2014/01/28
買い取り制で見直し機運
川の水流などを利用して電気をつくる「小水力発電」が地産地消の再生可能エネルギーとして見直されている。大きな出力を得られず、採算性が悪いことから戦後下火になったが、再生エネ電力を電力会社が決まった価格で買い取る「固定価格買い取り制度」の導入を機に新規導入が進んでいる。
「採算とれる」
再生前の水車発電機(東京発電提供)
温泉地・箱根(神奈川県箱根町)にある「須雲川(すくもがわ)発電所」は、昨年8月に運転を始めたばかりだ。運営するのは、東京電力の子会社で、水力発電専門の「東京発電」(東京都台東区)。同社の大久保誠理事は「見た目は新しい施設ですが、約30年前に放棄された発電所を改修しました」と説明する。
小水力発電は、一般的に出力1000キロ・ワット以下のものをいい、同発電所の出力は190キロ・ワット。須雲川の上流から毎秒580リットルの水を鉄管を通して約42メートル下の発電所に落とし、水車を回して発電する。これで一般家庭300世帯分の電気をまかなえるという。
約30年ぶりによみがえった須雲川発電所の発電機
もともと温泉旅館が自家発電用に1954年に設置したが、老朽化で84年に廃止され、町が遊休資産として管理していた。同社は2012年10月、廃屋同然となっていた発電所を町から譲り受け、設備を更新。最新式の水車発電機を導入し、約30年ぶりに新たな小水力発電所に再生した。
同社は、12年7月に始まった固定価格買い取り制度(FIT)を利用し、発電した電気を東京電力に売る。FITは、再生エネの電気を電力会社が通常の電気料金より高い価格で買い取る制度で、太陽光や風力、小水力を含む出力3万キロ・ワット以下の「中小水力」もその対象だ。水力の買い取り価格は、出力が低いほど高く、「200キロ・ワット未満」の同発電所の場合、最高の1キロ・ワット時あたり35・7円。大久保理事は「採算はとれる」と自信を見せる。
急峻(きゅうしゅん)な山間地の多い日本には、中小水力発電に向いた場所も多い。環境省は、全国の河川や農業用水など約2万地点で、原発9基分にあたる898万キロ・ワットの開発余地があると推計。「大規模開発の必要がなく、太陽光や風力と比べても天候や時間で発電量が左右されないことも利点だ」と説明する。
地方で高い関心
FITに後押しされる形で各地で今、小水力発電導入に向けた動きが進んでいる。具体的な導入数はまだ集計されていないが、経済産業省によると、豊富な水資源を持つ地方で特に関心が高い。鹿児島、山形、富山県などは小水力発電に向いた場所を調査したり、民間企業と連携した事業を計画したりしている。
全国でも珍しい再生可能エネルギー推進条例を制定する愛知県新城市は、廃止された小水力発電の位置などを市民から情報提供を受けてデータベース化。鳥獣被害を防ぐ電気柵の電源などに活用できないか模索している。
課題もある。一つは、水量の豊富な場所は人里から離れていることが多い点。福井県の担当者は「インフラ整備に費用がかかり、自治体単独で採算がとれるまで数十年かかる」と話す。地域生活に密着した水資源は、漁業や農業など様々な「水利権」が絡み、国の許可なく開発できない場所が多いことも難点だ。
国も支援強化
ただ、国も支援を強化している。国土交通省は昨年、水利用の許可を既に得ている農業用水を二次利用して小水力発電に使う場合、簡単な審査で済むよう制度を改正した。環境省も、小水力発電の導入費を補助している。
小水力発電の普及に取り組む民間団体「全国小水力利用推進協議会」の中島大(まさる)事務局長は、「地域の電力は地域でまかなうという住民の強い意思と、水利権の調整を含めた地域の合意形成が最も重要だ」と指摘する。(稲村雄輝、写真も)
(2014年1月28日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/eco/feature/20140128-OYT8T00540.htm
2014/01/26
馬越石水力発電所となる調整池の地下施設内部。右側の送水管に発電機が取り付けられる
水力発電事業のアクアパワー東北(仙台市)は、仙南・仙塩広域水道の高区調整池(同市太白区茂庭)に設置する小水力発電所の工事に着手した。名称は「馬越石水力発電所」で、7月に運転を始める予定。水道用水を使う小水力発電としては県内初の施設となる。
発電所は上流の南部山浄水場(白石市)との高低差を利用。調整池への送水管に発電機を取り付ける。総事業費は約2億5000万円。
計画出力は250キロワットで、年間発電量は一般家庭550戸分の使用量に当たる186万キロワット時を見込む。全量を東北電力に売電する。
アクアパワー東北は東北電力グループの東北発電工業など5社が出資し設立された。県の公募を経て昨年7月、事業運営者として県と協定を結んだ。契約期間は20年で、利益の中から年間約570万円の賃貸料を県に支払う。
24日に現地であった起工式には関係者約20人が出席した。同社の小泉俊夫社長は「無事に運転を開始できるよう努めたい」とあいさつ。橋本潔県公営企業管理者は「再生可能エネルギー普及の先導的な役割を担ってほしい」と期待した。
2014/01/21
