2016/08/10
2016年8月10日掲載
「日本工営」(東京都)は、インドネシア現地法人「PT. Cikaengan Tirta Energi」(チカエンガン)が5月にインドネシアの国有電力会社と売電契約を締結したと発表した。6月29日に着工した。
これにより、チカエンガンは水力発電施設の建設に着手することとなり、インドネシア版 FIT(Feed-in Tariff/固定価格買取制度)を適用した売電事業に 本格的に乗り出す。この事業では、日本工営グループが水力発電施設の施工監理を行うことで事業費節減に努め、水車・発電機など設備の一部についてリースファイナンスを利用することでリスク分散を図るという。
この事業は同社グループ第1号の海外水力事業案件と位置付け、将来的には水力 IPP(Independent Power Producer)事業のグローバル展開を視野に入れている。
2016/08/10
2016年8月10日掲載
加茂鉄工業協同組合(加茂市)は、少ない水量や高低差の小さい場所でも発電できる「マイクロ水力発電機」を地元の製造業者と共同で開発した。電力供給体制が不十分な開発途上国での導入を想定し、住民が自力で維持できるよう単純な構造にしたのが特長。販路開拓に向け、近く国際協力機構(JICA)と連携し、小水力発電のニーズが見込まれるカンボジアで現地調査を始める。
マイクロ水力発電機は、高さと幅が各70センチ、長さ約1メートルの小型サイズ。小川などに設置すると、スクリュー状になった金属製の羽根が水を受けて回転し、発電機を回す単純な仕組みだ。持ち運びがしやすく、流量の少ない水でも発電できる。落ち葉や木の枝などが羽根に挟まった場合も、住民が自ら取り除いて管理できるようにした。発電量は100ワット時と少ないため、蓄電池を併せて使う。
開発した加茂鉄工業協同組合は、加茂市や近隣市町に工場がある鉄工業19社で構成されている。加茂商工会議所や地元の金属加工業者らと共同で試作機を造り、昨年11月にはカンボジアで実証実験も行った。
組合は具体的なニーズを調査するため、JICAの中小企業海外展開支援事業に応募したところ、ことし7月に採択された。基礎調査にかかる経費のうち、850万円を上限に委託費が支払われる見通しだ。
JICAによると、調査地はカンボジア東部の山あいにあるセンモノロム市を予定。現地では、小水力発電所の建設などで1キロワット時当たり電気料金が2015年までの10年間で4割ほど下がったが、供給量が足りずに近隣の国から調達しているため市民の負担は依然として重いことから、マイクロ水力発電機への潜在的な需要が見込まれる。
加茂鉄工業協同組合の有本照一理事長は「改良を重ね、効率の良い発電機に仕上げていくつもりだ。途上国への技術貢献を通じて『下請けに甘んじている』という鉄工業界のイメージアップにもつなげたい」と話している。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/economics/20160810272571.html
2016/08/09
2016年8月9日掲載
環境省は8月8日より、2016年度環境技術実証事業のうち、中小水力発電技術分野の実証対象技術の2次募集を開始した。募集期間は2016年9月9日(金)17時まで。
募集する実証対象技術は、「水の位置エネルギー等を活用し、渓流・河川部・排水路などの流量と落差を利用して小規模、小出力の発電を行う技術等」で、おおむね出力100kW未満の発電技術。募集対象者は、同分野の技術開発を行う事業者。
実証試験の実施場所は国内の実機が運転している現地とし、実証試験手数料は実証申請者の負担。すなわち、対象技術の環境保全効果の測定等、試験に係る費用、実証対象製品の運搬、施工、撤去等について、実証申請者の負担で実施する。費用負担の分担の詳細については、環境省ホームページに掲載の「事業行程ごとの費用分担」を参照のこと。
応募する場合は、2016年9月9日(金)17時までに、一般社団法人小水力開発支援協会のホームページより応募用の実証申請書を入手し、必要事項を記入のうえ、郵送により提出すること。申請時に必要な書類や応募先は環境省ホームページに記載されている。
小水力発電技術の性能を明らかにする事業
環境技術実証事業は、すでに適用可能な段階にありながら、環境保全効果などについての客観的な評価が行われていないために普及が進んでいない先進的な環境技術を、第三者が客観的に実証する事業。環境技術を実証する手法・体制の確立を図るとともに、環境技術の普及促進と、環境保全と環境産業の発展を目的としている。
