2017/05/09
2017年5月9日掲載
前橋市は市内の河川や湖沼を活用した小水力発電に力を入れる。群馬大学が開発中の新技術を使った小規模な水力発電の実証実験を市中心部で実施するほか、赤城山頂付近の大沼を水源とする農業用水に発電施設を建設し、売電する。地元に豊富な水資源の街づくりなどへの活用法をさぐると同時に、再生可能エネルギー普及の機運醸成につなげる。
群馬大との実証実験は6月にも、市内を流れる風呂川の水を引き込んで、前橋城の空堀跡の遊園地「るなぱあく」で始める。同大理工学部の栗田伸幸准教授が開発を進める磁気浮上技術を使ったマイクロ水力発電装置を設置する。
水車で動く装置は、長さ50センチ、幅13センチほどの大きさで、出力70ワット。発光ダイオード(LED)電球2000個を光らせる発電能力がある。発電能力は小さいが人目に触れやすい市街地の人気スポットに置くことで、小水力発電への市民の関心を高める。
通常の発電用水車が軸受け部分にボールベアリングを使っているのに対し、磁気浮上技術を使った水車は摩擦が少ないため発電効率が良く、騒音が少ない。耐久性に優れており、同じ技術が人工心臓の開発にも利用されている。
大沼から水を引く農業用水、赤城大沼用水を使った小水力発電事業は2018年夏に始める。山腹に延長約1.2キロ、落差約109メートルの導水管を作り、水車と発電機を設置して発電する。
出力は最大236キロワット、年間発電量は1195メガワット時で、一般家庭約330世帯分の消費電力に相当する。建設費は約4億5000万円。発電した電力は東京電力に売る計画だ。
30年間の売電収入は約8億円、建設費や管理費を差し引いた収益は約1億8000万円を見込んでいる。
地域資源の新たな使い道をみつけて有効活用することで、二酸化炭素(CO2)の削減や環境政策の充実だけでなく、エネルギー問題への市民の関心を高める狙いがある。山本龍市長は「あらゆる潜在エネルギーを活用できるよう挑戦していきたい」と話している。