

2014/12/19
再生可能エネルギー普及の原動力となってきた固定価格買い取り制度の抜本的な見直しで、県内でもさまざまな懸念が広がっている。太陽光発電は条件が厳しくなる上、九州電力が「新規の買い取り余力がない」としており、普及に急ブレーキがかかるのは必至。関連事業は景気を下支えしており、県経済の先行きに不透明感が増す。新たな産業育成など再生エネによる地域浮揚策にも影響が出かねない状況だ。
県は18日、九電に対して「太陽光のさらなる受け入れ増加策の検討」などを申し入れた。県内で買い取り手続きが中断されている太陽光は195万キロワット(1万1090件)分。ほぼ全てが実現困難になりそうで、西山英将商工労働部長は「事業者に大きな影響を与える」と危惧を表明した。
再生エネ先進県の強みを生かし、関連産業の育成に力を注ぐ中、「導入に歯止めがかかれば、多くの技術革新が期待される分野の成長の芽を摘み取りかねない」とも訴えた。
回復途上にある景気への影響も心配される。ある地場金融機関は「太陽光は福祉・医療・介護と並び、新たな設備投資需要の柱となってきた。それが消えるのはマイナス」。制度の見直し後は、新規買い取りが継続している家庭用太陽光についても条件が付く見込みで、「設置が減るのでは」とみる。
県内に豊かな地熱や小水力は優先的に買い取る方向だが、別の地場金融機関は「制度の大幅な見直しが再生エネ全般の導入機運をそいでしまわないか」と指摘。総合的に見て、大銀経済経営研究所は「景気の下押し要因となりかねない」とする。
太陽光では、既に多額の投資をして接続を待つ事業者がおり、資金繰りに窮したり、事業の軌道修正を迫られる人や会社も出てくる可能性がある。こうした状況を受けて、県は「どんな対策ができるか検討中」としている。
※この記事は、12月19日大分合同新聞朝刊5ページに掲載されています。
2014/12/19
日本アジアグループは、小水力発電技術のシーベルインターナショナル(東京・千代田区)に資本参加する。発行済み株式の半数以上を取得して傘下に入れる。年内に手続きを完了する。日本アジアグループは太陽光発電事業を推進しているが、シーベルを傘下に加えることで小水力発電を太陽光に続く再生可能エネルギー発電事業の第2の柱にする。
電力会社が太陽光発電の連系申し込みを保留するなど、太陽光発電が飽和状態に近づきつつあることを踏まえた。新たな再生可能エネルギー発電事業を検討し、応用範囲が広く国も進める小水力発電に着目した。日本アジアグループはこれまでも小水力発電のコンサルティングは手掛けているが、今後は発電事業まで一貫して展開できるようになる。
シーベルは独自のシステム「流水式(超低落差型)小水力発電装置スモールハイドロストリーム」を納入しているほか、自ら発電事業も実施する。スモールハイドロストリームは、従来の水力発電では難しい農業用水路、上下水道、工場排水など落差が小さい水路に設置できるうえ、既存水路の改変が不要で、3日程度の工事期間で完成する。
標準化とユニット化でコストを抑え、保守・メンテナンスも容易にしている。分散型の電源インフラとして災害時の非常電源にも転用できる。日本アジアグループは、シーベルが保有する製品や事業実績が自社の成長につながると判断した。今後、国内に加えアジアを中心にした海外でスモールハイドロストリームを核に小水力発電事業を展開する。
2014/12/18
岡山県企業局は、津山市加茂町で稼働している小水力発電の倉見発電所の水車・発電機などの設備更新を計画しており、詳細設計を中電技術コンサルタント(岡山市)に委託して開始した。納期は2015年3月31日まで。
2014/12/16

