2015/10/31
高山村奥山田の松川にある県高井砂防ダムを活用した小水力発電所「高井発電所」が23日、運転を開始した。
年間発生電力量は一般家庭約750軒分の使用量に相当する約270万kW/h。電力は再生可能エネルギー固定価格買い取り制度に基づき売電する。これまで利用困難だった松川の酸性水がエネルギーとなって発電に貢献する。県によると、既設の砂防ダムを活用した小水力発電所は県内7例目。
発電施設はダム本堤に穴を開けて取水する。沈砂池で流入する土砂を取り除いてから導水し、斜面の落差約36mを利用。斜面直下に発電所を設け、ステンレス製の水車発電機で発電する。最大出力は420kW。川の水量が減少する距離が短いなど環境にも優しいという。右岸台地には管理棟も置いた。
発電事業は、小水力発電を推進している総合建設コンサルタントの日本工営(東京都)が建設資金と技術者を提供。今後の運転・維持管理は日本工営の子会社、工営エナジー(東京都)と、村も2%(100万円)出資している長野水力(長野市)が行っていく。
村は施設用地約7,000平方メートルの賃借料と固定資産税のほか、利益が出た場合は配当金を得る。
23日は現地で竣工(しゅんこう)式と発電開始式が行われ、関係者約65人が発電所の完成を祝った。
村は2010年10月、日本工営から発電所計画の打診を受け、11年5月に学識経験者や行政機関担当者、地区・団体代表者らによる「松川小水力発電開発検討委員会」を設置。発電所に関する検討を進めてきた。
発電開始式では、施主を代表して日本工営の広瀬典昭会長が、「酸性河川や既設砂防施設の活用などさまざまな課題に直面したが、慎重に技術的な検討を行い実現にこぎ着けた」とあいさつ。
来賓の久保田勝士村長は、村が新環境条例の制定に向けて準備を進めていることなどに触れつつ、再生可能エネルギーを活用した小水力発電所の完成は「大きな弾みになる。県のモデルとして安定的に自然エネルギーを供給していただきたい」と期待を寄せた。
発電所は9月末から試験運転を始め、この日、本格稼働となった。長野水力の横田裕史社長は取材に「ここからが始まり。最初の半年は中々、安定稼働が難しいので心配もある。自然の特性をつかみできるだけ早く安定させたい」と話した。
村総務課によると、発電所の発電開始により、太陽光発電と温泉熱バイナリー発電を合わせた村内の再生可能エネルギー全体の年間発生電力量は468万kW/h。一般家庭1,300世帯分に相当し、村全世帯の54%の電力を賄えるようになるという。
http://www.suzakanews.jp/news/contents/event/event.php?id=3327
2015/10/30
関係者ら早期完了祈る
老朽化した豊沢ダムの施設改修と小水力発電所を新設する国営豊沢川農業水利事業の着手に伴い、東北農政局和賀中央農業水利事業所が現地事務所とし て花巻市下北万丁目地内に構えた「豊沢川農業水利事業建設所」の開所式は29日、同市大通りのなはんプラザで行われた。関係者約150人が出席し、同市と 北上市の農業用水の安定供給、施設の維持管理費の軽減に向けた事業の早期完了を祈った。
開所式で東北農政局の豊田育郎局長は「本事業は豊沢ダムの改修を行い、併せて小水力発電所を新設し、農業生産性の維持、農業経営の安定に資するもの。本国営事業の基盤整備を原動力に、地域全体としての食料生産の体質強化が一層図られることを期待する」とあいさつした。
同事業促進協議会長で豊沢川土地改良区の平賀巖理事長は「いよいよ工事着手の時を迎えた。受益農地4250ヘクタール、組合員3093人を代表し 心よりお礼を申し上げる。小水力発電所の新設は用排水施設の維持管理費に掛かる組合員の負担軽減につながる」と述べ、早期の事業完了に期待を寄せた。
同事業ではダム施設の堤体天端部の補修、左右岸擁壁の改修を実施するほか、取水、放流、洪水吐(ばき)の各施設のゲート設備の更新、上屋の改築、 新設、管理用道路の新設、同ダム管理事務所の改築、小水力発電所の新設を行う。工期は2022年度までの8年間を予定。総工費は約67億円が見込まれる。
開所した同建設所は木村俊逸所長以下8人の職員体制で業務に当たる。同日は開所式に先立ち、同建設所前で看板掲示式も行われ、関係者、職員が事業促進に邁進(まいしん)する誓いを新たにした。
同ダムは安定した農業用水の確保を目的に、1941年に着工。戦争で一時中断したが、49年に再開し、61年に完成した。以来、用水の安定供給と ともに、市民の水がめ、治水などとしても重要な役割を果たしてきた。しかし、完成から50年以上経過し、老朽化が著しく、早期改修が求められていた。
