2017/07/14
2017年7月14日掲載
森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を発信しています。7月号の「時評」では、松下和夫・京都大学名誉教授が、日本で唯一「環境首都」の名が授けられた熊本県水俣市における小水力発電の取り組みについて、報告しています。
熊本県水俣市では深刻な水俣病公害の経験を踏まえ、1994年から水俣病により分断された地域社会と失われた人の絆や地域コミュニティを再構築する取り組み、「もやい直し」が始められた。
現在は環境を軸とするまちとコミュニティの再生に取り組んでいる。そして2008年に環境モデル都市に認定され、2011年には市民協働のごみの高度分別、環境ISO取得、環境マイスター認定等の市民参加の先進的取り組みが認められ、環境首都創造NGO全国ネットワークにより、日本で唯一の「環境首都」の称号を授与された。
筆者は今年3月、水俣市を横断する水俣川源流の寒川水源がある寒川地区に、小水力発電の現場を訪ねる機会があった。これまで水俣市は不知火海に面した海辺のまちとの印象が強かったが、実際には市域の北・東・南の三方を山に囲まれ、豊かな緑の多い森のまちでもあることを実感した。
寒川水源の水は、年間を通じてほぼ14度で、1日約3000tが湧出している。集落では寒川水源の湧水を活用して棚田を守り、米を栽培してきた。
この棚田は「日本の棚田百選」にも選ばれている。1997年には農林水産省の補助事業を活用して従来からあった「寒川水源亭」を大幅に改修し、「農家レストラン」として新装開店した。
そして、水源の水を利用したそうめん流し、棚田米やヤマメ、マスなどの地域の食材を提供して集落全体で運営してきた。
ところが年々進む高齢化により、地元住民だけでは水源亭の運営が難しくなってきた。また、水源亭で使用する電気代が集落の負担となってきた。そこで地域資源である寒川水源の水を活用した小水力発電の構想が浮上したのである。
九州大学や市水道局の技術的支援を得ながら、2014年には事業化検討、概略設計、流量調査が行われ、2016年2月には発電所が完成した。水車は地元鉄工業者等が製作し、施工は地元企業および地区住民が九州大学チームと連携して担当した。
流量調査や導水管・取水口整備、建屋建設などは住民が担い、低コスト化に寄与した。総事業費は約1400万円、うち地区負担は約400万円であった。発電出力は約3kWで、水源亭の電力を賄い、視察に訪れる人も増えている。
寒川地区小水力発電事業は、専門家チームのバックアップを得ながら、地産地消型で地域主導の再生可能エネルギーとして導入された。ただし小水力発電事業は、あくまで地域が目指す将来像を実現するための手段である。
この事業をきっかけとして、地域づくりや地域の諸課題に対するさまざまなアイディアや解決策が住民の間で検討されたのである。
現在は地域農産物を活用した商品開発にも取り組み、発電所や水源亭の運営を通じて、地域内の資源を活用して収入を得ながら集落を守る活動が続けられている。
http://www.huffingtonpost.jp/shinrinbunka/small-hydropower-generation-minamata_b_17470718.html
2016/09/15
2016年9月15日掲載
JNC(東京都千代田区)は、7日、熊本県に所有する小水力発電所2ヵ所の改修工事を完了し、9月1日より新たに営業運転を開始したと発表した。
今回、営業運転を開始したのは「七滝川第一発電所」と「竹の川発電所」だ。同社は、国内に13ヵ所の水力発電所(最大出力合計93,600kW)を保有しており、今回営業運転を開始する2ヵ所も含め、すべて「流れ込み式」の発電方式を採用している。河川水からごみを除去し、水路を通して水槽へ導き、水圧鉄管を落下させることで水車を回し、電力をつくる。大規模なダムを必要としないため環境負荷が低く、二酸化炭素排出量も少ない。
今回改修された2ヶ所の発電所の概要は下記のとおり。
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2016/04/11
2016年4月11日掲載
小水力発電所を生かすも殺すも、人次第である。約10年前に建てられた発電所の価値が今、問われている。熊本県旧清和村(現山都町)の清和水力発電所だ。
23年越しの夢
阿蘇山南麓の山里、清和村。有明海に注ぐ一級河川、緑川の最上流部に位置し、村の地形は急峻だ。その村で2005年、村営の清和水力発電所が運転を開始した。開発の指揮を執ったのは、役場の職員を経て、1999年より清和村長に就いた兼瀬哲治さんだ。
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