2016/10/27
2016年10月27日掲載
農業と林業が盛んな岐阜県の八百津町を、水素タウンのモデル地域として発展させるプロジェクトが始まった。木質バイオマスや太陽光で作った電力からCO2フリーの水素を製造する計画で、2017年度にも水素製造装置を導入する。エネルギーを地産地消しながら観光産業の振興にも生かす。
[石田雅也,スマートジャパン]
岐阜県の南部にある八百津町(やおつちょう)は山と平野のあいだに広がる典型的な中山間地で、農業と林業を中心に発展してきた。近年は人口減少に悩む中で、新たに「中山間地型水素社会の構築による100%エネルギー自給自足のまち 八百津プロジェクト」を推進中だ。
このプロジェクトは八百津町と岐阜県に加えて、岐阜大学と地元の民間企業も加わって産学官連携で取り組んでいる。町内の3つの地区を対象に、再生可能エネルギーで電力と熱を供給するのと合わせて水素の製造にも着手する計画だ。八百津産のエネルギーだけで町内の電力と熱を100%自給自足できる体制を目指す。
3つのモデル地区の1つは「人道の丘」で、ここには第二次世界大戦中に約6000人のユダヤ人の命を救ったことで知られる外交官・杉原千畝氏の記念館がある(図2)。観光の名所でもある場所に太陽光発電と木質バイオマスボイラー、さらに水素で電力と熱を供給する燃料電池を導入する。周辺の住宅や店舗にも電力と熱を供給しながら、観光と再生可能エネルギーの相乗効果を高めていく狙いだ。
八百津プロジェクトに参加する民間企業の1社は、隣接する愛知県に本社があるブラザー工業である。事務機メーカーの同社は新規事業として燃料電池システムを開発した。水素を貯蔵できる特殊な金属を採用して、安全な状態で長期に水素を保管して発電できる特徴がある(図3)。現在はプロジェクトの参加企業と共同で、熱も供給できる燃料電池システムを開発中だ。
八百津プロジェクトでは2016年度中に事業計画を策定したうえで、2017年度から燃料電池と合わせて木質バイオマスボイラーや水素製造装置を導入していく。すでに総務省から「分散型エネルギーインフラプロジェクト・マスタープラン策定事業」の事業費として2400万円の交付を受けることが決まっている。
八百津プロジェクトが目指す水素タウンは、地域の再生可能エネルギーで作った電力からCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造して、町内の住宅や公共施設・農業施設に効率よく電力と熱を供給する。林業関連の事業者が集まる久田見(くたみ)地区に水素製造装置を導入する予定で、太陽光発電と木質バイオマス発電の電力から水素を製造する計画だ(図4)。
製造した水素は純水素型の燃料電池を使って地区内に電力と熱を供給する一方、町の中心部に導入する燃料電池にも供給する。地域の再生可能エネルギーで作った電力を地産地消しながら、余剰分を水素に転換・貯蔵して有効に活用する体制だ。この仕組みで地域のエネルギーを100%自給自足できる水素タウンを構築していく。
八百津町には2016年3月に移動式の水素ステーションが営業を開始している(図5)。プロジェクトにも参画する県内企業の清流パワーエナジーが開設した岐阜県で初めての水素ステーションだ。観光を軸に近隣地域から燃料電池自動車を呼び込んで、水素タウンの発展につなげる。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1610/27/news024.html
2016/10/24
2016年10月24日掲載
三重県農林水産部は、多気町などの宮川用水地区の3地区を対象にした「小水力発電導入可能性調査業務」に着手した。有効落差などのデータにより事業化の可能性を調査し具体化を検討する。
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2016/10/23
2016年10月23日掲載
2012年から検討が進んでいた高知市土佐山地域の小水力発電が具体化する見通しとなった。高川地区(高橋幹博区長)の住民が出資者となり、地区内の谷川の流れを利用して70~80世帯の年間使用電力にあたる28万キロワット時を発電、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づき売電する。当初構想の事業規模を3分の1以下に縮小し、総事業費約8400万円で整備を進める。千キロワット以下の小水力発電は高知県内にも既存施設があるが、住民による出資・運営は前例がなく、実現すれば全国でも先駆的な民間発電所となる。
高川地区は50世帯ほどが暮らしている。高齢化が進み地域の運営が難しくなることを見越し、集落の活動に必要な資金を売電で確保する狙いという。
高川川支流の標高494メートル地点から取水し、内径25センチほどのポリエチレン管で約90メートル下に流して水車を回す。全量を電力会社に売電し年間収入は約930万円を見込む。