実証された技術は、環境省がシンポジウムや展示会などで広報活動をおこなう。また、同事業で実証を行った技術には、環境省が効果を確認した環境技術として、ロゴマークが交付される。
技術を開発した事業者にとっては、製品の売り上げ拡大につながり、環境技術の利用者には、技術の購入・導入の際、効果を容易に比較・検討することができる、などのメリットがある。
小水力発電分野の技術は、近年発電機などの製造に多様な企業が参入している。100kW以上の水車については電気学会電気規格調査会標準規格(JEC-4001)が適用されている一方、100kW未満の水車は試験方法が明確でない。このため、中小水力発電技術は、2013年度から環境技術実証事業にてその性能を客観的な観点で実証されている。
実証してほしい企業には説明会も
実証試験の概要や実証対象技術の応募方法に関する説明会は、2016年8月12日(金)の13:30~14:30まで、フクラシア東京ステーションの6階会議室Eにて開催される。応募にあたって説明会への参加は必須条件ではない。定員は20名で、参加費は無料。
参加希望者は、8月10日(水)までに、電子メールまたはFAXにて申し込むこと。申込み方法の詳細は、一般社団法人小水力開発支援協会のウェブサイトより、開催案内の資料をダウンロードし、確認すること。
2016/08/09
2016年8月9日掲載
水力発電が盛んな長野県では電力需要の8割以上を再生可能エネルギーで供給できる。2017年度に自給率100%を目指して、農業用水路に小水力発電所を拡大中だ。森林資源を生かした木質バイオマスによるガス化発電、牧草地やゴルフ場の跡地を利用した巨大なメガソーラーの建設計画も始まった。
[石田雅也,スマートジャパン]
長野県が運営する水力発電所は14カ所にあって、発電能力を合わせると99MW(メガワット)に達する。北部の北アルプスと南部の南アルプスから流れ出る川の周辺に、大小さまざまな水力発電所が運転中だ。最近では川の流域に広がる農業用水路で小水力発電が活発に始まっている。
水力を含めて再生可能エネルギーの電力を地産地消する取り組みで長野県は全国の先頭を走る。固定価格買取制度が始まった2012年度から導入量が急速に伸びて、県内の最大需要に対して再生可能エネルギーで電力を供給できる割合は8割に達した。このペースで2017年度には電力の自給率を100%まで高める計画だ。
特に力を入れて取り組んでいるのは、農業用水路を利用した小水力発電である。北部から南部まで各地域の農業用水路で導入プロジェクトが広がっている。北部の白馬村(はくばむら)を流れる用水路では、「白馬平川小水力発電所」が2015年4月に運転を開始した。
北アルプスを水源とする川から引き込んだ用水路に沿って小水力発電設備がある。用水路の上流にあるヘッドタンクから630メートルにわたって導水管を敷設して、発電所まで水を送り込む方式だ。この長い距離のあいだに生まれる29メートルの水流の落差で発電する。
発電能力は180kW(キロワット)になり、年間に146万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して400世帯分に相当する。白馬村の総世帯数(3400世帯)の1割強をカバーできる電力になる。
用水路を流れる水の量は、農耕期の5月から9月までは通常の1.5~2倍に増える。従来どおり農地に水を供給しても、発電に利用できる水量は年間を通じて一定に保てる見込みだ。発電量が安定して、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は93%と極めて高い水準になる。標準的な小水力発電の設備利用率は60%である。
大きな用水路は4カ所に発電設備
南アルプスの裾野に広がる南部の伊那市でも、農業用水路を利用して「美和小水力発電所」が2015年9月から運転を開始している。用水路に設けたヘッドタンクから発電所まで、56メートルにわたって地中に水圧管路を埋設した。発電所の地下に設置したスクリュー式の水車発電機に水を流し込んで発電する仕組みだ。水流の落差は13メートルで、最大12kWの電力を作ることができる。
年間の発電量は9万3000kWhを見込んでいて、一般家庭の26世帯分に相当する電力になる。この小水力発電所でも利用できる水量が安定しているために、設備利用率は87%と高い。用水路は険しい山のあいだを縫って13キロメートルの距離を流れている。ほかの場所でも小水力発電を実施できる可能性がある。
大きな農業用水路には勾配を調整する「落差工(らくさこう)」と呼ぶ階段状の場所が何カ所も設けられていて、小水力発電を実施するのに適している。長野県の中部を流れる梓川(あずさがわ)の右岸に沿って幹線の用水路がある。数多くある落差工のうち4カ所に小水力発電設備を設置する計画が進行中だ。
