2016/03/21
2016年3月21日掲載
未来型観光地を目指して ―福島県土湯温泉―
温室効果ガス削減や売電収益、環境教育などと、小水力発電の目的はさまざまだが、今回は新たな温泉郷を築くために小水力発電を導入した、福島県福島市の土湯(つちゆ)温泉の事例を紹介したい。
かつての賑わいを目指して
東京から新幹線で約1時間半。JR福島駅で降り、西に連なる奥羽山脈の南端、東吾妻山(ひがしあづまやま)の麓を目指す。バスで揺られること40分、阿武隈川(あぶくまがわ)の支川、荒川(1級河川)が流れる渓谷に土湯温泉がある。
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2016/03/20
2016年3月20日
小水力発電や太陽光発電を行い、売電収益を地域活動の財源に活用する集落が出てきた。大分県竹田市では、農家らが小水力の売電収益を営農組合の6次産業化の資金に充てる。岡山県吉備中央町では高齢者の買い物支援や草刈りなど、売電収益を集落維持に活用する。いずれの地域も、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を生かし、農村の活性化を目指している。
大分県竹田市の土地改良区宮ケ瀬工区は昨年夏、農業用水路を活用し小水力発電所を建てた。同制度で九州電力に売電した収益を財源に、地域農業の存続を目指す。
同区は、農家46人が20ヘクタールで米を作付ける。平均年齢は70歳を超えるが、区長の渡部修身さん(61)は「売電で山間部に長期継続的に所得がもたらされる。農業が厳しい中で集落に収入が生まれるのは大きな利点だ」と喜ぶ。
初期投資は4200万円。県の補助(1150万円)以外は全額、融資を受けた。発電量は1カ月約1万2000キロワット。九州電力に売電する収益は1カ月30万円弱に上る。
売電収益は、地元の農事組合法人・紫草の里営農組合の運営資金に充てる予定。同法人は、地元で古くから栽培するムラサキ科で多年草のムラサキ(紫草)を使い染色したストールなどを売り出す6次産業化に取り組む。販路開拓に資金が不足したため、売電収益を活用する。この他、水路掃除など日当や改修費に充てる計画だ。
同組合の代表、佐藤征年さん(72)は「地域は現金収入が乏しかった。売電収益で販路を広げ、交流人口を増やしたい」と笑顔で話す。
岡山県吉備中央町の旧高富小学校区の住民でつくる「みんなで支え合う地域づくり協議会」は昨年、50キロワットの太陽光発電事業を始めた。売電収益は、高齢者の買い物支援や草刈りをする住民の日当などに活用する。代表で農家の草地明保さん(82)は「収益を元手に住民同士が支え合い、集落を守る事業をしたい」と見据える。
売電収益を地域振興に役立てる動きは全国に広がる。兵庫県丹波市の山王自治会は、太陽光発電で、農産物の加工品開発や集落維持の財源に活用している。鳥取市の「市民エネルギーとっとり」は、出資者を募り牧場の屋根などに太陽光パネルを設置。売電収益で県内の米や野菜などを購入し、出資者にお返しする仕組みで、地域経済の活性化を目指す。(尾原浩子)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36681
2016/03/16
2016年3月16日
飛島建設(川崎市高津区)とオリエンタルコンサルタンツ(渋谷区)が発電事業者として岐阜県中津川市に建設を進めていた小水力発電所が4月に運転を始める。電力の固定買取価格制度を利用して20年の事業期間中に全量(年間約95万kWhを想定)を中部電力に売電するという。
建設地付近は中山間地形で起伏があり、小水力発電に適した水量と未利用の落差が多い。今回は大正時代に造られた農業用水路を改修し、発電用導水路として活用した。
両社は今後、企業・地域・官民の連携を軸に事業を進めたノウハウを生かし、水力発電の潜在能力が高い岐阜県を中心に小水力発電エンジニアリング事業を展開する考えだ。
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2016/03/11
2016年3月11日掲載
出力が100キロワット以下の小規模な「マイクロ水力発電」をめぐる動きが、県内でも熱を帯び始めている。水の流れで水車を回して発電する設備が昨年の津波町に続き、年内には魚沼市でも稼働。メーカー各社は新たな機器の開発に注力している。国は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見直し、安定した発電が見込める中小水力などの普及を促す姿勢をみせており、水資源が豊富な「農業県」の新潟で新たな収益事業として取り組むケースが今後増えそうだ。(臼井慎太郎)
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◆地域の自己財源
水の流れを調節する水門機器やバイオガス発電機などを手掛ける長岡市の環境機器メーカー、大原鉄工所は出力が20キロワットまでの水力発電設備を販売する態勢を整えた。今後3年程度で10基の販売を目指している。
市の補助金を活用して平成26年に5キロワットの設備を試作し、昨年1月から同市柿町で実証試験を実施。落差のない水路でも効率良く発電ができるのが特長といい、自動的に水車を引き上げたり水の流れをせき止める機能も取り入れた。
同社の試算によると、5キロワットの設備で80%の稼働率を保てば、買い取り制度による年間の売電収入は約120万円。農業用水を供給する施設が各地で老朽化していることも踏まえ、環境営業一課の中野学課長は「施設の補修や更新などの際に『地域の自己財源』として導入できる上、災害時の非常用電源としても役立つ」とアピールする。
