過去に投稿された記事の一覧です。

2015/07/08

川の環境を守る水流で360世帯分の電力、ダムに展開する小水力発電【スマートジャパン】

 岐阜県では3000メートルを超える山々から川が広がり、治水と発電を目的にダムが各地域に設けられている。ダムの下流の環境を守るために放流する水のエ ネルギーを利用した小水力発電の第1弾が始まった。これまで発電に利用していなかった水流で360世帯分の電力を供給することができる。
[石田雅也,スマートジャパン]
 新たに小水力発電を開始したダムは、岐阜県の中部を流れる阿多岐川(あたぎがわ)に設けた「阿多岐ダム」である(図1)。岐阜県が治水を目的に1988年から運用を続けているダムで、堤の高さは71メートル、横幅は200メートルに及ぶ。

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図1 「阿多岐ダム」の位置。出典:中部電力

水を貯めて川の流量を調整しながら洪水を防ぐ以外にも、下流に生息する動植物などを保護するために一定量の水を常に放流している。その「維持流量」を利用した小水力発電所が7月7日に運転を開始した(図2)。

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図2 「阿多岐水力発電所」の全景と「阿多岐ダム」。出典:岐阜県県土整備部

毎秒0.7立方メートルの水流で190kW(キロワット)の電力を作ることができる。水量は少ないものの、落差が38メートルもあるために発電能 力は大きい。年間の発電量は130万kWh(キロワット時)になる見込みで、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して360世帯分に相当する。

発電事業者は中部電力である。阿多岐ダムを管理する岐阜県の提案を受けて、小水力発電所を建設・運営することになった。ダムの堤の脇を通る放流管から水圧鉄管を敷設して、発電所に水流を取り込んでから川へ放流する(図3)。

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図3 発電所の設置イメージ。出典:中部電力

中部電力は固定価格買取制度を適用して発電コストを吸収する一方で、岐阜県に対して流水の占用料を支払うスキームだ。従来は流すだけだった水流が電力になり、県の収入源にもなる。

この小水力発電は2013年12月に施行した河川法の改正を機に計画が進んだ。河川の環境保全のためにダムから放流している維持流量や農業用水を 利用した発電事業が法改正によって許可制から登録制へ変わった。許可制では5カ月ほどかかっていた手続きが登録制に移行して1カ月程度に短縮されたこと で、小水力発電を実施しやすくなった。阿多岐水力発電所は岐阜県で初めて登録制を適用した発電事業である。

岐阜県は県内の5カ所でダムを運営していて、さらに2025年度には新しいダムの運用も開始する(図4)。合計6カ所になる県営ダムのうち、維持 流量の多い阿多岐ダムと「丹生川(にゅうかわ)ダム」の2カ所で中部電力が小水力発電を実施することが決まっている。丹生川ダムの小水力発電所は2016 年度に運転を開始する予定だ。中部電力は新設の「内ヶ谷(うちがたに)ダム」でも小水力発電を検討する。

