2016/08/25
2016年8月25日掲載
ダムは永久にエネルギーを生む「夢の装置」だ
新規建設なしで年間2兆円分、電力を増やせる
竹村 公太郎 :元国土交通省河川局長
水力発電というと、一時代前の開発しつくされた電力源というイメージが強いだろう。確かに、今後、新規の巨大ダムが建設される見込みはなく、水力発電の総発電量に締める割合は10%足らずにすぎない。
しかし、国土交通省で数々のダム建設に携わってきた竹村公太郎氏(元同省河川局長)によると、既存ダムの活用で、新規の巨大電力を生み出すことが可能であるという。既存ダムの潜在能力を発揮させれば、現在の2~3倍の水力発電量を確保することができるというのだ。
資源安で危機感は薄らいでいるものの、歴史的に見ればエネルギー問題がつねに日本の国運を左右してきた。今後は、二酸化炭素削減の必要もあり、化石エネルギーへの依存を見直していかざるをえない。3.11以来、原発稼動には高いハードルが横たわっている。そうした中、安定したエネルギー源として水力発電量の比率を高めることの意義は大きい。
日本のエネルギー問題解決のカギを握る「純国産」再生エネルギーの隠れた可能性について、前回に続き、このたび『水力発電が日本を救う』を上梓した竹村氏が解説する。
ダムは半永久的に壊れない
私は、ダムは、半永久的にエネルギーを与えてくれる、とてつもない装置だと思っている。
その大前提として、「ダムは壊れない」という事実がある。
あの東日本大震災のとき、東北の広い地域で震度7や6強を観測した際、農業用の貯水池は破損したが、本体が壊れたダムはなかった。日本は地震国であり、明治以降にも頻繁に大きな震災が起こっているにもかかわらず、全国の何千というダムには、ダム本体が壊れた例はない。
私のようなダムの専門技術者にとって、地震でもビクともしないダムの堅固さは当たり前なのだが、一般の方には理解されていない。ダムの真価を知ってもらうには、このダムの安全性を理解していただく必要がある。なぜなら、ダムが壊れないということは、半永久的に電力を生み続けられるということを意味するからだ。
ダムが壊れないといっても信じてもらえないのは、ダムをビルなどと同様に考えている人が多いからだ。だが、ダムは事情が異なる。コンクリートダムは、ビルなどの構造物とは同じではない。
ダムが壊れない3つの理由
それには、3つの理由がある。
・ダムが壊れない理由① コンクリートに鉄筋がない
ひとつ目の理由は、ダムとビルとでは、コンクリートに根本的な違いがあることだ。多くの人がテレビ報道などで、ビルが崩壊する光景を目にしているから、「コンクリートはいつか壊れる」というイメージがある。だから、コンクリートダムもいずれは壊れると思われるのは仕方がないかもしれないが、それは誤りなのだ。
というのも、ビルなどのコンクリートと、ダムのコンクリートには、非常に大きな違いがあるからだ。
そのひとつは、ダムのコンクリートには鉄筋がないことだ。ビルの建築現場では、コンクリートの壁や柱の中を鉄の棒が通っている。あれが鉄筋だ。薄い壁の構造物を強くするには鉄筋が必要となる。だから、鉄筋があったほうが丈夫だと思うかもしれない。
しかし、必ずしもそうとはいえない。むしろ、ビルなどのコンクリートが長持ちしない原因こそ、鉄筋なのだ。なぜなら、鉄はさびるからだ。コンクリートに小さなひび割れでもあれば、中に水が浸入していき、鉄筋がさびてしまう。そして時間が経つと、ビルのコンクリートは、鉄筋のさびのせいで劣化して弱くなってしまう。
ところが、ダムのコンクリートには、そもそもまったく鉄筋がない。セメントと砂と石だけでできている。だから、ダムの壁はどれだけ年月が経とうが、内部がさびてもろくなることはない。鉄筋のないダムのコンクリートは、何百年経とうが劣化して弱くなることがなく、丈夫さを保ち続ける。
実は、鉄筋の入っていないコンクリートは、天然の岩と同じなのである。コンクリートに使われるセメントは、要するに石灰岩だ。石灰岩と砂と石とが固まっているのがコンクリートであり、成分は凝灰岩(ぎょうかいがん)という天然の岩と同じである。つまり、鉄筋のないコンクリートは、天然の岩盤とほぼ同じなのだ。
凝灰岩は年を経るにつれて堅く強固になっていくという性質がある。同じようにダムのコンクリートは、100年、200年、300年と強固になり続けていく。
・ダムが壊れない理由② 基礎が岩盤と一体化している
ダムが壊れない理由の2つ目は、基礎部分にある。
近年、マンションの杭(くい)が、岩盤に達していないと発覚して社会問題となった。マンションでは、柔らかい地層の下の固い基盤にまで、決まった数だけ杭を打ちこんで、その杭の上に建物を建てなければならない。
