2017/01/06
2016年1月6日掲載
昨年末、すさみ町で開かれた地域活性化の勉強会に参加し、森林の管理と河川の水量との関係を学んだ。
席上、和歌山大学環境システム学科の中島敦司教授が森林資源を活用した地域活性化をテーマに講演、木質バイオマス発電や小水力発電による先進事例を紹介した。会場から「かつて町内にも小水力発電所があったが、当時と比べると川の水量が激減した。よそはどうか」と質問があり、興味を持った。紀南の河川はどこも水量が減っていると感じていたからだ。
中島教授は「全国的に森が育っており、その分、水分の蒸発量が増えている。それに森が水を蓄えなくなった。森を管理できれば水は増える」と説明。会場ではそれ以上の説明はなかったが、その後自分で調べて、なるほどと思った。 光合成で水分が葉の気孔から蒸発。さらに葉や幹に一時的に貯留された水分も直接、蒸発する。植樹して数十年が経過した森林では、大量の水分が山から蒸発するようになっている。
さらに、伐期を迎える森林が増えた一方で、間伐などの手入れがされていない放置林も増えている。そこでは下草が生えず、降った雨が斜面を走るように流れる。その結果、森林は増えても保水量は激減したというのである。
洪水の緩和や水資源の貯留に果たす森林の機能は、山が適正に整備・保全されることで発揮される。だからこそ、森林資源を生かし、林業を活性化することが急務なのである。(沖)
2017/01/06
2017年1月6日掲載
ダム放流水を活用した町営の水力発電所や太陽光発電設備の設置など再生可能なエネルギーを使ったまちづくりを推進する有田川町が、国の「次世代エネルギーパーク」に認定された。
次世代エネルギーパークは、経済産業省資源エネルギー庁が太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」の導入に積極的なまちを認定するもの。同町は全国で64番目、県内では御坊市に次いで認定された。認定された市町村は、同庁のホームページで紹介される。
同町では現在、町内3カ所の小中学校や町庁舎など計7施設の屋上にソーラーパネルを設置。また、風力発電設備を誘致したほか、町内を流れる有田川上流に、年間一般家庭約300世帯分の電力を発電できる町営の小水力発電設備を開設するなど、再生可能エネルギーの導入を進めている。
同町では今後、町内の他の小中学校のソーラーパネルの設置をさらに進めるほか、水力発電所や太陽光発電設備の見学なども受け付け、町内外の子供たちの環境学習に役立ててもらうという。
同町環境衛生課の担当者は「再生可能エネルギーの活用を軸に、有田川町を“エコの町”としてPRしていきたい」と意気込んでいる。
http://www.sankei.com/region/news/170106/rgn1701060036-n1.html
2016/12/27
2016年12月27日掲載
「自然エネルギー立県」を目指す徳島県では農山村で発電プロジェクトが拡大中だ。山間部の高低差を利用した小水力発電所が42年ぶりに復活したほか、農業用ため池では水上式の太陽光発電所が運転を開始した。水素エネルギーの導入にも積極的に取り組みながら電力の自給率を引き上げていく。
[石田雅也,スマートジャパン]
徳島県の東部に人口2500人の佐那河内村(さなごうちそん)がある。四国山脈の東の端に位置する村の山中に、国と村が共同で建設した「新府能(しんふのう)発電所」が2015年10月に運転を開始した。
農業用水路を活用した小水力発電所で、発電能力は45kW(キロワット)と小さめだ。取水池から発電所まで450メートルの導水管で送られてくる水流の落差は130メートルもある。ただし水量が最大で毎秒0.04立方メートルしかないために発電能力が限られる。
水車発電機には少ない水量でも効率的に発電できるベルトン型を採用した。ベルトン型はノズルから水を勢いよく射出して水車を回転させる仕組みで、水量が少なくて落差が大きい場合に有効だ。新府能発電所ではヨーロッパで実績があるイタリア製の水車発電機を導入した。
年間の発電量は25万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して70世帯分に相当する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電して、事業主体の佐那河内村には年間に875万円の収入が入る見通しだ。事業で得た収益は農業用の排水施設の維持管理費などにあてる。
新府能発電所が稼働した場所の近くには、かつて「府能発電所」があった。今から95年前の1921年に運転を開始して、1973年に廃止した小水力発電所だ。当時は川に沿って290メートルの水流の落差があり、最大300kWの電力を供給していた。
佐那河内村が再生可能エネルギーを活用した地域づくりを推進するために、42年ぶりに小水力発電所を復活させた。発電所に水を送り込むヘッドタンク(上部水槽)を改修したほか、ポリエチレン製の導水管を発電所まで敷設した。
新しい発電所の建屋は旧・発電所よりも154メートル高い位置にある。旧・発電所まで現在も農業用水路でつながっている。この間の水流を使って「新府能下段発電所」の建設を検討中だ。ヘッドタンクや導水管を新設すれば、150メートルの落差の水流で発電できる。稼働中の「新府能(上段)発電所」と同程度の発電量を見込める。
