2016/09/06
2016年9月6日掲載
電力市場の構造改革に伴って送配電ネットワークの費用負担を見直す。現在は小売電気事業者が電力会社の送配電ネットワークを利用するために託送料金を支払う仕組みになっている。2020年度に実施する発送電分離に合わせて、発電事業者も送配電ネットワークの費用を負担する制度に変わる。
[石田雅也,スマートジャパン]
自由化で電気料金が安くなったが、小売電気事業者にとっては電力会社に支払う送配電ネットワークの利用料(託送料金)の負担が大きい(図1)。地域によってばらつきはあるものの、小売価格の4割強を託送料金が占めている。一方で電力を供給する発電事業者には託送料金は発生しない。
図1 現在の電気料金の仕組み。出典:資源エネルギー庁
電力市場の健全な競争を促進する電力・ガス取引監視等委員会が、こうした送配電ネットワークの費用負担の仕組みを変更する検討に入った。送配電ネットワークの費用には発電所から変電所、さらに住宅・商店やビル・工場まで電力を送る配電のコストが含まれている(図2)。
図2 送配電ネットワークの費用の対象(原価・単価は東京電力の例、画像をクリックすると拡大)。出典:電力・ガス取引監視等委員会
このうち発電所の費用は電力会社の火力発電所と水力発電所が対象になる。送配電ネットワークを流れる電力の周波数を調整する「アンシラリー」と呼ぶサービスのコストだ。電力は需要と供給力の変動によって周波数が不安定になるため、火力発電所や水力発電所の出力を上げ下げして調整する必要がある。需要家に供給する電力の品質を維持するコストであることから、小売電気事業者が負担する託送料金の原価に入っている(図3)。
図3 託送料金原価の算定方法。NW:ネットワーク。出典:電力・ガス取引監視等委員会
ところが電力市場の構造変化によって新たな課題が出てきた(図4)。再生可能エネルギーの電源を含めて発電設備が拡大すると、それに合わせて送配電ネットワークの容量を増強しなくてはならない場合がある。増強にかかる工事費は原則として電力会社が負担することになっているため、託送料金の原価が増える。発電設備に関連したコストであるにもかかわらず、小売電気事業者が託送料金として負担する。
図4 送配電ネットワークの費用負担の課題。VPP:仮想発電所。出典:電力・ガス取引監視等委員会
地産地消などを対象に割引制度も検討
電力・ガス取引監視等委員会が検討している新しい費用負担の仕組みは、小売電気事業者を対象にした託送料金に加えて、発電事業者にも発電設備の容量に応じて課金する方法である(図5)。すでに欧州ではイギリスやフランスをはじめ各国が発電設備に課金する制度を導入している。
図5 送配電ネットワークの費用負担の変更イメージ。NW:ネットワーク。出典:電力・ガス取引監視等委員会
送配電ネットワークの費用は発電設備の立地場所によって変わる。このため地域ごとに料金を変える案も検討していく。現在でも地域によって託送料金を安くする制度はある。「需要地近接性評価割引制度」と呼ぶもので、需要の多い地域に立地する発電設備から電力の供給を受ける場合などを対象に託送料金を割り引く(図6)。
図6 「需要地近接性評価割引制度」の適用対象地域(画像をクリックすると理由も表示)。出典:電力・ガス取引監視等委員会
典型的な例は東京電力の管内で、供給力に対して需要の多い1都4県が割引制度の対象に指定されている。このほかにも新しい発電設備が加わることによって送電時の電力の損失を低減できるような地域は割引制度の対象になる(図7)。
図7 送配電ネットワークの潮流の変化。出典:電力・ガス取引監視等委員会
今後は現行の割引制度を見直しながら、送配電ネットワークの運用コストを低減させる効果が期待できる利用方法に幅広く適用していく方針だ。発電した電力を地域内で消費する地産地消のケースが好例で、送配電ネットワークを広域で利用しないことから運用コストの低減につながるとみなされる(図8)。
図8 送配電ネットワークの高度な利用例と託送料金インセンティブ。出典:電力・ガス取引監視等委員会
送配電ネットワークの費用負担の見直しに関しては、2016年度中に基本方針をとりまとめる。2017年度には料金の算定方法を含めて詳細な制度の設計を完了させる。その後の2年間で電力会社のシステムの改修など準備を進めて、2020年度から新しい料金体系を導入する予定だ。
2020年度には電力会社の送配電部門を分離・独立させる発送電分離を実施することが決まっている(図9)。この段階では電力会社の発電部門も他の発電事業者と対等の立場で競争する必要がある。送配電ネットワークの運用コストを発電事業者と小売電気事業者が適切に負担する仕組みは発送電分離にも欠かせない。
図9 発送電分離(送配電部門の中立化)の実施イメージ。出典:資源エネルギー庁
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1609/06/news031.html
2016/09/06
2016年9月6日掲載
