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2016/08/09

電力の8割を自給自足する先進県、小水力発電と木質バイオマスが活気づく【スマートジャパン】

2016年8月9日掲載
水力発電が盛んな長野県では電力需要の8割以上を再生可能エネルギーで供給できる。2017年度に自給率100%を目指して、農業用水路に小水力発電所を拡大中だ。森林資源を生かした木質バイオマスによるガス化発電、牧草地やゴルフ場の跡地を利用した巨大なメガソーラーの建設計画も始まった。
[石田雅也,スマートジャパン]

 長野県が運営する水力発電所は14カ所にあって、発電能力を合わせると99MW(メガワット)に達する。北部の北アルプスと南部の南アルプスから流れ出る川の周辺に、大小さまざまな水力発電所が運転中だ。最近では川の流域に広がる農業用水路で小水力発電が活発に始まっている。
 水力を含めて再生可能エネルギーの電力を地産地消する取り組みで長野県は全国の先頭を走る。固定価格買取制度が始まった2012年度から導入量が急速に伸びて、県内の最大需要に対して再生可能エネルギーで電力を供給できる割合は8割に達した。このペースで2017年度には電力の自給率を100%まで高める計画だ。
 特に力を入れて取り組んでいるのは、農業用水路を利用した小水力発電である。北部から南部まで各地域の農業用水路で導入プロジェクトが広がっている。北部の白馬村(はくばむら)を流れる用水路では、「白馬平川小水力発電所」が2015年4月に運転を開始した。
 北アルプスを水源とする川から引き込んだ用水路に沿って小水力発電設備がある。用水路の上流にあるヘッドタンクから630メートルにわたって導水管を敷設して、発電所まで水を送り込む方式だ。この長い距離のあいだに生まれる29メートルの水流の落差で発電する。
 発電能力は180kW(キロワット)になり、年間に146万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して400世帯分に相当する。白馬村の総世帯数(3400世帯)の1割強をカバーできる電力になる。
 用水路を流れる水の量は、農耕期の5月から9月までは通常の1.5~2倍に増える。従来どおり農地に水を供給しても、発電に利用できる水量は年間を通じて一定に保てる見込みだ。発電量が安定して、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は93%と極めて高い水準になる。標準的な小水力発電の設備利用率は60%である。

  大きな用水路は4カ所に発電設備

 南アルプスの裾野に広がる南部の伊那市でも、農業用水路を利用して「美和小水力発電所」が2015年9月から運転を開始している。用水路に設けたヘッドタンクから発電所まで、56メートルにわたって地中に水圧管路を埋設した。発電所の地下に設置したスクリュー式の水車発電機に水を流し込んで発電する仕組みだ。水流の落差は13メートルで、最大12kWの電力を作ることができる。
 年間の発電量は9万3000kWhを見込んでいて、一般家庭の26世帯分に相当する電力になる。この小水力発電所でも利用できる水量が安定しているために、設備利用率は87%と高い。用水路は険しい山のあいだを縫って13キロメートルの距離を流れている。ほかの場所でも小水力発電を実施できる可能性がある。
 大きな農業用水路には勾配を調整する「落差工(らくさこう)」と呼ぶ階段状の場所が何カ所も設けられていて、小水力発電を実施するのに適している。長野県の中部を流れる梓川(あずさがわ)の右岸に沿って幹線の用水路がある。数多くある落差工のうち4カ所に小水力発電設備を設置する計画が進行中だ。
 いずれも落差は2~3メートル程度と小さいものの、幹線の用水路であるため横幅が6メートルもあって流れる水の量が多い。農耕期に毎秒1.5立方メートル、かんがい期には2.5立方メートルまで水量が増える。1カ所あたりの発電能力は農耕期で35kW前後、かんがい期で45~50kW程度を見込める。
 4カ所すべてに小水力発電設備の設置を完了すると、発電能力は合計で192kWになって、年間に140万kWhの電力を供給できる。すでに1カ所の落差工で2016年6月に運転を開始した。続いて3カ所で同様の小水力発電設備が稼働する予定だ。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、水門の電気代など施設の維持管理費の軽減に役立てる。
 県の支援で各地の農業用水路に小水力発電が拡大する一方、村が民間企業と共同で小水力発電に取り組む例もある。北部の高山村(たかやまむら)で2015年10月に運転を開始した「高井発電所」である。川の土砂災害を防ぐために設けた砂防堤堰(ていせき)から水を取り込んで発電に利用している。
 砂防堤堰は川の上流の山から流れてくる土や砂をせき止めながら、水と一緒に少しずつ土砂を下流に流して災害を防ぐことが主な役割だ。高井発電所は高さが36メートルある堤堰の上部に穴をあけて、そこから取り込んだ水を水車発電機に送って発電する。
 大きな落差と水量を生かして発電能力は420kWにもなる。年間の発電量は270万kWhを見込んでいて、一般家庭の750世帯分に相当する。高山村の総世帯数(2300世帯)が消費する電力量の3割以上を供給できる。
 この川を流れる水は火山に由来する成分によって酸性が強く、飲料水や農業用水には使えない。酸性度を示すpHが3.1と低いため、発電設備にも対策が必要だった。水車発電機は腐食しにくいステンレス製を採用したほか、水を送り込む水圧管にも腐食や摩耗に強いFRPM(強化プラスチック複合)管を使っている。

