2014/09/30
■あすから3年間 糸川上流で
再生可能エネルギーの開発や技術革新などの事業に取り組む熱海市のベンチャー企業「インターフェイスラ ボ」(井手由紀雄代表)と名古屋大エコトピア科学研究所(内山知実教授)は29日、同市西山町の糸川上流に、小水力発電・実証実験のための「無閉塞型マイ クロプロペラ水車」を設置した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で、10月1日から3年を目安に、実用化に向けた各種実験に取 り組む。羽根の中心部に穴があり落ち葉や石といった水流中の異物が混入しても穴を通過させることで回転が停止しない新開発の「無閉塞型水車」を使った実験 は世界初という。
設置作業は、地元有志で自然エネルギー研究に取り組む熱海グリーンエネルギー推進協議会の会長も務める 井手代表、同水車の開発者で流体力学の専門家である内山教授をはじめ、実験装置小屋などを設計した建築家守田昌利さん、同協議会関係者ら約10人が実施。 実験開始時の流水の落差は4メートルで、給水用の塩化ビニール製の配管の延長は約40メートル。発電の出力は1・2キロワットを想定している。小水力発電 は小規模で多用な水環境に対応でき、自然環境への影響が少ないことが特徴。
井手代表らによると「無閉塞型水車」の強みは小型、低コスト、高対塵(じん)性にある。特に対塵性で は、河川を流れる落ち葉や土砂が水車の動きを止めるリスクを大幅に低減。従来型では必要だったごみ取り装置が不要となった。さらに、メンテナンス費用など ランニングコストを削減でき、エネルギー収支比の向上につながる。
また水車を直列、並列に連結させることでさらに高い発電が見込める。水車と発電機を一体化することも可能で、応用範囲の幅が広いという。
一方、上流側で川の水を吸い込む取水装置には、動力の不要な「サイフォン方式」を採用。柔軟に動く曲管を用いたことで、大雨や台風といった増水時には、川に接する管を平易に収納できるなどの安全性も備わっている。
当面の実証実験では、回転数や流量から水車出力などを測定算出し、水車の基礎特性を明らかにする。さら に3Dプリンターで制作する羽根の形状を変化させながら、実験装置の改良なども手掛ける。市内各地の小規模河川での試験運用やビジネスプランの策定、海外 展開の可能性も検討する。
井手代表は「熱海発の実証実験が成功し、(新開発の水車を使った)この小水力発電が世界標準になってくれたらうれしい」と期待を寄せた。
【写説】無閉塞型マイクロプロペラ水車を示す井手さん=西山町の糸川上流
http://izu-np.co.jp/atami/news/20140930iz2000000116000c.html
2014/09/30
静岡県志太榛原農林事務所は、島田市細島地内の大井川用水1期地区で、農業用水を活用した小水力発電の導入を計画しており、順調なら2015年度に整備に着手する方針
2014/09/29
小水力発電導入による地域振興を目指す遠野市土淵町の米通(こめどおり)地区で、28日から発電装置の設置作業が始まった。NPO法人遠野まごこ ろネットや黒沢尻工高専攻科との連携プロジェクト。水車と太陽光を組み合わせた先駆的な発電装置で、試験的に集会所の電源や農業などに利用する。工学系の 学生の研修にも活用していく。
同日は住民のほか、同ネットのボランティア、同校専攻科の小野寺徹教諭と学生の計30人が参加。「蛍の水車発電所」と名付けた水路脇の手作り小屋に水車を設置し、発電機を取り付ける棚などを製作した。作業は数週間続く。
発電装置は小野寺教諭が設計し、安定して使えるよう水力と太陽光パネルの「二刀流」とした。来月中の完成を見込み、1日を通じて600ワット以上 の電力が供給可能となる。集会所や作業小屋「蛍の家」で試験的に電源として使うほか、近隣のハウス栽培や農産物加工などに役立てる。
小野寺教諭は「住民に温かく迎えてもらっている。学生にとって学んだ知識と技術を現場で生かせる貴重な機会だ」と感謝する。
【写真=発電装置の設置作業に汗を流す住民やボランティア、学生たち】
2014/09/26
