2015/12/04
2015 年 12 月 4 日 11:00 JST 更新
京都市右京区の京北第二小学校で、地域産木材を使用した小水力発電用の水車が組み立てられた。学校の敷地内を流れる用水路に設置し、12月中旬から平均約10ワットの発電を開始。災害時には、市が避難所に指定した体育館に電気を供給し、電気ポットや携帯電話の充電などに役立ててもらう。
水車の大きさは直径1.5メートル。本体と蓄電池に加え、用水路が草や葉などで流れがせき止められるのを防ぐバイパスの設置工事などを含め、総工費は約800万円。国の再生可能エネルギー等導入推進基金を活用した。
組み立て前には、長野県の水車製造会社が小水力発電の仕組みを説明。事前に用意したパーツを使い、同社の「職人」の指導を受けながら、4~6年生の児童計31人が力を合わせて完成させた。6年生の田路うたさんは「みんなで作ったものが一つの水車になってうれしい」と喜び、田中三四郎君は「水で電気ができるのはすごい。動くのを楽しみにしている」と笑顔を見せた。
京北第二小では2013~14年、水車に見立てた自転車の車輪で発電し、発光ダイオード(LED)ライトを点灯させる実験を実施。小水力発電など再生可能エネルギーに関する環境教育に力を入れてきたという。京都市の古井幸生エネルギー政策部長は「温暖化対策に向け、こうした地道な取り組みを重ねていきたい。子どもたちは今回の経験を将来の行動につなげてほしい」と訴えた。
[時事通信社]
http://jp.wsj.com/articles/JJ10963658735332863475916576066142072188754
2015/07/27
2015年07月27日 地方版
京都を代表する景勝地・嵐山(右京区)。そのシンボル・渡月橋のたもとで、掲示板が刻々と変化する数字を表している。「3・82、3・83……」。単位はキロワット。桂川の上流約100メートルにある発電所の発電量を示しているのだ。
前回訪れた関西電力夷川(えびすがわ)発電所(左京区)は発電量300キロワット、一般家庭で約500軒分の「ミニ水力」だったが、この嵐山保勝会発電所はぐっと小さく、最大5・5キロワット、落差1・74メートルを利用した「マイクロ水力」だ。1級河川内に設置が認められた全国初の小水力発電というから、小粒でもあなどれない。
渡月橋は、平安時代初期に空海の弟子が架橋したとされる。現在の橋は1934年に設置されたが、その後の改修でも「景観を損なう恐れがある」と照明の設置が見送られた。
だが桂川両岸を結ぶ主要な生活道路。路線バスも走れば朝夕は自転車があふれる。周りが山々に囲まれ、秋などは夕方にはどっぷりと暗い。照明を願う住民の声は根強く、保勝会が関係方面に働きかけ、2005年12月、嵐山の自然にマッチした小水力発電が誕生、長さ155メートルの橋に60基のLED照明が住民の足元を照らすようになった。余った電力は販売し、年間40万円ほどになる。
保勝会理事(小水力担当)の吉田憲司さん(61)は「かつてなら1級河川に小水力発電の設置が許可されることなど考えられなかった。土地改良区や漁協とも調整が必要だったが、京都議定書の発効などによる環境意識の高まりが追い風になった」と振り返る。
◇
この発電所を、ミャンマーの野党指導者、アウンサンスーチーさん(70)が訪れたのは13年4月のこと。スーチーさんは小さな水力発電に強い関心を抱き、「仕組みは?」「ランニングコストは?」などと吉田さんに矢継ぎ早に質問を浴びせたという。
案内役はスーチーさんと40年来の親交がある神戸大名誉教授(ロシア経済)、大津定美(さだよし)さん(77)=大津市。軍事政権による軟禁が解かれた後の12年1月、26年ぶりににスーチーさんと再会した。その際、深刻な電力不足に苦しみ、農村では未だに電灯もないミャンマーの姿に胸を痛めた。
「1950年代に日本の戦後補償で電源開発が進められたが、大規模なダム建設で多くの農民が土地を追われた。電力は大都市に送られるだけで、農村には恩恵が及ばない。自分たちの手で電力を得ることができる小水力発電こそが国民の生活を向上させる」
そう考えた大津さんは仲間と勉強会を重ね、NPO法人「小水力発電をミャンマー農村に」を設立。日本のメーカーなどと農村部を実地調査し、小水力発電の可能性を探る。
「豊富な資源を求め海外資本がミャンマーに進出しているが、スーチーは『格差を拡大しない支援』を日本に求めている。工夫とやる気さえあれば農民が自分で電気を作り出せる小水力はうってつけ。日本には迫害を逃れてきた多くのミャンマー人がいる。彼らに技術を習得させ、母国の国づくりに参加してほしい」
「山と川があってこそ嵐山。小水力はそれを次の世代に受け継ぐ手立て」という吉田さん。地産地消型のエネルギーが地域を守ることはミャンマーとて変わりはしない。【榊原雅晴】=次回は8月10日。
