2016/12/14
2016年12月14日掲載
福知山市夜久野町畑地区で12日、住民組織「畑七つの里づくり協議会」(越後正則会長)と大阪府豊中市のメーカーが共同で開発するEVトラクターの試作機が披露され、田を耕す運転も試された。協議会が取り組む環境やエコロジーをテーマにした地域活性化活動の一つ。メーカーは「半年後を目標に実用、量産化する技術を備えたい」と意欲的だ。【佐藤孝治】
畑地区の7自治会で組織する同協議会は、水量の豊富な谷川が多い環境を生かし、地区内で2基の小水力発電装置を稼働させ、イベント時の電飾などに利用している。
協議会によると、活動の話を聞いた豊中市の「EVジャパン」(西田長太郎社長)の人たちが今春視察に訪れ、交流する中で小水力発電で得た電気で動くトラクターを開発することになった。
EVジャパンは、京都と大阪にある自動車関連会社が共同で設立した電気自動車の開発、製造会社。協議会副会長の中島俊則さん(73)が経営する会社にあった既製のトラクターを流用し、エンジンや燃料タンクなどを外してモーター2基とバッテリー4基、同社が独自開発した駆動装置を組み込んだ。
EVは、排ガスが出ずビニールハウス内でも健康を気にせず使える。試運転では前日までの雨でぬかるんだ田でも力強く耕す事を証明した。試乗した近くに住む中島正治さん(73)は「震動がほとんど無く、楽に作業ができる」と話していた。
試運転を見守った住民らからは重いバッテリーの配置場所などを指摘する声もあり、西田社長は「改良したい」と対応。協議会の中島副会長は「パワーもあり、電力消費も大丈夫で実用化の見通しはついたのでは。EVトラクターを大いに広めたい」と意欲を見せていた。
〔丹波・丹後版〕
2016/12/13
2016年12月13日掲載
広島県では太陽光・小水力・バイオマスを利用した発電設備が拡大中だ。遊園地の跡地やゴルフ場の隣接地でメガソーラーが運転を開始した。山間部にある2つの川をつなぐ水路では小水力発電所が稼働した。世界で最先端の石炭ガス化発電所やバイオマス混焼発電所の建設も進んでいる。
[石田雅也,スマートジャパン]
広島県の北部にある安芸高田市(あきたかたし)では、2008年までテーマパークの「広島ニュージーランド村」が営業を続けていた。自然が豊かな環境の中でヒツジやヤギと触れ合えることを売り物に、1990年に開園した当初は人気を呼んだものの、その後は入園者が減少して閉鎖に追い込まれてしまった。
広さが100万平方メートルに及ぶ広大な跡地を利用して、「ウエストニュージーランド村ソーラーパーク」が2016年3月に運転を開始した。テーマパークの地形を生かして太陽光パネルを設置する一方、建物は保存して地域の住民に開放する予定だ。
太陽光パネルの設置数は3万8000枚にのぼり、発電能力は9.6MW(メガワット)に達する。年間の発電量は1030万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると2900世帯分に相当する電力になる。発電した電力は固定価格買取制度で中国電力に売電して、年間に4億円強の収入を得られる計画だ。
このメガソーラーから40キロメートルほど南に下ると、瀬戸内海に面してゴルフコースを備えたリゾート施設がある。ゴルフコースに隣接する3万平方メートルの敷地には、発電能力2MWのメガソーラーが2016年5月に運転を開始した。
雨が少なくて日射量が豊富な瀬戸内式気候の特徴を生かして、年間の発電量は290万kWhを想定している。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は16%を超える水準になり、国内の太陽光発電の標準値13%を大幅に上回る。一般家庭で800世帯分の電力を供給できる。
同様に瀬戸内海の沿岸部にある工業地帯の一角では、中国電力グループのエネルギア・ソリューション・アンド・サービスが「ESS福山太陽光発電所」を2016年4月に稼働させた。発電能力は7.2MWで、年間の発電量は980万kWhになる。このメガソーラーの設備利用率も15.5%と高い。隣接地には中国電力の「福山太陽光発電所」(3MW)が2011年から運転を続けている。
2つの川のあいだに28メートルの落差
