2016/06/13
2016年6月13日掲載
世界全域における同社の全業務に必要な電力の93パーセントを再生可能エネルギーでまかなうアップルが、余剰電力を販売する子会社「アップル・エナジー」を設立した。
TEXT BY LEE BELL
TRANSLATION BY HIROKI SAKAMOTO, HIROKO GOHARA/GALILEO
アップルが、子会社「アップル・エナジー」を設立した。登記されたのはデラウェア州だが、運営はクパチーノにあるアップル本社が行う。
『9to5Mac』が発見した、先日アップルが米連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提出した書類によると、アップルは、クパチーノとネヴァダ州の同社ファームにある何百という太陽光プロジェクトにより生み出される余剰電力の販売を考えているようだ。
アップルはFERCに6月6日付けで申請書を提出したが、その60日後から活動開始する許可を求めている。全貌はまもなく明らかになるはずだ。
アップルは2013年、同社データセンターの電力は、石炭などの化石燃料から再生可能エネルギー100パーセントに移行したと発表した(日本語版記事)。
たとえば、ノースカロライナ州メイデンにある同社データセンターは「iCloud」サーヴィスをホストしているが、現在、約40万平方メートルのソーラーファームと燃料電池設備(日本語版記事)からエネルギーの供給を受けている。オレゴン州のデータセンターでは、風力発電や太陽光発電のほか、「マイクロ水力発電」の業者から再生エネルギーを直接購入。ネヴァダ州リノでは太陽光と地熱を利用しているとされている(日本語版記事)。
アップルの最新版「環境責任報告書(PDF)」によると、同社は、世界全域における同社の全業務に必要な電力の93パーセントを、再生可能エネルギーでまかなっている(自社発電と他社からの購入を含む)。アップルの目標は、100パーセント再生可能エネルギーで会社を運営することのようだ。アップル・エナジーは今後さらに成長し、同社のニーズを上回る発電能力を構築することになるかもしれない。
2016/06/11
2016年6月11日掲載
磯山友幸 (経済ジャーナリスト)
仕事を作り、身の回りの必要なものを用意するという自立の精神。そんな思いを持った人たちが「エネルギーの地産地消」に取り組み、仕事の少ない田舎でも自活する術を見出している。
集落のほぼ全戸、約100世帯が出資する水力発電所が今年6月1日に稼働する。岐阜県中央部の郡上八幡からさらに車で1時間ほど。福井県側に峠を越えた山奥にある石徹白(いとしろ)という集落での話だ。
石徹白は、霊峰白山への登山口に当たり、景行天皇12年(西暦82年)に創建されたと伝わる白山中居神社が鎮座する。上古から続く長い歴史を持つ集落だが、いま消滅の危機に直面している。1960年ごろに1000人を超えていた人口は減少を続け、現在270人あまり。何とかこれに歯止めをかけようと始めたのが、豊富な農業用水を活用した小水力発電だった。
発電した電力はすべて北陸電力に売電。集落で使う電力を上回る総発電量になる。計算上の自給率は100%を超え、売電収入が入ってくることになる。その収入を集落の活性化に役立てようというわけだ。
集落の高台を流れる1号用水の水を谷間の朝日添(わさびそ)川に導水管で落とし、途中に設置した発電機の水車を回す。落差110メートルを利用し、最大116キロワット時の発電を行う計画だ。
もちろん小規模とはいえ、発電所の設置には資金がかかる。工事費は2億4000万円。発電が始まれば、売電収入で維持管理費などは捻出できるとしても、そのためには事業主体が要る。そこで、住民が参加する農業協同組合「石徹白農業用水農業協同組合」を新たに設立したのだ。2014年のことだ。
2億4000万円のうち岐阜県と郡上市からの補助金で75%を確保。残りの6000万円を農協への出資と借入金で賄うことにした。地区の自治会長だった上村源悟さん(65)が新設した農協の組合長に就任。地区の代表たちと手分けして住民への説得を行った。
「地域にどんどん元気がなくなっていく。集落の全員が力を合わせて何かに取り組むことが必要だ」
