2015/01/10
伊那市富県の春富土地改良区と同市長谷の上伊那美和土地改良区の農業用水路を活用した小水力発電所の建設工事が始まった。ともに斜面にある用水路の落差を生かして発電する仕組みで、県上伊那地方事務所が昨年度設置した「上伊那地域農業生産基盤再生可能エネルギー活用研究会」の検討結果を基に事業化した。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を活用し、全量を電力会社に売電、収入を農業用水路の維持管理に充てる。
同事務所農地整備課によると、春富は県営かんがい排水事業の一環で整備。同市高遠町の高遠ダムからの農業用水を活用し、かんがい期の4~9月に発電する計画だ。有効落差は22.7メートル。発電出力は当初計画よりやや増えて197キロワットを見込む。設計、工事を合わせてプロポーザル(企画提案)方式で発注。今年度中に設計、来年度に工事に取り掛かる。完成は2017年12月の予定。
美和は土地改が事業主体となって実施。黒川から取水する農業用水を活用し、通年発電する計画だ。有効落差は13.3メートル。発電出力は12キロワットを見込む。既に設計を終え、工事に着手。16年3月の完成を予定する。
事業費は春富が約3億8000万円、美和が約9500万円。国や県の補助を受けて建設する。
ともに用水路に沿って管路を設置し、バイパスさせる形で水を水車に送り発電する。発電に使った水は再び用水路に戻す。
農業用水路を管理する土地改は施設の老朽化に伴い維持管理の負担が大きくなっている。このため、農業用水路を活用した小水力発電に着目。売電収入を充てることで負担軽減を図る。福島第1原発事故後、再生可能エネルギーへの関心が高まる中、固定価格買い取り制度の導入が追い風となった。
同研究会は駒ケ根市の土地改での可能性も検討したが、採算面などから難しいと判断。当面は春富と美和の2カ所での計画となる。
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