2015/11/29
(2015年11月29日午後5時00分)
福井県が本年度上半期に入札結果を確認した建築工事のうち、1回で落札者が決まらない「不調」と「不落」の割合が30%に上っていたことが、県公共工事入札監視委員会で明らかになった。前年同期の9%から大幅に上昇。民間の建築需要が堅調な一方、価格面で不利な公共工事が敬遠されている実態が浮き彫りとなっている。
県の資料によると、建築工事件数は50件で、うち応札者がなかった「不調」は11件、応札者はいたが条件面で折り合わなかった「不落」が4件あった。前年同期は工事43件中、不落4件のみだった。土木工事などを含めた全体では、本年度上半期の不調、不落率は6%で、前年同期比約2ポイント増。建築工事の不調、不落が突出する結果となった。
月別の不調、不落件数でみると、8月が10件中5件、9月は9件中8件と目立ち、敦賀市白木のモニタリングポスト建て替えや、県営住宅の耐震補強、桝谷ダム(南越前町)の小水力発電設置などがあった。水野家住宅(越前町)の復元、福井城山里口御門(やまざとぐちごもん)といった県の目玉事業でも契約できない事態に陥った。
県は業者への聞き取りの結果、「価格が割に合わない」「鉄工所が手いっぱいで、資材調達が不可能」との理由があったと説明。夏場に民間の工事が集中したことも影響したという。条件を変更して再入札し、現状ではおおむね落札に至っているとした。
また落札率は、本年度上半期の公共工事全体の平均92・9%に対し、建築工事は96・5%。業者の努力による値下げの余地が他の工事と比べて少ないことも見て取れる。
福井県建設業協会の松田七男会長は「五輪需要などで建築資材が東京に集中し、資材価格が上がって地方の公共工事では割が合わないということだ」と現状を語った。その上で「民間の実勢価格に公共工事の単価を合わせるという目先の対応では、事態は解決しない。抜本的な見直しが必要ではないか」と話している。
2015/11/28
2015年11月28日 14時08分
用水路や揚水機場など農業水利施設を活用した小水力発電の推進を目指す研修会が19日、佐賀市のグランデはがくれで開かれた。県や市町、土地改良区の関係者ら55人が再生可能エネルギーの動向や小水力発電の仕組みなどを学んだ。
小水力発電や太陽光発電の導入推進に向け、発電施設の整備や運営に必要な知識を学ぼうと開催。発電の事業運営に関する講演や先進地の事例の発表などがあった。
九州経済産業局の植木健一郎・エネルギー対策課長は講演で、国産エネルギー資源の拡大や雇用創出など導入の意義を紹介。固定価格買取制度の課題や認定の条件などを説明した。
農業用水を活用した小電力発電に取り組む「東京発電」の富澤晃・事業戦略グループマネジャーは「既存の水路を活用できる」「安定した発電が望める」「国 が普及を促進している」などと説明。導入の条件として「一定以上の流量」「距離50メートル以内で7メートル以上の高低差」「200メートル以内に電力会 社の電柱がある」などを挙げた。
2015/11/27
2015年11月23日08時26分
国の「環境モデル都市」に認定されている高知県高岡郡梼原町で11月21日夜、小水力発電を活用した「ゆすはらウインターイルミネーション」の点灯式が行 われた。2016年2月28日まで毎日午後5時半から、街路樹約70本に設置された3万1200個の発光ダイオード(LED)照明が町の中心部を優しく照らす。
「積雪で来訪者が減ってしまう冬に梼原をPRしよう」と梼原町や梼原町商工会が初めて企画した。梼原川の小水力発電所から電気を供給し、国道 197号から三嶋神社までのメーンストリート約600メートルに電飾を施した。配線を地中化するなど景観にも配慮し、総事業費は約540万円。
この日、カウントダウンとともにオレンジ色の光が一斉にともされると、集まった住民たちからは「きれいなねえ」と歓声が起こった。お笑いライブや楽器の生演奏などでもにぎわった。
