2014/01/10
大人二人で持ち運べ、川や水路に沈めるだけで利用できる携帯型の水力発電機「Cappa(カッパ)」を茨城県日立市の中小企業が茨城大工学部と共同開発した。旅館やホテルなどで災害時に最低限必要な非常用電力がまかなえる。農業や観光にも幅広く活用できるという。昨年十二月から販売を始めた。東京電力福島第一原発事故後、再生可能エネルギーに関心が高まる中、地域の非常用発電として注目を集めそうだ。 (林容史)
ダムを利用した大規模な水力発電や、出力千キロワット以下で川の落差を利用した小規模な小水力発電と違い、携帯型水力発電機は身近な河川や水路の流れそのものを利用する。平地でごく簡単な設備で発電できるのがメリット。出力は小さいが避難所などでの生活に最低限、必要な電力を生み出すことができる。環境に負荷を与えず、取り付けや撤去がしやすい。小水力発電のように、県の登録や水利権を持つ関係者の同意を得る必要もないという。
開発会社は、日立製作所向けに大型発電機の部品などを製造している「茨城製作所」(本社・日立市、渡辺英俊社長)。水力発電機は円筒形で幅八三・二センチ、奥行き七十七センチ、高さ六六・五センチ。中は空洞になっていてプロペラが水流で高速回転することで発電する仕組み。蓄電できるバッテリーも併せ持ち、安定出力が可能だ。強化プラスチック製で軽量化を図り、重さを五十七キロに抑え、大人二人で持ち運べるようにした。
水深五十センチ以上、幅一・一~四・五メートルの川や水路での使用を想定。流速が一般的な人の歩行速度(秒速約一・一メートル)より少し速い平均毎秒一・七五メートル以上あれば、出力百六十ワットで連続発電できる。災害時には避難所などでの電灯や携帯電話の充電、ラジオ、パソコンに活用できるという。
使い方は、川や水路の両岸に二本のアルミ板を渡し、取っ手を付けた本体を水中に沈め、両橋に固定する。流体力学を駆使して設計し、集水後に流速を増す構造。二〇一三年度のグッドデザイン賞に選ばれた。
開発チームリーダーの菊池伯夫(のりお)専務(37)によると、東日本大震災で多くの社員が被災し、避難所生活を強いられた経験がきっかけ。停電と燃料不足で発電機が使えず、暗闇の中、不安な日々を送った。菊池専務は「情報と明かりさえあれば人は安心できる」と水力発電機の開発に乗り出した。
天候に左右されず、身近な川や水路を利用でき、二十四時間、安定して発電できる。小さな発電量であれば小型化も可能という。
災害以外にも農作業用の電源、防犯灯や観光地のイルミネーション、野生動物の侵入を防ぐ電気柵など幅広い用途をアピールする。将来は東南アジアなど、無電化地帯への輸出も視野に入れている。受注生産で価格は本体や制御システムなど基本セットで二百九十万円から。問い合わせは茨城製作所=電0294(21)5135=へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014011002000245.html
2014/01/08
JR西日本は鉄道事業者として初めて、鉄道トンネルの湧水を使った小水力発電のフィールド試験を開始する。売電事業というより、自社施設が生み出す再生可能エネルギーを有効利用するための試みだ。
[畑陽一郎,スマートジャパン]
JR西日本は2014年1月から、鉄道トンネルの壁面にわき出す水を使った小水力発電のフィールド試験を開始する。鉄道事業者として初の試みだという。邪魔な湧水の思わぬ活用策だといえるだろう。
同社が選んだのは北陸本線にある「北陸トンネル」。敦賀駅(福井県敦賀市)と南今庄駅(福井県南越前町)を結ぶ全長約14kmの鉄道専用トンネルだ(図1)。1962年に開通した当時は日本最長のトンネルとして知られていた。新幹線用などを除けば現在でも日本最長の鉄道用トンネルである。
ただし、北陸トンネルを試験対象として選んだ理由は長さではない。「当社には新幹線と在来線を合わせて約1200のトンネルがある。環境負荷の低減を目的に小水力発電に取り組む際、湧水量と落差の2つの条件を満たすトンネルを捜していた。全トンネルの調査は完了していないものの、北陸トンネルが条件を満たしていた」(JR西日本)。北陸トンネルの湧水量は毎秒0.17m3、落差は1.4mだ。
同社によれば、フィールド試験の目的は2つある。「1つは三菱電機から調達した縦軸クロスフロー水車*1)の性能を確認し、現場に合わせて一部を改修することだ。もう1つは時間をかけて確実に発電できるかどうかの確認だ」(同社)。縦軸クロスフリー水車は小水量・低落差でも発電できることから選択した。フィールド試験には2015年3月末まで1年以上をかける。
*1) 三菱電機プラントエンジニアリングによれば、直方体の筐体の下部に水車を置き、増速機を経て、上部に発電機を配置した一体型の構造を採る。電圧や周波数を安定させる電力供給装置と接続することで、電源として機能するという。
水車と発電機を設置するのはトンネルの南側(敦賀側)である(図2)。線路脇にある湧水排水路に機器を設置する。出力は1.2kW、想定年間発電量は約1万kWhである(図3)。「年間発電量は一般家庭の3世帯分の消費電力量に相当する。今回は近くに当社の事務所があるため照明用電力として使い、余った分は北陸電力に無償譲渡する。1200のトンネルのうち適地に展開を検討しており、事務所や駅の他、トンネル内照明に役立てたい。売電収入を得るというよりも再生可能エネルギーの有効利用を狙っている」(同社)。