いずれも落差は2~3メートル程度と小さいものの、幹線の用水路であるため横幅が6メートルもあって流れる水の量が多い。農耕期に毎秒1.5立方メートル、かんがい期には2.5立方メートルまで水量が増える。1カ所あたりの発電能力は農耕期で35kW前後、かんがい期で45~50kW程度を見込める。
4カ所すべてに小水力発電設備の設置を完了すると、発電能力は合計で192kWになって、年間に140万kWhの電力を供給できる。すでに1カ所の落差工で2016年6月に運転を開始した。続いて3カ所で同様の小水力発電設備が稼働する予定だ。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、水門の電気代など施設の維持管理費の軽減に役立てる。
県の支援で各地の農業用水路に小水力発電が拡大する一方、村が民間企業と共同で小水力発電に取り組む例もある。北部の高山村(たかやまむら)で2015年10月に運転を開始した「高井発電所」である。川の土砂災害を防ぐために設けた砂防堤堰(ていせき)から水を取り込んで発電に利用している。
砂防堤堰は川の上流の山から流れてくる土や砂をせき止めながら、水と一緒に少しずつ土砂を下流に流して災害を防ぐことが主な役割だ。高井発電所は高さが36メートルある堤堰の上部に穴をあけて、そこから取り込んだ水を水車発電機に送って発電する。
大きな落差と水量を生かして発電能力は420kWにもなる。年間の発電量は270万kWhを見込んでいて、一般家庭の750世帯分に相当する。高山村の総世帯数(2300世帯)が消費する電力量の3割以上を供給できる。
この川を流れる水は火山に由来する成分によって酸性が強く、飲料水や農業用水には使えない。酸性度を示すpHが3.1と低いため、発電設備にも対策が必要だった。水車発電機は腐食しにくいステンレス製を採用したほか、水を送り込む水圧管にも腐食や摩耗に強いFRPM(強化プラスチック複合)管を使っている。
木質チップをガス化して電力と熱を作る
長野県で最も北にある栄村(さかえむら)では、木質バイオマス発電所の建設が進んでいる。村の面積の86%を占める森林の資源を生かしてエネルギーの地産地消に取り組む計画だ。すでに地元の森林組合が製材工場の敷地内に木質チップの製造設備を導入して、発電用の燃料を供給する体制ができあがっている。
栄村で実施する木質バイオマス発電はチップを高温で燃焼してガスを発生させる。同様の発電装置は南部の伊那市で2015年6月に運転を開始した「かぶちゃん村森の発電所」で導入した実績がある。ガスを冷却してから発電に利用する方法で、電力と合わせて排熱もエネルギーとして利用できる点が特徴だ。
製材工場の隣接地に建設中の発電所は2016年12月に運転を開始する予定である。発電能力は500kWになり、年間の発電量は396万kWhを見込んでいる。一般家庭の1100世帯分に相当する電力を供給できて、栄村の総世帯数(780世帯)を上回る。
中部の安曇野市(あずみのし)の農園では、さらに大規模な木質バイオマス発電設備が動き出している。ガス事業を手がけるエア・ウォーターがトマトを栽培する農園の敷地内に、「安曇野バイオマス・エネルギーセンター」を2016年5月に稼働させた。地域の森林で発生する間伐材などを燃料に使って電力と熱を供給する。
このエネルギーセンターの木質バイオマス発電設備でも、チップを燃焼してガスを発生させる方式を採用した。発電能力は1900kWで、熱の出力は電力に換算して3800kWに相当する。年間の発電量は3000世帯分になり、一部を自家消費する以外は中部電力に売電してエネルギーセンターの運転維持費にあてる方針だ。
電力と同時に発生する熱から温水を作って、トマトを栽培するガラスハウスに供給する。今後は木質チップの燃焼時に生じる二酸化炭素を利用することも検討中で、トマトの光合成を促進する用途に生かす考えだ。このほかに燃焼後の炭を木質チップの乾燥に利用するなど、エネルギーを地産地消するメリットを最大限に発揮していく。
太陽光発電にも環境影響評価を求める
長野県では農山村を中心に小水力発電とバイオマス発電が活発になってきた。固定価格買取制度の認定を受けた小水力発電の規模は全国で第2位になり、10万kWを超えている。このほかに太陽光発電が高原地帯を中心に広がる。
中部の諏訪市(すわし)では牧草地として利用していた広大な土地に、巨大なメガソーラーを開発するプロジェクトが始まった。太陽光発電事業者のLooopが関東・甲信越で最大級の89MW(メガワット)のメガソーラーを建設する計画だ。およそ100万平方メートルの用地に31万枚の太陽光パネルを設置する。
