2016/08/30
2016年8月30日掲載
環境省は、平成28年度環境技術実証事業のうち中小水力発電技術分野において、実施中の本年度の実証試験対象技術の2次募集に係る説明会を9月6日(火)に開催する。
説明会では、技術分野の実証試験の概要や実証対象技術の応募方法に関する説明を行う。2次募集の応募受付期間は9月9日(金)17:00まで。なお、応募に当たって説明会への参加は必須条件ではない。
2次募集の概要
●募集する実証対象技術
平成28年度環境技術実証事業のうち中小水力発電技術分野で取扱う技術は、「水の位置エネルギー等を活用し、渓流、河川部、排水路などの流量と落差を利用して小規模、小出力の発電を行う技術等」とし、おおむね出力100kW未満のものを対象とする(100kW以上の水車については電気学会電気規格調査会標準規格(JEC-4001)が適用されている)。
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2016/08/26
2016年8月26日発表
経済産業省の「平成28年度水力発電事業性評価等支援事業(人材育成等を行う事業に係る業務)」の一環として、一般社団法人電力土木技術協会が水力開発に係る人材の育成を図ることを目的とした表記の研修会を開催します。
本研修は、新エネルギー財団を主催者として全国(主に各経済産業局、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局、及び内閣府沖縄総合事務局経済産業部の所在地)10か所において開催するもので、このたび、東北経済産業局管内の地域を対象とし開催する運びとなりましたので、ご案内します。
1.研修会の内容
本研修会は、「有望と目される水力開発地点(再開発を含む)に関し、必要な調査(地形・地質、流況および水利や送配電系統の状況等)を計画・実施するとともに、その成果に基づいて、概略計画の策定ならびに事業性評価が実行でき、さらに効率的・経済的な水力発電の促進を進める上で必要な技術を有する人材等の育成を図ること」を目的に実施するもので、内容は基礎的で平易なものをベースに、ある程度実務面も重視した構成で、水力発電に係る座学研修を2日間、近傍の水力発電所、又は測水所等における現地研修を1日、計3日間となっています。
2.実施要領
日時:平成28年9月28日(水曜日)9:30~17:00(座学研修)
29日(木曜日)9:30~17:00(座学研修)
30日(金曜日)8:30~12:30(現地研修)
場所: (座学研修)TKP仙台カンファレンスセンター カンファレンスルーム3B
〒980-0013 宮城県仙台市青葉区花京院1-2-3
電話:022-217-7126
(現地研修) 名取川水系 大倉発電所、三居沢発電所
参加料:無料
対象者:
水力発電所の開発を予定する企業、団体等に属する者、若しくは個人
地方公共団体、公的支援・融資機関等で地域振興のツールとして興味のある者
その他、水力発電の開発に興味を有する者
募集人員:60名(応募者の総数が定員を上回った場合は、入場を制限する場合があります)
応募期限:平成28年9月12日(月曜日)
3.申込み方法
申込先:一般社団法人電力土木技術協会
電力土木技術協会ホームページ を開き、トップページのNewsに掲示中の本研修の紹介欄右端の「申込」を開き、お申し込みください。
4.本研修に関するお問い合わせ先
〒105-0011 東京都港区芝公園2丁目8-2小貝ビル4F
一般社団法人電力土木技術協会
電話:03-3432-8905 FAX:03-3935-1778
E-mail:h.maruyamaアットマークjepoc-m.or.jp
※アットマーク部分を@に変更してください。
担当:人材育成研修 担当
このページに関するお問い合わせ先
東北経済産業局 資源エネルギー環境部 電力・ガス事業課
TEL:022-221-4941 (直通)
FAX:022-213-0757