なお、同社は小水力以外にも再生可能エネルギーの利用に取り組んでいる。大阪駅ではホームの西側屋根に太陽電池モジュールを448枚設置済みであり、年間9万kWの発電を見込む。駅の消費電力の約25%をまかなっているという。山口県では社有地に出力5MWのメガソーラーを建設中だ。2014年度冬の完成を目指す。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1401/08/news029.html
2014/01/08
北海道は、農業水利施設を活用した小水力発電導入基本整備計画の素案をまとめた。道内で小水力発電の可能性を有する農業水利施設は204カ所で、賦存量は年間発電電力量で2万5907メガワットと試算。一方で、既存水利権では経済性が十分確保できない場合が多く、新たな発電用水利権取得が必要になるなど課題も指摘し、取り組み方針として市町村などへの技術支援や国費事業を活用した導入検討などを挙げた。
素案では、道内の農業水利施設を対象に行ったアンケートを基に、小水力発電の賦存量を算定。施設別ではダムが98カ所で年間発電電力量が2万0255メガワット、ため池が76カ所で222メガワット、用水路が30カ所で5430メガワット。合計の2万5907メガワットは、一般家庭約7200戸分の年間消費電力量に相当するとしている。
一方で、素案では建設費の自己負担比率や取水期間、取水量を変化させ複数のパターンで経済性を試算。北海道の場合は、水田用水の水利権の取水期間が短いため、発電期間も制限されるため、既存のかんがい用水利権では建設費自己負担比率が100%の場合に経済性が見込まれる施設はゼロ、50%の場合でも1カ所にとどまる。ただ、取水期間や取水量を増やせば経済性が見込める施設が増えることから、導入に向けては、新規に発電用水利権を取得し、取水期間の延長や取水量の増加により経済性を向上させる必要性を指摘。簡易検討による接続可能容量の確認や変電所への対策工事など電力会社への接続に向けた事前協議も課題に挙げた。
道ではこうした課題を踏まえ、市町村や土地改良区らと設立した北海道農業水利施設小水力発電推進協議会を通じて情報共有や課題の検討など連携を深めるとともに、小水力等再生可能エネルギー導入推進事業などの国費事業を活用した導入検討など、導入環境の向上に向けた取り組みを積極的に展開することにしている。
2014/01/01
中部電力が、長野県阿智村の天竜川水系で水力発電所の建設を目指し、調査に着手した。一般家庭七千世帯分の電気をまかなう出力5000キロワット級を想定する。2003年以降、1000キロワット以上の中規模水力の新規運転開始はなく、安定した再生可能エネルギーとして水力の活用を目指す。
東日本大震災後、浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働が見通せない中、中電は老朽化した火力発電所に加えて水力の活用を進めるが、これまでは千キロワット未満の小水力発電の開発が中心。「中規模以上は適地が乏しく、新規立地は全国的にも珍しい」(資源エネルギー庁)という。
発電方式は、河川の水をためずにそのまま使用する「流れ込み式」を想定。天竜川水系の黒川と小黒川に取水ぜきを設けて適当な落差がある地点まで水を導き、水車に向けて落下させて発電する。
2013/12/30
県建設部は29日までに、管理する16ダムのうち、発電に使っていない11ダムで、民間活力を生かした小水力発電を実施する研究を始めた。既存のダム施設を有効活用して発電し、自然エネルギーの拡大を図る狙い。効率の高い発電を目指すため、技術力やアイデアのある民間事業者を募ることを検討している。事業者が県に支払うダム使用料などをダムの維持管理費に充てることで、県負担の軽減にもつなげていく狙いだ。
東京電力福島第1原発の事故の影響などで、太陽光発電や水力発電など再生可能エネルギーに対する関心が高まっているが、有望な水力発電地点は電力会社などが既に開発している場合が多く、自然保護の観点から新たなダム建設には反対が根強い。
県内外の水力発電に詳しい信州大工学部(長野市)の飯尾昭一郎准教授は、県の構想について「複数のダムに小水力発電の導入を目指すのは全国的にも珍しいのではないか」とした上で、「新設水力発電所の適地がなくなっている日本で積極的に進めるべき方法だ」としている。
県建設部の構想だと、ダムから水道用水を取った後に余った水が河川に戻る水路などに発電施設を設置し、ダムから流れ落ちる水の勢いを生かすことを検討している。ダムは山間部にあるため周辺に余剰スペースが多く、発電施設を設置しやすいという。発電施設は民間事業者が設置し、電力会社に売電したり、事業に使用したりする。県にはダムの使用料金を支払う。
同部は今後、11ダムについて設備や立地条件を精査していく方針。水量や落差などから堤高72メートルの箕輪ダム(上伊那郡箕輪町)などが「有望」としている。
県建設部は、ダムの使用目的に発電を加えることに伴う事務手続きが明確ではないことや、事業者が支払う使用料をどの程度に設定すれば適切なのか見極めることが課題と説明。「課題が整理されれば、実施に向けて進めていきたい」(河川課)としている。
http://www.shinmai.co.jp/news/20131230/KT131226ATI090013000.php