九州電力川内原発の再稼働問題に揺れる鹿児島県で、既存の河川や水路を利用した小水力発電所を、県内に40基建設しようという産官学プロジェクトが進んでいる。今月、その第1号となる「船間(ふなま)発電所」の完成記念式典が肝付町であった。鹿児島県には利用が難しい急峻(きゅうしゅん)な地形が多いが、それが速い水流を生み出し、小水力発電にはうってつけなのだという。ハンディを逆手に取った新たな発電形態への挑戦を探る。
ロケット打ち上げで有名な内之浦(肝付町)から、さらに車で30分ほど。発電所がある船間は、深い緑に囲まれた静かな地区だった。一帯は、海岸から崖がせり上がる急峻な地形だ。発電所は、馬口川から取水した水を高低差205メートルの送水管(直径60センチ)で一気に流し落とし、その水圧でタービンを回す仕組み。出力995キロワットで、年間2千世帯分の電力が賄える。
建設したのは、2012年に地場商社の南国殖産などの出資で設立された「九州発電」(鹿児島市)。国の再生エネルギー固定価格買い取り制度を活用し、出来た電力は、国の設定価格の1キロワット時29円より「やや高めの値段」(九州発電)で、東京の特定規模電気事業者(新電力)に売電。最初の1年の売り上げは2億円の見込みだ。送電には九電の送電線を用いる。
◆地元に経済効果も
九州発電の設立の母体になったのが、県内の首長や企業、大学研究者が11年に発足させた県小水力利用推進協議会だ。鹿児島県を国内最大の小水力発電地帯にする目標を掲げて結成された。今後は毎年、小水力発電所を5~6基着工し、18年度までに5万世帯分を賄う計画。総事業費は240億円に上り、川内原発が停止して県内経済が低迷する中、原発に代わる経済浮揚策としての期待もある。
肝付町によると、船間発電所建設工事の下請けや資材調達には地元業者が優先され、町には既に6億円の経済効果がもたらされたという。自動運転のため雇用こそ生まないが、町には毎年、固定資産税が入る。発電所の眺望の良さから、観光や環境学習にも活用していく考えだ。「ロケット基地(内之浦宇宙空間観測所)と並ぶ町の観光スポットに育てたい」。永野和行町長は声を弾ませる。
ただ、着工前の手続きの煩雑さが思わぬ障害になっている。船間発電所の着工は12年12月の予定だったが、山間部のため地権者の確定に手間取り、13年4月にずれ込んだ。第2号の重久発電所(霧島市)も地元4漁協との水利権交渉が長引き、着工は13年7月になった。許認可も複雑で、5~6省庁にまたがるケースもあり、県内で建設が具体化したのは他にまだ3基にとどまる。「手続きがこんなに面倒とは思わなかった」。九州発電の八板博二三(ひろふみ)総務部長はため息をつく。
◆九州には適地多く
鹿児島に限らず、九州には山間部の河川が多く、小水力発電の適地が多い。資源エネルギー庁によると、買い取り制度で認定された九州の出力3万キロワット未満の小水力発電施設数は熊本県が9、鹿児島と宮崎が各7で、岐阜の15、長野の13、静岡の9に次ぐ。福岡にも4カ所あるという。16年の家庭用電力小売り自由化でさらに拡大が予想される。
石原伸晃前環境相も出席した6日の式典で、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は「再生可能エネルギーの中でも小水力発電は今後、ベース電源として重要な位置を占めるに違いない」と強調した。小水力は、太陽光や風力のように天候に左右されない。九州発電の古田功社長も「小水力は24時間安定して発電できるのが強みだ。一つ一つは小さいが、数が増えればまとまった電力を供給できる」と力を込めた。
問題はどう普及していくかだ。風や太陽光と違って、水力には水利権など多くの利害関係がつきまとう。推進協の池畑憲一会長は「国が本気で小水力を進めるのなら、建設前の手続きの簡略化を進めてほしい」と注文した。「小水力」をよく知らない一般市民の認知度向上が鍵になりそうだ。
2014/09/26
静岡県西部農林事務所は、新エネルギー農業水利施設利活促進事業として、浜名用水に設ける小水力発電の基本計画をNTCコンサルタンツ静岡営業所(静岡市清水区)に委託した。納期は2015年2月13日を予定している。