住民の説得に当たった上村さんの危機感は強かった。11年に退職するまで、郵便局長として集落の衰退を見つめ続けてきたからだ。かつては各家庭で行っていた「おとりこし」という秋の収穫後の集まりが少子高齢化と共に衰退。お寺に集まる形で細々と続いていたが、それも2年前に中断した。
説得に自治会が乗り出したことで、集落はひとつになり、発電所のための農協新設に漕ぎ着けた。
実は、今回稼働する小水力発電には前段がある。石徹白が地域おこしの手段として「小水力発電」に乗り出したのは07年のこと。NPOで再生可能エネルギーなどに取り組んでいた平野彰秀さん(40)が、岐阜県内の小水力の適地を探し歩く過程で、石徹白にやってきたのだ。平野さんは大学に入学した18歳から32歳まで東京で生活、外資系経営コンサルティング会社などに勤めたが、08年に32歳で岐阜市にUターンしていた。もともと地域づくりの活動をしたいという狙いがあった。
石徹白を訪れた平野さんと出会ったのが、石徹白で電子機器を扱う会社を営む久保田政則さん(68)。今は地域おこしを担うNPO法人「やすらぎの里いとしろ」の理事長も務める。「豊富な農業用水を目に見える形で活用すれば、地域おこしの起爆剤のひとつのツールになるのではないか」と考えた。
久保田さんは様々な形の小水力発電の実証実験を平野さんたちと共に始める。タテ軸型、らせん型、上掛け水車型。手作りできるものは手作りし、コストを下げた。始めは失敗を繰り返したが、徐々にコツをつかんだ。
改良した「らせん型水車2号機」はパイプの中のらせん状のプロペラが水流で回ることで発電する。設置から7年たった今も動き続け、最大800ワットの電気を起こしている。これは売電せず、NPOの事務所などで使っている。
集落の中心近くに設置したのは上掛け水車型。水車が勢いよく回ることで発電する。この電気は隣接の農産物加工場に供給。使われていなかった減圧乾燥機を復活させ、とうもろこし粉や乾燥フルーツなどを製造する。寒暖差の大きい石徹白のとうもろこしは糖度が高く名産品。形が悪く出荷できないものをパウダー状に加工し、パンやケーキ用として販売している。
初めは奇異な目で見ていた住民たちの意識が変わったのは、こうした取り組みに全国からの視察が相次いだのがきっかけだった。今でも年間500人以上が水車を見にやってくる。09年には石徹白にやってくる人たち向けにカフェをオープン。4月から10月の土日に営業を始めた。何せ300人に満たない集落なので、飲食店も土産物店もなかったのだ。
住民の変化を目にして平野氏も本気になる。いつまでも「よそ者」としてかかわっていたのでは、本物の地域おこしはできない。11年に石徹白への移住を決めたのだ。移住を前に奥さんの馨生里さんは洋裁学校に通い、集落で「石徹白洋品店」を始めた。集落の伝統的なものに惹かれ、石徹白に伝わる野良着「たつけ」を復活させた。そうした地道な取り組みが、小水力発電への住民の理解を深めていったのだ。
住民出資の水力発電所が稼働すれば、売電の利益だけで2000万円前後になる。減価償却分の積立金や利払いなどを除いても数百万円が残る。これを地域振興に活かしていくことになる。
平野さんの移住をきっかけに、都会の若者が石徹白に移って来るケースが増えた。この7年で12世帯にのぼる。実は09年に地域で「石徹白ビジョン」を策定したが、その際に「30年後も石徹白小学校を残す」という目標を掲げた。それを実現するためには移住者は必須なのだ。「石徹白人」という集落の公式ホームページを立ち上げ、「子育て移住してみませんか?」と呼びかけている。
そんな取り組みの結果、移り住んだひとりが廣中健太さん(34)。東日本大震災を機に、震災直前に生まれた子どもと奥さんを連れて神奈川から移住した。平野さんの講演を聞いたのがきっかけで石徹白を初めて訪れたが、白山中居神社を詣でた際に魂を揺さぶられる思いがしたのだという。移住に当たっての問題は「仕事がない」こと。今は、移住前に取得したヘルパーの資格を活かし、介護施設で働く。そのかたわら、農作業や釣り、狩猟など自然を満喫した〝仕事〟をする。
「昔は仕事を作っていたんです。自分で身の回りの必要なものを用意した。自立の精神です」と平野さんは言う。もともと石徹白には「自立の精神」が宿っているという。江戸時代の石徹白の村人は全員、白山中居神社の社人、社家という扱いで、名字帯刀を許され、年貢は免除されていた。住民たちで物事を決める伝統が根付いているのだ。大正13年には村人が皆で出資して発電所を作った歴史もある。石徹白が小水力発電で自立しようとしているのは、実は90年前の再現だったのである。
