2016/09/23
2016年9月23日掲載
小規模な水力発電を全国の水道施設に導入すれば、年間50億円以上の売電収入になることが、環境省と厚生労働省の調査で分かった。現在、小水力発電を導入している水道事業者は、全国で3%にすぎない。今回の調査結果は、水道事業者が小水力導入を検討するうえで参考になる。
小水力発電事業は、上下水道施設のほか、河川や砂防ダム、農業用水路、ダムの放流口などで、水の落差と一定の流量のある場所であれば導入できる。特に水量が安定している水道施設は、小水力発電を導入できる可能性が高いと言われている。
水道のなかでも導水、送水、配水施設では、標高の高い場所から低い場所へ水を流す場合に、その圧力差がエネルギーとして利用されずに失われている例が多い。例えば、ダムから取水して浄水場に導水するケースなどだ。落差によって生じる高い水圧を抑えるために、途中に配水池を設けて、圧力を抜いている。
厚生、環境の両省が水道施設における小水力発電の導入可能性を調査したところ、全国1500以上の水道事業者が持つ施設のうち、発電が可能な候補地は563カ所あった。発電出力の総量は1万9000kWに上る。
電力量に換算すると年間1億5800万kWh。総務省の統計では、1世帯が1年間に使用する平均電力消費量は5000kWh弱なので、3万世帯ほどの電力を賄える量だ。
全量を再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づいて売電した場合、2015年度の水力発電の調達価格を用いると、年間54億円になる。
将来は20kW未満でも導入可能に
両省はさらに、既存の発電技術で採算が合うとされる20kW以上の出力のある場所を詳細に調査。その結果、全国で274地点あることが判明した。
ただし近年では、20kW未満しか発電できない候補地でも、小水力発電を導入できるような技術開発が進んでいる。例えば、環境省が13年度から試験的に導入している「管路用マイクロ水力発電システム」はその一つだ。
安価な磁石や汎用性の高いポンプを使って、部品を標準化することでコストを低減。そのほか、発電機と制御装置を一体化して、配管上に配置できるコンパクトな発電機が開発されている。
既に富山県南砺市の森清配水池や福島県相馬市の大野台浄水場、神戸市水道局の福谷中層配水池などで実証実験を開始。10kW以下の超小型のマイクロ水力発電システムの開発を目指し、研究を進めている。
国や都道府県認可の水道事業者は、全国に1800以上いる。環境省は厚労省と連携して16年度に、「上水道システムにおける省CO2促進モデル事業」に予算24億円を計上した。水道施設の小水力発電を後押ししている。
真鍋 政彦 [日経コンストラクション]