年間の発電量は1億kWhに達する見込みで、実に3万世帯分に相当する電力を供給できる。諏訪市の総世帯数(2万世帯)の1.5倍に匹敵する。5年後の2021年度に運転を開始する予定だが、建設に着手する前に環境影響評価の手続きを実施しなくてはならない。
長野県では自然環境を守りながら再生可能エネルギーを拡大できるように、2016年1月に「長野県環境影響評価条例」を改正した。従来は県の環境影響評価の対象に含めていなかった水力・風力・地熱・太陽光発電所を新たに追加して、市町村や地元住民と一体になって開発計画をチェックできる体制を整えた。
太陽光発電は国の環境影響評価の対象に入っていない。長野県は独自に規制を設けて、敷地面積が50万平方メートル(50ヘクタール)以上の場合に環境影響評価を義務づけることに決めた。諏訪市で開発するLooopのメガソーラーが第1号の案件である。
現在の開発計画では用地の4割以上を森林や湿原のまま残したうえで、発電設備の周囲に緑地を整備して景観を保つ対策を盛り込んでいる。さらに敷地内に調整池を4カ所に造って、地域の洪水対策にも役立てる。
同じ諏訪市内ではゴルフ場の跡地を利用した大規模なメガソーラーの建設計画も決まった。米国の太陽光発電事業者であるGSSG Solarが主体になって、126万平方メートルの用地に47MWのメガソーラーを展開する。2017年11月に運転開始を目指しているが、このプロジェクトも環境影響評価の対象になる見通しだ。
再生可能エネルギーの先進県で始まった自然環境の保護とエネルギーの地産地消を両立させる取り組みに、全国の自治体から注目が集まっている。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/09/news029_4.html
2016/08/03
2016年8月3日掲載
日本有数の避暑地で知られる長野県の軽井沢町に、1951年に運転を開始した小水力発電所がある。別荘地に電力を供給するための自家用の発電所だったが、新たに発電設備を全面的に改修して、売電用の小水力発電所として再スタートを切った。一般家庭の400世帯分に相当する電力を供給する。
[石田雅也,スマートジャパン]
軽井沢町にホテルや別荘地を展開するプリンスホテルが8月1日に「プリンスエナジーエコファーム軽井沢水力発電所」を稼働させた。別荘地の一角にある発電所は、65年前の1951年に運転を開始した「軽井沢湯川第二発電所」の設備を全面的に改修したものだ。
発電能力は199kW(キロワット)で、年間に148万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して400世帯分に相当する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で中部電力に売電する計画だ。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)になるため、年間の売電収入は5000万円を見込める。
この小水力発電所では別荘地の東側を流れる一級河川の「湯川」から水を引き込んで発電する。発電設備の改修と合わせて、川から発電所まで水を流すための導水路や圧力管路も新たに造り直した。改修工事を開始したのは2015年2月で、完了までに1年6カ月かかった。
プリンスホテルが「軽井沢千ヶ滝別荘地」の開発を始めたのは100年近く前の1918年にさかのぼる。当時は地域内に電力源が存在しなかったことから、別荘地の自家用発電設備として1924年に湯川に近い「東区」で小水力発電所の建設に着手した。しかし実際に運転を開始できたのは終戦後の1951年になってからである。
当初は周波数50Hz(ヘルツ)の電力を別荘地内の住宅や施設に供給していた。その後に周辺のグループ施設にも電力を供給するため、1986年に60Hzの電力を供給する方式に変更した。長野県は中部電力の管内で、地域の送配電ネットワークを通じて電力を供給するには60Hzで送電する必要がある。今回の全面改修では発電所から電力を送り出す配電線も刷新した。
プリンスホテルは全国に展開するホテルの敷地内や周辺の土地を利用して太陽光発電にも取り組んでいる。現在は北海道から宮崎県まで5カ所のメガソーラーを運転中で、発電能力を合計すると6MW(メガワット)になる。プリンスホテルが属する西武グループ全体では12MWに達して、年間の発電量は1244万kWhにのぼる。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/03/news027.html