2013/12/04
小水力発電の分野で、業界団体や行政機関による初心者を対象にした手引書の刊行が相次いでいる。関連する技術の理論的な解説に重点を置いてきたこれまでの手引書とは異なり、すでに稼働している発電所の事例をふんだんに取り入れていることや、専門家にも難解とされてきた法規制を平易に解説したものが多く、関係者から好評だ。ほとんどはインターネットで無償配布されたり、ネット書店で取り扱われたりするなど入手が容易で、小水力発電の裾野を広げることに役立つことが期待されている。
全国小水力利用推進協議会(東京都豊島区)は、先月上旬に鹿児島県内で開いた全国小水力発電サミットに合わせる形で『小水力発電事例集』を改訂し、書籍ネット販売の最大手・アマゾンドットコムなどでの販売を始めた。農業用水や水道施設など取水形態ごとの実例を挙げて新たな動きを紹介したほか、丸紅子会社の三峰川電力が山梨県北杜市において官民協働で運営する小水力発電所など4事例について、特徴的な取り組みを紹介している。
行政機関も手引書の作成に熱心だ。石川県はこのほど、『農業用水を活用した小水力発電導入のための手引き』を作成し、県の公式ウェブサイト上で無料配布している。農業用水を活用した小水力発電の開発と運営に的を絞った内容で、計画から実稼働、年度ごとの収支決算までの各段階ごとに、行わなければいけない手続きやクリアすべき課題をまとめ、チャートを多用して分かりやすくまとめている。初心者にはハードルが極めて高いとされてきた、河川法や電気事業法関連の規制や許認可手続きについてもページを多く割き、詳しく解説しているのが特徴だ。
一方、国土交通省もこのほど『小水力発電設置のための手引き』をまとめ、同省のウェブサイトで無料配布している。全国各地の22事例を紹介するとともに、それぞれの事例について、国交省が 進める規制緩和がどのように適用されるかについても記述している。
このほか、水力発電設備を持つ卸供給事業者などでつくる業界団体も、独自に手引書の編集を進めており、近く発刊される見通しだ。安定した再生エネ電源の確保に向け小水力発電拡大の要請が高まる中、こうした手引書の刊行は普及に向けた追い風となりそうだ。
http://www.kankyo-news.co.jp/ps/qn/guest/news/showbody.cgi?CCODE=82&NCODE=428