2016/12/10
2016年12月10日掲載
再生可能エネルギーによる夢のある地域づくりをめざし、京都府福知山市夜久野町畑(はた)地域の「七つの里づくり協議会」(越後正則会長)が、地元の小河川で小水力発電をして蓄えたバッテリーで作動するトラクターを、大阪の企業と共同開発している。排気ガスが出ず、低騒音で、エンジン式のように燃料代はいらず、省エネにつながる。現在は試作の段階で、12日に実証実験をして作業能力を確かめる。
小水力発電はダムのように河川の水をためることなく、小河川や農業用水の水の流れをエネルギーに変えて有効利用する小規模な発電方式。ダム開発に伴う環境への影響が無く、CO2排出による地球温暖化を防げるとして、各地で普及が図られている。
畑地域では、7自治会で組織する協議会が、水量の豊かな谷川が多いという地の利を生かして、昨年2月と今年2月にそれぞれ水車2基を稼働させ、発電した電力をイベント時の電飾、コーヒーメーカーなどに生かしている。
民家や街路灯に送電する計画も立てているが、電気事業法の問題、関係機関への手続きの煩雑さなどもあって遅れている。こうした中、電気自動車などの製造・開発をする大阪府豊中市のEVジャパン(西田長太郎社長)が今春視察に訪れ、小水力発電に関心を示し、小水力発電トラクターの開発が決まった。
排ガス、騒音無くハウス内でも使える
試作機は、長さ約2メートルの既製のトラクターから21馬力のエンジンと軽油タンクを取り外し、車軸用と耕運ロータリー用のモーターそれぞれ1基とバッテリー4基を載せた。水車で発電した電気を蓄えて積み、走らせる。
協議会によると、一般的なエンジン式とは違い、騒音の心配がなく、排気ガスも出ないので、人家が多い地域でも気兼ねなく使える。ビニールハウス内でも健康を害することなく使える。燃料代がいらず、エンジンオイル交換などのメンテナンスの必要が少ないことなどをメリットとして挙げる。
車体に電源コンセントを付けており、停電時に非常用照明器具などの電力としても使えるという。
他の農機具への応用も視野に
まだ、使わなくなったトラクターを利用して試作した段階。12日午前10時30分ごろから、企業関係者が訪れて、畑地域の軽食類を提供する交流施設「ななっこ」前の田んぼで実証実験をし、作業能力や消費電力、稼働時間などを調べる。
今回は100ボルト電源で充電するが、年度内に水車での充電を試す予定。良い結果が得られれば、他の農機具などへの応用も視野に入れ、改良を重ねるという。
実証実験は雨天決行。だれでも見学できる。問い合わせは、ななっこ=電話0773(37)0030=へ。
協議会関係者は「エンジン式に比べるとパワーは劣ると思うが、静かで、あまり振動もないため地球環境や省エネ、利用者の健康面などトータルで考えればメリットが大きいと思う。地元の小水力発電を利用するので、電力の地産地消にもつながる。農業革命を起こそうというのが夢」と意欲をみせる。