2015/10/30
東京電力は山梨県と共同で電力供給の新ブランド「やまなしパワー」を2016年4月に開始する。山梨県の企業局が運営する20カ所以上の水力発電 所の電力を買い取って、県内の中小企業を対象に割引料金で販売する地域限定のサービスだ。割引率は電力量料金の3~6%を予定している。
[石田雅也,スマートジャパン]
電力会社と自治体による地域特化型の電力供給サービスが誕生した。東京電力が山梨県と基本協定を結んで、県内の中小企業に電力を供給する「やまな しパワー」の販売に乗り出す。山梨県の企業局が運営する水力発電所の電力を通常の料金よりも安く販売して、地元の企業を支援しながら他県からの進出も促す 狙いだ(図1)。
山梨県の企業局は大規模から小規模まで23カ所の水力発電所を運営している(図2)。発電能力を合計すると12万kW(キロワット)に達して、全 国の自治体でも有数の規模を誇る。東京電力は年間に4億7000万kWh(キロワット時)の電力を買い取って、やまなしパワーのブランドで販売する。販売 量は一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して13万世帯分になる。
通常の電気料金は月額固定の「基本料金」と使用量に応じた「電力量料金」の2本立てで課金するが、このうち電力量料金を3~6%割り引く予定だ。 販売する対象は山梨県内の中小企業に限定して、県の企業局が募集して選定する(図3)。ただし大企業でも新規に山梨県に進出する場合には対象になる。
販売する電力は契約電力が50kW以上の「高圧」で、県内の中小企業は500kW未満の「高圧小口」に限る。新規に進出する大企業には 500kW~2000kW未満の「高圧大口」でも供給できるようにする。電力を供給する期間は2016年4月から2019年3月までの3年間を予定してい る(図4)。
東京電力と山梨県が新しい電力供給のスキームを開始する背景には、東日本大震災後に急速に進んだ電力市場の環境変化がある。これまで県営の水力発 電所の電力は東京電力が安価に調達してきたが、固定価格買取制度が始まったことで、水力を含む再生可能エネルギーの電力の価値が高まった。
その一方で小売の自由化が進み、東京電力から新電力へ契約を切り替える企業が増えている。電力を高く売りたい自治体と、電力の利用者を維持したい電力会社、双方の思惑が一致して生まれた電力供給のスキームと考えられる。
山梨県は全国の自治体の中でも先頭を切って再生可能エネルギーの導入を拡大してきた。富士山をはじめとする周囲の高い山々から流れてくる豊富な水量を生かして、県内には76カ所の水力発電所やダムが運転中だ(図5)。
水力発電所は東京電力が28カ所(揚水式を除く)、山梨県の企業局が23カ所(ダムを除く)を運営している。このほかの水力と太陽光やバイオマスを加えると、再生可能エネルギーによる発電能力は56万kWに達する。
ただし新サービスには課題も残る。供給力の大半を水力発電所が占めているため、降水量によって電力の供給量が大きく変動してしまう。過去の実績を 見ると、2009~2011年度は年間に5億kWhを超えていたが、2013年度には4億kWhまで減少した(図6)。やまなしパワーで供給する予定の4 億7000万kWhには足りない。不足分は東京電力が補充することになる。
水力に限らず再生可能エネルギーの電力を販売する場合に生じる問題である。その代わりに電力会社の火力発電所や原子力発電所にトラブルが発生して 運転を停止しても、地域の送配電ネットワークに支障がなければ電力の供給を続けることが可能だ。災害に強い電力インフラがある立地条件は企業のBCP(事 業継続計画)においても重要になっている。やまなしパワーの適用を受ける大企業がどのくらい出てくるかにも注目したい。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1510/29/news040_2.html
2015/10/30
発電が国内で脚光を浴びつつある。一般的には千キロワット以下を小水力と呼ぶ。水量と落差があればどこでも発電できることから、水資源が豊富な日本に向いている。
普及の足がかりとなったのは2013年の河川法改正だった。小泉純一郎氏、細川護熙氏の元首相コンビが活動する「自然エネルギー推進会議」で理事を務める中塚一宏元金融担当相が言う。
