2015/07/08
経済産業省・資源エネルギー庁は、中小水力発電の導入支援策を強化する。2015年度で終了する導入促進事業の後継事業を今夏の16年度概算要求に盛り込み、開発リスク低減への支援を拡充する方向で調整する。30年度の電源構成(エネルギーミックス)では、出力が安定した再生可能エネルギーである水力発電の導入を拡大する方針で、このうち中小水力は今後15年で最大約200万キロワットの追加導入を見込んでいる。事業化調査に長期を要することなど、導入障壁を取り除くための予算措置を講じたい考えだ。
政府は30年度に再生可能エネの発電電力量比率22~24%を目指すが、このうち中小も含んだ水力発電の比率は4割弱の8.8~9.2%。新規開発と既設を合わせて最大981億キロワット時(4931万キロワット)の導入を見込んでいる。新規導入281万キロワットのうち中小水力は7割に当たる201万キロワットで、ウエートが大きい。
中小水力は発電に使う流水量の状況が採算性に直結するが、事業化検討開始後の流量調査に最大で10年程度かかる場合もあり、その間に事業化を断念するといったリスクも存在する。
エネ庁は12~15年度までの4年間、メーカーや発電事業者、自治体を対象にコスト低減技術の開発・実証を支援する事業を行ってきているが、今年度で期間が終了する。このため後継事業を立ち上げ、リスクの低減策を手厚くする方向で調整する。
※紙面より転載
2015/07/08
岐阜県は7月7日、県が管理する「阿多岐(あたぎ)ダム」の直下に新設した河川維持流量を利用する「阿多岐水力発電所」(岐阜県郡上市白鳥町)の運転を開始した。
同発電所は、本県初の県営ダムの放流水を活用した小水力発電所。発電方式はダム式(維持流量)。最大使用水量は毎秒0.7立法メートル。有効落差は37.7m。最大出力は190kW。年間可能発電電力量は130万kWh(一般家庭の約360世帯分に相当)。
2015/07/08
岐阜県では3000メートルを超える山々から川が広がり、治水と発電を目的にダムが各地域に設けられている。ダムの下流の環境を守るために放流する水のエ ネルギーを利用した小水力発電の第1弾が始まった。これまで発電に利用していなかった水流で360世帯分の電力を供給することができる。
[石田雅也,スマートジャパン]
新たに小水力発電を開始したダムは、岐阜県の中部を流れる阿多岐川(あたぎがわ)に設けた「阿多岐ダム」である(図1)。岐阜県が治水を目的に1988年から運用を続けているダムで、堤の高さは71メートル、横幅は200メートルに及ぶ。
水を貯めて川の流量を調整しながら洪水を防ぐ以外にも、下流に生息する動植物などを保護するために一定量の水を常に放流している。その「維持流量」を利用した小水力発電所が7月7日に運転を開始した(図2)。
毎秒0.7立方メートルの水流で190kW(キロワット)の電力を作ることができる。水量は少ないものの、落差が38メートルもあるために発電能 力は大きい。年間の発電量は130万kWh(キロワット時)になる見込みで、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して360世帯分に相当する。
発電事業者は中部電力である。阿多岐ダムを管理する岐阜県の提案を受けて、小水力発電所を建設・運営することになった。ダムの堤の脇を通る放流管から水圧鉄管を敷設して、発電所に水流を取り込んでから川へ放流する(図3)。
中部電力は固定価格買取制度を適用して発電コストを吸収する一方で、岐阜県に対して流水の占用料を支払うスキームだ。従来は流すだけだった水流が電力になり、県の収入源にもなる。
この小水力発電は2013年12月に施行した河川法の改正を機に計画が進んだ。河川の環境保全のためにダムから放流している維持流量や農業用水を 利用した発電事業が法改正によって許可制から登録制へ変わった。許可制では5カ月ほどかかっていた手続きが登録制に移行して1カ月程度に短縮されたこと で、小水力発電を実施しやすくなった。阿多岐水力発電所は岐阜県で初めて登録制を適用した発電事業である。
岐阜県は県内の5カ所でダムを運営していて、さらに2025年度には新しいダムの運用も開始する(図4)。合計6カ所になる県営ダムのうち、維持 流量の多い阿多岐ダムと「丹生川(にゅうかわ)ダム」の2カ所で中部電力が小水力発電を実施することが決まっている。丹生川ダムの小水力発電所は2016 年度に運転を開始する予定だ。中部電力は新設の「内ヶ谷(うちがたに)ダム」でも小水力発電を検討する。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1507/08/news028.html