ところが、ダムの場合はもっと徹底している。たとえば、渓谷にダムを建設するときには、渓流の表面の岩をすべて除去しなければならない。なぜなら、表面の岩は、水などによって風化していてもろいからだ。
もろい表面の岩を取り除く膨大な掘削工事を続け、頑丈な岩盤を表に出す。そして、その岩盤の上に直接コンクリートを打ちこんで、ダムをその上に作っていく。つまり、ダムの基礎は、杭などで支えるどころか、岩盤と一体化させてしまうのだ。このことも、ダムが壊れない理由のひとつなのだ。
壁の厚みもケタ違い
・ダムが壊れない理由③ 壁の厚さは100m
ダムの強固さについての3つ目の理由は、壁のコンクリートの厚みがビルとはケタ違いだということだ。
ダムの壁の断面を見ると、高さと底辺がほぼ同じ長さの三角形になっている。ダムの下部では、コンクリートの厚みはダムの高さと大体同じだ。
たとえば、高さが100mのダムがあったとしよう。すると、このダムのコンクリートの厚みは、一番厚い最下部では100mにも達する。100~200mのコンクリートの塊というのは、人間の作ったものとしては最大級の大きさであり、あのピラミッドにも匹敵する。人工物というより天然の山といったほうがいい規模だ。
私たち日本のダム技術者は、昔から机上の計算を過信しなかった。万が一の天災でも耐えられるように十分すぎる安全値をとった結果、高さと厚みがほぼ同じという、頑丈すぎるほどの構造になっている。
以上のように、次の3つの理由で、日本のダムは壊れない、半永久的に使えるといえるのだ。
1.コンクリートダムには鉄筋がない。
2.堅い地層に直接コンクリートを打って基礎にしている。
3.壁の厚みが極めて厚く巨大な山となっている。
永久に使えるというと、次のような反論が出される。
「ダムが長持ちしても、ダム湖が砂で埋まれば使えないだろう」
これは事実だ。確かにダム湖には、雨と一緒に周囲の山から土砂が流れ込んでくる。そのため、ダムにはだんだんと土砂が堆積していくこととなる。
だが、少しだけ誤解がある。ダムに砂が堆積しやすいのは、高度成長期に盛んに造られた電力ダムである。電力ダムの場合、ダムから土砂を排出する穴が用意されていない。理由は土砂が底に溜まっていてもあまり関係がないからだ。ダムのかなり上のほうまで土砂があっても、水位は高くなるので、水の位置エネルギーが確保できる。発電に問題がないのだ。
一方、電力ダムとは違って多目的ダムの場合、土砂が堆積しにくくなっている。大雨が降るたびに、ダム湖の外へ洪水を放流する際に、一緒に土砂を排出してしまうからだ。
多目的ダムには治水という目的もあるので、水を下流に放流するための「洪水吐(こうずいはき)」という特別な穴が用意されている。この洪水吐から大量の水を排出するとき、同時に、ダム湖の土砂が大量に外へ出ていくのだ。だから、多目的ダムでは土砂は堆積しにくい。さらに多目的ダムは、100年間の土砂が堆積してもいいように計画されている。
しかし、100年、200年、300年と経過すれば砂は堆積してしまう。この場合は、土砂を取り除く必要があるのだが、これは簡単に解決する。
土砂を浚渫(しゅんせつ)したり、ダム湖の底の土砂にパイプを突っ込んで水圧を使って外へ出したり、あるいは土砂吐けのゲートやトンネルを新しく造ったりと、さまざまなやり方がある。どれも、新しくダムを作るのに比べると、簡単な工事だし、費用もケタ違いに安い。このように、多目的ダムは土砂でダム湖が埋まる心配はないし、電力ダムの場合でも、土砂の堆積は解決できる。だから、ダム湖に流れ込む土砂が、ダムの寿命を縮めることはない。
水を貯めたままダムに穴を開ける
日本全国の川に、すでにダムが存在している。一級河川には国が作ったダム、二級河川には都道府県の作ったダムがある。そして、これまで述べてきたように、半永久的に使うことができる。
ところが、その潜在的な電力はあまり開発されていないのが現実だ。多目的ダムの場合、法律などの問題があることは前回述べたが、現実には、潜在的な発電能力の半分も使われていない。それどころか、発電設備のないダムも多い。非常にもったいない話だ。発電をしないダムには、水を水路に導く穴が開いていない。つまり、発電していないダムで新たに発電しようとすれば、ダムに穴を開ける必要がある。ほとんどの方が、こう考えてしまうだろう。
「ダムのコンクリートに穴を開けるなんてできない。できたとしても大工事だろう。コストもかかるに違いない」
