2014/08/27
東京電力など5者は、中小水力向けに低コスト、高効率化を図った水車ランナーを開発した。中小水力の導入拡大に向けて課題となる初期費用の低減や更新の際の発電単価引き下げを狙ったもの。開発した水車ランナーには、工程数が多く費用がかさむ鋳造ではなく切削工法を採用。構造自体も見直すことで、3割程度コストを削減できるめどが立った。今秋から実際の発電所で実証試験を行い、耐久性などを検証した上で、現場への適用を図っていく考え。
経済産業省の補助事業として2012年度から4カ年計画で実施している。関電工と田中水力(相模原市、田中幸太社長)、平和産業(さいたま市、大竹功一社長)、早稲田大学が開発・設備実証を担当。東電は技術、設備運用面を支援した。今月6日には5者が共同で特許申請している。
開発したランナーは出力2千キロワット以下を対象としたもの。従来は鋳造や溶接で製造していたため、工程数が多く、費用がかさむという課題があった。5者は費用削減効果の大きい工法として切削に着目。切削に対応するため、軟らかく、かつ耐久性のある青銅アルミ合金に材料を変更するとともに、構造自体も羽根を覆うふたをなくしたシュラウドレス構造を採用することを決めた。
一方、ふたをなくすことによる弊害として羽根と静止部のすき間に水が漏れ、効率の低下を招くという問題が生じる。対処策として、羽根の先端面に細い溝を掘る手法を考案。羽根を伝ってきた水を溝の部分で渦とすることで、水漏れを抑制することに成功した。
直径27.5センチメートルの模型で試験した結果、水車効率が5ポイント向上することを確認。水車ランナーにかかるコストを3割程度削減できるめどが立った。今秋からは関電工が山梨県大月市の葛野川発電所下部ダムに建設中のマイクロ水力に実機(直径37.5センチメートル)を搭載し、実証試験を開始する。出力は150キロワット程度となる見込み。
中小水力は、環境負荷の低い電源として期待される一方、開発地点が山間に限られてきており、初期費用が課題となっている。既存設備の更新を進める上でも発電単価の低減が必要となっていた。東電では、2千キロワット以下の水車を36台保有しており、今後、更新期を迎える。開発したランナーを適用することで、発電単価を下げ、競争力を持たせたい考え。
紙面より転載
2014/08/26
福井県のエネルギー政策は現在でも原子力が中心だが、内陸部を中心に再生可能エネルギーで地域を活性化する取り組みが広がりを見せている。特に小水力発電 の開発が活発で、農業用水路や砂防ダムに導入する計画が動き出した。太陽光やバイオマスも加えてエネルギーの地産地消を目指す。
[石田雅也,スマートジャパン]
政府が推進する国家戦略特区の1つとして、福井県は「エネルギー成長戦略特区」の設置を提案している。国内に分散する原子力の研究機関を若狭湾岸 に集約する一方で、LNG(液化天然ガス)のパイプラインを日本海沿岸に整備して、国内における一大エネルギー拠点を形成する構想だ。福井県の優位性をア ピールした内容だが、再生可能エネルギーは組み込まれていない。
しかし現実には再生可能エネルギーを導入する動きが着実に広がり始めている。福井県を含む北陸地方は年間の降水量が全国で最も多く、豊富な水量を生かした小水力発電が有望だ。稲作を中心に農業が盛んなことから、内陸部を中心に農業用水路がはりめぐらされている。
県の中部に位置する越前市を流れる農業用水路では、新しい小水力発電所が2014年6月に運転を開始した。総距離が170キロメートルに及ぶ「日 野川(ひのがわ)用水」の分岐点に設けられた37メートルの落差を利用して発電する(図1)。この分岐点を流れる毎秒0.6立方メートル前後の水流を生か して、最大141kWの電力を供給することが可能だ。
水流の落差が十分にあることから、発電機には水力発電で最も多く使われる横軸フランシス水車を採用した(図2)。年間の発電量は102万kWh で、一般家庭280世帯分の電力使用量に相当する。年間を通じて水量が安定しているため、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は83%と極めて高 い。年間の売電収入は約3500万円になり、地域の負担が大きい農業用水路の維持管理費を低減することに役立てる。
小水力発電を導入する取り組みは県内の各地で始まっている。2012年度に開始した「1市町1エネおこしプロジェクト」が代表的なもので、8つの 市と町が地域の自然を利用した再生可能エネルギーの導入を推進中だ(図3)。8つのプロジェクトのうち太陽光が2カ所、バイオマスが1カ所、雪氷熱が1カ 所、残りの4カ所は小水力である。