http://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/denryoku_free/topics/160826.html
2016/08/26
2016年8月26日掲載
三重県は、青蓮寺ダム取水施設等の施設機能保全のための整備として製造された「青蓮寺用水発電所(三重県名張市)」の運転開始式を8月31日に行うことを発表した。
年間3億6600万円分のメリット×40年
青蓮寺用水発電所の最大発電出力は183kW、年間発電量は510,000kWh。発電による収益は施設の電力料金・修繕費等に充当することで、地区内施設に係る維持管理費軽減を図る。また、青蓮寺用水発電所は青蓮寺ダムの落差を利用した小水力発電で、最大使用水量は0.75立米/s。
青蓮寺用水発電所は、青蓮寺ダム取水施設等の施設機能を保全するための整備として、地元の土地改良事務所の事業により造成された。
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2016/08/25
2016年8月25日掲載
水力発電の殿堂入り--。中部電力の宮城(みやしろ)第一水力発電所(長野県安曇野市、400キロワット)が、米国の水力専門誌・ペンウェル社が主催する「水力発電の殿堂」に日本で初めて選ばれた。1号機(250キロワット)は110年以上稼働し続けている国内最古の現役水力発電設備。7月26日に米ミネソタ州で受賞式が開かれ、丹羽章裕・ワシントン事務所長らが出席した。
水力発電の殿堂は、北米地域で100年以上稼働している設備を対象に、1995年から表彰している。これまでに表彰されたのは計41カ所。今回から北米以外の地域にも範囲を広げ、新たに3カ所が殿堂入りを果たした。宮城第一水力以外の2カ所は、北米の水力発電所だった。
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http://www.shimbun.denki.or.jp/news/construction/20160825_01.html
2016/08/25
2016年8月25日掲載
ダムは永久にエネルギーを生む「夢の装置」だ
新規建設なしで年間2兆円分、電力を増やせる
竹村 公太郎 :元国土交通省河川局長
水力発電というと、一時代前の開発しつくされた電力源というイメージが強いだろう。確かに、今後、新規の巨大ダムが建設される見込みはなく、水力発電の総発電量に締める割合は10%足らずにすぎない。
しかし、国土交通省で数々のダム建設に携わってきた竹村公太郎氏(元同省河川局長)によると、既存ダムの活用で、新規の巨大電力を生み出すことが可能であるという。既存ダムの潜在能力を発揮させれば、現在の2~3倍の水力発電量を確保することができるというのだ。
資源安で危機感は薄らいでいるものの、歴史的に見ればエネルギー問題がつねに日本の国運を左右してきた。今後は、二酸化炭素削減の必要もあり、化石エネルギーへの依存を見直していかざるをえない。3.11以来、原発稼動には高いハードルが横たわっている。そうした中、安定したエネルギー源として水力発電量の比率を高めることの意義は大きい。
日本のエネルギー問題解決のカギを握る「純国産」再生エネルギーの隠れた可能性について、前回に続き、このたび『水力発電が日本を救う』を上梓した竹村氏が解説する。
ダムは半永久的に壊れない
私は、ダムは、半永久的にエネルギーを与えてくれる、とてつもない装置だと思っている。
その大前提として、「ダムは壊れない」という事実がある。
あの東日本大震災のとき、東北の広い地域で震度7や6強を観測した際、農業用の貯水池は破損したが、本体が壊れたダムはなかった。日本は地震国であり、明治以降にも頻繁に大きな震災が起こっているにもかかわらず、全国の何千というダムには、ダム本体が壊れた例はない。