大野市の奥越明成高校機械科の三年生六人が小水力発電装置を手作りした。市内の山の水で水車を回して発電し、外灯などに電気を供給に挑戦している。“卒業作品”的な位置付けだが、小水力発電の可能性や課題も実感できている。
装置は横六十センチ、奥行き四十センチ、高さ百センチ。三百五十ワットの発電機四基を搭載している。今月十日、大野市花房の林道脇の小川に持ち込み、高 低差二十メートルの上流から長さ約百メートルのパイプで水を水車に供給したところ、白熱電球一個と発光ダイオード(LED)外灯一基が見事点灯した。
課題研究の一環として十月から製作してきた。水車は特注したが、水車で生み出した回転数を増幅させるベルト伝動の装置などは生徒たちが手作り。現地測量や小川の流量調査も実施してきた。太陽光発電などを手掛けるSP電機(中挾一丁目)の協力を得た。
ただ、十二日に発電装置の確認に行ったところ、パイプの取水口が落ち葉や枯れ木などでふさがれ、発電は停止していた。現在は学校に発電装置を持ち帰り、年内の再運転に向けて機械を調整する。
橋本優也君(18)は「給水パイプの角度調整など、現地での作業が大変だったけれど、発電できたときには感激した」と語り、班長の片倉優介君(18) は、「小水力発電は設置後の(ごみ除去などの)メンテナンスが必要だと分かった。仲間と難しい課題に向き合えたことが良かった」と話していた。
(尾嶋隆宏)
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20141216/CK2014121602000018.html
2014/12/16
山口県には大小を合わせて483本の川が流れている。流域には数多くのダムが設けられて水力発電が盛んだ。それでも利用していない水流が多く残っているこ とから、小水力発電が広がってきた。水流の落差が小さい場所にサイフォン式の取水設備を採用するなど、独自の試みに注目が集まる。
[石田雅也,スマートジャパン]
山口県の企業局は県内に11カ所の水力発電所を運転中で、すべての発電能力を合計すると5万kWを超える(図1)。年間の発電量は1億8000万kWhに達して、一般家庭の使用量に換算すると5万世帯分の電力を供給できる能力がある。

その中で最も規模が大きいのは、1975年から運転を続けている「新阿武川(しんあぶがわ)発電所」である。中国山地から日本海まで流れる阿武川の中流 に設けた大きなダムの直下にあって、発電能力は最大で1万9500kW(19.5MW=メガワット)におよぶ(図2)。

こうした大規模な水力発電所は大量の水を一気に流して発電するため、下流の水量が不安定になってしまう。そこで発電所の下流に小規模なダムを造 り、一定の量を常に放流して自然環境を保護する必要がある。新阿武川発電所の下流には「相原ダム」が設けられているが、そこから放流する水は流すだけで発 電には利用していなかった。
というのも相原ダムには大きな高低差がなく、水力発電には向かない構造になっているからだ。新たにサイフォン式の取水設備を導入することにより、 約4メートルの落差を作って発電が可能になった。山口県の企業局が22年ぶりに新設した「相原発電所」は2014年5月に運転を開始した(図3)。


発電機には縦軸のポンプ逆転水車を採用して、最大で82kWの電力を供給することができる。年間の発電量は33万kWhを見込み、一般家庭で90 世帯分に相当する。固定価格買取制度を通じて1kWhあたり34円(税抜き)で売電できるため、年間に約1100万円の収入を得られる見通しだ。発電設備 の建設費は1億3500万円かかった。運転維持費を低く抑えれば、買取期間の20年以内に投資を回収することができる。
農業用水路には簡易型の発電機
相原発電所を皮切りに、小水力発電の導入プロジェクトが県内の各地に広がってきた。第2弾は工業が盛んな宇部市内を流れる薬師川(やくしがわ)の 水流を利用した「宇部丸山発電所」である。瀬戸内海の沿岸地域に工業用水を供給するために造られたダムの中に取水塔があって、その直下に発電設備を導入す る(図4)。


このダムでは取水塔の内部に設置した2基のバルブを使って取水量を調整している。そのうちの1基を発電機に置き換えて、取水量を調整しながら発電できる仕組みを取り入れた。発電機は水力発電で最もポピュラーな横軸のフランシス水車を採用した。
ダムの水面から水車まで19メートルの落差を利用して、最大で130kWの電力を供給することができる。年間の発電量は60万kWhの想定で、一般家庭で170世帯分になる。運転開始は2015年度中を予定している。
小水力発電はダムだけではなくて、農業用水路にも導入できる。山口市内の農家が簡易型の発電設備を2014年9月に初めて設置した(図5)。わず か8.5キログラムの小さな装置で5kWの電力を作ることができる。近隣のLED街路灯などに電力を供給する。同じ簡易型の小水力発電装置は県内の各地で 導入の検討が進んでいる。

山口県の再生可能エネルギーは小水力発電に続いて、最近では太陽光発電も増えてきた(図6)。日射量が豊富な瀬戸内海に面した宇部市の工業地帯で は、宇部興産が所有する30万平方メートルの遊休地に、発電能力21メガワットの「ユーエスパワー発電所」が2014年7月に運転を開始している(図 7)。県内の沿岸部には広い遊休地が数多くあり、今後さらにメガソーラーが増えていく見込みだ。

