2016/07/19
2016年7月19日掲載
東芝は14日、1時間で燃料電池自動車(FCV)2台分の燃料となる水素を製造できるアルカリ水電解式の水素製造装置を開発したと発表した。今年度中の販売開始を予定しており、大量の水素を製造できる特長を活かしてさまざまな水素インフラ事業向けに展開していく。
この装置の水素製造量は約100Nm3(Nm3:0℃、1atmの状態におけるガスの容積を表す単位)で、同社によると、アルカリ水電解式の中では日本最大。
水素社会を見据えた「アルカリ水電解式」
アルカリ水電解式は、水の電気分解方式のひとつで、化学反応で使用する電解液にアルカリ水溶液を用いるもの。アルカリ水電解式の水素製造装置は、電極基材に貴金属を使用していないため、貴金属を使用する他方式よりも低コストで電極を大型化でき、装置の大規模化に適している。
同社の保有する整流器や水素精製の技術を水電解技術と組み合わせることで、装置を大型化しても、全体のエネルギー効率を低コストで最適化することに成功した。またこの方式は、水の電気分解に用いられる電解液に高濃度の水酸化カリウム水溶液を使用していることから、氷点下の環境においても電解液が凍結せず、寒冷地での使用も可能である。
近年、定置用燃料電池や燃料電池自動車、水素発電など、水素を利活用する場面が増えてきており、大量の水素を製造し、水素ステーションなどで活用することが期待されている。同社は、大型化に適したアルカリ水電解式の水素製造装置を提供することで、水素利活用の多様なニーズに対応していく。
北海道では同方式の水素製造装置で実証
また同社は、同方式を用いて1時間に約35Nm3の水素を製造する装置を、同社が受託している環境省委託事業「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に導入し、北海道白糠郡白糠町にある庶路ダムで小水力発電により水素を製造し、同町と釧路市で利用する実証を行う。本実証事業を通じて、水素サプライチェーンの構築による環境負荷低減や利便性についての検証を行う。
なお同社は、アルカリ水電解式以外にも、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託事業で次世代型の固体酸化物形水蒸気電解式(SOEC)の水素製造装置の開発も行っており、用途に応じて最適な水素製造装置を提供する体制を整えている。
固体酸化物形水蒸気電解式は、水の電気分解方式のひとつで、水中の酸素だけを隔膜外に移動させ、水素を製造する。アルカリ水電解式よりも高温下での化学反応となることが特長であり、高い製造効率が見込まれている。
同社は今後も、水素の製造から利活用まで、それぞれのシーンでエネルギーを効率的に使用することのできる水素ソリューションを展開していく考えだ。
https://www.kankyo-business.jp/news/013008.php
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