2013/10/31
水資源が豊かな地域特性を生かし、山梨県都留市が小水力発電事業を本格的に始めてから今年で10年になる。
2005年度に受け入れを始めた県内外からの視察は当初の約6倍に増えた。東日本大震災で再生可能エネルギーへの関心が高まったことが要因という。今後は事業を民間主導で展開し、環境に優しい街づくりを目指す。
◆設置に市場公募債
市は2003年、小水力や太陽光を使った発電施設を導入することを盛り込んだ「地域新エネルギービジョン(構想)」を策定。06年、年中安定した水量があり、市に管理権がある「家中(かちゅう)川」に小水力発電所「元気くん1号」を設置した。10年に2号、12年には3号も造った。
設置費用の一部を市場公募債で賄っており、市産業観光課は「市民を巻き込んだ先進的な取り組み」と強調する。08年には、温室効果ガスをほとんど排出しない、小水力で発電した電力量を環境価値として販売する「グリーン電力証書」について、全国の自治体で初めて発行が認められた。
◆震災後に視察急増
市は「元気くん」が稼働する前の05年度に小水力発電の視察を受け入れ始めた。12年度までに訪れた行政や企業などの関係者は延べ1万64人に上る。05年度は375人で、10年度は1330人だったが、東日本大震災後の11年度は2473人、12年度は2300人となった。
受け入れ担当の職員は、再生可能エネルギーへの関心の高まりを感じている。「震災前は物見遊山と思われるような視察もあったが、震災後は性能や効率など専門的な質問が多くなった。導入を前提にした具体的な質問も寄せられる」と話す。
視察のメニューは約2時間。1〜3号のほか、「元気くん」が発電した電力を供給している植物栽培展示施設や環境配慮型のモデルハウスも案内する。資料の作成など負担が大きいため、昨年5月、料金を無料から1人800円としたが、視察が減る様子は見られないという。
6月中旬、東海地方から「元気くん」の視察に訪れたコンサルタント会社の一行は、「音はうるさくないのか」「ゴミはたまらないか」と、担当職員に熱心に質問を繰り返していた。
1〜3号は発電方式が異なる。1号は丸い水車の下部に水を当てて回転させる「下掛け式」、2号は上部に当てる「上掛け式」、3号はらせん状の水車を水の流れで回す「らせん式」。小水力発電は、群馬、長野など山に囲まれた県で開発が盛んに進められているが、同社の技術系幹部は、「都留では、タイプの異なる水車を一度の視察で見ることができる」と話した。
◆今後は民間主導
小水力発電事業の着手から10年がたち、市は「市民に再生可能エネルギーを啓発する役割は果たした」としている。「元気くん」以外の新たな事業展開は民間に主導してもらう検討を今年度から始めている。
「元気くん」の視察は民間主導で効率的に受け入れられないか、模索を続けているという。市産業観光課の小宮敏明課長は「今後も再生可能エネルギーの街として、官民力を合わせて情報発信を続けたい」と話している。(北村勤)
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【小水力発電】 一般河川や農業用水路、上水道施設などで流量と落差を利用した小規模な水力発電のことを言う。全国小水力利用推進協議会(東京都豊島区)によると、発電規模に世界的な統一基準はなく、国内では1000キロ・ワット以下。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20131027-OYT1T00474.htm
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