私のようなダムの専門技術者にとって、地震でもビクともしないダムの堅固さは当たり前なのだが、一般の方には理解されていない。ダムの真価を知ってもらうには、このダムの安全性を理解していただく必要がある。なぜなら、ダムが壊れないということは、半永久的に電力を生み続けられるということを意味するからだ。
ダムが壊れないといっても信じてもらえないのは、ダムをビルなどと同様に考えている人が多いからだ。だが、ダムは事情が異なる。コンクリートダムは、ビルなどの構造物とは同じではない。
ダムが壊れない3つの理由
それには、3つの理由がある。
・ダムが壊れない理由① コンクリートに鉄筋がない
ひとつ目の理由は、ダムとビルとでは、コンクリートに根本的な違いがあることだ。多くの人がテレビ報道などで、ビルが崩壊する光景を目にしているから、「コンクリートはいつか壊れる」というイメージがある。だから、コンクリートダムもいずれは壊れると思われるのは仕方がないかもしれないが、それは誤りなのだ。
というのも、ビルなどのコンクリートと、ダムのコンクリートには、非常に大きな違いがあるからだ。
そのひとつは、ダムのコンクリートには鉄筋がないことだ。ビルの建築現場では、コンクリートの壁や柱の中を鉄の棒が通っている。あれが鉄筋だ。薄い壁の構造物を強くするには鉄筋が必要となる。だから、鉄筋があったほうが丈夫だと思うかもしれない。
しかし、必ずしもそうとはいえない。むしろ、ビルなどのコンクリートが長持ちしない原因こそ、鉄筋なのだ。なぜなら、鉄はさびるからだ。コンクリートに小さなひび割れでもあれば、中に水が浸入していき、鉄筋がさびてしまう。そして時間が経つと、ビルのコンクリートは、鉄筋のさびのせいで劣化して弱くなってしまう。
ところが、ダムのコンクリートには、そもそもまったく鉄筋がない。セメントと砂と石だけでできている。だから、ダムの壁はどれだけ年月が経とうが、内部がさびてもろくなることはない。鉄筋のないダムのコンクリートは、何百年経とうが劣化して弱くなることがなく、丈夫さを保ち続ける。
実は、鉄筋の入っていないコンクリートは、天然の岩と同じなのである。コンクリートに使われるセメントは、要するに石灰岩だ。石灰岩と砂と石とが固まっているのがコンクリートであり、成分は凝灰岩(ぎょうかいがん)という天然の岩と同じである。つまり、鉄筋のないコンクリートは、天然の岩盤とほぼ同じなのだ。
凝灰岩は年を経るにつれて堅く強固になっていくという性質がある。同じようにダムのコンクリートは、100年、200年、300年と強固になり続けていく。
・ダムが壊れない理由② 基礎が岩盤と一体化している
ダムが壊れない理由の2つ目は、基礎部分にある。
近年、マンションの杭(くい)が、岩盤に達していないと発覚して社会問題となった。マンションでは、柔らかい地層の下の固い基盤にまで、決まった数だけ杭を打ちこんで、その杭の上に建物を建てなければならない。
ところが、ダムの場合はもっと徹底している。たとえば、渓谷にダムを建設するときには、渓流の表面の岩をすべて除去しなければならない。なぜなら、表面の岩は、水などによって風化していてもろいからだ。
もろい表面の岩を取り除く膨大な掘削工事を続け、頑丈な岩盤を表に出す。そして、その岩盤の上に直接コンクリートを打ちこんで、ダムをその上に作っていく。つまり、ダムの基礎は、杭などで支えるどころか、岩盤と一体化させてしまうのだ。このことも、ダムが壊れない理由のひとつなのだ。
壁の厚みもケタ違い
・ダムが壊れない理由③ 壁の厚さは100m
ダムの強固さについての3つ目の理由は、壁のコンクリートの厚みがビルとはケタ違いだということだ。
ダムの壁の断面を見ると、高さと底辺がほぼ同じ長さの三角形になっている。ダムの下部では、コンクリートの厚みはダムの高さと大体同じだ。
たとえば、高さが100mのダムがあったとしよう。すると、このダムのコンクリートの厚みは、一番厚い最下部では100mにも達する。100~200mのコンクリートの塊というのは、人間の作ったものとしては最大級の大きさであり、あのピラミッドにも匹敵する。人工物というより天然の山といったほうがいい規模だ。
