2015/07/11
産学官でつくる大分県エネルギー産 業企業会は、再生可能エネルギーなどのビジネス育成を加速させるため、新しい活動方針を打ち出した。資源豊かな大分の地域特性を生かせて、成長の“芽”が 膨らみ始めた「地熱・温泉熱」「小水力」に支援の力点を置く。来年4月に始まる「電力自由化」、燃料電池などで注目が高まる「水素」の2分野にチャレンジ する企業も新たに後押ししていく。
2012年の設立から3年が経過。再生エネごとに明確化してきた異なる課題に対応するため、研究開発、人材育成・会員交流、販路開拓の3部会制を、分野別のグループ制に改めた。
グループを設けた地熱・温泉熱は湯煙発電の実用化など、小水力は地場企業連合体の組織化といった成長の基盤ができつつある。
本年度、地熱・温泉熱グループには約10社が参加。配管をふさぐスケール(温泉成分)対策、熱利用などを候補に、取り組むテーマを検討している。小水力 も 約10社が手を挙げ、技術開発や全国の販路開拓などに挑む見通し。着実に成果を挙げ全国をリードできるよう、資金助成などきめ細かなサポートをしていく。
電力自由化と水素は新たな有望分野として多様な商機が見込まれる。水素は大分コンビナート(大分市)にある工場の製造過程で大量に発生しており、その有効活用も目指す。
参入企業の裾野拡大に向けては、太陽光や風力などを生かすアイデアの可能性調査や試作を支援し、新規の挑戦をしやすくする。
事務局の県工業振興課は「(太陽光発電の新規開発に制約ができ)冷や水を浴びせられた面はあるが、エネルギーは世界的な成長分野に変わりない。再生エネ 先進県の優位性を生かし、引き続き地場企業を応援し基幹産業化を目指す」としている。 ※この記事は、7月11日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2015/07/11/003023549
2015/07/11
再生可能エネルギーで夢のある地域にと、福知山市夜久野町畑地域の7自治会で組織する「七つの里づくり協議会」(越後正則会長)が、水量の豊富な谷川が多 いという地の利を生かして、小水力発電を始めた。試行錯誤の末完成させた水車の発電機を今春、今里の富久貴の滝近くに設置。年内に本格的に稼働させ、民家 1軒に送電する計画を立てている。
■水が豊富な地の利活用しようと 夜久野町畑■
小水力発電は、ダムのように河川の水をためることなく、河川や農業用水などの水の流れをエネルギーに変える発電方式。電力会社主体の開発とは違い、個人やNPO、地方自治体など多くの事業主体が取り組んでいる。
里づくり協議会が再生可能エネルギーに着目したのは、2011年3月の東日本大震災後。大震災に伴う原発事故によって、再生可能エネルギーと電力の地産 地消が全国で注目を集めた。畑地域でも導入する方向でさまざまな方法を検討。地理的に太陽光発電や風力発電は難しく、一番期待できる水力発電施設の整備を 考えた。
協議会の活動の一環として計画し、まず、各自治会が自転車ホイールを使った簡易な水車を1台ずつ作って、地元の農業用水路に設置した。らせん水車による 小水力発電の研究をしている京都市立伏見工業高校のグループに指導を受け、24インチの自転車ホイールに付けた18枚の羽根で水流で回転させ、バッテリー に蓄電する仕組みで作り上げた。完成後は地元のイベント・椿祭りでライトアップし、地域の交流拠点となっている軽食類を提供する「ななっこ」では、この電 源を利用して「水車コーヒー」を作り、付加価値を高めて販売している。
この経験を元にして発電量の大きなものを作ることにし、小倉の有限会社・やくの農業振興団(中島俊則社長)と、高度な溶接技術をもつ市内拝師の鐡工房 (笹倉鐡太郎代表)が一昨年6月から共同開発に取りかかった。水車のプロペラの軽量化、間隔の調整など試行錯誤を重ねて製作し、3月に設置した。
■30メートルの落差作り出し■
地元のシンボルの一つ、富久貴の滝の下流から取水し、水車まで約250メートルの区間に直径15センチの塩ビパイプを引いて導水し、約30メートルの落差を作った。
水は年中、枯渇することなく流れており、勢いよく流れ落ちる水が直径45センチ、52枚の羽根を持つ2基のステンレス製の水車を高速、安定的に回転させ、1・5キロワット前後の発電を続けている。
一般家庭の電力消費量は一日10~15キロワット時で、民家1軒分に十分に対応できると推定している。年内に電柱を立てるか、地中をくぐらせる形で電線を引き、水車から一番距離が近い民家に送電を始めることにしている。
2号機も近く製作し、今里地区にある街灯19基すべてに送電する計画。現在は年間の電気代が8万円ほどかかるうえ、蛍光灯の故障が多いことから3万円近くの維持管理費もかかっている。これをLED化し、水車で電源を賄う考えだ。
協議会の副会長も務める中島社長は「畑地域の勾配が宝物。これを生かして小水力発電を売り物にした地域にすることで、電気代を払わずに暮らせる地域とし て全国に発信したい。過疎、高齢化が深刻ななか、夢のある事業に取り組むことで、都会の若者が魅力を感じて移住してくれるところにしていきたい。これから が本番」と意欲を見せる。
福知山市地域おこし協力隊員に今年2月に委嘱され、熱い思いで静岡県静岡市から夜久野町畑(稲垣)に移り住んだ山田正利さん(42)は、4月の協議会総会で、情報発信促進・自然エネルギー実践部会長に選任された。
「小水力発電で蓄電したバッテリーで農機具を使えれば省エネにもつながる。こうして作った米を、地球に優しい米として付加価値を高めて売ることもできると思う。小水力発電をテーマにした全国規模のイベントを畑地区で開くことも考えています」と積極的だ。