  木質チップをガス化して電力と熱を作る

 長野県で最も北にある栄村(さかえむら)では、木質バイオマス発電所の建設が進んでいる。村の面積の86%を占める森林の資源を生かしてエネルギーの地産地消に取り組む計画だ。すでに地元の森林組合が製材工場の敷地内に木質チップの製造設備を導入して、発電用の燃料を供給する体制ができあがっている。
 栄村で実施する木質バイオマス発電はチップを高温で燃焼してガスを発生させる。同様の発電装置は南部の伊那市で2015年6月に運転を開始した「かぶちゃん村森の発電所」で導入した実績がある。ガスを冷却してから発電に利用する方法で、電力と合わせて排熱もエネルギーとして利用できる点が特徴だ。
 製材工場の隣接地に建設中の発電所は2016年12月に運転を開始する予定である。発電能力は500kWになり、年間の発電量は396万kWhを見込んでいる。一般家庭の1100世帯分に相当する電力を供給できて、栄村の総世帯数(780世帯)を上回る。
 中部の安曇野市(あずみのし)の農園では、さらに大規模な木質バイオマス発電設備が動き出している。ガス事業を手がけるエア・ウォーターがトマトを栽培する農園の敷地内に、「安曇野バイオマス・エネルギーセンター」を2016年5月に稼働させた。地域の森林で発生する間伐材などを燃料に使って電力と熱を供給する。
 このエネルギーセンターの木質バイオマス発電設備でも、チップを燃焼してガスを発生させる方式を採用した。発電能力は1900kWで、熱の出力は電力に換算して3800kWに相当する。年間の発電量は3000世帯分になり、一部を自家消費する以外は中部電力に売電してエネルギーセンターの運転維持費にあてる方針だ。
 電力と同時に発生する熱から温水を作って、トマトを栽培するガラスハウスに供給する。今後は木質チップの燃焼時に生じる二酸化炭素を利用することも検討中で、トマトの光合成を促進する用途に生かす考えだ。このほかに燃焼後の炭を木質チップの乾燥に利用するなど、エネルギーを地産地消するメリットを最大限に発揮していく。

