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2016/11/29

古い水力発電所を再生、太陽光とバイオマスを加えて自給率30%超へ【スマートジャパン】

2016年11月29日掲載
島根県では運転開始から40年以上を経過した中小水力発電所のリニューアル事業を実施中だ。県営の7カ所の設備を更新して発電量を増やし、固定価格買取制度で売電収入を伸ばす。太陽光発電やバイオマス発電も拡大しながら、再生可能エネルギーによる電力の自給率を2019年度に30%超へ高める。
[石田雅也,スマートジャパン]

島根県の企業局が運営する中小規模の水力発電所は合計で13カ所ある。そのうち半分以上が運転開始から40年以上を経過したため、老朽化した設備をリニューアルする事業を進めているところだ。最初に対象になった「八戸川(やとがわ)第二発電所」のリニューアルが2016年4月に完了して運転を再開した。
この水力発電所は県内最大の「八戸ダム」の直下で1976年に稼働したのが始まりだ。ダムが放流する最大10立方メートル/秒の水量を生かして、発電能力は2500kW(キロワット)に達する。ダムの内側にある取水口から水車発電機まで水流の落差は30メートルになる。大きな落差を生かすために横軸フランシス水車を採用している。
リニューアルでは同じタイプの新しい横軸フランシス水車に交換した。発電能力は2500kWで変わらないが、設備を刷新したことで故障による停止時間が以前よりも短くなる見通しだ。合わせて固定価格買取制度の認定を受けて、従来よりも高い買取価格で売電できるようになった。
八戸ダムの豊富な水量は3カ所の水力発電所で利用している。1958年に運転を開始した「八戸川第一発電所」は2基の発電設備で構成して、最大6300kWの電力を供給できる。リニューアルを完了した第二発電所よりも下流にあり、山の中に設けた貯水池から水車発電機へ水を大量に送り込む方式だ。水流の落差は60メートル以上になる。
一番新しい第三発電所は2000年に運転を開始した小水力発電所だ。下流の環境を維持するためにダムから常に放流する河川維持流量を利用して発電する。ダムの上部から水車発電機に送り込む水流の落差は54メートルもあるが、水量は最大でも0.6立方メートル/秒と少ない。発電能力は240kWで3つの発電所の中では最も小さい。

  県の発電事業で年間15億円の利益に

八戸ダムの水を利用する3つの発電所のうち、一番古くて規模が大きい第一発電所もリニューアルの対象に入っている。2基ある発電設備のうち小さいほうの2号機(発電能力1500kW)が2016年9月に新しい水車発電機で稼働した。第二発電所と同じタイプの横軸フランシス水車を採用している。
一方の1号機は2018年度にリニューアルの工事に着手して、2020年度に運転を再開する予定だ。発電設備のほかに発電所の建屋を造り替え、さらにダムから水を引き込むための導水路や水圧鉄管も更新する大掛かりな工事になる。
八戸川第一発電所の1号機を含めて、2020年度までに合計7基の発電設備を対象にリニューアル事業を完了する計画だ。発電能力は7基を合わせると2万4230kWに達する。リニューアルにかかる事業費は総額で146億円にのぼる。すべての水力発電所はリニューアル後に固定価格買取制度で売電する方式に変更して収入の増加を図る。
リニューアルの対象に入らない新しい水力発電所を加えると、13カ所の合計で発電能力は2万7050kWになる。すべてのリニューアル事業が完了してフル稼働する2021年度には、年間の発電量は1億2700万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して3万5000世帯分に相当する。島根県の総世帯数(29万世帯)の1割以上をカバーする電力を供給できる。
一連のリニューアル事業によって水力発電所の年間故障停止時間は従来の505時間から240時間へ半減する見通しだ。固定価格買取制度の適用で売電収入が増加して、県が運営する発電事業の収益は大幅に改善する。水力発電所のほかに稼働中の風力発電所と太陽光発電所を加えると、2021年度から年間に15億円前後の利益を生み出す。