ところが、実際には違う。私たちダム専門技術者にしてみれば、ダムに穴を開けるのは可能なのだ。事実、九州にある鶴田ダムでは、この工事を行っている最中だ。発電設備のないダムを発電用に改修する工事は可能だ。そして、これにより新たな水力発電ができる。
前回、多目的ダムは運用を変えて、ダム湖の水量を増やせば発電力が格段に増すという話をしたが、もうひとつ、ダムを活用できる方法がある。ダムの「カサ上げ」と呼ばれる方法だ。このカサ上げも、水力発電の潜在的な力を引き出す重要な手段である。
では、カサ上げとは何か。
簡単に言ってしまえば、ダムを高くすることである。たとえば、高さが100mのダムがあるとする。もし、このダムをあと10m高くすれば、それだけ多くの水が貯められるし、水位も10m上がる。ダムが高くなれば、ダム湖の容量を大きくするし、湖水の水位も高くなる。これが発電力の増加につながる。水力発電では、ダム湖の水は量が多いほど効率がよくなるし、ダム湖の水位も高いほうがよいのが原則だ。それは、水の位置エネルギーが、その水量と高さに比例するからだ。
ダムの高さを上げれば、ダム湖の水をたくさん貯められ、高さも稼げる。水力発電力を増加させることができるわけだ。100mから110mに上げるのだから、高さ的にはたった10%の違いである。ところが、この10%がバカにならない。実は、電力で考えると、単純計算でも発電量は約70%も増えるからだ。
たった10%のカサ上げで電力が倍になるわけ
意外かもしれないが、簡単な理屈だ。ダム湖というのは大きな容器に水が入っているのと同じだ。仮に、この器がシャンパングラスと同じ形だとしよう。あのグラスは円すい形であるが、円すい形の容器の場合、高さが10%増えると、容積は約33%増える。
次に、水の高さを考えると、新しく貯まる水の高さの平均は、今まで貯まっていた水の高さの平均の約2倍になる。そして、高さが上がった分だけ、発電量は増えるのだから、発電量も2倍という計算だ。以上で、電力の増加量を計算すると、次の式になる。
0.33×2=0.66
つまり、発電量は66%増えることになる。こうした結果になるのは、シャンパングラスの場合、容器の底のほうほど狭くなっていて、上に行くほど広い形をしているからだ。
実際のダム湖は、シャンパングラスのような単純な形をしてはいないが、底のほうほど面積が狭く、上のほうほど面積が広いという意味では同じであり、原則的にこの計算と同様の結果になる。さらに、実際のダムの場合、いちばん下の部分はまったく発電には使えない。土砂を貯める部分となっているからだ。それで、現実的には、100mのダムの高さを10mカサ上げすると、発電能力はほぼ倍増することになる。
つまり、たった10%のカサ上げは、発電量でいえば、ダムをもう1つ造るのと同じことになるのだ。このように、たった10%でも、ダムのカサ上げの効果は思ったよりも大きい。
実際のカサ上げの例として、北海道の夕張シューパロダムをご紹介する。このダムはもともとダムの高さが67.5mだった。それを43.1mカサ上げして、高さを110.6mにする工事を進めている。これによって貯水容量は、8700万立方メートルから4億2700万立方メートルに増える。つまり、ダムの高さを約1.5倍にすることで、貯められる水が、なんと5倍近くにまで増えるのである。このように、ダムをカサ上げすることで、意外なほどに貯められる水は増えるし、発電能力も激増するのだ。
現在、日本の総電力供給量に対する水力発電の割合は8%ほどだ。私は日本のダムの潜在的な発電能力を引き出せば、30%まで可能だと試算をしている。これまで述べてきたように、方策は3つある。
第1に、多目的ダムの運用を変更すること。河川法や多目的ダム法を改正して、古い運用法を変えれば、ダムの空き容量を発電に活用できる。
第2に、既存のダムをカサ上げすること。これによって、新規ダム建設の3分の1以下のコストで、既存の発電ダムの能力を倍近くに増大できる。
第3に、現在は発電に使われていないダムに発電させること。このうち中小規模のダムについては後で述べる。
一般には、水力発電はもはや拡大の余地がない、あるいは、水力発電の拡大には巨大ダムの新規建設が必要で環境破壊を避けられない、というイメージのようだが、事実は違うことを説明してきた。巨大ダムの新設はもう必要ない。莫大な公共投資も必要ない。環境破壊も巨額の税金の投入もなしで、水力発電は何倍にも増やせるのだ。
中小水力発電の具体的なイメージ
すでに述べたように、日本には非常に多くのダムがある。大きなものでは、国が直轄している多目的ダムから、都道府県が管轄している小さな砂防ダムまでさまざまだ。そのどのダムについても、水力発電に利用できる。