2015/07/06
新緑が映える琵琶湖疏水の夷川(えびすがわ)船だまりに臨み赤レンガ造りの建物がたたずむ。春はお花見でにぎわい、ゴールデンウイークにかけては観光客を乗せた「十石舟」が行き交う。京都でも人気の親水空間だが、ひっそりと風景に溶け込んだレトロな建物が、れっきとした発電所だとはなかなか気付かない。
その関西電力夷川発電所(京都市左京区)は大正3(1914)年生まれ、101歳で現役の水力発電所である。一般公開していないが、特別にお願いし内部に足を踏み入れると、ウィーンという高い音と、ゴロゴロゴロという低いうなり音が重なって響く。直径約3メートルの鉄製チューブの中を水が流れ、プロペラのついたシャフトを回転させ、その動力で発電機を回すシンプルな構造だ。発電所というよりも、どこか町工場の雰囲気が漂ってくる。発電能力は300キロワットと小粒だが、家庭500軒分の電力を今も生み出している。
2キロほど上流にある蹴上発電所(4500キロワット)はわが国初の事業用発電所として1891年に産声を上げ、その電力を利用して日本初の市電が走るなど、京都の近代化を進める原動力となったことで有名だ。一方、夷川発電所は第2疏水の開削に伴って建設された弟分の「ミニ発電所」で、一般の話題になることは少ない。だが関西広域小水力利用推進協議会(中京区)の里中悦子事務局長は「これからの日本で大きな可能性を秘めている。気になる存在ですね」と注目。「蹴上発電所は33・5メートルの落差を利用して発電していますが、夷川はわずか3・4メートル。ヨーロッパではドナウ川など、平野をゆったり流れる大河の水を引き入れた低落差式の発電所が結構あるんですが、日本では珍しい。そんな発電所が、150万都市の真ん中で、しかも大正時代から続いているのが驚き」と話す。
大きな落差が必要であれば設置場所は山間部などに限られる。だが低落差の水力発電なら都市部でも“地産地消型”の発電が可能。だからこそ「日本に小水力発電を普及させるヒントになる」と期待するのだ。
その夷川発電所。運用開始から90年近くたった1993年に水車や発電機を一度交換しただけ。技術が成熟し、長持ちするのも水力発電の利点である。
運営に当たる関電京都電力システムセンター主任の藤井健二さん(53)は「大きな発電機も、小さな発電機もチェックすべき点は同じ。回転部の温度や湿度の管理など、小さいからといって手間に異なるところはありません」と説明。「水力発電は水力という再生可能な純国産エネルギーを利用しており重要度は高まっている。特に夷川はわずかな落差で発電しており、都市で使うのに適した性質を持っている。疏水べりにある夷川発電所は、私が入社したときから30年以上も見慣れた発電所であり、『そこにあるのが当然』の風景。100年以上使われてきた発電所を、これからも次世代へ大切に引き継いで行きたい」と、うなりをあげる発電機をいとおしそうに眺めた。【榊原雅晴】
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次回(27日)は嵐山のマイクロ発電所を訪ねます。
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20150706ddlk26040343000c.html
2015/07/06
川から引いた農業用水路の水で「らせん水車」を回転させて発 電する小水力発電所(出力30キロ・ワット)が薩摩川内市東郷町藤川地内に完成し、市などが運転を始めた。市と建設コンサルタント大手「日本工営」(東京 都千代田区)が協力して建設。2018年度まで実証実験を行って効率的な発電方法やメンテナンス上の課題などを探り、国内での普及を目指す。(江上純)
農業用水路の一部を改造し、国内最大級となる直径2・1 メートル、長さ7メートルのらせん水車を設置した。水の力で水車を回し、水車の軸と直結した発電機を回転させることで一般家庭30世帯分の電気を生み出す 仕組みだ。らせん水車は低流量、低落差でも発電できるのが特長。
できた電気は隣接する物産施設「清流館」で利用し、余剰分は九州電力に売電する。総事業費は約9000万円。
市は、立地する原子力発電所や火力発電所と共存しつつ、次世代 エネルギーの導入を推進する「エネルギーのまち」づくりに取り組んでいる。市新エネルギー対策課は「実証実験で良い結果を残すとともに、次世代エネルギー について学ぶ教育の場としても活用していきたい」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/local/kagoshima/news/20150705-OYTNT50044.html?from=ycont_top_txt