沿岸部とは対照的に降水量の多い内陸部へ行くと、小水力発電の取り組みも活発だ。山に囲まれた北部の北広島町では、中国電力の99カ所目の水力発電所「芸北(げいほく)発電所」が2016年3月に運転を開始した。
この小水力発電所は中国山地から流れてくる川に面して建っている。ただし発電に利用する水は別の川から取り込む。2つの川のあいだをつないで、2カ所のダムの水量を調整するための分水路が山の中を通っている。2キロメートルほどの距離がある分水路の途中に取水口と水槽を設けて、そこから水圧管路で発電所まで水を送り込む方式だ。
水流の落差は28メートルになり、最大で毎秒2立方メートルの水を発電に利用できる。発電能力は430kWで、年間に220万kWhの電力を供給できる見通しだ。一般家庭の600世帯分に相当する。これまで分水路を流れる水はダムの水量を調整するために使われてきたが、新たに再生可能エネルギーの電力を生み出せるようになった。
長距離にわたって敷設する水圧管路には一般的な鉄製ではなくて、高密度ポリエチレン樹脂で作った水管を採用した。鉄管に比べて腐食に強く、耐震性に優れている点が特徴だ。中国電力は芸北発電所で初めて採用した。軽量で施工しやすいうえに、市販品を利用できるために工事費が安く済むメリットもある。水車発電機には汎用的な横軸フランシス水車を導入した。
県営のダムでも小水力発電の導入プロジェクトが始まっている。県内に10カ所あるダムを対象に発電事業の可能性を調査した結果、中部の東広島市にある「福富ダム」ならば採算がとれる見通しが立った。ダムの直下に発電所を建設して、ダムから下流に放流する水を取り込む方式だ。42メートルの落差で最大1.5立方メートル/秒の水量を利用できる。
発電能力は370kWまで上げることが可能で、2017年度に運転を開始する予定だ。年間の発電量は200万kWhを見込んでいる。このうち180万kWhを固定価格買取制度で売電して、年間に5200万円の収入を得ることができる。一方で事業費に約4億円かかり、毎年の運転維持費に900万円を想定している。買取期間の20年間の累計では3.3億円の利益を出せる計画である。
木質バイオマスを45%混焼する石炭火力発電所
広島県の再生可能エネルギーは太陽光発電と小水力発電に加えて、バイオマス発電の導入量も増えてきた。固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始したバイオマス発電設備の規模は全国で11位に入る。その中でも林業が盛んな地域の資源を生かして、木質バイオマス発電の導入が進んでいる。
木質バイオマスと石炭を混焼する大規模な発電所の建設プロジェクトがある。広島ガスがLNG(液化天然ガス)の基地の構内に、発電能力11万2000kWの「海田(かいた)バイオマス混焼発電所」を建設する計画だ。2017年に着工して、2019年に運転開始を予定している。
地域の林地残材や海外から輸入する木質バイオマスを年間に26万トン利用する。さらにコストの安い石炭を32万トン、補助燃料として天然ガスを1~2万トン加える予定だ。バイオマスの混焼比率は45%になり、石炭火力発電で問題になるCO2排出量を抑制できる。最先端の発電設備でもCO2排出量は0.8kg-CO2/kWh(キログラム換算CO2/キロワット時)を超えてしまうが、6割以下の0.458kg-CO2/kWhまで低下する。
石炭火力発電のCO2排出量を低減する試みは、瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)でも進行中だ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて中国電力とJ-Power(電源開発)が共同で取り組む「大崎クールジェンプロジェクト」である。石炭をガス化してからガスタービンと蒸気タービンで2段階に発電するIGCC(石炭ガス化複合発電)の実証試験設備が2016年8月に運転を開始した。
IGCCで発電効率を高めてCO2の排出量を減少させたうえで、排出したCO2を回収して再利用する。最終的には発電に伴って発生する水素まで回収して、燃料電池でも発電するIGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)へ進化させる構想だ。
