2014/07/02
福島県を流れる阿武隈川に、1938年に造られたダムと水力発電所がある。このダムから下流の自然環境を保護するために放流する「河川維持流量」を利用し た小水力発電が始まった。既存の発電所の取水設備を生かして工事を簡素化したほか、水車発電機は組み立てが簡単なユニット型を採用した。
[石田雅也,スマートジャパン]
福島県の中央を南から北へ宮城県まで流れる阿武隈川の流域には20カ所を超えるダムが設けられている。その中でも古い「蓬莱(ほうらい)ダム」は、 東北電力が水力発電用に1938年に建設した。ダムの右岸にある「蓬莱発電所」(最大出力:3万8500kW)も同時期に運転を開始して、78年間にわ たって電力を供給している。
新たに建設した「飯野発電所」(図1)はダムから蓬莱発電所に水を取り込むための設備を利用した小水力発電所である。ダムには大量の水を貯めておくが、下流の自然環境を守るために一定量の水を流し続ける必要がある。この「河川維持流量」を水車発電機に取り込む方式だ。
ダムからの水流は最大で毎秒3.2立方メートルになり、水車発電機までの9.6メートルの落差を生かして発電することができる。発電能力は最大で 230kWを発揮する。小水力発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を70%として計算すると、年間の発電量は約140万kWhにな り、一般家庭で約400世帯分の電力を供給することができる。
飯野発電所は2013年4月に着工して、1年強を経過した2014年6月30日に営業運転を開始した。当初は2014年2月に運転開始を予定していた が、発電所を建設する場所の地盤が非常に硬く、掘削工事に想定以上の期間がかかってしまったために4カ月の遅れになった。
それでも既存の蓬莱発電所の取水設備を利用したことで工事の範囲を最小限に抑えることができた。さらに水車発電機には構造がシンプルなユニット型の横軸円筒プロペラ水車を採用して(図2)、現地の組立作業を簡単にした。
飯野発電所は東北電力で初めての河川維持流量を活用した小水力発電プロジェクトである。今後も大規模なダムに隣接する形で小水力発電所を建設していく方針だ。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1407/02/news026.html