2016/04/22
2016年4月22日掲載
山口県の企業局がダムに建設した小水力発電所の運転を開始する。ダムから水を取り込むための取水塔の内部に水車発電機を設置した。一般家庭で160世帯分の電力を供給しながら、取水量を制御する弁の役割も果たす。固定価格買取制度を通じて20年間に4億円弱の売電収入を得る見込みだ。
[石田雅也,スマートジャパン]
山口県の宇部市(うべし)は瀬戸内海沿岸の工業地帯で知られる。広大な工業地帯に水を供給する役割を担うのが「宇部丸山ダム」だ。このダムの湖面に突き出た取水塔の内部で、新たに小水力発電が始まろうとしている(図1)。
ダムを管理する県の企業局が4月26日に「宇部丸山発電所」の運転を開始する予定だ。貯水塔は40メートルを超える高さがあり、上部だけが湖面から上に出ている。内部の下のほうにはダムから水を取り込むための導水路が設けられていて、その途中に水車発電機を設置した(図2)。導水路を流れてきた水を取水塔の内部で垂直方向に分岐させて水車発電機に取り込む。
このような仕組みでも実際に発電に利用できる水流の落差は19メートルになる。水がダムの上のほうから導水路を通って流れてくるからだ。水車発電機に取り込める水量は最大で毎秒1立方メートル弱になり、130kW(キロワット)の電力を供給できる。
年間の発電量は57万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して160世帯分に相当する。固定価格買取制度を適用して1kWhあたり34円(税抜き)で売電できるため、年間に1940万円の収入を見込める。買取期間の20年間の累計では3億9000万円になる。建設費は2億2800万円かかったが、運転維持費を加えても十分に採算をとることができる。
水力発電所12カ所で5万世帯分の電力に
もともと取水塔の中には導水路を流れてくる水量を制御するための調整弁(バルブ)が設置されている。常用と予備が2組あって、万一故障が発生しても調整弁を切り替えて取水に支障が生じない仕組みだ。このうちの予備の1台を水車発電機に置き換えて、取水量を制御しながら発電も可能にした(図3)。
ダムから工業用水に必要な量だけを取り込んで発電するため、水量によって発電量は変動する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は50%になり、小水力発電の標準値60%と比べると少し低めだ。とはいえ従来は利用できなかった水力でCO2(二酸化炭素)を排出しない電力を供給できるメリットは大きい。
山口県の企業局は県内の各地でダムと水力発電所を運営している。宇部丸山発電所を含めて大小12カ所の水力発電所を運転中だ(図4)。発電能力を合計すると5万kWを超えて、年間の発電量は1億8000万kWhに達する。一般家庭で5万世帯分に匹敵する電力量である。
宇部丸山ダムでは小規模な太陽光発電も実施している。ダムの湖面に筏を浮かべ
て、その上に20kW分の太陽電池を搭載した(図5)。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共同で2002~2006年度に取り組んだ「太陽光発電モデルプラント」を現在も使い続けている。
太陽電池で発電した電力は陸上のインバータに送って、そこから再び湖面に浮かぶ水質改善装置に供給する。この装置はダムに発生するアオコと呼ぶ微細藻類を防止するもので、水質の維持管理費の抑制につながる。さらに余った電力は中国電力に売電している。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1604/22/news028_2.html
2016/04/17
2016年4月17日掲載
福知山市が府立工業高校の生徒に依頼して同市大江町佛性寺に設けた小水力発電設備の電気で15日、周辺の電飾やライトアップを始めた。再生可能エネルギーを活用した自然との共生をアピールする。
設備は、二瀬川から導く農業用水で水車を回し、毎秒40リットルの流量で0.5キロワットの発電能力を持つ。再生可能エネルギー活用の実証実験として、同校機械プランニング科の生徒が2013年11月に完成させた。その後、動力の伝達方法を変更するなど、電気を安定供給させるための改良を重ねてきた。
電飾は800球のLEDを使い、水車小屋や川辺の桜と橋脚を桃色にライトアップ。農業水利などで発電量の少ない時期を除き、毎日午後5〜10時に青や桃色に照らす。
福知山市内には豊富な水源があるといい、市環境政策室は「同様の設備の普及や応用の幅が広がることを期待したい」と話している。【佐藤孝治】
〔丹波・丹後版〕
2016/04/15
2016年4月15日掲載
起伏の激しい岐阜県の山間部を流れる農業用水路を改修して新しい小水力発電所が運転を開始した。64メートルの大きな落差を生かすためにチェコ製の水車発電機を使っている。農業用水路は大正時代に造ったもので、自治体と民間企業が連携して発電事業による地域の活性化に取り組む。
[石田雅也,スマートジャパン]