ダムが大きければ発電量が大きくなるし効率も良くなるが、小さいダムでも発電は可能である。ダムの高さが10mクラスの小さな砂防ダムでも発電は可能で、100k~300kWほどの電力は簡単に得られる。
たとえば200kWというと小さすぎると思われるだろうが、実際にはバカにならない。なぜなら、砂防ダムの場合、ひとつの渓流でいくつも存在しているからだ。仮にひとつの渓流に5つの砂防ダムがあれば、そのすべてで発電できる。200kWだとすると5つで1000kWになる。
さらに、ひとつの川には、いくつもの渓流が支流として存在する。支流すべての砂防ダムの数を合計すれば数十になることも珍しくなく、そのすべてのダムを発電に利用すれば、何千kWにもなる。この発電を、過疎に悩む水源地域の活性化に生かすこともできる。
こうした状況が日本中の川で存在しているわけで、一つひとつの川のダムの発電量が数千kWでも、日本全国で見れば膨大な電力となる。日本には多数のダムがあり、全国で新たに中小水力発電に利用できる箇所は、調査によってさまざまな数字を挙げているが、どれも数千のケタに上る。たとえば、2011年に環境省が行った調査では、出力3万kW未満の水力発電を新たに開発可能な場所は2万カ所以上あり、そのすべてを開発すると、総電力は1400万kWに上ると試算されている。
中小水力発電の潜在力は非常に大きいのだ。
日本に1年間に降る雨や雪の位置エネルギーを、すべて水力発電で電力に変換すると、7176億kWhになると試算されている。今の日本で1年間に発電されている電力量は約1兆kWhだから、もし水力を完全に開発できれば、電力需要の70%ほどをまかなえる計算だ。
少なくとも200兆円分の富が増える
実際には、すべての降水の位置エネルギーを電力量に変換するのは不可能で、これはあくまで理論値だ。現在の水力発電の電力量は900億kWh強であり、理論値には程遠い。現実にどこまでの開発が可能かは、技術と経済の状況次第となる。少なくとも、運用変更とカサ上げは今すぐにでも実現可能である。全国のダムについて試算してみると、運用変更とカサ上げだけで、343億kWhの電力量を増やせると試算される。
さらに、現在のところ発電に利用されていない中小ダムを開発することは、技術的には何ら問題ないし、再生可能エネルギーの固定買取制度のおかげで、経済的にも好条件となっている。
中小水力発電については、開発可能地点の試算が調査によって違っていて定説はないが、少なくとも1000億kWhほどの電力量が増やせるといわれている。運用変更とカサ上げで約350億kWh、これに1000億kWhの電力量を加えれば、1350億kWhの増加となる。
すると、水力全体で2200億kWh以上となり、日本全体の電力需要の20%を超える。これだけの純国産電力を安定的に得られる意味は非常に大きい。といっても、kWhなどという単位でご説明しても、直感的にピンとこないと思う。電力を金額に直したらどうなるか。仮に、水力発電の電力量が現在より1000億kWhだけ増加したとする。
将来の電力料金がいくらになるかは予想できないので、現在の料金で考えよう。家庭用電力料金では、平均して1kWhあたり20円だとすると、1000億kWhの電力料金は、年間約2兆円分に当たる。
つまり、少なく見積もっても、純国産のエネルギーが毎年2兆円分も増加するわけだ。
しかも、発電に最も重要で巨大な投資を要するダムは、半永久的に使える。仮に100年しか使えなかったとしても、年に1000億kWhの電力量の増加は、100年分で200兆円分の電力を余計に産んでくれる計算になる。
つまり、ダムとは、この先の日本に、200兆円を超える富を増やしてくれる巨大遺産なのだ。この遺産を徹底的に活用すべきである。このような議論を展開するのは、日本の100年後、200年後の将来を考えるからだ。子孫たちがダムという遺産に感謝する時代が必ず来る。
未来のためにも、今生きている人間が、ダムという遺産を存分に活用するための道筋を作っておくべきだ。これが、ダムを建設してきた先人たちの強い思いなのである。
2016/08/24
2016年8月24日掲載
東北電力は23日、台風9号に伴う大雨の影響で、管内7県にある水力発電所60カ所を停止した。受電している他社の水力13カ所も停止しており、東北電の供給力としては計66万キロワット程度の影響があった。浸水などの設備被害はなく、河川の流量を見ながら運転を順次再開する。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201608/20160824_73056.html