期間中は、町内の店舗で使えるクーポン券の配布なども行っている。問い合わせは、梼原町産業振興課(0889・65・1250)へ。
【写真】小水力発電を活用したイルミネーション(高知県高岡郡梼原町梼原)
2015/11/27
県議会十一月定例会は二十六日開会し、会期を来月十四日までと決めた。県側は、百二億一千百九十四万円を追加する本年度一般会計補正予算案など二 十六議案を提出。石井隆一知事は提案理由説明で、再生可能エネルギーの導入に力を入れる方針を示し、来月に南砺市利賀村上百瀬の百瀬川で小水力発電所の工 事に着手すると説明した。
百瀬川の小水力発電所は、事業費約十三億五千万円で、十二月七日に起工し二〇一七年秋の運転開始を予定。最大出力は約六百四十キロワットで、年間発電電力量は一般家庭九百五十軒分に当たる約三百五十万キロワット時を見込む。
石井知事は、提案理由説明で、結婚を支援する「とやまマリッジサポートセンター」の会員登録者数が昨年十月の開設から一年間で、目標の六百人を達 成したことも報告。全日空の富山-羽田便については「利用が相当に伸びてはいるが、便数維持の目標水準まではかなり開きがある厳しい状況」と述べた。
代表質問は二十七日、一般質問は十二月二、四両日に行う。 (豊田直也)
http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20151127/CK2015112702000043.html
2015/11/24
着工まで6年準備
「長年かけて、やっと完成が見えてきたのに…。国はどうしてくれるのか」
由布市庄内町の農業用水路を使った小水力発電所(出力330キロワット)の建設予定地。元治水(げんじすい)井路土地改良区の理事長、佐藤高信さん(75)は、工事が中断した現場で強く憤った。
水利権協議など6年の準備を経て、2017年完成に向け着工したのが昨年。ところが今年6月、九州電力から接続する送電網の容量不足で、増強工事に1億円を超す負担金が必要と示された。さらに大きく膨らむ可能性があり工事には5~7年かかるとも。計画の総事業費は6億円(うち補助金が5億円)。あまりに巨額の追加負担と長い時間に佐藤さんは頭を抱えた。
この発電は農村の未来を懸けた大勝負だ。稲作はもうからず農家の高齢化と減少に拍車が掛かる中、老朽化が進む水路の維持負担は増す一方。年間約4千万円と試算した売電収入を維持費に充て、ムラの活性化にも役立てたいと思い描く。
時間帯限定の接続
12年に固定価格買い取り制度ができ売電価格が上がった時、その期待は膨らんだ。だが太陽光発電の急増で送電網は限界に。元治水の小水力は制度開始前から計画していたのに進めなくなった。送電網の問題は当初から指摘されていた。「なぜ国は並行して対策を取らなかったのか」
新たに九電からは送電網の増強費負担が発生しないが、太陽光発電が本格稼働しない時間帯限定の接続を提案された。高齢化との競争もある。「売電収入が減っても、それしか道はないか」。佐藤さんは歯がみしながら思案している。
県内では他にも元治水のような計画を進めたり、検討している地域が幾つかある。県土地改良事業団体連合会の小川裕三常務理事は「現状にどこも不安を抱いている」。10月には佐藤さんらと九州農政局を訪ね、「農村の活力向上が目的の事業に配慮をしてほしい」と訴えた。
地域活性化にも生かせる再生可能エネルギー。そこに着目して地方創生に挑む人たちが、地方創生を叫ぶ国に振り回されている。
<メモ>
九州電力によると、県内で送電網に余力がないのは日田・九重、湯布院・別府・三重、日出・杵築の3エリア。再生エネ設備(50キロワット以上)の接続をする場合、国のルールで増強費を事業者が負担する必要がある。
※この記事は、11月24日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。