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図4 岐阜県が運営するダム。出典:岐阜県県土整備部


http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1507/08/news028.html

2015/07/06

京は水もの:えにし訪ねぶらり探訪/3 関西電力夷川発電所 大正生まれのミニ水力 /京都【毎日新聞】

 新緑が映える琵琶湖疏水の夷川(えびすがわ)船だまりに臨み赤レンガ造りの建物がたたずむ。春はお花見でにぎわい、ゴールデンウイークにかけては観光客を乗せた「十石舟」が行き交う。京都でも人気の親水空間だが、ひっそりと風景に溶け込んだレトロな建物が、れっきとした発電所だとはなかなか気付かない。
 その関西電力夷川発電所(京都市左京区)は大正3(1914)年生まれ、101歳で現役の水力発電所である。一般公開していないが、特別にお願いし内部に足を踏み入れると、ウィーンという高い音と、ゴロゴロゴロという低いうなり音が重なって響く。直径約3メートルの鉄製チューブの中を水が流れ、プロペラのついたシャフトを回転させ、その動力で発電機を回すシンプルな構造だ。発電所というよりも、どこか町工場の雰囲気が漂ってくる。発電能力は300キロワットと小粒だが、家庭500軒分の電力を今も生み出している。
 2キロほど上流にある蹴上発電所(4500キロワット)はわが国初の事業用発電所として1891年に産声を上げ、その電力を利用して日本初の市電が走るなど、京都の近代化を進める原動力となったことで有名だ。一方、夷川発電所は第2疏水の開削に伴って建設された弟分の「ミニ発電所」で、一般の話題になることは少ない。だが関西広域小水力利用推進協議会(中京区)の里中悦子事務局長は「これからの日本で大きな可能性を秘めている。気になる存在ですね」と注目。「蹴上発電所は33・5メートルの落差を利用して発電していますが、夷川はわずか3・4メートル。ヨーロッパではドナウ川など、平野をゆったり流れる大河の水を引き入れた低落差式の発電所が結構あるんですが、日本では珍しい。そんな発電所が、150万都市の真ん中で、しかも大正時代から続いているのが驚き」と話す。
 大きな落差が必要であれば設置場所は山間部などに限られる。だが低落差の水力発電なら都市部でも“地産地消型”の発電が可能。だからこそ「日本に小水力発電を普及させるヒントになる」と期待するのだ。
 その夷川発電所。運用開始から90年近くたった1993年に水車や発電機を一度交換しただけ。技術が成熟し、長持ちするのも水力発電の利点である。
 運営に当たる関電京都電力システムセンター主任の藤井健二さん(53)は「大きな発電機も、小さな発電機もチェックすべき点は同じ。回転部の温度や湿度の管理など、小さいからといって手間に異なるところはありません」と説明。「水力発電は水力という再生可能な純国産エネルギーを利用しており重要度は高まっている。特に夷川はわずかな落差で発電しており、都市で使うのに適した性質を持っている。疏水べりにある夷川発電所は、私が入社したときから30年以上も見慣れた発電所であり、『そこにあるのが当然』の風景。100年以上使われてきた発電所を、これからも次世代へ大切に引き継いで行きたい」と、うなりをあげる発電機をいとおしそうに眺めた。【榊原雅晴】
  ◇
 次回(27日)は嵐山のマイクロ発電所を訪ねます。


http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20150706ddlk26040343000c.html

2015/07/06

用水路で「らせん水車発電」 薩摩川内市【読売新聞】

らせん水車で発電している小水力発電所

らせん水車で発電している小水力発電所


川から引いた農業用水路の水で「らせん水車」を回転させて発 電する小水力発電所(出力30キロ・ワット)が薩摩川内市東郷町藤川地内に完成し、市などが運転を始めた。市と建設コンサルタント大手「日本工営」(東京 都千代田区)が協力して建設。2018年度まで実証実験を行って効率的な発電方法やメンテナンス上の課題などを探り、国内での普及を目指す。(江上純)
農業用水路の一部を改造し、国内最大級となる直径2・1 メートル、長さ7メートルのらせん水車を設置した。水の力で水車を回し、水車の軸と直結した発電機を回転させることで一般家庭30世帯分の電気を生み出す 仕組みだ。らせん水車は低流量、低落差でも発電できるのが特長。
できた電気は隣接する物産施設「清流館」で利用し、余剰分は九州電力に売電する。総事業費は約9000万円。
市は、立地する原子力発電所や火力発電所と共存しつつ、次世代 エネルギーの導入を推進する「エネルギーのまち」づくりに取り組んでいる。市新エネルギー対策課は「実証実験で良い結果を残すとともに、次世代エネルギー について学ぶ教育の場としても活用していきたい」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/local/kagoshima/news/20150705-OYTNT50044.html?from=ycont_top_txt