2016/08/24
2016年8月24日掲載
JA 年間で300万キロ・ワット時売電
JAつやま(津山市横山)が国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度に合わせて改修していた津山市加茂町黒木の加茂桑谷発電所が完成、23日、現地で竣工しゅんこう式が行われた。
同発電所は1965年に旧加茂町農協が設置した小水力発電施設で、近くの倉見川から取水した水を約50メートルの高低差を利用して発電。JAつやまが固定価格買い取り制度に合わせ、総事業費3億5000万円をかけて75平方メートルの建物や延長1・2キロの導水管などを改修していた。最大出力420キロ・ワットで、年間発電量は約300万キロ・ワット時。すべて中国電力(広島市)に売電する。
竣工式には関係者約50人が出席。最上忠組合長が「キャンプ場に近く、子どもたちにクリーンエネルギーについて知ってもらう機会になれば」とあいさつした。
http://www.yomiuri.co.jp/local/okayama/news/20160823-OYTNT50149.html
2016/08/23
2016年8月23日掲載
古くから水力発電が盛んな富山県には流れの急な川が多く、年間を通して大量の雨や雪が膨大な水力エネルギーをもたらす。現在も川やダムのエネルギーを生かして、小水力発電の導入プロジェクトが活発に進んでいる。水量に合わせてさまざまなタイプの発電設備が相次いで運転を開始した。
[石田雅也,スマートジャパン]
富山県は南側に標高3000メートル級の立山連峰がそびえる一方、北側の富山湾の海底は1000メートル以上の深さがある。その間の高低差4000メートルの地形が全国でも有数の水力エネルギーを生み出す。高い山から流れる川は急な場所が多く、黒部川をはじめ治水用や発電用のダムが数多く造られてきた。
県内で稼働中の水力発電所が供給する電力量は年間に100億kWh(キロワット時)を超えて、47都道府県の中で最大だ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して280万世帯分にのぼり、富山県の総世帯数(39万世帯)の7倍に匹敵する。さらに水力エネルギーの包蔵量(利用可能量)は岐阜県に次いで第2位で、まだ利用可能なエネルギーが30億kWh以上も残っている。
新たに取り組んだ水力発電の代表的な例が「片貝別又(かたかいべつまた)発電所」である。県の東部を流れる片貝川は流れが急なことで知られている。川の上流から約1キロメートルの導水路を敷設して、下流にある発電所まで水を送り込む。この方式で水流の落差は298メートルに達する。
発電能力3000kW(キロワット)で2015年11月に運転を開始して、2016年4月から4500kWに引き上げた。年間の発電量は1830万kWhになり、一般家庭の5000世帯分に相当する。最大で毎秒1.8立方メートルの水量を発電に使うことができる。特に春の融雪期に水量が増加する。
この中規模な水力発電所は北陸電力が建設・運転する。一方で関西電力が小規模な水力発電所を2015年11月に稼働させた。関西電力は「クロヨン」で有名な「黒部川第四発電所」をはじめ、富山県内に数多くの水力発電所を運転している。新たに稼働した「出し平(だしだいら)発電所」は関西電力が所有するダムの直下に建設した。
ダムから下流にある2カ所の大規模な水力発電所に水を供給するほかに、下流の自然環境を守るため維持流量を放流している。この維持流量を生かして、37メートルの水流の落差で発電する仕組みだ。ダムの壁面から発電所までを水圧鉄管でつなぎ、最大520kWの電力を供給できる。
年間の発電量は171万kWhを想定していて、一般家庭の480世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は38%で、小水力発電の標準値60%と比べると低い。維持流量が大幅に変動して発電量が変わるためだ。出し平発電所では流量に合わせて発電機の回転速度を変えながら安定して運転できるシステムを導入した。
古い水車を更新すれば発電量が増える
小水力発電の取り組みは農業用水路にも広がる。東部の朝日町を流れる「小川用水」には、2016年7月末に完成したばかりの小水力発電所がある。川の右岸を流れる用水路から発電所まで、700メートルにわたって導水管を敷設した。水流の落差は12メートルになり、最大で190kWの電力を供給できる。
