第2部:発足からこれまで

水力協が発足する頃、日本の水力発電の業界は衰退の一途を辿っていました。大規模水力の開発がほとんど終わっており、水力発電の技術者は少なくなるばかり。水力発電専門のメーカーも衰退する一方でした。このまま手を打たなければ……、という危機感が水力発電の現場にあったんです。ですから、みなさん好意的に協力してくださり、発足当初から活動に勢いがあったんだと思います。
それから発足当時、小水力建設の現場が動き出していたことも活動に弾みがついた要因だと思います。元気くん1号の竣工は水力協が発足して3カ月後ですし、嵐山保勝会水力発電所の運転開始が5カ月後です。意見を述べるだけでなく、実際に水車が回り始めているというのは私たちの大きな強みでしたね。

2012年4月に運転開始した富山県のアルプス発電株式会社の小早月小水力発電所も、発足当時には計画が進んでいましたよね。

そうですね。ところで、小水力発電の適地は東京ではなく地方にあり、水力協と連携する団体を各地域に設立したいと準備段階から考えていました。2006年2月に富山県小水力利用推進協議会が、同じ年の6月に山梨県小水力利用推進協議会が発足しました。現在(2013年7月)では一緒に活動する地域団体が17団体(古くから活動している中国小水力発電協会を含む)にまで増えました。

山梨県小水力利用推進協議会ができるまでは、関係者は小水力発電を知っているけれど、他の人はまったく知らないという状況でしたね。

出力数kWのような小規模なものは全国あちこちに見られますが、一般市民の方は小水力発電をほとんど知らなかったんです。

かつては、全国各地個々に発電していましたが、水力協ができたことでネットワークが生まれ、政策提言などへの影響力も大きくなったと思います。小水力発電を始めるには河川法や電気事業法などいろいろな壁がありますが、それを乗り越えるには個人の力ではとても弱いんです。

水力協の重要な活動の一つに政策提言がありますね。30万kWの黒部ダムの発電所も3kWの発電施設も、水力発電という同じ枠で捉えられているので、建設に関する法的な手続きも同じです。そこで小規模なものは手続きを簡略化するように行政に働きかけ、規制緩和が実現してきました。
電気事業法における一般用電気工作物の範囲や、法的手続きの条件等が改正されたり、1000kW以下の水力発電所の許可権限が一部、国土交通大臣から県知事に移譲されたり、不要な手続きを少しでも減らすよう活動しています。なかでも「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(以下、新エネ法)」の施行令改正により、2008年4月に小水力が新エネルギーに認定されたことは最初の大きな業績です。

その後「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」もできて、電力会社は供給する電力の一定量以上を新エネルギーで賄うことが義務づけられましたので、小水力の電気も買ってもらえるようになりましたね。

それに、新聞やテレビでほとんど見聞きしなかった小水力発電が取り上げられるようになったんですから、とても大きなことでした。

設立時に一番の旗印として掲げたのが「小水力を新エネルギーに」でした。新エネ法は1997年に施行された法律で、太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーによる新しい発電方法の普及促進を謳ったものです。ところが、水力発電は昔から行なわれていたし、「小」の文字がついたからといって新しいエネルギーとしては認められないと。しかし、小水力発電は新たにてこ入れしないと普及しない状況でしたので、新エネ法を改正するよう訴えたのです。

それからFITも導入されましたね。

さすがにFITの導入は、水力協の力だけでなく、自然エネルギーに関わるさまざまな人が声を上げたことで実現できたのですが、少なくとも小水力に関して一番働きかけたのは水力協ですし、1000kW未満の価格も私たちの提案通りになりました。

1000kW未満が30.45円、200kW未満が35.7円。この価格は、中島さんや小林さんが算出して裏づけをとって提案したものですよね。決定されるまではもっと低い価格になるだろうと思っていました。

第3部 地域のための小水力発電を目指して