2015/11/10
自転車の車輪を使った小水力発電に取り組む兵庫県香美町村岡区の会社役員、片山正己さん(62)が、サイホンの原理で、水路の壁を越えて安定的に水を利 用できる発電システムを開発した。発電した電気は、シカによる農作物被害対策の照明に使うほか、水は魚の養殖にも活用。「誰でも簡単に水路の水を利用でき る方法」(片山さん)で“一石三鳥”を狙った手作りシステムが話題になっている。
片山さんは、津崎鋼材(養父市)の代表取締役。但馬の住民と兵庫県でつくる「但馬夢テーブル委員会」のメンバーで、豊富な水資源を小水力発電に生かす活動を進めている。軸の中に発電機が入った新タイプの自転車の車輪に着目し、羽根を付けるなどして発電機に再生している。
最初の試作機は3月から豊岡市内の水路で実験したが、大雨の時に流される危険があることが分かった。このため、環境や天候に左右されずに水を安定利用できる仕組みとして、サイホンの原理に思い至った。
養父市内の職場に近い水路の上流にパイプを設置。15メートル離れた池に設置した発電機の羽根に落水して発電する。採取地と発電機の場所の高低差が2・5メートルあるため、水は水路の壁を越えて発電機まで導かれる。
この電気で発光ダイオード(LED)ライトを点滅したところ、植栽のサツキの食害が全くなくなった。「シカが警戒して近寄らなくなった」と片山さん。発電機を設置した池ではホンモロコを育て、新鮮な水を供給する役割も果たしている。
「サイホンの原理を用いれば水路から離れていても水が供給できる。みんなでたくさん付ければ、いろんなことができるのでは」と話している。(辻本一好)
http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201511/0008552807.shtml