産業用機器などを製造する新潟市東区のナビックは、流量を調整できる水門を一体化して発電の安定性を高めた機器を開発し、南魚沼市姥島新田の農業用水路で5キロワットの設備の実験に取り組んでいる。
28年度中には、水車に流入する落ち葉やゴミを取り除く機能を備えながらも価格を抑えた「汎用(はんよう)型」を開発したい考え。エンジニアリング事業部の諸橋政之課長は「小水力発電の電力を電気自動車に充電して農地に運び、電動草刈り機などに供給するといった活用方法も期待できる」と話す。
◆再エネの地産地消
県によると、農業用水を活用した運転・建設中の小水力発電設備は、実験用を除いて県内で計7カ所。このうち出力が最も大きいのは、新発田市にある2900キロワットの発電所だ。
マイクロ水力は、昨年12月に津南町で稼働した39キロワットの雑水山第二発電所が県内第1号。今年9月以降には、地域の農家などでつくる魚沼市土地改良区が72・8キロワットの設備を同市池平で整備する。年間発電量は約100世帯分の消費電力を賄える約53万キロワット時を見込む。東北電力に売電し「用水路など農業水利施設の維持管理に収入を充てたい」(担当者)という。
市町村や農業の生産基盤を整備する土地改良区が農業用水を発電に利用する際の手続きを簡素化するなど、国は再生エネの「地産地消」を後押ししている。
とはいえ、現状では設備の導入には1基当たり2千万円程度もかかり、一層の規制緩和を求める声は少なくない。農業用水を発電用に1年間を通じて使う際には、水を流すために新たな権利の取得を迫られるケースもある。
天候に左右される太陽光に比べ、小水力は規模が大きくなくても安定した電源となる。未利用の水資源が持つ高い潜在力を引き出し地域振興に結びつけるには行政や農業関係者、企業などの連携が欠かせない。
http://www.sankei.com/region/news/160311/rgn1603110017-n1.html
2016/03/10
2016年3月10日掲載
まさに滑らかな白い糸が岩を滑り落ちるようだ。白糸の滝(福岡県糸島市)には雪が降るこの日も、観光客が訪れていた。茶屋では従業員がうどんや団子でもてなしている。青木一良店長(69)は「ここの電気は全部、滝の発電で賄っているんですよ」と声を弾ませた。
滝の水は30メートルほど下流の丸太小屋に引き込まれ、小型水車の発電機を動かす。「滝で集落の電気をつくりたい」という住民の声を受け、市が2013年度に約4400万円かけて作った「小水力発電所」だ。
ダムと異なり、少ない水量でも発電できるのが小水力発電の特徴。白糸は出力15キロワットで、一般家庭27世帯分に当たる。
滝一帯の観光施設「ふれあいの里」は、住民組織である白糸行政区が運営している。小水力発電を研究する九州大大学院の島谷幸宏教授(60)や学生たちと一体となり、古い木造水車を再利用して発電の仕組みを学ぶなど、当初から深く関わってきた。発電所の完成後も、元区長の青木さんら住民を中心に維持管理している。
東日本大震災による福島第1原発事故以来、大手電力に頼らず、住民主導で自然エネルギーを活用して電気をつくる「市民電力」が注目されている。
出資し合って発電所を作ったり、家庭に発電設備を置いたりして、地域のエネルギー自給を目指す。太陽光発電などで大手電力に売電するか、自家消費する方式が多い。
実は白糸も、「ふれあいの里」で使った残りは九州電力に売電している。電気事業法により、集落に直接供給できないのだ。発電した敷地内で使うことしか認められていない。
小水力発電はさらに、河川法や土地改良法も関係する。島谷さんは「法的手続きや利害関係の調整が複雑なこと」が導入の壁となっていると指摘する。
島谷さんと連携して発電機を開発する明和製作所(同市)が、会社前の水路で発電機の実証実験をしたときのこと。水路に関与する県と市、地元行政区に相談し、水路の利用者でつくる水利組合の了承を得るため、総会での説明も求められた。生野岳志社長(53)は「規制緩和は進んでいるが、利害をうまく調整するには、白糸のように住民が主体的に取り組むことが重要だ」と話す。
高いコストも課題の一つだ。例えば水車は、技術を持つ国内メーカーが限られるため、価格競争が乏しく、納入にも期間を要する。島谷さんは海外の設計技術を使い、地場企業と水車や発電機を開発することで、より低コストで早く製作できるようにした。
小水力発電には多岐にわたる知識と技術が要求される。だが地域で導入するには、専門家だけでなく、住民の熱意も欠かせない。白糸のように地域一体で売電までし、採算が取れている例は珍しい。
島谷さんのノウハウを生かし小水力発電を普及させようと、九州大は13年にベンチャー会社「リバー・ヴィレッジ」(同市)を設立した。発電場所の選定から法的手続き、地域の合意形成までを後押ししている。
島谷さんは「発電に取り組むことで、電気を消費する側から生み出す側になる。地域の将来像を共有し、地域の資源を新たなかたちで次世代に引き継ぐ事業でもある」と語った。
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東日本大震災以降、停止していた全国の原発は、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を皮切りに再稼働し始めた。電力各社は来月からの電力小売り全面自由化に向け、「手ごろな料金」を競い合う。3・11から5年。私たちは電力にどう向き合えばよいのか。地域で模索する「市民電力」の動きを追った。
小水力発電所の中で、発電機を調整する青木一良さん。円形窓の中で水車が回っている
http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/230368