2014/09/07
●県内に全40基計画 事前手続きが壁
福島第1原発事故の後、自然の力を生かした再生可能エネルギーに注目が集まる中、鹿児島県内に計40基の小水力発電所の開設を計画している九州発電(鹿 児島市)の第1号施設「船間(ふなま)発電所」が同県肝付町に完成し、8月から稼働を始めた。6日には完成記念式典がある。売電は順調で、税収増など地元 への経済効果も大きい。ただ、建設前の許認可や水利権調整などの煩雑さから計画は遅れており、着工前の手続きが思わぬ壁になっている。
船間発電所は総事業費15億円で建設され、出力995キロワット。高低差205メートルの馬口川の流れを利用してタービンを回し、年間2千世帯分を発電 する。東京の特定規模電気事業者(新電力)に、国の再生エネ固定価格買い取り制度価格(1キロワット時29円)より「やや高めの価格」(九州発電)で売 電。電力は九州電力の送電線で送る。発電所の最初の1年の売り上げは2億円の見込み。
町によると、建設下請けや資材調達には地元業者が優先され、町には既に6億円の経済効果がもたらされた。自動運転のため雇用は生まないが、町には毎年、 固定資産税が入り、眺望の良さから観光や環境学習にも活用できる。「ロケット基地(内之浦宇宙空間観測所)と並ぶ町の観光スポットに育てたい」。永野和行 町長は声を弾ませる。
◆原発に代わる期待
九州発電は2012年1月、地場商社の南国殖産などの出資で設立された。母体は同社や県内首長、大学研究者が11年11月に産官学で発足させた県小水力 利用推進協議会。鹿児島県を国内最大の小水力発電地帯にしようという目標を掲げ、毎年5~6基を着工し、18年度までに5万世帯分を賄う発電量を目指して いる。総事業費は240億円に上り、川内原発が停止して県内経済が落ち込む中、原発に代わる経済浮揚策としての期待もある。
しかし、12年12月に予定された船間発電所の着工は、山間部のため地権者の確定に手間取り、13年4月にずれ込んだ。第2号の重久発電所(霧島市)も 地元4漁協との水利権交渉が長引き、着工は13年7月になった。許認可も複雑で、5~6省庁にまたがるケースもあり、建設が具体化したのは他にまだ3基 だ。「手続きがこんなに面倒とは思わなかった」。九州発電の八板博二三(ひろふみ)総務部長はため息をつく。
◆九州には適地多く
九州には山間部の河川が多く、小水力発電の適地が多い。資源エネルギー庁によると、買い取り制度で認定された九州の出力3万キロワット未満の施設数は熊 本9、鹿児島7、宮崎7などで、岐阜の15、長野の13、静岡の9に次ぐ。福岡にも4カ所ある。16年の家庭用電力小売り自由化で、さらに拡大が予想され る。
普及へ向け旗振り役を務めてきた同協議会の池畑憲一会長は「国は再生エネを推進していくのなら、建設前の手続きを簡略化してほしい」と注文している。
2014/09/07
県内に40基の小水力発電所の開設を計画する九州発電(鹿児島市)の第1号となる「船間(ふなま)発電所」の稼働式が6日、肝付町岸良の現地であり、伊藤知事や石原伸晃・前環境相らが出席した。馬口(ばくち)川から取水し、205メートルの高低差を利用して発電する。
同社によると、出力は995キロ・ワット。年間発電量は630万キロ・ワット時で、一般家庭2000世帯分に相当する。約15億円かけて建設した。8月 から稼働を始めており、東京の特定規模電気事業者に、国の再生エネルギー固定価格買い取り制度(1キロ・ワット時29円)よりやや高めの価格で、売電して いるという。
稼働式後、会場を移して行われた記念式典には、県小水力利用推進協議会長の池畑憲一・県議会議長を含む約200人が出席。九州発電の古田功社長は「小規 模な発電所ではあるが、環境への関心が高まる中、1基ずつ、着実に増やしていきたい」とあいさつした。石原前環境相は祝辞で「小水力発電などの自然再生エ ネルギーは今後の日本に欠かせない」と述べた。
同社は霧島市と南大隅町でも小水力発電所の建設を進めている。