都会から遠く離れて隔絶された土地で、自然に囲まれて自活する。自立心旺盛な若者たちを引き寄せる空気が石徹白には満ちている。
2016/06/09
2016年6月9日掲載
環境省は平成28年度の環境技術実証事業、渓流や河川などの流量や落差を利用する100kW未満の中小水力発電技術を、6月21日(火)まで募集している。同事業で実証を行った技術には、環境省が効果を確認した環境技術として、ロゴマークが交付される。
小水力発電分野の技術は、近年、発電機等の製造に多様な企業が参しており、エンドユーザーが安心して機器を使用するには、その性能を客観的な観点で実証しする必要がある。「環境技術実証事業」は、既に適用可能な段階にありながら、環境保全効果等についての客観的な評価が行われていないために普及が進んでいない先進的環境技術について、その効果を客観的に実証する事業だ。
平成28年度の小水力発電分野での募集条件は下記の通り。
100kW未満の小水力発電技術が対象
募集する実証対象技術は、水の位置エネルギー等を活用し、渓流・河川部・排水路などの流量と落差を利用して小規模、小出力の発電を行う技術等で、おおむね出力100kW未満の発電技術。実証試験は国内で実施されること。
なお、100kW以上の水車については電気学会電気規格調査会標準規格(JEC-4001)が適用されている。
今年から実証費用は申請者負担
同分野における実証は、3年間の国負担体制を経て、2016年度から手数料徴収体制となる。すなわち、対象技術の環境保全効果の測定等、試験に係る費用、実証対象製品の運搬、施工、撤去等について、実証申請者の負担で実施する。
応募受付期間は6月21日(火)17:00まで。募集対象者は、同分野の技術開発を行う事業者。
実証試験の概要や実証対象技術の応募方法に関する説明会は、6月10日(金)13:30から、大手町サンケイプラザにて開催される。
なお、応募にあたって説明会への参加は必須条件ではない。定員30名、参加費無料。
また、技術の特徴や実証試験のスケジュール等の関係で、今回御応募した技術であっても、秋以降に実証試験が実施される場合もある。公募の執行団体は小水力開発支援協会。
「中小水力発電技術分野」は、2013年度の環境技術実証事業から実施されてきた分野だ。普及が進んでいない先進的環境技術の効果等を実証することで、環境技術を実証する手法・体制の確立を図るとともに、環境技術の普及促進と、環境保全と環境産業の発展を目的としている。
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2016/06/09
2016年6月8日掲載
水力発電の国内発祥の地として知られる仙台市青葉区三居沢地区周辺の住民有志が、明治以降の地区の歴史を大型パネル5枚にまとめ、東北電力の三居沢電気百年館に寄贈した。パネルは同館に展示され、紡績、水力発電、カーバイド製造と続いた近代産業の地としての歩みを紹介している。
パネルは、ともに青葉区八幡在住の東北学院大名誉教授鶴本勝夫さん(73)と、1949~54年に三居沢発電所で勤務した元東北電社員加藤一雄さん(86)が中心となり制作した。
資料の調査に10年以上費やした労作だ。2010年ごろ、市が保管する公文書に、1888年に水力発電を始めた宮城紡績会社の配置を記した見取り図を発見。当時と現在の写真などとともにパネルに収めた。
東北電が引き継いだ第3発電所(1000キロワット)は現在も稼働し、国の登録有形文化財に指定されている。紡績会社の跡地(市交通局川内営業所)には当時のクロマツが今も残る。
水力発電は、三居沢にあった紡績会社が、広瀬川から引いた水で工場の照明用として発電したのが始まり。後に仙台市街にも電力を供給するようになった。
1902年には、同社の流れを引く宮城紡績電灯の技師で工学博士の藤山常一氏が発電所の余剰電力による電気炉を活用し、カーバイドの試作に成功。国内の電気化学工業の先駆けとなった。
鶴本さんは「紡績から水力発電、カーバイドに至る三居沢の歴史は東北に明かりをともし、近代産業史の一ページを飾った。多くの人に価値を知ってほしい」と話す。3月には鶴本さんらの要望を受けた市が、紡績会社跡地と牛越橋近くに案内板を設置した。
