2014/09/10
2014年9月10日掲載
芦野工業(山形県)と東北小水力発電(秋田県)は、フランシス水車の高効率化(発電出力~10,000kW)に関する共同研究開発を行う。
開発目標は水車変換効率95%。随時、性能向上モデルを販売し、平成29年3月に最終開発目標達成を目指す。開発された水車は、両社のブランドにてそれぞれ販売。山形県・秋田県内の水力発電施設に限らず、全国展開を図る計画。
2014/09/09
水力発電機器の東北小水力発電(秋田市)と芦野工業(山形市)は共同で、発電効率の高い水車を開発する。発電出力1万キロワット未満の小水力発電向けで、2017年3月までの商品化を目指す。
開発するのは水の圧力と速度をランナー(羽根車)に作用させる水車で、多数の羽がついて水を取り込む。多様な落差と流量に対応できることから、国内の水力発電施設では最も多く採用されているという。
東北小水力発電が水の流れを解析して、最適な羽根の形状を設計する。芦野工業が試作機を製造し、実証実験を行う。水流のエネルギーを電力に換える発電効率は、従来品で最も高い91%より4ポイント高い95%を目指す。価格は従来品とほぼ同じ2億円(設備一式)に設定したい考え。
小水力発電設備は設置場所の状況に応じて個別に設計する。様々な場所で使えるよう解析データ蓄積し、設置場所ごとの設計変更などの経費を抑えられるようにする。
製品は両社それぞれのブランドで販売する計画。固定価格買い取り制度を追い風に、発電設備の新設や既存施設の更新需要を見込む。5年後の年間販売額はそれぞれ20億円を目指す。
2014/09/09
エネルギー列島2014年版(22)静岡:「ふじのくに」を潤す農業用水、米と野菜と電力も作る
太平洋沿岸地域の日射量が豊富な静岡県では太陽光発電が拡大するのと並行して、広い平野を流れる農業用水路を利用した小水力発電の取り組みが活発になってきた。用水路に設けた「落差工」の水流を生かした発電方法で、農作物の栽培に影響を与えずに電力を作り出す。
[石田雅也,スマートジャパン]
静岡県の中央を縦断する大井川を水源にして、国営の「大井川用水」が山間部から太平洋沿岸の平野部を流れている。9つの市と町を含む7450万平 方メートルの農地に水を供給する全国でも有数の農業用水路だ。この大規模な用水路を利用した小水力発電プロジェクトが流域の各地に広がってきた。
その先がけになったのは「伊太(いた)発電所」である(図1)。大井川用水の上流を占める島田市で2013年7月に運転を開始した。発電能力は 893kWあって、用水路を利用した小水力発電では規模が大きい。年間の発電量は430万kWhを見込んでいて、一般家庭で1200世帯分の電力使用量に 相当する。
発電機を設置した場所は「落差工(らくさこう)」と呼ぶ用水路の設備の中にある。大井川から流れてきた用水路の水が支流の川に注ぎ込む地点に、水 流の落差を緩和するために階段状の落差工が設けられている。この落差工が老朽化して改修が必要になったことから、合わせて発電設備を導入することにした (図2)。
川にかかる橋に発電所を建設して、横軸のプロペラ水車による発電機を設置した。さらに水車の回転を速くする増速機を追加してプロペラの回転数を3倍に増やしている。水流の落差は6メートルになり、最大で毎秒17立方メートルの水が流れて発電する。
設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は55%で、通常は60%以上になる小水力発電としては低めだ。水量が季節によって大きく変動するか らである。用水路の水量は稲作の時期にあたる5月~9月に多くて、それ以外の時期は少なくなる(図3)。発電に利用できる水量も10月~4月の7カ月間は 最大時の4割くらいしかない。農業用水を小水力発電に使う場合の特性である。
伊太発電所は用水路の改修と合わせて23億円の費用を投じて建設した。発電能力が200kW以上の小水力発電は買取価格が1kWhあたり29円 (税抜き)である。年間の売電収入は1億2500万円になり、買取期間の20年間では約25億円を見込める。落差工の改修費を売電収入でカバーすることが できる。
国営の伊太発電所に続いて、県営の小水力発電所を3カ所に建設する計画が決まっている。そのうちの1つは伊太発電所と同じ島田市内に、残りの2つは大井川の西側を流れる「大井川右岸用水」に建設する(図4)。
右岸の2カ所は発電能力が100kW前後で、年間の発電量は60万~70万kWhを想定している。2014年度中に運転を開始する予定だ。このほかにも用水路とダムの水流を生かした小水力発電所の検討プロジェクトが県内の5カ所以上で進んでいる。