  太陽光発電にも環境影響評価を求める

 長野県では農山村を中心に小水力発電とバイオマス発電が活発になってきた。固定価格買取制度の認定を受けた小水力発電の規模は全国で第2位になり、10万kWを超えている。このほかに太陽光発電が高原地帯を中心に広がる。
 中部の諏訪市(すわし)では牧草地として利用していた広大な土地に、巨大なメガソーラーを開発するプロジェクトが始まった。太陽光発電事業者のLooopが関東・甲信越で最大級の89MW(メガワット)のメガソーラーを建設する計画だ。およそ100万平方メートルの用地に31万枚の太陽光パネルを設置する。
 年間の発電量は1億kWhに達する見込みで、実に3万世帯分に相当する電力を供給できる。諏訪市の総世帯数(2万世帯)の1.5倍に匹敵する。5年後の2021年度に運転を開始する予定だが、建設に着手する前に環境影響評価の手続きを実施しなくてはならない。
 長野県では自然環境を守りながら再生可能エネルギーを拡大できるように、2016年1月に「長野県環境影響評価条例」を改正した。従来は県の環境影響評価の対象に含めていなかった水力・風力・地熱・太陽光発電所を新たに追加して、市町村や地元住民と一体になって開発計画をチェックできる体制を整えた。
 太陽光発電は国の環境影響評価の対象に入っていない。長野県は独自に規制を設けて、敷地面積が50万平方メートル(50ヘクタール)以上の場合に環境影響評価を義務づけることに決めた。諏訪市で開発するLooopのメガソーラーが第1号の案件である。
 現在の開発計画では用地の4割以上を森林や湿原のまま残したうえで、発電設備の周囲に緑地を整備して景観を保つ対策を盛り込んでいる。さらに敷地内に調整池を4カ所に造って、地域の洪水対策にも役立てる。
 同じ諏訪市内ではゴルフ場の跡地を利用した大規模なメガソーラーの建設計画も決まった。米国の太陽光発電事業者であるGSSG Solarが主体になって、126万平方メートルの用地に47MWのメガソーラーを展開する。2017年11月に運転開始を目指しているが、このプロジェクトも環境影響評価の対象になる見通しだ。
 再生可能エネルギーの先進県で始まった自然環境の保護とエネルギーの地産地消を両立させる取り組みに、全国の自治体から注目が集まっている。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/09/news029_4.html

2016/08/03

小水力発電所を65年ぶりに全面改修、別荘地の自家用から売電用へ転換【スマートジャパン】

2016年8月3日掲載
日本有数の避暑地で知られる長野県の軽井沢町に、1951年に運転を開始した小水力発電所がある。別荘地に電力を供給するための自家用の発電所だったが、新たに発電設備を全面的に改修して、売電用の小水力発電所として再スタートを切った。一般家庭の400世帯分に相当する電力を供給する。
[石田雅也,スマートジャパン]

 軽井沢町にホテルや別荘地を展開するプリンスホテルが8月1日に「プリンスエナジーエコファーム軽井沢水力発電所」を稼働させた。別荘地の一角にある発電所は、65年前の1951年に運転を開始した「軽井沢湯川第二発電所」の設備を全面的に改修したものだ。
 発電能力は199kW(キロワット)で、年間に148万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して400世帯分に相当する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で中部電力に売電する計画だ。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)になるため、年間の売電収入は5000万円を見込める。
 この小水力発電所では別荘地の東側を流れる一級河川の「湯川」から水を引き込んで発電する。発電設備の改修と合わせて、川から発電所まで水を流すための導水路や圧力管路も新たに造り直した。改修工事を開始したのは2015年2月で、完了までに1年6カ月かかった。
 プリンスホテルが「軽井沢千ヶ滝別荘地」の開発を始めたのは100年近く前の1918年にさかのぼる。当時は地域内に電力源が存在しなかったことから、別荘地の自家用発電設備として1924年に湯川に近い「東区」で小水力発電所の建設に着手した。しかし実際に運転を開始できたのは終戦後の1951年になってからである。
 当初は周波数50Hz(ヘルツ)の電力を別荘地内の住宅や施設に供給していた。その後に周辺のグループ施設にも電力を供給するため、1986年に60Hzの電力を供給する方式に変更した。長野県は中部電力の管内で、地域の送配電ネットワークを通じて電力を供給するには60Hzで送電する必要がある。今回の全面改修では発電所から電力を送り出す配電線も刷新した。
 プリンスホテルは全国に展開するホテルの敷地内や周辺の土地を利用して太陽光発電にも取り組んでいる。現在は北海道から宮崎県まで5カ所のメガソーラーを運転中で、発電能力を合計すると6MW(メガワット)になる。プリンスホテルが属する西武グループ全体では12MWに達して、年間の発電量は1244万kWhにのぼる。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/03/news027.html