写真上=川から流れ落ちる水を受けて勢いよく回る水車
写真中=発電量を高めるためプロペラの軽量化など試行錯誤を重ねて製作した
写真下=取水源の上流にある富久貴の滝
2015/07/10
愛知県豊田加茂農林水産事務所は、羽布ダム小水力発電施設の管理用道路を整備するため設計に着手した。NTCコンサルタンツ中部支社(名古屋市中区)に業務を委託、内容を詰め、9月をめどに工事発注する。
2015/07/10
2015年07月10日 13時00分 更新
農業用水路やダムからの水流を生かして小水力発電が各地に広がってきた。発電が可能な場所は全国各地に2万カ所以上もあり、導入事例は今後さらに増えていく。2014年度以降は既設の水路をそのまま利用した場合でも固定価格買取制度の認定を受けられるようになった。
[石田雅也,スマートジャパン]
固定価格買取制度の対象になる再生可能エネルギーのうち、中小水力発電の適用範囲が2014年度から広がったことは意外に知られていない。発電能 力の大きさによる3つの区分に加えて、既設の導水路を活用した場合でも同様に3つの区分で認定を受けられるようになった(図1)。買取価格は低くなるもの の、発電機などを設置するだけで短期間に低コストで運転を開始できる利点がある。
中小水力発電を実施するためには、電気設備と土木設備が必要になる。電気設備は水車と発電機のほかに、送配電ネットワークに電力を送る変電設備で構成する(図2)。通常は20年程度が寿命で、発電を続けるためには設備の更新が欠かせない。
一方の土木設備は川から水を引き込むための取水口や導水路が中心で、100年くらい使い続けることができる。導水路から流れてくる水はヘッドタン クと呼ぶ水槽に貯めてから、発電専用の水圧鉄管を使って水車に送り込む仕組みになっている。水圧鉄管の寿命は30~60年が標準的だ。
従来の固定価格買取制度では、電気設備と土木設備の両方を新設・更新する場合だけが認定の対象になっていた。寿命の長い土木設備をそのまま利用し て、電気設備だけを導入すれば、建設コストを低く抑えることができる。政府は中小水力発電を促進するために、既設の導水路を活用した発電設備も買取制度の 対象に加えて、2014年度から買取価格を設定した。
発電規模が小さい出力200kW(キロワット)未満の場合には、通常の1kWh(キロワット時)あたり34円(税抜き)に対して25円である。電 気設備と水圧鉄管の導入コストは全体の5割程度だが、中小水力発電では運転後の維持費が高めになるため、それを考慮した買取価格になっている。
ただし初年度の2015年3月末までに認定を受けた既設導水路活用型の発電設備は全国で11件にとどまった。適用条件が十分に浸透していないこと が大きな要因だ。特に農業用水路が関係すると判断がつきにくいことから、政府は改めて認定要件を整理したうえで導入を促していく。
既設の導水路を利用した場合でも、発電専用の設備さえ新設・更新すれば買取制度の認定対象になる。具体的には電気設備と水圧鉄管のほかに、導水路や放水路のうち発電にしか利用しない部分も含む(図3、図4)。農業用に共用する部分は新設・更新しなくてもかまわない。
最近は農業用水路そのものに水車と発電機を導入するケースも増えている。この場合は既設導水路ではなくて通常の中小水力発電の買取価格を適用する ことができる。中小水力は太陽光や風力などと比べて出力の小さい発電設備が多く、初期投資を回収しにくい難点がある。建設コストが安く済む既設導水路を活 用した導入事例が増えることで、普及にはずみがつく期待は大きい。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1507/10/news026.html
2015/07/09
中部電力は7日、2014年5月から建設工事を進めてきた阿多岐水力発電所(岐阜県郡上市、190キロワット)の営業運転を開始し、同日、完工式を現地で開いた。同発電所は岐阜県が管理する阿多岐ダム直下に、河川維持流量発電所として建設された。完工式には勝野哲社長のほか来賓として古田肇・岐阜県知事も出席。関係者などあわせて約50人が参加し、無事故無災害での工事完了を祝った。
式典であいさつに立った勝野社長は、同発電所の検討段階から完工までの経緯を説明した上で、「短期間での工事だったが、無事完工を迎えられたのもダム建設当時の先人たちの工夫による賜物。貴重な純国産エネルギーである再生可能エネルギーをうまく活用し、今後も安定的な発電電力量が期待できる河川維持流量発電所の開発を進めていきたい」と述べた。
来賓として祝辞を述べた古田知事は「岐阜県では清流の恵みを生かした取り組みを積極的に進めている。水力発電所を通じ、半永久的に地域の発展に寄与できることを期待している」と話した。
同発電所はダム建設時に、将来の発電用としてあらかじめ分岐管路を設置。これが水圧管路新設では大幅な工期短縮とコストダウンにつながった。中部電力が岐阜県営のダムで水力発電所を開発したのは、今回が初めて。年間発電電力量は、一般家庭約360世帯分に相当する130万キロワット時を想定。二酸化炭素(CO2)の削減量は、年間約700トンを見込んでいる。
同発電所の運開により、中部電力が保有する水力発電所は196カ所、最大出力535万6千キロワットとなった。16年6月には、同じく岐阜県営ダムの丹生川水力発電所(高山市、350キロワット)が運開を予定している。