小水力発電の普及を目指す「関西広域小水力利用推進協議会」(京都市下京区)は1泊2日の見学ツアー「小水力発電を訪ねる旅」を10月22、23両日に予定し、参加者を募集している。2012年にスタートし、今回で5回目。「環境に優しい小水力発電に関心のある人にぜひ参加してほしい」としている。
22日午前9時、JR京都駅前を貸し切りバスで出発。滋賀県米原市の「いぶきグリーンエナジー」バイオマス発電工場(3550キロワット)、長浜市のエナジーバンクジャパンの農業用水路での小水力発電所(10キロワット)などを見学。岐阜県郡上市で宿泊し、23日は石徹白(いとしろ)農業用水農業協同組合の石徹白番場清流発電所(125キロワット)などを訪ねる。午後7時、京都駅前で解散予定。
食事代含め2万6500円。食事4回付き。最少催行人数30人。第1次募集締め切りは9月20日。申し込みはマイチケット(06・4869・3444)。問い合わせは推進協議会・里中さん(080・7051・5830)。【榊原雅晴】
2016/09/05
2016年9月5日発表
経済産業省は、「平成28年度水力発電事業性評価等支援事業」として、標記研修会を札幌で開催します。
本研修は、有望と目される水力開発地点(再開発を含む)における、必要な調査の計画・実施、その成果に基づいた概略計画の策定や事業性評価等を実践的に行うことで、効率的・経済的な水力開発に必要な技術を有する人材の育成を図ることを目的とし、全国10か所で実施しているものです。
●研修の内容
基礎的で平易な内容をベースに、実務面も重視した構成で、2日間の座学研修と近傍の水力発電所又は測水所等における現地研修の計3日間で実施します。
●実施要領
座学研修
【日時】平成28年10月5日(水)・6日(木)いずれも 9:30~17:00
【場所】北海道立道民活動センター(かでる2・7)10階1060会議室(札幌市中央区北2条西7丁目)
現地研修
【日時】平成28年10月7日(金)8:30~12:30
【場所】石狩川水系 藻岩浄水場発電所、藻岩発電所、白井川測水所 ほか
●定員・対象
【定員】60名(参加費無料)
【対象】水力発電所の開発を予定する企業、団体等に属する者、若しくは個人
地方公共団体、公的支援・融資機関等で地域振興のツールとして興味のある者
その他、水力発電の開発に興味を有する者
●申込方法
研修会及び申込方法等の詳細は、以下のウェブサイトをご覧ください。
行事・イベント案内((一社)電力土木技術協会のウェブサイト)http://www.jepoc.or.jp/event/
日程、2016年10月05日~2016年10月07日、名称、「水力発電に係る人材育成のための研修会(北海道地域)の開催について」の「詳細」PDFに含まれている申込書、または、「申込」のフォームが利用出来ます。
応募締切:平成28年9月20日(火)
●申込・問い合わせ先
〒105-0011 東京都港区芝公園2丁目8-2 小貝ビル4階
(一社)電力土木技術協会(担当:人材育成研修担当)
TEL:03-3432-8905
FAX:03-3935-1778
E-mail:h.maruyama@jepoc-m.or.jp
2016/09/01
2016年9月1日掲載
農業用水用の青蓮寺ダム(名張市中知山)に小水力発電の「青蓮寺用水発電所」が完成し、三十一日から運転を始めた。ダムから取水した農業用水を大小二基の水車で発電する。発電所を設置した東海農政局によると、小水力発電は津の安濃ダムに次いで県内二カ所目という。
ダムは、伊賀や名張市の田畑千ヘクタールに五十年近く農業用水を供給している。発電所は、ダムの水を農地に送るパイプの修繕に併せて二年間かけて造った。
大きい水車の発電機と小さい水車の発電機を組み合わせることで夏や冬など季節ごとの放水量の増減に応じて、小さな流量でも利用できるのが特長。
高所にあるダムの水をパイプで農地に緩やかに送るため、水圧を弱めていた部分に発電所を設置。発電の水も農業用水に回すことで、エネルギーも水も効率的に利用する。
年間百四十世帯分の電気を生みだし、二酸化炭素(CO2)二百八十トン(乗用車百六十台分)の削減効果がある。発電機の大は百六十キロワット、小は二十三キロワットを発電し、中部電力に売電する。その収益で取水施設の保全も図る。
同日、発電所で運転開始式があり、農林水産省や県の関係者、伊賀、名張の両市長らが「地元で作った再生可能エネルギーを地元で消費するすばらしいしくみ」と祝った。 (飯盛結衣)
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160901/CK2016090102000019.html
2016/09/01
2016年9月1日掲載
オリックスはベトナムの水力発電事業に参入する。9月中にシンガポールの大手銀行と共同で、ベトナムの水力発電大手「ビテクスコ・パワー・コーポレーション」に数十億円を出資し、株式の1割超を取得する。人口増加を背景に急増する電力需要を取り込む。
オリックスは国内外で太陽光や風力、地熱発電事業を展開しているが、水力発電事業に出資するのは初めてという。
9月中旬にビ社が第三者割当増資を実施し、オリックスとシ…
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