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2013/09/06

[記者ノート]水力の成熟技術目を向けよ【電気新聞:2013/09/05】

ここ数年、自然エネルギーといえば、風力や太陽光が脚光を浴びるようになった。あたかも、原子力発電への依存を打破するエネルギーの主役に躍り出た格好だ。

一方、そのブームに押され、影を潜めてしまったのが水力発電だ。電力供給の確実さや規模を比べたら、風力や太陽光に劣るどころか、はるかに上回る力があるのだが。

豊かな水資源に恵まれる北海道では今、老朽化した水力発電所の改修、改良が進んでいる。

十勝川水系では、さかのぼること71年前に運転を始めた岩松発電所を撤去し、出力増強を図った新岩松発電所に建て替えられる。

発電に使える水量を毎秒37・5立方メートルから同45・0立方メートルに増やし、発電の最大出力を1万2600キロワットから1万6千キロワットに拡大することができる。

建て替えによる出力の増加は3400キロワット。これを風力や太陽光でつくろうとしたら、膨大なコストと広大な土地の確保が必要だ。道内で古くなった水力発電所の改修を一つずつ進めていけば、千キロワット単位で自然エネルギーを積み上げることができる。

水力発電は様々な方法で出力アップを図れるのが特徴だ。使う水の量を増やす、落差を広げる、水の落下をより効率よく回転力に変えるなど、技術や設備の改善で伸びしろを生み出せる。これらの技術が進歩する限り、発電能力を高めていけるわけだ。

風力や太陽光に比べ、長い開発の歴史を経た水力発電は自家薬籠(やくろう)中の技術に近い。これに対し、天気に翻弄され、目まぐるしく発電能力が変わる風力や太陽光を思いのまま使えるようにするには、まだまだ試行錯誤が続く。

途上技術の可能性を追うばかりでなく、成熟した技術の安定感にもう少し価値を見いだしてもいいのではないか。(保)

電気新聞本紙より転載

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