IGFCの実証運転を2021年度まで続けた後に、2025年をめどに発電設備を大型に拡張できる技術を確立する。この時点で発電効率(燃料の熱エネルギーを電力に変換できる割合)は55%に達して、最新のLNG火力発電と同等の水準になる見通しだ。広島県が次世代の石炭火力発電の技術開発をけん引していく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1612/13/news016.html
2016/12/10
2016年12月10日掲載
再生可能エネルギーによる夢のある地域づくりをめざし、京都府福知山市夜久野町畑(はた)地域の「七つの里づくり協議会」(越後正則会長)が、地元の小河川で小水力発電をして蓄えたバッテリーで作動するトラクターを、大阪の企業と共同開発している。排気ガスが出ず、低騒音で、エンジン式のように燃料代はいらず、省エネにつながる。現在は試作の段階で、12日に実証実験をして作業能力を確かめる。
小水力発電はダムのように河川の水をためることなく、小河川や農業用水の水の流れをエネルギーに変えて有効利用する小規模な発電方式。ダム開発に伴う環境への影響が無く、CO2排出による地球温暖化を防げるとして、各地で普及が図られている。
畑地域では、7自治会で組織する協議会が、水量の豊かな谷川が多いという地の利を生かして、昨年2月と今年2月にそれぞれ水車2基を稼働させ、発電した電力をイベント時の電飾、コーヒーメーカーなどに生かしている。
民家や街路灯に送電する計画も立てているが、電気事業法の問題、関係機関への手続きの煩雑さなどもあって遅れている。こうした中、電気自動車などの製造・開発をする大阪府豊中市のEVジャパン(西田長太郎社長)が今春視察に訪れ、小水力発電に関心を示し、小水力発電トラクターの開発が決まった。
排ガス、騒音無くハウス内でも使える
試作機は、長さ約2メートルの既製のトラクターから21馬力のエンジンと軽油タンクを取り外し、車軸用と耕運ロータリー用のモーターそれぞれ1基とバッテリー4基を載せた。水車で発電した電気を蓄えて積み、走らせる。
協議会によると、一般的なエンジン式とは違い、騒音の心配がなく、排気ガスも出ないので、人家が多い地域でも気兼ねなく使える。ビニールハウス内でも健康を害することなく使える。燃料代がいらず、エンジンオイル交換などのメンテナンスの必要が少ないことなどをメリットとして挙げる。
車体に電源コンセントを付けており、停電時に非常用照明器具などの電力としても使えるという。
他の農機具への応用も視野に
まだ、使わなくなったトラクターを利用して試作した段階。12日午前10時30分ごろから、企業関係者が訪れて、畑地域の軽食類を提供する交流施設「ななっこ」前の田んぼで実証実験をし、作業能力や消費電力、稼働時間などを調べる。
今回は100ボルト電源で充電するが、年度内に水車での充電を試す予定。良い結果が得られれば、他の農機具などへの応用も視野に入れ、改良を重ねるという。
実証実験は雨天決行。だれでも見学できる。問い合わせは、ななっこ=電話0773(37)0030=へ。
協議会関係者は「エンジン式に比べるとパワーは劣ると思うが、静かで、あまり振動もないため地球環境や省エネ、利用者の健康面などトータルで考えればメリットが大きいと思う。地元の小水力発電を利用するので、電力の地産地消にもつながる。農業革命を起こそうというのが夢」と意欲をみせる。
2016/12/09
2016年12月9日掲載
長野県は建設中の2カ所の小水力発電所の電力を新電力に売電することを決定した。いずれも2017年4月に運転を開始する予定で、合計で1750世帯分の電力を供給できる。新電力は固定価格買取制度の単価に0.5円を上乗せして買い取り、東京・中部・関西電力の管内で販売する計画だ。
[石田雅也,スマートジャパン]
小水力発電所で新たに売電の対象になるのは、長野県の企業局が2013年から建設を進めてきた「高遠(たかとお)発電所」と「奥裾花(おくすそばな)第2発電所」の2カ所である。
発電能力は高遠発電所が180kW(キロワット)で、奥裾花第2発電所は980kWと規模が大きい。それぞれ年間に125万kWh(キロワット時)と507万kWhの電力を供給できる見込みだ。両方を合わせると一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1750世帯分に相当する。