私たち日本のダム技術者は、昔から机上の計算を過信しなかった。万が一の天災でも耐えられるように十分すぎる安全値をとった結果、高さと厚みがほぼ同じという、頑丈すぎるほどの構造になっている。
以上のように、次の3つの理由で、日本のダムは壊れない、半永久的に使えるといえるのだ。
1.コンクリートダムには鉄筋がない。
2.堅い地層に直接コンクリートを打って基礎にしている。
3.壁の厚みが極めて厚く巨大な山となっている。
永久に使えるというと、次のような反論が出される。
「ダムが長持ちしても、ダム湖が砂で埋まれば使えないだろう」
これは事実だ。確かにダム湖には、雨と一緒に周囲の山から土砂が流れ込んでくる。そのため、ダムにはだんだんと土砂が堆積していくこととなる。
だが、少しだけ誤解がある。ダムに砂が堆積しやすいのは、高度成長期に盛んに造られた電力ダムである。電力ダムの場合、ダムから土砂を排出する穴が用意されていない。理由は土砂が底に溜まっていてもあまり関係がないからだ。ダムのかなり上のほうまで土砂があっても、水位は高くなるので、水の位置エネルギーが確保できる。発電に問題がないのだ。
一方、電力ダムとは違って多目的ダムの場合、土砂が堆積しにくくなっている。大雨が降るたびに、ダム湖の外へ洪水を放流する際に、一緒に土砂を排出してしまうからだ。
多目的ダムには治水という目的もあるので、水を下流に放流するための「洪水吐(こうずいはき)」という特別な穴が用意されている。この洪水吐から大量の水を排出するとき、同時に、ダム湖の土砂が大量に外へ出ていくのだ。だから、多目的ダムでは土砂は堆積しにくい。さらに多目的ダムは、100年間の土砂が堆積してもいいように計画されている。
しかし、100年、200年、300年と経過すれば砂は堆積してしまう。この場合は、土砂を取り除く必要があるのだが、これは簡単に解決する。
土砂を浚渫(しゅんせつ)したり、ダム湖の底の土砂にパイプを突っ込んで水圧を使って外へ出したり、あるいは土砂吐けのゲートやトンネルを新しく造ったりと、さまざまなやり方がある。どれも、新しくダムを作るのに比べると、簡単な工事だし、費用もケタ違いに安い。このように、多目的ダムは土砂でダム湖が埋まる心配はないし、電力ダムの場合でも、土砂の堆積は解決できる。だから、ダム湖に流れ込む土砂が、ダムの寿命を縮めることはない。
水を貯めたままダムに穴を開ける
日本全国の川に、すでにダムが存在している。一級河川には国が作ったダム、二級河川には都道府県の作ったダムがある。そして、これまで述べてきたように、半永久的に使うことができる。
ところが、その潜在的な電力はあまり開発されていないのが現実だ。多目的ダムの場合、法律などの問題があることは前回述べたが、現実には、潜在的な発電能力の半分も使われていない。それどころか、発電設備のないダムも多い。非常にもったいない話だ。発電をしないダムには、水を水路に導く穴が開いていない。つまり、発電していないダムで新たに発電しようとすれば、ダムに穴を開ける必要がある。ほとんどの方が、こう考えてしまうだろう。
「ダムのコンクリートに穴を開けるなんてできない。できたとしても大工事だろう。コストもかかるに違いない」
ところが、実際には違う。私たちダム専門技術者にしてみれば、ダムに穴を開けるのは可能なのだ。事実、九州にある鶴田ダムでは、この工事を行っている最中だ。発電設備のないダムを発電用に改修する工事は可能だ。そして、これにより新たな水力発電ができる。
前回、多目的ダムは運用を変えて、ダム湖の水量を増やせば発電力が格段に増すという話をしたが、もうひとつ、ダムを活用できる方法がある。ダムの「カサ上げ」と呼ばれる方法だ。このカサ上げも、水力発電の潜在的な力を引き出す重要な手段である。
では、カサ上げとは何か。
