2016/12/26
2016年12月26日掲載
伊那市春富土地改良区の農業用水路を活用した春富6号地区小水力発電所の工事が、同市富県の現地で順調に進んでいる。発電所棟も姿を見せ、間もなく発電機本体の据え付けも始まる予定という。事業主体の県上伊那地方事務所によると、発電所完成後の2017年4月から試験発電に入り、9月までテストを行った後、運営主体の同土地改良区に移管する。
県営かんがい排水事業の一環で整備する。斜面に設置されている階段水路をバイパスする形で導水管を設け、高低差を使って発電する仕組み。同地事所農地整備課の説明だと、現場の有効落差は約22メートルで、最大使用水量は毎秒1・12立方メートルになるという。最大出力は約195キロワットを見込んでいる。かんがい期の4~9月に発電し、全量を売電する。
15年秋に起工した。工事では、取り入れた水をいったんためて、流量を調節したり砂やごみを取り除いたりするコンクリート製の水槽(ヘッドタンク)を上部に設置。下流側に建設する発電所棟と長さ約40メートルの導水管でつなぐ。設計・施工を合わせたプロポーザル(企画提案)方式での発注で、ヤマウラが請け負っている。事業費は約4億円。
農業用水路を管理する土地改良区の多くは、施設の老朽化等に伴い、維持管理の負担が大きくなっているという。春富土地改良区の織井秀夫理事長は「国県の事業に基づいて始める発電事業なので、売電による利益は土地改良区の施設の改善に使うのが基本になる。利益はきちんと留保し、土地改良事業の主要幹線の工事の地元負担を減らし、水源設備の保全対策に使っていきたい」と話している。
同地事所は13年度に上伊那地域農業生産基盤再生可能エネルギー活用研究会を設置し、農業用水路を活用した小水力発電の可能性を検討。春富と上伊那美和(同市長谷)の2カ所の土地改良区で実現性が高いと判断し、事業化された。上伊那美和の小水力発電所(最大出力12・2キロワット)は既に運用が始まり、通年発電に入っている。