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20150727ddlk26040372000c.html
2015/07/11
再生可能エネルギーで夢のある地域にと、福知山市夜久野町畑地域の7自治会で組織する「七つの里づくり協議会」(越後正則会長)が、水量の豊富な谷川が多 いという地の利を生かして、小水力発電を始めた。試行錯誤の末完成させた水車の発電機を今春、今里の富久貴の滝近くに設置。年内に本格的に稼働させ、民家 1軒に送電する計画を立てている。
■水が豊富な地の利活用しようと 夜久野町畑■
小水力発電は、ダムのように河川の水をためることなく、河川や農業用水などの水の流れをエネルギーに変える発電方式。電力会社主体の開発とは違い、個人やNPO、地方自治体など多くの事業主体が取り組んでいる。
里づくり協議会が再生可能エネルギーに着目したのは、2011年3月の東日本大震災後。大震災に伴う原発事故によって、再生可能エネルギーと電力の地産 地消が全国で注目を集めた。畑地域でも導入する方向でさまざまな方法を検討。地理的に太陽光発電や風力発電は難しく、一番期待できる水力発電施設の整備を 考えた。
協議会の活動の一環として計画し、まず、各自治会が自転車ホイールを使った簡易な水車を1台ずつ作って、地元の農業用水路に設置した。らせん水車による 小水力発電の研究をしている京都市立伏見工業高校のグループに指導を受け、24インチの自転車ホイールに付けた18枚の羽根で水流で回転させ、バッテリー に蓄電する仕組みで作り上げた。完成後は地元のイベント・椿祭りでライトアップし、地域の交流拠点となっている軽食類を提供する「ななっこ」では、この電 源を利用して「水車コーヒー」を作り、付加価値を高めて販売している。
この経験を元にして発電量の大きなものを作ることにし、小倉の有限会社・やくの農業振興団(中島俊則社長)と、高度な溶接技術をもつ市内拝師の鐡工房 (笹倉鐡太郎代表)が一昨年6月から共同開発に取りかかった。水車のプロペラの軽量化、間隔の調整など試行錯誤を重ねて製作し、3月に設置した。
■30メートルの落差作り出し■
地元のシンボルの一つ、富久貴の滝の下流から取水し、水車まで約250メートルの区間に直径15センチの塩ビパイプを引いて導水し、約30メートルの落差を作った。
水は年中、枯渇することなく流れており、勢いよく流れ落ちる水が直径45センチ、52枚の羽根を持つ2基のステンレス製の水車を高速、安定的に回転させ、1・5キロワット前後の発電を続けている。
一般家庭の電力消費量は一日10~15キロワット時で、民家1軒分に十分に対応できると推定している。年内に電柱を立てるか、地中をくぐらせる形で電線を引き、水車から一番距離が近い民家に送電を始めることにしている。
2号機も近く製作し、今里地区にある街灯19基すべてに送電する計画。現在は年間の電気代が8万円ほどかかるうえ、蛍光灯の故障が多いことから3万円近くの維持管理費もかかっている。これをLED化し、水車で電源を賄う考えだ。
協議会の副会長も務める中島社長は「畑地域の勾配が宝物。これを生かして小水力発電を売り物にした地域にすることで、電気代を払わずに暮らせる地域とし て全国に発信したい。過疎、高齢化が深刻ななか、夢のある事業に取り組むことで、都会の若者が魅力を感じて移住してくれるところにしていきたい。これから が本番」と意欲を見せる。
福知山市地域おこし協力隊員に今年2月に委嘱され、熱い思いで静岡県静岡市から夜久野町畑(稲垣)に移り住んだ山田正利さん(42)は、4月の協議会総会で、情報発信促進・自然エネルギー実践部会長に選任された。
「小水力発電で蓄電したバッテリーで農機具を使えれば省エネにもつながる。こうして作った米を、地球に優しい米として付加価値を高めて売ることもできると思う。小水力発電をテーマにした全国規模のイベントを畑地区で開くことも考えています」と積極的だ。
写真上=川から流れ落ちる水を受けて勢いよく回る水車
写真中=発電量を高めるためプロペラの軽量化など試行錯誤を重ねて製作した
写真下=取水源の上流にある富久貴の滝
2015/07/06
新緑が映える琵琶湖疏水の夷川(えびすがわ)船だまりに臨み赤レンガ造りの建物がたたずむ。春はお花見でにぎわい、ゴールデンウイークにかけては観光客を乗せた「十石舟」が行き交う。京都でも人気の親水空間だが、ひっそりと風景に溶け込んだレトロな建物が、れっきとした発電所だとはなかなか気付かない。
