2014/07/04
日本工営は長野県高山村を流れる松川で出力420kWの小水力発電所「高井発電所」の建設を開始した。2015年9月の完成を予定する。貯水機能を持たない砂防ダムで初の取り組みを進める形だ。
[畑陽一郎,スマートジャパン]2014年07月04日 11時30分 更新
「砂防ダムに直接穴を開けて水を引き出し、小水力発電所に導く事例として、国内でもいち早い取り組みだと考えている」(日本工営)。
日本工営が2014年7月3日に着工し、2015年9月の完成を予定するのは、「高井発電所」(長野県高山村奥山田)だ(図 1)<sup>*1)</sup>。7億円を投じ、出力420kW、年間発電量約270万kWhを生み出す小水力発電所である。 中部電力の配電線を通じて、新電力(PPS)への売電を計画しているという。
小水力発電所は安定した水を入手でき、落差があればさまざまな立地に建設できる。農業用水やダム放流水、水が自然に流れている送水管、はては水道管(本管)でも可能だ。
*1) 日本工営が資金と技術者を提供、同社と高山村が出資する長野水力が大林組の協力を得て設計・調達・建設を進める。施設を所有し、管理・運営を担うのは長野水力。
日本工営が今回選んだのは、信濃川水系の松川だ。山間部を流れる松川の「高井砂防ダム」(図2、図3)が発電所の舞台である。砂防ダムは土石流な どの土砂災害が起こらないように作られたダムであるため、内部に貯まるのは水ではなく岩や土砂だ。「ダム」と名付けられていても貯水機能はない。水が貯 まっていなければダム式の発電はできない。しかし川の水の流れはある。そこで、ダムの一部に穴を開けて水を取り出す。ダムの「越流水」の一部を利用して流 込式水路式の発電を進める。
高井発電所の完成予想図を図4に示す。
まず、砂防堰堤(えんてい)の左側に貫通孔を設け、取水設備を新設する。ここには沈砂池があり、水と土砂を分ける。土砂はU字溝を通って下部の堰 堤に戻る。水は新設する導水管(水圧管)に通す。導水管の直径は900mm、約100mの長さがある。導水管の末端に発電所の建屋を置き、横軸フランシス 水車と同期発電機を使って発電する。
発電量を決める未利用落差は36m、最大使用水量は1.4m<sup>3</sup>だ。川の上流部にある小水力発電所だが、設備利用率も73%ある。
同社は水力発電を中心としたコンサルティング部門と電力会社に納入する部材や発電機を製造するエンジニアリング部門からなる。「当社の強みはコン サルティング、ものづくり、完成後のモニターまでを一貫して取り組むことだ」(同社)。高井発電所ではコンサルティング部門がサイトを選定し、部材はエン ジニアリング部門が製造する。「河川を利用した小水力発電では漁業権や利水権の調整に時間を要する。松川は自然の条件によって酸性になっているため、漁業 権の調整はほとんど必要なかった」(同社)。
小水力発電では先進的な取り組みが多いという。例えば、自治体側が予算措置を講じないでダムに水力発電の機能を追加するESCO(Energy Service Company)事業を国内で最初に立ち上げている(関連記事)。 これは栃木県の寺山ダムの事例(190kW)だ。鹿児島県伊佐市では同市が「東洋のナイアガラ」と呼ぶ観光名所「曽木の滝」を利用した新曽木(しんそぎ) 水力発電所(490kW)を作り上げた。滝の「観光機能」を損なわず、そのまま小水力発電所に変えたところが新しい。
現在は、福島県でダムESCO事業に着手しており、北海道では破損により使えなくなった発電所を買い取り、再生する事業を予定している。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1407/04/news061.html