地域の有志が始めた小水力発電の取り組みもある。静岡県の東部にある富士宮市では1人の市会議員が中心になって推進している。市内を流れる農業用 水路の「北山用水」に小型の発電設備を導入した(図5)。「相反転方式」と呼ぶ独特の発電方法で、発電機の外側と内側が反対方向に回転して速度が2倍にな る仕組みだ。通常は小水力発電に向かない1メートル以下の落差でも発電することができる。
北山用水は落差が1メートル程度で、水量は毎秒0.25立方メートルしかない状況でも、1.4kWの電力を作り出す。発電した電力は冬季の温室栽 培にも利用する。発電機以外の設備が不要なため、建設費は200~300万円くらいで済む。地域の農業関係者が草の根方式で導入することが期待できそう だ。
静岡県の再生可能エネルギーは太陽光発電が圧倒的に多い。小水力発電も着実に増えて、固定価格買取制度による認定設備の規模は全国で第5位になっ た。しかも運転を開始した発電設備では全国のトップに立っている(図6)。恵まれた自然環境を生かした再生可能エネルギーの取り組みが都市部と農村部の両 方で広がっていく。
2014/09/07
●県内に全40基計画 事前手続きが壁
福島第1原発事故の後、自然の力を生かした再生可能エネルギーに注目が集まる中、鹿児島県内に計40基の小水力発電所の開設を計画している九州発電(鹿 児島市)の第1号施設「船間(ふなま)発電所」が同県肝付町に完成し、8月から稼働を始めた。6日には完成記念式典がある。売電は順調で、税収増など地元 への経済効果も大きい。ただ、建設前の許認可や水利権調整などの煩雑さから計画は遅れており、着工前の手続きが思わぬ壁になっている。
船間発電所は総事業費15億円で建設され、出力995キロワット。高低差205メートルの馬口川の流れを利用してタービンを回し、年間2千世帯分を発電 する。東京の特定規模電気事業者(新電力)に、国の再生エネ固定価格買い取り制度価格(1キロワット時29円)より「やや高めの価格」(九州発電)で売 電。電力は九州電力の送電線で送る。発電所の最初の1年の売り上げは2億円の見込み。
町によると、建設下請けや資材調達には地元業者が優先され、町には既に6億円の経済効果がもたらされた。自動運転のため雇用は生まないが、町には毎年、 固定資産税が入り、眺望の良さから観光や環境学習にも活用できる。「ロケット基地(内之浦宇宙空間観測所)と並ぶ町の観光スポットに育てたい」。永野和行 町長は声を弾ませる。
◆原発に代わる期待
九州発電は2012年1月、地場商社の南国殖産などの出資で設立された。母体は同社や県内首長、大学研究者が11年11月に産官学で発足させた県小水力 利用推進協議会。鹿児島県を国内最大の小水力発電地帯にしようという目標を掲げ、毎年5~6基を着工し、18年度までに5万世帯分を賄う発電量を目指して いる。総事業費は240億円に上り、川内原発が停止して県内経済が落ち込む中、原発に代わる経済浮揚策としての期待もある。
しかし、12年12月に予定された船間発電所の着工は、山間部のため地権者の確定に手間取り、13年4月にずれ込んだ。第2号の重久発電所(霧島市)も 地元4漁協との水利権交渉が長引き、着工は13年7月になった。許認可も複雑で、5~6省庁にまたがるケースもあり、建設が具体化したのは他にまだ3基 だ。「手続きがこんなに面倒とは思わなかった」。九州発電の八板博二三(ひろふみ)総務部長はため息をつく。
◆九州には適地多く
九州には山間部の河川が多く、小水力発電の適地が多い。資源エネルギー庁によると、買い取り制度で認定された九州の出力3万キロワット未満の施設数は熊 本9、鹿児島7、宮崎7などで、岐阜の15、長野の13、静岡の9に次ぐ。福岡にも4カ所ある。16年の家庭用電力小売り自由化で、さらに拡大が予想され る。
普及へ向け旗振り役を務めてきた同協議会の池畑憲一会長は「国は再生エネを推進していくのなら、建設前の手続きを簡略化してほしい」と注文している。
2014/09/07
県内に40基の小水力発電所の開設を計画する九州発電(鹿児島市)の第1号となる「船間(ふなま)発電所」の稼働式が6日、肝付町岸良の現地であり、伊藤知事や石原伸晃・前環境相らが出席した。馬口(ばくち)川から取水し、205メートルの高低差を利用して発電する。
同社によると、出力は995キロ・ワット。年間発電量は630万キロ・ワット時で、一般家庭2000世帯分に相当する。約15億円かけて建設した。8月 から稼働を始めており、東京の特定規模電気事業者に、国の再生エネルギー固定価格買い取り制度(1キロ・ワット時29円)よりやや高めの価格で、売電して いるという。
稼働式後、会場を移して行われた記念式典には、県小水力利用推進協議会長の池畑憲一・県議会議長を含む約200人が出席。九州発電の古田功社長は「小規 模な発電所ではあるが、環境への関心が高まる中、1基ずつ、着実に増やしていきたい」とあいさつした。石原前環境相は祝辞で「小水力発電などの自然再生エ ネルギーは今後の日本に欠かせない」と述べた。
同社は霧島市と南大隅町でも小水力発電所の建設を進めている。