2015/07/06

東芝、北海道などと連携し小水力発電で水素製造【電気新聞】

◆供給網構築へ実証実験

 東芝は3日、北海道、釧路市、白糠町と連携し、水素の製造から貯蔵、運搬、利用までのサプ ライチェーンを構築する実証実験を行うと発表した。2019年度 までの5年間実施する。北海道白糠町の庶路ダムに出力220キロワットの小水力発電所を建設。そこで発電した電力を利用し、水電解水素製造装置で水素を製 造する。小水力発電所で発電した電力を使い水素を製造するのは、国内で初めての事例となる。
製造した水素は高圧トレーラーで貯蔵・運搬する。道内の酪農施設のほか、温水プールなどに設置される燃料電池へ供給する。酪農施設では1日当たり100 ノ ルマル立方メートル、温水プールでは千ノルマル立方メートルの水素が必要とされる。このほか、トレーラーに貯蔵した水素は、燃料電池自動車(FCV)向け の水素ステーションにも供給する計画だ。
(4面)


http://www.shimbun.denki.or.jp/news/industry/20150706_01.html

2015/07/01

101年前の水力発電所を再生、奈良の山奥で小水力に挑む【スマートジャパン】

過疎に悩む奈良県の東吉野村で小水力発電所を建設するプロジェクトが進んでいる。101年前に運転を開始した水力発電所が廃止されて50年以上を経過し たが、村の活性化を目指して発電所の復活に取り組む。古くなった水路を再利用してコストを抑える一方、市民ファンドで建設資金を集める。 [石田雅也,スマートジャパン]
奈良県の東部にある東吉野村は面積の95%以上を森林が占める。スギやヒノキを中心に林業が盛んで、降水量も多い地域だ。村を流れる川の水を利用 して、101年前の大正3年(1914年)に「つくばね発電所」と呼ぶ水力発電所が運転を開始した(図1)。発電能力は45kW(キロワット)と小さいな がらも、山深い村に電灯をもたらし、林業を発展させた。

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図1 旧・つくばね発電所(左)、水路跡(右)。出典:東吉野水力発電

それから50年以上も発電を続けた後、東京オリンピックの前年にあたる昭和38年(1963年)に廃止になった。一方で当時は7000人を超えていた東吉野村の人口も現在は2000人程度にまで減少してしまった。

過疎に悩む村を活性化するために、住民が中心になって水力発電所を再生するプロジェクトが2013年に発足する。そして2015年6月28日に発 電所の建設工事に着手した。建設場所は旧・つくばね発電所の建屋の隣で、石で造られた以前の水路を生かしながら新しい水管を通す計画だ(図2)。

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図2 旧・つくばね発電所の導水路(左)、水管(右)。出典:東吉野村小水力利用推進協議会

発電所の建設予定地から川の上流に約1キロメートルの地点から水を取り込んで、有効落差105メートルの水流を利用して発電する(図3)。水量は最大で0.1立方メートルと少ないため、小容量の水流でも効率よく発電できるクロスフロー式の水車を採用することにした。

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図3 発電所の場所と関連設備の位置。出典:東吉野水力発電

発電能力は以前を大きく上回る82kWになる。年間の発電量は65万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間 3600kWh)に換算すると180世帯分に相当する。東吉野村の総世帯数(930世帯)の2割をカバーすることができる。運転開始は2016年3月を予 定している。

地元の住民が設立した「東吉野水力発電」が発電所を建設・運営する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)で、年間の売電収入は約2200万円を想定する。

東吉野水力発電には生活協同組合の「ならコープ」が出資するほか、発電事業に必要な資金の一部を市民ファンドで集めて地域ぐるみのプロジェクトに 発展させる考えだ。総額5250万円の市民ファンドを7月30日まで募集する。発電事業で得た利益は地域の活性化につなげるための基金として運用すること になっている。


http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1507/01/news036.html

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