簡単に言ってしまえば、ダムを高くすることである。たとえば、高さが100mのダムがあるとする。もし、このダムをあと10m高くすれば、それだけ多くの水が貯められるし、水位も10m上がる。ダムが高くなれば、ダム湖の容量を大きくするし、湖水の水位も高くなる。これが発電力の増加につながる。水力発電では、ダム湖の水は量が多いほど効率がよくなるし、ダム湖の水位も高いほうがよいのが原則だ。それは、水の位置エネルギーが、その水量と高さに比例するからだ。
ダムの高さを上げれば、ダム湖の水をたくさん貯められ、高さも稼げる。水力発電力を増加させることができるわけだ。100mから110mに上げるのだから、高さ的にはたった10%の違いである。ところが、この10%がバカにならない。実は、電力で考えると、単純計算でも発電量は約70%も増えるからだ。
たった10%のカサ上げで電力が倍になるわけ
意外かもしれないが、簡単な理屈だ。ダム湖というのは大きな容器に水が入っているのと同じだ。仮に、この器がシャンパングラスと同じ形だとしよう。あのグラスは円すい形であるが、円すい形の容器の場合、高さが10%増えると、容積は約33%増える。
次に、水の高さを考えると、新しく貯まる水の高さの平均は、今まで貯まっていた水の高さの平均の約2倍になる。そして、高さが上がった分だけ、発電量は増えるのだから、発電量も2倍という計算だ。以上で、電力の増加量を計算すると、次の式になる。
0.33×2=0.66
つまり、発電量は66%増えることになる。こうした結果になるのは、シャンパングラスの場合、容器の底のほうほど狭くなっていて、上に行くほど広い形をしているからだ。
実際のダム湖は、シャンパングラスのような単純な形をしてはいないが、底のほうほど面積が狭く、上のほうほど面積が広いという意味では同じであり、原則的にこの計算と同様の結果になる。さらに、実際のダムの場合、いちばん下の部分はまったく発電には使えない。土砂を貯める部分となっているからだ。それで、現実的には、100mのダムの高さを10mカサ上げすると、発電能力はほぼ倍増することになる。
つまり、たった10%のカサ上げは、発電量でいえば、ダムをもう1つ造るのと同じことになるのだ。このように、たった10%でも、ダムのカサ上げの効果は思ったよりも大きい。
実際のカサ上げの例として、北海道の夕張シューパロダムをご紹介する。このダムはもともとダムの高さが67.5mだった。それを43.1mカサ上げして、高さを110.6mにする工事を進めている。これによって貯水容量は、8700万立方メートルから4億2700万立方メートルに増える。つまり、ダムの高さを約1.5倍にすることで、貯められる水が、なんと5倍近くにまで増えるのである。このように、ダムをカサ上げすることで、意外なほどに貯められる水は増えるし、発電能力も激増するのだ。
現在、日本の総電力供給量に対する水力発電の割合は8%ほどだ。私は日本のダムの潜在的な発電能力を引き出せば、30%まで可能だと試算をしている。これまで述べてきたように、方策は3つある。
第1に、多目的ダムの運用を変更すること。河川法や多目的ダム法を改正して、古い運用法を変えれば、ダムの空き容量を発電に活用できる。
第2に、既存のダムをカサ上げすること。これによって、新規ダム建設の3分の1以下のコストで、既存の発電ダムの能力を倍近くに増大できる。
第3に、現在は発電に使われていないダムに発電させること。このうち中小規模のダムについては後で述べる。
一般には、水力発電はもはや拡大の余地がない、あるいは、水力発電の拡大には巨大ダムの新規建設が必要で環境破壊を避けられない、というイメージのようだが、事実は違うことを説明してきた。巨大ダムの新設はもう必要ない。莫大な公共投資も必要ない。環境破壊も巨額の税金の投入もなしで、水力発電は何倍にも増やせるのだ。
中小水力発電の具体的なイメージ
すでに述べたように、日本には非常に多くのダムがある。大きなものでは、国が直轄している多目的ダムから、都道府県が管轄している小さな砂防ダムまでさまざまだ。そのどのダムについても、水力発電に利用できる。
