2018/10/17
2018年10月17日掲載
金沢工業大学では、再生可能エネルギーや蓄電池・電気自動車(EV)・水素・熱利用などを組み合わせて電力制御システムを構築する「エネルギー・マネジメント・プロジェクト」を2018年春から推進している。
このほど、再エネに適合した直流給電システムを構築し、キャンパス内のコテージで被験者が実際に生活する実証実験を開始した。10月15日に発表した。
同プロジェクトは、再エネを軸にエネルギーの地産地消に取り組み、地方再生のエネルギー・コミュニティ・モデルの構築を目指す。
具体的には、(1)太陽光・風力・小水力・バイオマス・地熱発電などによる創エネ、(2)蓄電池・EV・水素へのエネルギー貯蔵、(3)直流(DC)リンクによる効率化、(4)温泉水・地下水・バイオマスボイラー・低温発電を用いた熱利用――などを組み合わせ、地域内エネルギーの最適運用を目指す。
再エネを安定供給するには、従来の火力・原子力を組み合わせた集中型制御の電力システムではなく、分散型制御の系統システムが必要となる。こうした新しいシステムを構築するとともに、蓄電池・EV・水素や温泉水など熱の地域資源を組み合わせたベストミックスを探り、地域で電力を融通し合うエネルギー基盤技術を構築する。
地域特性も活用し、人工知能(AI)やIoTを活用した「Society 5.0」を地方から実現することも視野に入れている。
実証実験では、金沢工業大学・白山麓キャンパスにある4つのコテージに直流給電システムを構築し、実際にコテージで被験者が生活することで、発電から使用まで検証する。太陽光などの再エネで発電した直流をAC-DC(交流-直流)変換せず、直流のまま直接運用することで、電力システム全体の効率を高める。
電力が不足した場合はコテージ間で電力シェア(融通)し合い、電力の需給バランスを維持する仕組みを構築した。電力会社の系統にも接続するが買電は最小に留め、再エネのみを利用するオフグリッドシステムを目指す。将来的には、ブラックアウトに耐えられることを検証する。さらに、コテージで蓄電した電力をEVに充電し、EVを「配電線」にみたて、電力の不足する地域に電気を届けるようにする。
今後は、まずコテージ間のDCリンクを拡充し、その後白山麓キャンパスの産学連携拠点「イノベーションハブ」へ拡充する。エネルギー貯蔵に水素を利用する実験も検討し、蓄電池に貯めた電力と水素を相互補完的に組み合わせる。低温の地熱を使うバイナリー発電、木質チップを使ったバイオマス発電設備を設置するとともに、キャンパス内の温泉水や地下水を含めた熱搬送も行う。
温泉水や地下水による空調制御や、DCリンクから供給される電力で照明や各種電力を賄うことで、同キャンパス内に併設される国際高等専門学校の図書コモンズのゼロエミッション化を目指す。AIやIoTを活用して創エネ・エネルギー貯蔵・DCリンク・熱利用を効率的に組み合わせるエネルギー・マネジメント・システムの開発も推進する。