小水力のプロジェクトでは砂防用のダムや川を利用する例が多く見られる。県北部のあわら市にある「清滝砂防ダム」が候補の1つになっている(図 4)。ダムの高さは21メートルで、そこから700メートル下流にある北陸電力との連系地点まで配管を敷設して発電機を設置する計画だ。ダムの水位や流量 をもとに推定したところ、15~20kW程度の発電設備を導入できる見込みである。
さらに内陸にある鯖江市でも、砂防ダムや農業用水路を対象にした小水力発電の導入計画が具体的に進んでいる。市内の3つの地区を候補に選定して、複数の設置パターンをもとに発電設備の設計や採算性の評価を実施中だ(図5)。
あわら市と鯖江市のプロジェクトは地域の推進協議会で検討を進めながら、2014年度中に最終判断を下す見込みである。実際に発電設備の建設に着手することになれば、同じような砂防ダムや農業用水路がある他の地域にも展開できる可能性は大きい。
福井県の再生可能エネルギーの導入量は全国でも低い水準にとどまっている。固定価格買取制度の認定設備の規模では47都道府県の中で最下位にある (図6)。県を挙げて原子力の復活を推進する一方で、小水力を中心に太陽光やバイオマスを加えた再生可能エネルギーをどこまで拡大できるのか。日本のエネ ルギーの未来を示唆するような状況になってきた。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1408/26/news005.html
2014/08/26
堺市上下水道局は、陶器配水場内に小水力発電設備を設置するため、不二設計コンサルタント(柏原市)で実施設計に着手した。工事は2016年度に発注する計画。
陶器配水場の(仮称)岩室系(新)N.3流入管(管径600㍉)に水車発電機1台を設置する。
2014/08/25
大鹿村は、小水力発電施設を鹿塩の小塩地区に設置した。地すべり危険区域にあり、地すべり防止用工事で水抜きされた水を活用。発電した電力は再生可能エネルギー固定価格買い取り制度を活用し、全量売電する。すでに国の認定を受け、現在は中部電力に申請中。早ければ10月から売電を開始する。排水を利用した新たな取り組みで今後、注目を集めそうだ。 小塩地区では1994(平成6)年、国の直轄事業として地すべりを防止するためのトンネル(小塩第一隧道)が掘られ、そこから黒いパイプを通して水抜きしている。一定量の水を近くの小塩沢川に流しており、村は発電に必要な水を確保できると判断。取水用のパイプを新たに取り付け、水車型の小水力発電システムを設置した。村道沿いの急斜面に位置し落差は約30メートル。
白いステンレスカバーで覆われた箱状の装置内には直径30センチ、幅6センチのステンレス製の水車があり、注ぎ込まれた水を使って回転させることで水車の脇にある発電機を稼働させる。出力は平均2・4キロワット、最大3キロワット。使用水量は毎秒16リットル。水車は1分間におよそ750回転する。総事業費は530万円。 3月までに設置し、現在は発電量を確認するランプを置いて定期的に計測している。住民税務課によると、発電電力は全て売電する計画で、年間の収入は約50万円を見込む。 村内は水源が豊富で急峻な地形のため、落差を利用した小水力発電が期待できる。柳島貞康村長は「ほかにも適地があり、売電収入は今後の研究に充てたい」と話した。 小水力発電は、自然河川を利用した1000キロワット未満も水力発電。東日本大震災の原発事故以降、国は太陽光や風力とともに再生可能エネルギーに位置付け、普及を図っている。固定価格買い取り制度の対象で、高低差と豊富な水量が確保できる山間部などが好適地とされる。
2014/08/24
豊田市羽布町の羽布ダムで23日、県内最大規模の小水力発電施設の起工式が行われ、大村秀章知事ら約80人が出席した。2016年の完成予定で、一般家庭約900世帯分の年間消費量に相当する電力を供給する。
羽布ダムは1963年に完成した農業用水の取水施設で貯 水量は約1万8500トン。最大45メートルの放流落差を利用し、水車を使って電気を生み出す。最大出力は854キロ・ワットで年間電力量は320万キ ロ・ワット時。発電した電力はすべて売電され、年間約1億円の売電収益は同ダムの水を使っている6市町の水利施設の管理費などに充てられる。事業費は9億 930万円。
式典後、放流施設を視察した大村知事は「豊富なダムの水を1日も早く有効活用していきたい」と話していた。
http://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20140823-OYTNT50134.html