ダムが大きければ発電量が大きくなるし効率も良くなるが、小さいダムでも発電は可能である。ダムの高さが10mクラスの小さな砂防ダムでも発電は可能で、100k~300kWほどの電力は簡単に得られる。
たとえば200kWというと小さすぎると思われるだろうが、実際にはバカにならない。なぜなら、砂防ダムの場合、ひとつの渓流でいくつも存在しているからだ。仮にひとつの渓流に5つの砂防ダムがあれば、そのすべてで発電できる。200kWだとすると5つで1000kWになる。
さらに、ひとつの川には、いくつもの渓流が支流として存在する。支流すべての砂防ダムの数を合計すれば数十になることも珍しくなく、そのすべてのダムを発電に利用すれば、何千kWにもなる。この発電を、過疎に悩む水源地域の活性化に生かすこともできる。
こうした状況が日本中の川で存在しているわけで、一つひとつの川のダムの発電量が数千kWでも、日本全国で見れば膨大な電力となる。日本には多数のダムがあり、全国で新たに中小水力発電に利用できる箇所は、調査によってさまざまな数字を挙げているが、どれも数千のケタに上る。たとえば、2011年に環境省が行った調査では、出力3万kW未満の水力発電を新たに開発可能な場所は2万カ所以上あり、そのすべてを開発すると、総電力は1400万kWに上ると試算されている。
中小水力発電の潜在力は非常に大きいのだ。
日本に1年間に降る雨や雪の位置エネルギーを、すべて水力発電で電力に変換すると、7176億kWhになると試算されている。今の日本で1年間に発電されている電力量は約1兆kWhだから、もし水力を完全に開発できれば、電力需要の70%ほどをまかなえる計算だ。
少なくとも200兆円分の富が増える
実際には、すべての降水の位置エネルギーを電力量に変換するのは不可能で、これはあくまで理論値だ。現在の水力発電の電力量は900億kWh強であり、理論値には程遠い。現実にどこまでの開発が可能かは、技術と経済の状況次第となる。少なくとも、運用変更とカサ上げは今すぐにでも実現可能である。全国のダムについて試算してみると、運用変更とカサ上げだけで、343億kWhの電力量を増やせると試算される。
さらに、現在のところ発電に利用されていない中小ダムを開発することは、技術的には何ら問題ないし、再生可能エネルギーの固定買取制度のおかげで、経済的にも好条件となっている。
中小水力発電については、開発可能地点の試算が調査によって違っていて定説はないが、少なくとも1000億kWhほどの電力量が増やせるといわれている。運用変更とカサ上げで約350億kWh、これに1000億kWhの電力量を加えれば、1350億kWhの増加となる。
すると、水力全体で2200億kWh以上となり、日本全体の電力需要の20%を超える。これだけの純国産電力を安定的に得られる意味は非常に大きい。といっても、kWhなどという単位でご説明しても、直感的にピンとこないと思う。電力を金額に直したらどうなるか。仮に、水力発電の電力量が現在より1000億kWhだけ増加したとする。
将来の電力料金がいくらになるかは予想できないので、現在の料金で考えよう。家庭用電力料金では、平均して1kWhあたり20円だとすると、1000億kWhの電力料金は、年間約2兆円分に当たる。
つまり、少なく見積もっても、純国産のエネルギーが毎年2兆円分も増加するわけだ。
しかも、発電に最も重要で巨大な投資を要するダムは、半永久的に使える。仮に100年しか使えなかったとしても、年に1000億kWhの電力量の増加は、100年分で200兆円分の電力を余計に産んでくれる計算になる。
つまり、ダムとは、この先の日本に、200兆円を超える富を増やしてくれる巨大遺産なのだ。この遺産を徹底的に活用すべきである。このような議論を展開するのは、日本の100年後、200年後の将来を考えるからだ。子孫たちがダムという遺産に感謝する時代が必ず来る。
未来のためにも、今生きている人間が、ダムという遺産を存分に活用するための道筋を作っておくべきだ。これが、ダムを建設してきた先人たちの強い思いなのである。