2カ所とも2017年4月1日に売電を開始する予定だ。長野県が当初の3年間の売電先を公募して、3社の応募の中から丸紅グループの丸紅新電力を選定した。買取価格が高かったことに加えて、信州発の自然エネルギーをアピールする提案内容を評価した。
丸紅新電力は固定価格買取制度の単価に0.5円を上乗せして電力を買い取る。発電能力が200kW未満の高遠発電所は1kWhあたり34.5円(税抜き)で、200kWh以上の奥裾花第2発電所は買取価格が29.5円になる。2カ所を合わせた長野県の売電収入は年間に1億9000万円を超える見通しだ。通常の買取価格で売電した場合と比べて約300万円の収入増になる。
買い取った電力は新電力の「みんな電力」が東京・中部・関西電力の管内で販売する予定だ。みんな電力は東京都の世田谷区を拠点にして、再生可能エネルギーによる電源の開発と電力の販売を広域に展開している。
その一環で2016年4月の小売全面自由化に合わせて「ENECT(エネクト)」と呼ぶユニークなサービスを開始した。「生産者の顔が見える電力」が特徴で、消費者が応援したい発電所を選んで電力を購入できる。
基本料金の中にENECTのシステム利用料(月額500円)を上乗せする代わりに、応援した発電所から地元の特産品などが送られてくる仕組みだ。これから運転を開始する長野県の小水力発電所から電力を購入すると、地元の見学ツアーや県産品のプレゼントがある。
長野県には20年間で16億円以上の利益
長野県の企業局は県内で14カ所の水力発電所を運転している。発電能力を合計すると9万9050kWに達する。今後は固定価格買取制度の対象になる小水力発電所を増やしていく計画で、2000年以降に初めて開発に取り組んだ水力発電事業が高遠発電所と奥裾花第2発電所である。
県南部の伊那市に建設中の高遠発電所は農業用水を供給する「高遠ダム」の直下に建設する。このダムからは1958年に運転を開始した県営の「春近(はるちか)発電所」(発電能力2万3600kW)まで10キロメートルの導水路を使って水を供給している。
新たに建設する高遠発電所では、下流の自然環境を維持するためにダムから放流している水のエネルギーを利用する。水量は最大で毎秒1立方メートルあり、ダムの取水面から発電所までは21メートルの落差になる。水車発電機には大きな落差を生かせる横軸フランシス水車を導入する。
一方の奥裾花第2発電所は県北部の長野市にある「奥裾花ダム」の下に建設中だ。ダムの直下では「奥裾花発電所」(1700kW)が1979年から運転を続けている。新設の第2発電所は既設の発電所に隣接させて、ダムからの水流を分岐して発電する方式を採用した。
この一帯は豪雪地帯で、春先には大量の雪解け水がダムに流れ込んでくる。ダムから放流する水量も多くなるため、2つの発電所に分けても十分な量を確保できる。既設の発電所は最大で毎秒4立方メートル、第2発電所では毎秒2.5立方メートルの水量を利用することが可能だ。それぞれ落差は54メートルと48メートルになる。水車発電機には同様に横軸フランシス水車を使う。
新設する2カ所の小水力発電所の電力は今後も長野県が定期的な公募を通じて売電先を選んでいく。固定価格買取制度の対象になる20年間は最低でも国が保証する買取価格で売電できる。発電所の建設にかかる総事業費は合わせて16億円強を想定している。毎年の運転維持費を考慮しても、20年間の累計で16億円以上の利益を得られる見込みだ。
すでに長野県では水力発電を中心に再生可能エネルギーの電力が県内の最大需要の8割をカバーできる状態に達している。引き続き小水力発電と太陽光発電を拡大して、2017年度には再生可能エネルギーによる電力の自給率を100%へ高める計画だ。小水力発電ではダムの水流を利用する以外にも、農業用水路に水車発電機を設置する方法で導入量を増やしていく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1612/09/news040.html
2016/12/08
2016年12月8日掲載
佐那河内村は、府能地域に小水力発電施設の建設(増設)を計画しており、基本設計をエコー建設コンサルタント(徳島市)で2017年3月に完了する。実施設計と工事は17年度以降に発注する。
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