発電所の建設費は、地区で請け負った道路清掃の収入などをためた地区費や金融機関の融資金などでまかなう予定。建設、運営のため、地区と住民有志、須崎市出身のフォトジャーナリスト、古谷桂信さんが代表を務める「地域小水力発電株式会社」(香美市土佐山田町)が出資して新会社を設立する。
計画では、売電収入のうち毎年48万円が地区に入り、落ち葉の除去など水源地の管理や補修を担う住民には報酬を払う仕組みだ。
事業の発端は東京電力福島第1原発の事故。高知県内の研究者らが「高知小水力利用推進協議会」を発足させ、高川地区に提案した。
当時は最大で設備投資3億円、発電出力180キロワット前後の規模を想定していたが、住民側は資本金の負担や災害などで施設が被害を受けた際などの責任問題などを懸念。将来にわたって重荷にならないよう再検討し、発電出力49・9キロワットの規模であらためて作成した事業計画を10月16日の地区の臨時総会で承認した。
高橋区長は「2、3年のうちに稼働にこぎ着けたい」と話しており、地区役員らの準備委員会が出資額の決定や行政の許認可手続きなどを進める。
高知市新エネルギー推進課によると、取水する谷川は法律に定めのない水路(青線)で高知市が管理している。
新エネルギー推進課の岩村里香課長は「地区の取り組みを後押しするスタンスだ。住民の意向を確かめながら青線を使用する許可などを検討していく」としている。
高知県によると県内には11カ所の小水力発電所がある。いずれも四国電力や大手企業か、第三セクターを含む公営の施設。集落の機能維持を担うための地域住民による設置は例がないという。
2016/10/22
2016年10月22日掲載
唐津市七山の観音の滝周辺で計画されている小水力発電所建設をめぐる説明会が21日、七山市民センターで開かれた地区の駐在員会であった。事業主体の九州発電(本社・鹿児島市)の担当者が、一定の水量を確保し、景観に配慮して計画を進める考えを示した。
発電所建設に直接関係する滝川区や東木浦区、西木浦区以外に、計画の概要が詳しく伝わっていないという声を受けて市が説明の機会をつくり、七山の全14地区の代表が出席した。
出席者からは滝の景観を心配する質問が続いた。九州発電の担当者は、過去10年間の水量を計算した上で取水量を算出したことを説明し、「滝の水がなくなるようなことはない」とした。地元の滝川区と協定を結んだ場合に順守する姿勢や、発電所が設置されれば観光施設として開放し、地域に貢献する意向も示した。
市への質問もあり、七山市民センターの平野勝文センター長は「計画に問題がなければ静観する立場。ただ、景観だけは損なわないようにと当初からお願いしている」と答えた。
滝川区は同社と結ぶ協定書案を検討中で、案をもとに区の会合で計画への賛否を問う方針にしている。
2016/10/20
2016年 10月 20日掲載
飯田市上村の地元住民など4人が取締役を務める「かみむら小水力株式会社」が9月9日付で設立登記され、同月末までに前島衛社長(75)=同市上村=らに伝えられていたことが、分かった。上村程野地区の1級河川・小沢川(こざわがわ)に取水口を、上村川新程橋付近に発電所を設ける計画で、得た売電収益を地域振興や課題解決に活用する住民主体の小水力発電事業。前島社長は「2018年度中の本格稼働を目指したい」と話している。
きっかけは市が2009年度に環境省の委託を受けて実施した小水力発電の導入ポテンシャル調査。13年には「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」が施行され、市域の豊富な再生エネルギー資源を活用して活力ある地域づくりの推進がスタートした。
この間、上村では小水力発電事業の検討協議会を立ち上げ、事業の資金調達や電力会社との取引の際に株式会社のほうが交渉しやすい―との判断から、前島社長を委員長とする会社設立準備会を発足させて計画を練ってきた。上村まちづくり委員会は6月定例会で会社設立を了承し、資本金となる100万円を寄付。9月正式に設立登記され、前島社長をはじめとする地元住民3人と社外取締役の計4人が役員を務める。
飯田市によると小沢川上流に取水口を設け、約800メートルの導水管を引いて新程橋付近の発電所までつなげる予定。総落差90メートルの水路方式により最大180キロワットの発電を見込み、本年度は発電に利用できる流量の調査などを実施。詳細設計を経て来年度着工、18年度からの売電を目指し、近く水車メーカーへの視察も予定しているという。
総事業費は約3億7000万円を見込み、うち9000万円は県から無利子の融資を受ける予定。市は施行した条例が、エネルギーを市民の共有財産とみなし、地域住民が優先的に活用できる「地域環境権」をうたっていることから、同小水力発電事業を「公民協働事業」に位置付けて信用補てんや金利無利子融資、助言などの面で支援する。
前島社長は「いまはやらなければならないという強い気持ち」と気を引き締める。売電収入の使い道には小学児童や保育園児を増やすための対策費、地域活性化につながる起業支援、観光資源開発、農林業振興などに充てる案が挙がっているといい「せっかくある資源を活用し、地域最大の問題である少子高齢化の解消に多少なりともつながれば」と話している。