2016/08/03

北菱電興、小水力発電システムコスト安く 農業用水路向け【日本経済新聞】

2016年8月3日
 電気・電子機械器具の開発製造などを手掛ける北菱電興(金沢市)は農業用水路向けの小水力発電の新しいシステムを開発した。量産できる大きさがそろった羽根車を並べる方式で、2017年中に販売を始める。一般的な方式に比べて設備費用を半減できるほか、納期も短くなる。太陽光発電システムや農業用ポンプ設備の事業で培ったノウハウを生かす。
 新システムは羽根車と水を噴出するノズルを組み合わせ、水量や目指す発電量に合わせて横に並べる。羽根車のサイズは直径50センチを中心に2~3種類を用意する。水路の脇に設置し、水を引き込んで使う。
 同社によると、通常の小水力発電は水路に合わせてオーダーメードの羽根車を使う。出力が20キロワットの場合は5000万円程度かかるという。設備の納入まで3~6カ月程度が必要としている。新システムは2500万円程度、納期はおおむね2カ月で済むという。
 農業用水路は季節や天候で水量が変化することが多く、水量が減ると、発電量が下がるという課題があった。羽根車の回転数が下がって電圧が低下し、発電した電気を使える状態にする装置が稼働しないからだ。
 新システムはセンサーで水量を監視する。減った水量に合わせてノズルを停止する一方、他のノズルの水量は維持して一部の回転数を保つ。この機能によって、水量が少なくても安定的に発電することができる。
 2017年11月期中の販売を予定し、2年間で10件程度の受注を目指す。主に山間地域の避難所の非常用電源や果物向けの農業用ハウスの空調をまかなう電源などの用途で需要を見込む。今年11月ごろから石川県白山市の農業用水路にシステムを設置して、安定的な発電ができるかどうか実証実験をする。
 同社の15年11月期の売上高は約210億円。このうち35億円程度を太陽光発電システムの受注が占める。太陽光発電による電気の買い取り価格は下がっているため、受注が落ち込む可能性があり、小水力発電を新たな事業に育てる考えだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05575520S6A800C1LB0000/

2016/08/02

農山村に水力発電を展開、太陽光と2本柱で自給率70%を目指す【スマートジャパン】

2016年8月2日
山梨県では豊富な水量と日射量を生かして水力発電と太陽光発電の電力が増えている。2030年に電力の自給率を70%まで高める計画で、小水力発電の導入にも積極的に取り組む。超電導方式の蓄電システムや純水素型の燃料電池を再生可能エネルギーと組み合わせて電力の地産地消を拡大していく。
[石田雅也,スマートジャパン]

 太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを拡大してきた山梨県が新たに「やまなしエネルギービジョン」を2016年3月に策定した。すでに県内の電力の自給率は30%を超えているが、2030年度に燃料電池やコージェネレーションと合わせて70%まで引き上げる目標を新ビジョンで掲げた。
 県全体で消費する電力量を2030年度までに17%削減しながら、発電量を2倍以上に増やす方針だ。発電量のうち半分以上を水力発電が占める。水力で供給する電力は従来のダムを利用した大規模な発電所が多いが、今後は小水力発電を増やして発電量を上積みしていく。短期間に10カ所程度を開発する計画のもと、砂防ダムや農業用水路を利用した小水力発電を県内各地で推進する。
 先行して開発した小水力発電所のモデルが2カ所ある。1カ所は砂防ダムからの流水を利用した「大城川(おおじろがわ)発電所」で2014年9月に完成した。もう1カ所は農業用水路に設置した「浅尾発電所」が2015年4月に運転を開始している。それぞれタイプの違う水車発電機を使って電力を供給する。
 大城川発電所は砂防ダムの上部に樋(とい)を設けて水を取り込むユニークな方法を採用した。樋から砂防ダムの下流側にある水車発電機まで導水路で水を送り込む。この方法で水流の落差は13メートルになって、最大で49kW(キロワット)の電力を供給できる。
 年間の発電量は38万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して100世帯分に相当する。利用できる水量が最大で毎秒0.56立方メートルに限られることから、水車発電機には低水量でも効率よく発電できる「横軸チューブラ水車」を採用した。