佐伯市の機械加工部品製造「二豊鉄工所」と県、大分大は20日、風力発電や水力発電で永久磁石を使い効率よく発電できる発電機の開発を始めると発表した。磁力で金属を引き寄せたり、磁石同士が反発したりする力を応用し、回転エネルギーを高めて従来より多くの電力を生む仕組み。出力はこれまでの約2倍の見込みで、2016年の製品化を目指す。
同社などによると、通常の風力と水力の発電は「増速機」と呼ばれる装置で、歯車を使って風車や水車による回転数を早める。新たな発電機は、増速機に永久磁石を使って回転数を従来より効率よく早めることで、微風や流量が少なくても発電できるという。このほか、増速機と発電機を一体化し、エネルギーのロスを小さくしたとしている。
県によると、県と大分大は08年から、独立行政法人「科学技術振興機構」(JST)の助成で電磁力を応用した機器の技術開発に着手。これに同社が加わり、3者で新型発電機を開発することにした。機構の委託事業と、県エネルギー産業企業会の補助金を活用する。総事業費は約1700万円。国内で永久磁石を使った発電機は数社が開発を進めているが、今のところ製品化はしていないという。
価格は、従来の約3倍となる100万円程度の見込み。同社の戸高信義会長は「県内で小水力発電などに取り組む事業者に売り込み、需要を広げたい。ランニングコストが安くなれば、市場も受け入れてくれるのではないか」と話した。
2014/01/21
部品加工業の二豊鉄工所(佐伯市)は、小水力と風力発電の効率が高まる永久磁石を使った発電機の開発を始めた。大分大学が持つ電磁力の応用技術を活用。従来型と比べて2倍の出力が見込めるほか、システムの故障リスク低減、小型化も図れる。県産業科学技術センターを含めた3者で取り組み、2016年の製品化を目指している。
小水力と風力エネルギーは通常、そのままでは発電に必要なタービンの回転数を得にくいため、回転数を上げる増速機を組み込んだ発電システムを水車などの動力部分とチェーンでつなぐ構造になっている。
これに対し、新型発電機は増速機に、電磁力によるエネルギー伝達で歯車同士の接触がなく高効率な磁気歯車を採用。水中でも使えて動力部分と一体構造にできるため、チェーン連結によるエネルギーロスがなくなり、チェーンの切断など故障の心配も減る。コンパクトで設置スペースにも柔軟性が出るという。価格は従来品の約3倍の100万円程度を想定している。
科学技術振興機構(JST)の地域結集型研究開発プログラムに採択され、昨年12月から本格的な研究開発に着手した。当初1年間の事業費は1700万円で、うちJSTが800万円、県エネルギー産業企業会が600万円を補助する。
製品化できれば、水量が少ない用水路でも小水力発電が可能になるなど、再生可能エネルギーの活用拡大にもつながりそう。
20日、県庁で会見した二豊鉄工所の戸高信義会長は「電磁力の技術を生かし、注目される新製品を作りたい」と話した。
使われる電磁力の技術は、大分大学を中核に産科技センターや地場企業が12年まで5年間の事業で構築した。中原恵・産科技センター長は「広範囲に応用できる基盤技術で、再生エネや自動車など県内産業の発展に貢献していければ」としている。
http://www.oita-press.co.jp/localNews/2014_139026773531.html
2014/01/17
福島県を代表する土湯温泉で来年度、温泉熱を使うバイナリー発電(出力400キロワット)と小水力発電(同137キロワット)事業を始動させる。事業費はバイナリー6億5千万円、小水力3億5千万円。再生可能エネルギーの普及につながるとして計1億6500万円の国の補助金がついた。
土湯温泉は、東日本大震災で建物の一部が壊れたり、福島第1原発事故の影響で、長期休業を余儀なくされる旅館、ホテルがいくつも出た。「県外からの観光客は皆無。震災直後に受け入れた避難者が仮設住宅などに移ると、先行きが見通せなくなった」。どん底の中、元気アップつちゆが立ち上がった。
小水力は4月、バイナリーは6月着工の予定。「100%売電し、利益は土湯の再生とまちづくりに還元する。地域活性化策としても注目されている」という。福島県は全電力を再生エネルギーで供給することを目指しており、その一翼を担う。「昨年1年間で800人以上が宿泊で視察に訪れた。12月には旅館1軒が営業を再開し、新たな希望が見えてきた」と期待する。
平成12年まで旅館を経営し、観光協会長も務めた。現在は社会福祉法人の施設に衣替えしたが、ずっと土湯を見守ってきた。
土湯温泉は、県内で初めて「道の駅」を誘致するなど、「知恵と力を絞った」取り組みで知られる。「再生エネ博物館をつくり、電気自動車(EV)を走らせ、冷却水を再利用した養殖事業にも参入し、土湯をエネルギーパークにする。土湯の再生を福島の復興につなげたい」と願う。(大塚昌吾)
■元気アップつちゆ 福島市土湯温泉町下ノ町17。湯遊つちゆ温泉協同組合が1800万円、NPO法人の土湯温泉観光まちづくり協議会が200万円出資し、平成24年10月設立。電気事業の運営は、傘下子会社2社が行う。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/140117/fks14011713000000-n1.htm