岐阜県の東部に位置する中津川市の山中を「平石用水路」が流れている。大正時代に造った農業用水路は老朽化が進み、改修が必要になっていた。長さが918メートルに及ぶ水路を改修して、「落合平石小水力発電所」が4月1日に運転を開始した(図1)。
発電に利用できる水流の落差は64メートルもある。流量は最大で毎秒0.25立方メートルと少ないが、それでも126kW(キロワット)の発電が可能だ(図2)。年間の発電量は95万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると265世帯分の電力になる。発電所がある落合地区の総世帯数(1350世帯)の2割をカバーできる。
小水力発電用に横軸クロスフロー型の水車発電機を導入した。鮮やかな赤い色をしたチェコ製である。円筒形の水車が水平方向の横軸で回転して発電する仕組みだ。水車発電機を納入した日本小水力発電によると、水流の落差が10~100メートル程度で、流量が少ない場合に適している(図3)。
落合平石小水力発電所の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を計算すると86%と極めて高い。小水力発電の標準的な設備利用率は60%程度で、それと比べて1.4倍の高効率で運転できる。平石用水路の流量が年間を通じて大きく変動しないことが理由の1つだ。
発電した電力は全量を固定価格買取制度で中部電力に売電する。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は34円(税抜き)になるため、年間で3200万円の収入を買取期間の20年間にわたって見込める。
水路の改修は2通りの方法で実施した(図4)。1つの方法はU字フリュームをベンチフリュームに入れ替えて、横幅を500mm(ミリメートル)から1000mmへ2倍に広げた。ベンチフリュームは高さよりも横幅のほうが長い構造の溝で、さほど強度を必要としない農業用水路には多く使われている。
もう1つの方法は山林の中に古い石積みで造られている区間をモルタルで全面塗布して補強した。モルタルはセメントに砂を混ぜた建築材料で、砂利も加えるコンクリートと比べると高価だが、塗布面が滑らかになって水が流れやすくなる。
このほかに農業用水路の流量を安定させるためのヘッドタンク(上部水槽)を鉄筋コンクリートで全面的に改修した(図5)。小水力発電では水路を流れるごみが水車発電機のトラブルを引き起こすことがある。その防止策として、ごみを除去する除塵機をヘッドタンクに据え付けた。
さらに水車発電機まで水を送り込む水圧管路を敷設したほか、水車発電機を収容する建屋を新設して、小水力発電所が完成した。このように既存の農業用水路を改修して小水力発電に活用すれば、全体の建設費を低く抑えることができる。と同時に水路を共用することによって、農業用水路の維持管理費の軽減にもつながる。
発電所を建設・運転する事業者は飛島建設とオリエンタルコンサルタンツの2社による共同体である(図6)。両社が建設・運転費用を折半で負担する。地元の中津川市は開発の許認可などで支援した。落合地区は水路の使用許可を与える代わりに、補修・清掃点検業務を請け負って収入を得ることができる。
落合地区は江戸時代に東京と京都をつなぐ中山道の「落合宿」として栄えた場所でもある。小水力発電事業に参画したオリエンタルコンサルタンツは落合宿の観光資源を生かして、地域の活性化に取り組んでいく方針だ(図7)。電気自動車の導入や木質バイオマス燃料の製造などを通じて環境保全や防災対策にも役立てる。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1604/15/news033.html
2016/04/13
2016年4月13日
中津川市落合の「落合平石小水力発電所」が完成し、開所式が12日、現地であった。
同発電所は大正時代に建設された農業用水路の一部を活用。飛島建設(川崎市)とオリエンタルコンサルタンツ(東京都)の共同企業体(JV)が事業主体となり、2014年11月から建設を進めてきた。総事業費は約2億5000万円。
有効落差は64メートル。チェコ共和国製の水車と発電機を備え、年間発電量は95万3000キロワット時で、300〜400世帯分の電力量に相当するという。運転期間は20年間で、発電した全量を中部電力に売電する。
開所式には青山節児市長やトマーシュ・ドゥプ駐日チェコ共和国大使、企業や地元関係者約70人が参加。青山市長は「企業と地元、官民が連携したモデルケースとして発信していきたい」とあいさつした。【小林哲夫】
2016/04/13
2016年4月13日掲載
先端技術研究所内で風力・水力発電による蓄電・消費モデルの実証実験
松田 千穂
NTNは先端技術研究所(三重県桑名市)の敷地内に、風力と水力、太陽光で発電した電気を電気自動車(EV)や野菜工場などで使用する施設「グリーンパワーパーク」を設立した(図、ニュースリリース)。自社開発した自然エネルギー関連装置の実証実験を行い、低炭素化社会のモデルとして提案する。
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