三居沢電気百年館は入場無料。開館時間は午前10時~午後4時(月曜休館)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201606/20160608_13074.html
2016/06/09
2016年6月9日掲載
「3・11」を経験して、多くの人がエネルギーのあり方に目を向けるようになりました。安倍政権は、危険な原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、再稼働を推し進めています。危険な原発をやめて再生可能エネルギーを大きく伸ばす―。それが「真に未来ある道」と日本共産党は考えています。
破綻している安倍政権の原発固執政治
東京電力福島第1原発事故から5年。今でも9万2000人以上が避難生活を強いられ、直近の国勢調査では福島県内4町の人口が「ゼロ」です。事故が終わったかのように、原発を再稼働することは許されません。
15年8月に九州電力川内原発が再稼働するまで1年11カ月、日本の電力需要は原発ゼロで賄えました。
安倍政権の原発固執政治は技術的にも破綻しています。原発を再稼働すれば増え続ける「核のゴミ」=使用済み核燃料をどう処理するかの解決のめどはありません。
政府の「核燃料サイクル」推進政策も行き詰まり、使い道のないプルトニウムを増やし続けることになります。これ以上、危険な遺産を将来に押しつけられません。
再生エネ抑制から転換、40%をめざす
震災後、日本の再生可能エネルギーは太陽光を中心にぐんと増えました。2014年度の再エネ発電量(大規模水力を除く)は、10年度に比べて約3倍になりました。12年に始まった再エネ固定価格買い取り制度(FIT)が後押しをしました。
それでも、全発電量に占める割合は、再エネ先進国ドイツなどに比べ大きく遅れています。
やっと伸び始めた再エネに水を差すのが安倍政権の原発固執政治です。昨年決めた2030年度の電源構成(全発電量に占める各電源の割合)では、原発を20~22%まで見込み、再エネ抑制策を取っています。
日本共産党は、原発や石炭火力に固執する「エネルギー基本計画」を見直し、再エネを2030年までに電力需要の約4割をまかなう目標を掲げ、実現する手だてをとることを呼びかけています。
“再生エネ倍増すればGDPが最も上昇する国”
自然エネルギー市民の会代表・日本環境学会元会長 和田 武さん
最近、世界の再生可能エネルギー発電量は急速に伸びており、減少傾向の原発の2倍以上になっています。
ドイツやデンマークでは、適切な政策のもと、市民参加や地域主導で飛躍的に再エネを普及させています。ドイツでは、2000~15年の間に総発電量中の再エネ比率は5倍、水力以外の再エネ比率は12倍に増えました。
日本でも、FIT導入後、太陽光発電を中心に普及が進みましたが、再エネ比率はOECD加盟先進国中では最低レベルです。再エネの優先利用政策をとり、市民や地域が積極的に取り組めば、ドイツ並みに普及が進み、地域活性化、環境保全、産業発展と雇用創出、エネルギー自給率向上などの好影響を社会にもたらします。
「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」は、「再エネの倍増によりGDP(国内総生産)が最も上昇する国は日本」との報告書を発表しています。
原発を廃絶し、石炭火力の増設を中止し、再エネ中心の社会を構築することこそ、持続可能で明るい未来を切り開く道です。
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再生可能エネルギー 太陽光、太陽熱、風力、小水力、バイオマス(木材や家畜排せつ物など生物由来の資源)、地熱など、自然現象から持続的に得られるエネルギーの総称。「国産」のエネルギーであり、発電時などに地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しません。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-06-09/2016060903_01_0.html