年間の発電量は166万kWhを見込み、一般家庭の460世帯分に相当する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で北陸電力に売電して、地域の土地改良施設の維持管理費にあてる方針だ。発電能力が200kW未満の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)で、年間に5600万円の売電収入になる。
農業用水路の水量も季節によって変動する。小川用水発電所が導入した水車発電機は、水流を取り込む入り口の部分で流量を調整できる仕組みだ。このタイプの水車発電機は保守が簡単なことから、農業用水路で水量の多い場所に適している。
富山県内では古い水力発電所の水車を新しいものに交換して、発電能力を増強する取り組みも進んでいる。1962年に運転を開始した発電能力1万kWの「奥山発電所」では、2015年10月に水車を更新して発電能力を300kW引き上げた。これで年間に250世帯分の電力を増やすことができる。
北陸電力は水力発電所の新設と設備更新を通じて、年間の発電量を2008年度から2020年度までに1億kWh拡大する計画を推進中だ。すでに2016年度内に目標を達成できることが確実になり、2020年度の目標値を1億3000万kWhに修正した。一般家庭の使用量に換算して3万6000世帯分の電力が増える。
富山県では固定価格買取制度がスタートした2012年よりも前に稼働した水力発電所が多い。それでも新たに買取制度の認定を受けて運転を開始した中小水力発電の規模は全国で10番目になった。加えて太陽光発電とバイオマス発電の導入量が徐々に増えてきた。
アルミ廃棄物から水素も作る
太陽光発電では富山湾に面した富山新港で2016年3月にメガソーラーが運転を開始している。港の一角を占める7万平方メートルの用地に2万枚の太陽光パネルを設置した。発電能力は4.5MW(メガワット)で、年間に約500万kWhの電力を供給できる。
富山新港が立地する射水市(いみず)では木質バイオマス発電所も稼働中だ。地元のグリーンエネルギー北陸が発電能力5.8MWで2015年5月に運転を開始した。年間の発電量は3900万kWhを見込んでいて、1万世帯分を超える電力を供給できる。
燃料の木質バイオマスは周辺地域の森林で発生する間伐材などを年間に約7万トン利用する計画だ。県の森林組合連合会と長期の供給協定を締結して、安定した調達体制を構築した。さらにグリーンエネルギー北陸が100%出資して木質チップの製造会社も運営している。
このほかに再生可能エネルギーのユニークな試みとして、アルミ系の廃棄物から水素を製造するプロジェクトが進んでいる。富山県内の有力企業が共同で設立したアルハイテックがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて2014年から取り組んできた。2016年4月には検証用のプラントが稼働して、周辺の工場から排出するアルミ系の廃棄物を使って水素の製造に着手した。
検証プラントでは廃棄物からアルミを分離して、アルカリ溶液と反応させて高純度の水素を発生させる。すでに1時間あたり2キログラムの水素の製造に成功して、今後は最大5キログラムまで製造能力を拡大する予定だ。燃料電池車の走行距離に換算して700キロメートルに相当する水素を1時間ごとに製造できるようになる。
アルミ系の廃棄物は紙パックや強化プラスチック製品などに付いているアルミニウムを利用可能だ。原料が生物由来ではないためにCO2フリーの水素ではないが、廃棄物の再資源化で水素エネルギーを生み出せるメリットは大きい。検証プラントで実用性を確認したうえで、アルミ廃棄物を排出する全国各地の工場に展開していく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/23/news034.html
2016/08/19
2016年8月19日
福島県では、同県内において小水力発電や地熱発電の事業可能性調査を補助する支援事業の2次公募を開始した。
同「福島県地域参入型再生可能エネルギー導入支援事業(再生可能エネルギー事業可能性調査補助事業)補助金」は、小水力発電、地熱発電(バイナリーサイクル発電方式)の事業可能性調査自体が十分に行われていない現状をうけ実施される補助金制度。これらの発電事業計画のある事業者および団体に対し、事業可能性の調査費用や電力会社との系統連系協議にかかる費用を助成する。
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