2013/10/31
有名な砂丘をはじめ美しい海岸線が続く鳥取県には、火力発電所も原子力発電所もない。電力源の中心は水力だ。中国山地から日本海へ向かう川の流れを生かして、小水力発電が広がる。沿岸部ではメガソーラーや洋上風力の建設計画が始まって、再生可能エネルギーの導入量を押し上げていく。
[石田雅也,スマートジャパン]
鳥取県の地形を見ると、東西に長く伸びているのが特徴だ。北側は日本海、南側は中国山地である。海と山に囲まれた県内には、太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電設備が全域に広がる(図1)。自然環境に恵まれた土地柄で、新しい設備を導入できる余地は大きく残っている。
現時点で稼働している発電設備では水力が圧倒的に多い。南側の中国山地に沿う形で、農協などが運営する小水力発電のほか、鳥取県の企業局や中国電力による水力発電所が点在する(図2)。特に集中して多いのは、東側を流れる千代川と西側を流れる日野川の流域だ。
この2つの川の流域で、県の企業局が小水力発電設備を相次いで稼働させている。千代川の流域では2011年に「袋川発電所」が運転を開始した(図3)。上流にある「殿ダム」から流れてくる最大3立方メートル/秒の水流を、落差49メートルの場所で発電機に取り込む。
発電能力は小水力の設備としては大きい1100kWを発揮して、年間に500万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で1400世帯分に相当する規模になり、年間の売電収入は5100万円を見込む。固定価格買取制度の開始前に稼働したために買取価格は低く、総事業費の11億円を20年間で回収する計画だ。
もう1カ所は日野川の流域で2013年9月に運転を開始したばかりの「賀祥(かしょう)発電所」である(図4)。袋川発電所と同様にダムの直下に発電機を設置した。水流の落差は38メートルあるが、流量は最大0.9立方メートル/秒と少なく、発電能力は260kWと小さくなる。
年間の発電量は140万kWhを想定している。固定価格買取制度を適用して、売電収入は年間に約4000万円になる。総事業費の3億2000円は8年程度で回収でき、袋川発電所と比べると格段に効率が良い。同じ日野川の流域では同規模の小水力発電設備の建設が始まっていて、さらに他の地域にも広がっていく勢いだ。
鳥取県の再生可能エネルギーは小水力発電の導入量が圧倒的に多く、その次が風力である(図5)。日本海に面した沿岸部の数カ所で風力発電所が稼働中だ。最も規模が大きいのは19.5MW(メガワット)の「琴浦ウインドファーム」である。運転を開始したのは6年前の2007年で、それ以降に新設された風力発電所は今のところない。
現在は2つの風力発電所の建設計画がある。1つは県の東部に位置する岩美町に大型風車を19基も建設する大規模なプロジェクトだ。もう1つは中部にある泊漁港の沖合で洋上風力発電所を検討している。3MWの大型風車10基を港湾内に設置する構想である(図6)。
ただし両方のプロジェクトともに、まだ工事を開始できる状況には至っていない。風力発電で問題になる環境に対する影響の懸念が残っているためだ。地元の関係者などと調整がつけば、実施に向けて動き出す
ことになる。
一方で巨大なメガソーラーの工事が西部の米子市で進んでいる。三井物産とソフトバンクグループが建設中の「ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク」である(図7)。鳥取県と米子市が所有する海岸沿いの3カ所の土地を利用して、約40MWの発電能力を発揮する。
当初は2013年7月に運転を開始する予定だったが、10月時点でも稼働していない。風力発電に比べれば太陽光発電は障壁が少ないとはいえ、設備が巨大になると計画通りには進捗しない傾向がある。再生可能エネルギーを大胆に推進する鳥取県の未来に向けた挑戦は続いていく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1310/29/news010.html