2014/03/14
飯田市は農業用水路を活用した小水力発電ビジネスの可能性を探ろうと、同市鼎切石の妙琴浄水場に隣接する「伊賀良井用水」取水口付近で、出力1キロワット程度の実証実験を行っている。発電機は地元の製造業者でつくるグループ「ネスクイイダ」が開発した「すいじん」を使用。飯田下伊那圏域における住民主体の事業展開や新たな環境産業の創出を目指し、課題の抽出や改善策などの検討を進める。
市が本年度に総務省から委託を受けた「定住自立圏等推進調査事業」(事業費約940万円)の一環。伊賀良井は松川から取水し、鼎、伊賀良、竜丘地区を流れる。市は利用者らでつくる管理団体の同意の下、県から水利権の許可を受け、2月10日から3月14日まで現地実験を重ねる。
幅4メートルの取水口付近に流水落差を変えられる可動式のせきを整備し、直径約40センチの導水管内にプロペラ式の「すいじん」を取り付けた。伊賀良井水の平均流量は4―9月は0・9立方メートル毎秒、それ以外は0・49立方メートル毎秒という。
12日に報道機関や行政関係者向けの現地見学会があり、水力発電設備の開発に携わる南信州・飯田産業センターや地元企業の関係者らが、費用対効果の課題などを説明。せきの高さは1・225メートルに設定してあり、常時、白熱球10本を点灯させた。
市地球温暖化対策課は小水力発電の適地の選定や発電機の設置・運営などを地元事業者が行えるシステムの構築も目指しており「南信州圏域で小水力発電ビジネスを展開し、活力を創出させたい」としている。
同課の地域エネルギー計画係長は「実証実験は大きな一歩だが、汎用性を高め、住民主体の事業を広めていくためには、経済的なインセンティブ(動機付け)が重要」と指摘。実験結果に基づき費用対効果の検討をさらに深める他、事業化に向けた手順書も整理したいとしている。
同センターのオーガナイザーも「経済的に成り立つかどうかが重要。設備の基本構造や素材などの検証を重ね、当地域の産業システムとして売り込めれば」と意気込みを話した。
市は昨年4月、住民主体による再生可能エネルギー事業を支援する条例や体制を整備。市内では千代地区の野池親水公園で小水力発電を行っている。上村では、小沢川の水力発電(出力150キロワット規模)事業に向け、取り組みが進んでいる。
2014/02/07
昨春から土地改良区の農業用水路を使った小水力発電を研究してきた「上伊那地域農業生産基盤再生可能エネルギー活用研究会」の最終会議が六日、伊那市の県伊那合同庁舎であり、伊那市内の二カ所で小水力発電を導入する方針が報告された。
研究会は県、地域内の市町村、土地改良区などで構成。駒ケ根市と伊那市の計四カ所の土地改良区を対象に、既存施設の視察や現場の流量観測をした。その結果、伊那市長谷の「上伊那美和」、同市富県の「伊那市春富」の両土地改良区で小水力発電を導入する方針が固まった。
上伊那美和は、土地改良区を事業主体とした通年発電。伊那市春富は、県営のかんがい排水事業の一環で、かんがい期に発電する。新年度の国などの補助を申請する。
残る二カ所は、発電用の管路が長くなるため維持費が多くかかることや、安定した流量を得られないといった理由から、導入は困難だと分かった。
研究会は、用水路補修を中心とした土地改良区の負担を、売電の収益で補う仕組みづくりを探る狙いで、研究を進めた。
(近藤隆尚)
http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20140207/CK2014020702000020.html
2014/01/01
中部電力が、長野県阿智村の天竜川水系で水力発電所の建設を目指し、調査に着手した。一般家庭七千世帯分の電気をまかなう出力5000キロワット級を想定する。2003年以降、1000キロワット以上の中規模水力の新規運転開始はなく、安定した再生可能エネルギーとして水力の活用を目指す。
東日本大震災後、浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働が見通せない中、中電は老朽化した火力発電所に加えて水力の活用を進めるが、これまでは千キロワット未満の小水力発電の開発が中心。「中規模以上は適地が乏しく、新規立地は全国的にも珍しい」(資源エネルギー庁)という。
発電方式は、河川の水をためずにそのまま使用する「流れ込み式」を想定。天竜川水系の黒川と小黒川に取水ぜきを設けて適当な落差がある地点まで水を導き、水車に向けて落下させて発電する。
2013/11/15
小水力発電や地域の水資源の可能性を考える「農山村発電シンポジウム」が11日夜、伊那市で開かれた。県内外の約200人が参加。約100年前 に水力発電計画も絡み旧赤穂村(現駒ケ根市)で起きた「赤穂騒擾(そうじょう)事件」などを参考に、東京電力福島第1原発事故後のエネルギー問題や身の回 りの水の価値を考えた。
事件を題材にした「百年の燈火(ともしび)」(展望社)の出版記念を兼ね、伊那市書店組合が企画。著者で、少年期を上伊那郡飯島町で過ごした作家太野祺郎(たのよしろう)さん(79)=東京=が講演した。
太野さんは、地域への電力供給を地元の水を使う村営発電で賄うか、民間に委ねるか―などの対立から騒動に発展した同事件が「忘れ去られている」と指摘。 発電収益を村のために使おうとした村営発電計画は「自治の精神で地域を守る」活動で、「再評価するべきだ」と話した。「地域の特徴を生かした地域発電なら 送電ロス(損失)も少ない」と、電力の地産地消を推進する必要性も訴えた。
県内外で小水力発電に取り組む関係者らが再生可能エネルギーをめぐりパネル討論。九州大大学院の山下輝和・学術研究員(41)は、小水力発電は一部の事 業者が利益を上げるだけではなく、地域での合意形成が不可欠と指摘。「辰野のエジソン」と呼ばれ、小水力発電装置を自作している同郡辰野町の自営業倉沢久 人さん(70)は、装置が稼働する様子をスクリーンで紹介した。
(提供:信濃毎日新聞)
2013/11/12
売木村はこのほど、軒川浄水場に設置した小水力発電機の稼働を開始した。併せて無停電電源装置(UPS)なども設置され、災害などで停電が続いた場合でも、浄化機能が保てるようになった。
県の2012年度グリーンニューディール基金事業で、総事業費2000万円を投じて整備。10月27日に竣工した。取水した水が沈殿槽を経て、ろ過器へ流れ込む前のパイプに設置され、水の流量は毎分1立方メートルほどある。設置した小水力発電機は水車式で毎時0・8キロワットの発電量で運用する。
出力は弱いが、小水力発電の電力のみでも自動で塩素を投入するなどの最低限の浄化機能は維持できる。また、UPSだけでも停電後24時間の電源が確保できる。
売木村では別荘など観光人口を含めると1000人ほどの水道水確保が必要。村内には同浄水場と岩倉浄水場の2カ所があるが、岩倉は規模が小さいため小水力発電の導入は見送られた。これまで大雪などの影響により浄水場に停電があった場合には、臨時の発電機を設置するなどで対応してきたという。
小水力発電の電力は、常時は通常の電力の補助として利用している。村では「実用的なものとして導入した。期待ほどの出力はないものの、非常時には小水力発電とUPSで対応が可能だ」としている。