「河川の流水を利用する水利利用では、河川法に基づいて河川管理者の許可を得るのが基本でした。しかし、実際には申請しても許可を取ることはほぼ不可能だったため、せっかくの小水力発電も普及が進まなかった。そこで民主党政権時代に河川法を改正して、許可制から簡素な登録制にすることを決めたのです。一定の要件を満たせば、すべて登録で済むようになり、小水力発電に参入しやすくなりました」
中塚氏らの支援で今年3月から静岡県長泉町で運転が始まった小水力発電は、幅2メートルの農業用水路に8キロワットの小型水車を置く。年間の売電収入は200万円弱と少ないが、新たに28カ所、増設する計画がある。設置費用は3500万円程度。自治体の補助を受けず、賛同企業を募る。この発電設備も京葉ガスが一定の費用負担をした。
「自然エネルギーは公益性がないと普及しない。そのため、移動式給電装置や携帯型バッテリーを備え、災害停電時には地域の電源として活用してもらう。売電収入は設置費用を負担してくれた企業、水利権者の土地改良区、地元の町内会などと分け合います」(設置者の自然エネルギー利用推進協議会の岡本欣訓氏)
自治体が小水力発電に取り組むケースもある。東京都江戸川区の葛西給水所では、13年から小水力発電を始めた。
地下室の水道配管の先に、幅と高さが2メートルほどの発電機を設置した。水道管の中の上水が、カタツムリのような形をしたタービンに流れ込み、水流で発電する。出力340キロワットの水力発電機だ。
仕組みは、余剰圧力を利用する。金町浄水場(葛飾区)から送水された飲み水は、葛西給水所を経由してさらに約15キロ先の東海給水所(大田区)まで運ばれる。そのため、あらかじめ高い水圧で水が送り出されていて、途中の葛西では発電できるほどの水流の勢いがあるのだ。
「昨年度の発電量は、一般家庭390軒分に相当する127万キロワット時。新電力のエネットが買い取り、4500万円程度の売電収入がありました。設備投資額の2億6千万円はこのままいけば約6年で回収し、その後は黒字化する予定です」(東京都水道局水運用センター村山孝之課長)
東京都は24年までに、再生可能エネルギーの利用割合を20%程度に増やす。水道局でも太陽光発電や廃熱利用(コージェネレーション)を進めるが、その中に小水力がある。現在、6カ所の浄水場や給水所に合計2200キロワット以上の水力発電設備を設置し、13年度は519万キロワット時を発電した。今後はさらに6カ所で小水力発電を始める予定だ。
東京都以外に、山梨県都留市、高知県梼原町も小水力発電に取り組んでいる。また、横浜市や川崎市など、民間に運営を任せる民設民営方式で小水力発電を行う自治体は多い。
小水力発電のハードルは低くなった。だが、「設置前の流量調査に数年必要」(全国小水力利用推進協議会の中島大事務局長)ともいわれ、すぐに始められるものでもない。長期的な計画が必要だ。
※週刊朝日 2015年10月30日号
2015/10/30
日本工営株式会社(以下、日本工営)は、長野県高山村にある信濃川水系松川で、既設の砂防堰堤を活用した高井発電所の発電を開始したと2015年10月23日に発表した。
高井発電所は、長野県が管理する高井砂防堰堤の高低差約36メートルを利用して発電する流込式水路式の小水力発電所である。
この堤に貫通孔を空けて取水するため、新たに取水堰を建設する必要がなかった点に加えて、川の水量が減少する減水区間が短い点でも、環境に与える影響をある程度抑えた発電所といえる。
この川は自然由来と廃止鉱山が原因となる酸性河川で、地域での活用が難しかった。今回、水車発電機をステンレス製とするなどの取り組みにより、酸性水の河川を有効利用した形となった。
日本工営は、建設コンサルタントや電力エンジニアリングの事業を国内外で展開し、その実績を生かして再生可能エネルギー事業にも進出している。
特に小水力発電事業に力を入れており、これまでに、新曽木水力発電所(鹿児島県伊佐市)、四時ダムESCO事業(福島県いわき市)などを全国6カ所に建設した。
今回の高井発電所については、同社が建設資金、技術者を提供したが、今後は、子会社の株式会社工営エナジーと、高山村が一部出資した長野水力株式会社とが運転・維持管理を行う。
同発電所は年間で約270万キロワットアワーを発電し、固定価格買取制度(FIT)で売電する。これは一般家庭約750軒分の電気使用量に相当し、高山村では全世帯数の約30%をカバーする。
http://www.energy-saving-news.jp/news_aYgYuVAN8Q.html