その関西電力夷川発電所(京都市左京区)は大正3(1914)年生まれ、101歳で現役の水力発電所である。一般公開していないが、特別にお願いし内部に足を踏み入れると、ウィーンという高い音と、ゴロゴロゴロという低いうなり音が重なって響く。直径約3メートルの鉄製チューブの中を水が流れ、プロペラのついたシャフトを回転させ、その動力で発電機を回すシンプルな構造だ。発電所というよりも、どこか町工場の雰囲気が漂ってくる。発電能力は300キロワットと小粒だが、家庭500軒分の電力を今も生み出している。
2キロほど上流にある蹴上発電所(4500キロワット)はわが国初の事業用発電所として1891年に産声を上げ、その電力を利用して日本初の市電が走るなど、京都の近代化を進める原動力となったことで有名だ。一方、夷川発電所は第2疏水の開削に伴って建設された弟分の「ミニ発電所」で、一般の話題になることは少ない。だが関西広域小水力利用推進協議会(中京区)の里中悦子事務局長は「これからの日本で大きな可能性を秘めている。気になる存在ですね」と注目。「蹴上発電所は33・5メートルの落差を利用して発電していますが、夷川はわずか3・4メートル。ヨーロッパではドナウ川など、平野をゆったり流れる大河の水を引き入れた低落差式の発電所が結構あるんですが、日本では珍しい。そんな発電所が、150万都市の真ん中で、しかも大正時代から続いているのが驚き」と話す。
大きな落差が必要であれば設置場所は山間部などに限られる。だが低落差の水力発電なら都市部でも“地産地消型”の発電が可能。だからこそ「日本に小水力発電を普及させるヒントになる」と期待するのだ。
その夷川発電所。運用開始から90年近くたった1993年に水車や発電機を一度交換しただけ。技術が成熟し、長持ちするのも水力発電の利点である。
運営に当たる関電京都電力システムセンター主任の藤井健二さん(53)は「大きな発電機も、小さな発電機もチェックすべき点は同じ。回転部の温度や湿度の管理など、小さいからといって手間に異なるところはありません」と説明。「水力発電は水力という再生可能な純国産エネルギーを利用しており重要度は高まっている。特に夷川はわずかな落差で発電しており、都市で使うのに適した性質を持っている。疏水べりにある夷川発電所は、私が入社したときから30年以上も見慣れた発電所であり、『そこにあるのが当然』の風景。100年以上使われてきた発電所を、これからも次世代へ大切に引き継いで行きたい」と、うなりをあげる発電機をいとおしそうに眺めた。【榊原雅晴】
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次回(27日)は嵐山のマイクロ発電所を訪ねます。
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20150706ddlk26040343000c.html
2015/06/03
京都府が6月議会に提案予定の「再生可能エネルギー導入促進条例案」がまとまった。再エネ促進に取り組む団体を登録し、府税を減免する。府によると、独自に税制上の支援まで行う条例は全国の都道府県で初めてといい、成立すれば、府は年度内にも実施計画をまとめる。
条例案では、再エネを太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマスと定義。これらの導入に取り組む市民や事業者、大学などを「導入支援団体」として知事が登録する。登録団体は、事務局用の土地購入などに掛かる不動産取得税を1回に限り全額免除される。営利を目的にしないNPOなどは、さらに法人府民税の一部も減免される。
中小企業向けには、自家発電と自家消費を促すために法人・個人事業税の減免も行う。再エネ計画が知事に認定され、府内の事業所で設備を導入すると適用される。
一方、延べ床面積2千平方メートル以上の建物を新増築する建築主や、関西電力など電気事業者には、再エネ計画書の提出を義務付ける。
府は福島第1原発事故を受け、2013年5月にエネルギー戦略をまとめ、30年度に府内年間電力使用量(167億キロワット時)の約2割に当たる30億キロワット時を再エネでまかなう数値目標を掲げている。目標達成には、現在の10倍以上の発電量が必要と見込まれるため、条例をつくり促進する。
再生エネルギーについては、国の固定買い取り制度の見直しで、太陽光発電の価格引き下げが予想され、導入拡大の鈍化も懸念されている。府は実施計画で単年度ごとの数値目標を定め、太陽光だけでなく小水力や木質バイオマスなど地域ニーズに合わせた導入を進める方針。山田啓二知事は「税制優遇のほか補助金も導入し、再エネを少しでも前に歩めたい」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20150603/CK2015060302000166.html