  少ない水量で発電量を増やす工夫

 もう一方の浅尾発電所に導入した水車発電機は、幅の狭い農業用水路にも設置できる「縦軸スクリュー水車」である。用水路の段差がある場所を利用して、水車に垂直に水を取り込む構造になっている。この方法だと用水路の改造が少なくて済み、簡単な工事で小水力発電設備を導入できるメリットがある。
 水流の落差は2メートルしかなく、水量は最大で0.95立方メートルにとどまる。少ない水量と低い落差でも発電できるように、水車と発電機のあいだには回転数を増やすための増速機が付いている。小さな水力でも12kWの電力を作り出す仕掛けだ。年間の発電量は4万5000kWhになって、13世帯分の電力を供給できる。
 こうした県の取り組みと並行して、民間企業による小水力発電の実証プロジェクトも進んでいる。関電工が中心になって2014年12月から「葛野川(かずのがわ)マイクロ水力発電所」を運転中だ。
 この小水力発電所は「葛野川ダム」の直下にある。ダムの堤体の上部から82メートル下の水車発電機まで、高い落差で水を流し込んで発電する(図8)。発電に利用できる水量は農業用水路よりもはるかに少なくて、毎秒0.25立方メートルである。それでも82メートルの落差を生かして発電能力は160kWになり、年間の発電量は73万kWhに達する。一般家庭の使用量に換算して200世帯分である。
 葛野川ダムは東京電力が運転する揚水式の「葛野川水力発電所」(発電能力120万kW)で利用する上下2つのうちの下部ダムで、貯水量は1150万立方メートルにのぼる。夜間の余剰電力を使って大量の水を上部ダムに引き上げて昼間に発電する一方、ダムの下流の自然環境を守るために常に少量の水を流し続けている。この環境維持用の水流を小水力発電に利用する。
 水車発電機には国内の水力発電で最も多く使われている「横軸フランシス水車」を採用した。水車の素材には一般的なステンレスの代わりにアルミ青銅合金を使って、耐久性を維持しながらコストの低減を図る狙いだ。小水力発電に適した高効率で低コストの水車を開発・運用することがプロジェクトの目的の1つになっている。

  太陽光の電力で超電導の円盤を回す

 山梨県の再生可能エネルギーは小水力発電と合わせて太陽光とバイオマスが増えている。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では中小水力が全国で4番目になった。太陽光ではメガソーラーを含めて、運転を開始する発電設備が着実に拡大してきた。 現時点で県内最大のメガソーラーは山梨県と東京電力が共同で運営する「米倉山(こめくらやま)太陽光発電所」である。発電能力は10MW(メガワット)で、固定価格買取制度が始まる以前の2012年1月に運転を開始した。このメガソーラーの構内では2015年9月に、リニアモーターカーと同様の超電導方式による蓄電システムの実証試験が始まっている。
 直径が2メートルもある円盤状のフライホイールを使った次世代の蓄電システムとして国内外の注目を集めている。炭素繊維強化プラスチック製のフライホイールを超電導の状態で高速に回転させることによって、電力のエネルギーを運動のエネルギーに変換して蓄電する方式だ。蓄電容量は100kWhまで可能で、最大300kWの電力を充電・放電できる。
 このフライホイール蓄電システムを使って、天候によって変動する太陽光発電の電力を安定化させる試みだ。メガソーラーに隣接して1MWの太陽光発電設備を実証試験用に建設した。太陽光発電の出力の変動に合わせてフライホイールが回転して、電力を出し入れすることができる。再生可能エネルギーの地産地消を推進する山梨県が世界に先がけて取り組む壮大な実証試験である。
 ほかにも再生可能エネルギーの電力を有効に活用するシステムの実用化が進んでいる。米倉山太陽光発電所のPR施設でもある「ゆめソーラー館やまなし」では、小水力発電と太陽光発電、さらに水素を組み合わせたシステムが稼働中だ。
 小水力と太陽光で発電した電力を蓄電装置に貯めながら、EV(電気自動車)用の急速充電器に電力を供給するほか、ゆめソーラー館の照明にも利用する。それでも電力が余ると、水を電気分解して水素を発生させてタンクに貯蔵しておく。水素は必要に応じて燃料電池に送り、再び電力を作って館内に供給することができる。
 山梨県が2030年度に目指す電力の自給率70%の時点では、太陽光の生み出す発電量が全体の2割以上を占める見込みだ。日中しか発電できない太陽光の電力を効率よく地産地消するためには、余剰電力を活用する仕組みが欠かせない。将来を見据えた先端プロジェクトの役割はますます重要になっていく。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/02/news023.html

