も変動する。 「そのため、いったん発電機一体型コントローラー内のコンバータで直流に変換する。さらに商用電源と接続する(系統連系)ために、外付けのシステム制御盤内の系統連系インバーターで設置地域の系統周波数(50Hz/60Hz)に合致する交流に変換する。従来の一般的な小水力発電では、発電機が一定回転するように複雑な流量調整機構(ガイドベーンなど)やアクチュエータ、調整制御装置が必要で、機械的に系統周波数に合致するように調整している。これに対して、開発した可変速マイクロ水力発電システムでは、ガイドベーンなどがないシンプルで低コストの標準ポンプとパワーエレクトロニクスの組み合わせで、より高精度で安定した系統連系を実現する」(ダイキン工業)。 5年程度で償却可能に 低コスト化を実現できたのは、システム構成全体を考慮したためだ。「対象施設の状況や水道事業者からの要望により費用は変わるものの、22kW機を外販する場合*6)、システム本体を5年程度での償却できるような価格を想定している」(ダイキン工業)。 *6) ダイキン工業は神戸市との共同研究後、他の自治体向けに小水力発電システムをテスト販売する計画だ。22kW機と77kW機を想定している。「10kWの販売については、神戸市との共同研究結果を見て判断する」(ダイキン工業)。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1605/30/news115.html