  メガソーラーが工業団地や空港にも

太陽光発電では県営のメガソーラーが2016年3月に2カ所で相次いで運転を開始した。1カ所は西部の浜田市の沿岸部に広がる「三隅港(みすみこう)臨海工業団地」の中にある。2万5000平方メートルの用地に7450枚の太陽光パネルを設置した。
発電能力は1.8MW(メガワット)で、年間に216万kWhの電力を供給できる見込みだ。一般家庭の600世帯分に相当する。三隅港は国の電源開発計画に基づくエネルギー港湾の役割を担っていて、隣接地には中国電力の石炭火力発電所がある。加えて2022年には発電能力100万kWの大規模な石炭火力発電設備が運転を開始する。
もう1カ所のメガソーラーも工業団地の中にある。浜田市の東側に隣接する江津市(ごうつし)の丘陵地帯だ。1万8000平方メートルの用地に5520枚の太陽光パネルを設置した。発電能力は1.2MWで年間の発電量は148万kWhを見込んでいる。一般家庭の400世帯分に相当する。
このメガソーラーの隣には、2015年7月に運転を開始した「江津バイオマス発電所」がある。周辺地域で発生する間伐材を燃料に利用する木質バイオマス発電所だ。発電能力は12.7MWに達して、年間に2万4000世帯分の電力を供給できる。さらに隣接する浄水場の構内では県営で初めての太陽光発電所(発電能力430kW)が2014年から稼働している。
県営のメガソーラーは空港の中にも展開する。西部の益田市にある「石見(いわみ)空港」の敷地内でメガソーラーの建設が進んでいる。滑走路と海にはさまれた2カ所の用地に、合計で1万4300枚の太陽光パネルを設置する計画だ。
発電能力は3.5MWで、2017年3月に運転開始を予定している。年間の発電量は390万kWhを見込み、1100世帯分に相当する電力を供給できる。すでに稼働中の3カ所の県営の太陽光発電所と合わせて2300世帯分の電力になる。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電して県に収入をもたらす。
民間企業による巨大なメガソーラーの建設プロジェクトも始まっている。オリックスグループがゴルフ場の土地を利用してメガソーラーを建設中だ。県中部の出雲市にあるゴルフ場の3分の1(9ホール)を閉鎖して太陽光発電所に転換する。
57万平方メートルの広い用地に5万枚の太陽光パネルを設置する計画だ。発電能力は14MWに達する。2017年12月に運転を開始する予定で、年間の発電量は1400万kWhにのぼる。一般家庭の3900世帯分に相当する電力になる。

  丘陵では29基の大型風車が動き出す

島根県の再生可能エネルギーは太陽光発電と中小水力発電に続いて、風力発電とバイオマス発電の導入量も増えてきた。固定価格買取制度の適用を受けて運転を開始したバイオマス発電の規模は全国で第9位に入っている。江津市の工業団地で稼働中の木質バイオマス発電所が代表的な事例だ。
県東部の宍道湖(しんじこ)の湖畔にある下水処理場では、バイオガス発電設備の導入プロジェクトが進んでいる。下水処理で発生するバイオガス(消化ガス)を燃料に利用する発電設備で、2018年4月に運転を開始する予定だ。
1台で253kWの発電能力があるガス発電機3台を導入して、合計で759kWの発電能力になる。年間の発電量は430万kWhを見込んでいて、1200世帯分の電力を供給できる。このプロジェクトは民間の資金とノウハウを活用するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式で実施する。
下水処理場を運営する島根県は初期投資が不要で、バイオガスの売却料と土地の使用料を発電事業者から得られるスキームだ。最近は全国各地の下水処理場で同様のPFI方式によるバイオガス発電事業が活発になってきた。従来はバイオガスを焼却処分する方法が一般的だったが、新たに再生可能エネルギーの電力に生まれ変わる。
風力発電では2016年6月に運転を開始した「ウインドファーム浜田」の規模が大きい。浜田市の丘陵地帯に合計29基の大型風車を設置した巨大な風力発電所で、発電能力は48MWにのぼる。
年間の発電量は8500万kWhに達して2万3600世帯分の電力を供給できる。固定価格買取制度で売電して、年間に18億7000万円の収入になる想定だ。ソフトバンクグループのSBエナジーと三井物産が共同で設立した「グリーンパワー浜田」が発電所を建設・運営する。
島根県の豊富な資源を生かした再生可能エネルギーの導入量は着実に拡大していく。2014年度の時点では県内の電力消費量(51.4億kWh)のうち21%に相当する10.9億kWhを再生可能エネルギーで供給できた。さらに2015年度には13.1億kWhに増加して、電力の自給率は25%まで上昇している。
県が策定した中期計画の目標では、2019年度に再生可能エネルギーの発電量を15.6億kWhまで伸ばして自給率を30%超に引き上げる方針だ。太陽光発電を県内各地に広げるほか、小水力発電所を50カ所に展開する。木質バイオマス発電では燃料の供給事業を含めて100人の新規雇用を見込んでいる。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1611/29/news025.html

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