2016/07/22

15年度の国内の地産地消モデルの電力小売事業の市場規模は小売電気事業者の売上高ベースで135億円【エコノミックニュース】

2016年7月22日
 矢野経済研究所では、国内の地産地消モデルの電力小売事業の調査を実施した。調査期間は2016年4月~7月、調査対象は地産地消モデルの小売電気事業者(地方自治体系、生活協同組合系、デベロッパー/エンジニアリング系等の事業者)。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
 それによると、2015年度の国内の地産地消モデルの電力小売事業の市場規模は、小売電気事業者の売上高ベースで135億円となった。2016年度は、家庭用等の低圧分野(50kW未満)の電力小売も自由化されたことから、各事業者が家庭用の電力小売販売も開始し、国内の地産地消モデルの電力小売市場規模は 240億円に増加する見込みであるとしている。2017年度の地産地消モデルの電力小売市場規模(同ベース)は 340億円、2020年度は530億円まで拡大すると予測している。
 地方自治体系の地産地消モデルの電力小売事業は、その自治体の首長の強力なリーダーシップにより事業が立ち上げられることが多いという。多くの場合、その自治体ではもともと環境意識が高く、RPS(Renewables Portfolio Standard)制度や FIT 制度とともに、太陽光発電システムや風力発電システム、バイオマス発電システム等の再生可能エネルギーの発電システムを導入したり、誘致したりしてきている。
 また、それらの自治体では、これまで再生可能エネルギーによる発電システムの導入によって、地方創生・再生、地域活性化(省エネ・CO2 排出削減、地域経済の活性化、産業振興、雇用拡大、災害対応等)に取り組んできている。なお、地域の再生可能エネルギーによる発電システムとしては、先ずは太陽光発電システムが取り組みやすく先行しているが、将来的にはその地域特性を活かすことが重要であり、バイオマス(木質、畜産等)や小水力、風力、地熱による発電など種々の取り組みが考えられているとしている。
 生協(単協)やその連合会では、各々にエネルギー政策等を策定してきており、特に東日本大震災後には省エネ・節電や脱原発の方針が掲げられるようになった。生協ではこれまでの事業において、安全・安心な食品等にこだわる産地直送のスキーム等で事業展開してきており、電力に関しても再生可能エネルギーを選択して使用していく方針である。
 もともと環境政策に積極的な生協では、従来から生協の物流拠点や配送センター等の施設に太陽光発電システムを導入してきている。ここで、生協の店舗等の施設で使用する電力について、再生可能エネルギーによる電力の比率を高めていくためには、他の小売電気事業者から電力を購入するよりも、自らが再生可能エネルギー比率の高い電力を供給する事業者になることを選択することとなった。
 生協における電力小売事業の展開は、自らの物流施設における太陽光発電システム等の発電電力も利用して、店舗等の各生協施設に再生可能エネルギーの比率が高い電力を供給することから開始されており、また、2016 年度からは、生協組合員向けの家庭用等の低圧分野の電力小売も開始されるように準備されているという。(編集担当:慶尾六郎)

http://economic.jp/?p=63991

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