2016/08/10
2016年8月10日掲載
加茂鉄工業協同組合(加茂市)は、少ない水量や高低差の小さい場所でも発電できる「マイクロ水力発電機」を地元の製造業者と共同で開発した。電力供給体制が不十分な開発途上国での導入を想定し、住民が自力で維持できるよう単純な構造にしたのが特長。販路開拓に向け、近く国際協力機構(JICA)と連携し、小水力発電のニーズが見込まれるカンボジアで現地調査を始める。
マイクロ水力発電機は、高さと幅が各70センチ、長さ約1メートルの小型サイズ。小川などに設置すると、スクリュー状になった金属製の羽根が水を受けて回転し、発電機を回す単純な仕組みだ。持ち運びがしやすく、流量の少ない水でも発電できる。落ち葉や木の枝などが羽根に挟まった場合も、住民が自ら取り除いて管理できるようにした。発電量は100ワット時と少ないため、蓄電池を併せて使う。
開発した加茂鉄工業協同組合は、加茂市や近隣市町に工場がある鉄工業19社で構成されている。加茂商工会議所や地元の金属加工業者らと共同で試作機を造り、昨年11月にはカンボジアで実証実験も行った。
組合は具体的なニーズを調査するため、JICAの中小企業海外展開支援事業に応募したところ、ことし7月に採択された。基礎調査にかかる経費のうち、850万円を上限に委託費が支払われる見通しだ。
JICAによると、調査地はカンボジア東部の山あいにあるセンモノロム市を予定。現地では、小水力発電所の建設などで1キロワット時当たり電気料金が2015年までの10年間で4割ほど下がったが、供給量が足りずに近隣の国から調達しているため市民の負担は依然として重いことから、マイクロ水力発電機への潜在的な需要が見込まれる。
加茂鉄工業協同組合の有本照一理事長は「改良を重ね、効率の良い発電機に仕上げていくつもりだ。途上国への技術貢献を通じて『下請けに甘んじている』という鉄工業界のイメージアップにもつなげたい」と話している。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/economics/20160810272571.html
2016/07/22
2016年7月22日
JR東日本信濃川発電所のPR施設「小千谷信濃川水力発電館」と小千谷市の宿泊研修施設「市民の家」を併設した複合施設「おぢゃーる」が21日、同市山本に開館した。
同発電所の不正取水問題を契機にした地域貢献策として、JRが3億円を負担。市が総事業費7億円をかけて建設した。
発電館の展示室では、山手線など首都圏のJR線に電力供給する同発電所の歴史や仕組みをジオラマやパネルなどで紹介。上越線の電車をゲーム感覚で運転できるシミュレーターや発電の実験模型なども設け、子どもたちが体験しながら発電所と電車のつながりを学べるようにした。また不正取水の発覚により、発電停止を余儀なくされた問題の経緯を説明したパネルも置いた。
市民の家は老朽化した旧施設を建て替えたもので、90人が宿泊、研修などに利用できる。24日には、鉄道模型の展示やミニSLに試乗できるオープニングイベントを開く。【金沢衛】
2016/06/03
2016年6月3日掲載
2019年12月の運開目指す
関電工は2日、上結東水力発電所(新潟県中魚沼郡津南町、流れ込み式、990キロワット)新設工事の安全祈願祭を現地で開催した。中津川に設置されている上結東砂防えん堤(砂防ダム)の落差を利用して発電する。同社が小水力発電所を建設するのは、葛野川マイクロ水力発電所(山梨県大月市、流れ込み式、160キロワット)に続いて2件目。2019年12月の運転開始を予定している。
安全祈願祭には同社の水江博社長をはじめ、津南町の村山昇副町長、施工を担当する前田建設工業の前田操治社長らが出席。宮司が祝詞を奏上した後、玉串をささげ、無事故・無災害での工事完了を祈った。(11面)
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http://www.shimbun.denki.or.jp/news/construction/20160603_02.html
2016/03/11
2016年3月11日掲載
出力が100キロワット以下の小規模な「マイクロ水力発電」をめぐる動きが、県内でも熱を帯び始めている。水の流れで水車を回して発電する設備が昨年の津波町に続き、年内には魚沼市でも稼働。メーカー各社は新たな機器の開発に注力している。国は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見直し、安定した発電が見込める中小水力などの普及を促す姿勢をみせており、水資源が豊富な「農業県」の新潟で新たな収益事業として取り組むケースが今後増えそうだ。(臼井慎太郎)
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◆地域の自己財源
水の流れを調節する水門機器やバイオガス発電機などを手掛ける長岡市の環境機器メーカー、大原鉄工所は出力が20キロワットまでの水力発電設備を販売する態勢を整えた。今後3年程度で10基の販売を目指している。
市の補助金を活用して平成26年に5キロワットの設備を試作し、昨年1月から同市柿町で実証試験を実施。落差のない水路でも効率良く発電ができるのが特長といい、自動的に水車を引き上げたり水の流れをせき止める機能も取り入れた。
同社の試算によると、5キロワットの設備で80%の稼働率を保てば、買い取り制度による年間の売電収入は約120万円。農業用水を供給する施設が各地で老朽化していることも踏まえ、環境営業一課の中野学課長は「施設の補修や更新などの際に『地域の自己財源』として導入できる上、災害時の非常用電源としても役立つ」とアピールする。
産業用機器などを製造する新潟市東区のナビックは、流量を調整できる水門を一体化して発電の安定性を高めた機器を開発し、南魚沼市姥島新田の農業用水路で5キロワットの設備の実験に取り組んでいる。
28年度中には、水車に流入する落ち葉やゴミを取り除く機能を備えながらも価格を抑えた「汎用(はんよう)型」を開発したい考え。エンジニアリング事業部の諸橋政之課長は「小水力発電の電力を電気自動車に充電して農地に運び、電動草刈り機などに供給するといった活用方法も期待できる」と話す。
◆再エネの地産地消
県によると、農業用水を活用した運転・建設中の小水力発電設備は、実験用を除いて県内で計7カ所。このうち出力が最も大きいのは、新発田市にある2900キロワットの発電所だ。
マイクロ水力は、昨年12月に津南町で稼働した39キロワットの雑水山第二発電所が県内第1号。今年9月以降には、地域の農家などでつくる魚沼市土地改良区が72・8キロワットの設備を同市池平で整備する。年間発電量は約100世帯分の消費電力を賄える約53万キロワット時を見込む。東北電力に売電し「用水路など農業水利施設の維持管理に収入を充てたい」(担当者)という。
市町村や農業の生産基盤を整備する土地改良区が農業用水を発電に利用する際の手続きを簡素化するなど、国は再生エネの「地産地消」を後押ししている。
とはいえ、現状では設備の導入には1基当たり2千万円程度もかかり、一層の規制緩和を求める声は少なくない。農業用水を発電用に1年間を通じて使う際には、水を流すために新たな権利の取得を迫られるケースもある。
天候に左右される太陽光に比べ、小水力は規模が大きくなくても安定した電源となる。未利用の水資源が持つ高い潜在力を引き出し地域振興に結びつけるには行政や農業関係者、企業などの連携が欠かせない。
http://www.sankei.com/region/news/160311/rgn1603110017-n1.html