小水力発電のほかにも佐那河内村では、四国電力グループが運営する「大川原ウインドファーム」(風車15基、発電能力1万9500kW)や、地域住民の共同出資による「佐那河内みつばちソーラー発電所」(発電能力120kW)が稼働している。木質バイオマスを活用した熱供給プロジェクトも計画中で、化石燃料に代わる再生可能エネルギーの導入量をますます増やしていく。
ため池に2000枚を超える太陽光パネル
農業用の設備を生かした再生可能エネルギーの導入プロジェクトは、ため池にも広がってきた。東部の阿南市にある農業用ため池の「伊沢池(いさわいけ)」では、水上式の太陽光発電所が2016年10月に運転を開始している。
池の広さは12万平方メートルあって、周辺部を除く6.8万平方メートルに太陽光パネルを設置した。高密度ポリエチレン製のフロートを水上に並べて、合計2340枚の太陽光パネルで発電する。発電能力は630kWになり、年間に61万kWhの発電量を見込んでいる。一般家庭の170世帯分に相当する電力を供給できる。
水上式のメリットの1つは、陸上と違って造成工事が不要な点にある。水上でフロートを組み立てて太陽光パネルを設置してから、水中にアンカーを垂らして固定する。あとは陸上のパワーコンディショナーと接続すれば工事が完了する。伊沢池の太陽光発電設備の工期は3カ月で済んだ。
フロートはフランスのシエル・テール社が開発したもので、同社の日本法人が伊沢池の太陽光発電所を運営している。シエル・テールのフロートは日本国内でも水上式の太陽光発電所で数多く使われているが、自社で発電所を建設・運営するのは初めてだ。今後も全国各地にある農業用ため池に水上式の太陽光発電所を展開していく。
徳島県内では内陸の町や村で再生可能エネルギーの導入が活発に進んでいる。佐那河内村から神山町(かみやまちょう)と上勝町(かみかつちょう)にまたがる山岳地帯は、四国の中でも特に風況に恵まれた地域だ。この一帯では全国に風力発電所を展開するユーラスエナジーグループが大規模な風力発電所を計画中だ。17基の大型風車を設置して、発電能力は最大39MW(メガワット)を予定している。
さらに北に向かって上板町(かみいたちょう)では、全国各地で太陽光発電所を運営するNTTファシリティーズが「F上板太陽光発電所」を2016年11月に稼働させたところだ(図8)。ゴルフ場の土地の一部に太陽光パネルを設置した。発電能力は2.65MWで、年間の発電量は296万kWhを見込んでいる。一般家庭の使用量で820世帯分の電力になる。
水素ステーションを県内11カ所に整備
徳島県は2015年度から「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」に取り組んできた。全国でも有数の日照時間や豊富な森林資源を生かして、再生可能エネルギーによる電力を拡大させる構想だ。県内の電力の自給率を2020年度に25%へ、2030年度には37%まで引き上げる目標を掲げている。
固定価格買取制度による発電設備の導入・認定状況を見ると、バイオマス発電の認定量が大きく伸びた。すでに認定を受けたバイオマス発電設備の規模は6万kWを超えて、全国でも14位に入っている。
これまでに運転を開始したバイオマス発電設備の中では、繊維メーカーのクラボウが阿南市に建設した「徳島バイオマス発電所」の規模が大きい。広さが10万平方メートル以上ある工場の構内に建設した。地域で発生する間伐材などを燃料に使って最大で6.2MWの電力を供給できる。
2016年7月に運転を開始して、年間の発電量は4000万kWhを想定している。一般家庭の1万1000世帯が使用する電力量に匹敵する。バイオマス発電設備の中核部分を構成するボイラーはクラボウが独自に開発した。
徳島県では水素エネルギーの普及にも力を入れて取り組んでいる。再生可能エネルギーと組み合わせて水素の製造・利用を拡大する「徳島県水素グリッド構想」を2015年10月に策定した。県内の工場で発生する副生水素に加えて、再生可能エネルギーから作ったCO2(二酸化炭素)フリーの水素を地産地消する計画だ。
国が推進する水素エネルギーの普及ロードマップに合わせて、2030年度までに燃料電池車を3600台に、水素ステーションを11カ所に整備していく。水素ステーションは導入しやすい移動式を先行させる方針だ。2016年3月には県内初の「STN徳島移動式水素ステーション」が徳島市で営業を開始した。市内の2カ所のあいだを移動して、平日の日中に燃料電池車に水素を供給する。
こうして水素を含むクリーンエネルギーのインフラを整備しながら、災害に強い低炭素社会を作り上げていく。新しい低炭素社会のモデルを示す「スマート社会とくしま構想」を2016年3月に打ち出した。
中山間地域の町や村をモデル地域に設定して、再生可能エネルギーと水素エネルギーを普及させるのと当時に、最新のICT(情報通信技術)を駆使してエネルギーを有効に利用できる仕組みを広める計画だ。県民の生活基盤の向上と同時に産業の活性化につなげる狙いがある。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1612/27/news035.html
2016/12/27
2016年12月27日掲載
一関市赤荻字雲南の精茶百年本舗の清水恒輝会長(68)は、一関、平泉両市町を流れる照井堰(ぜき)用水を活用した水力発電の研究に取り組んでいる。同社近くの用水路に水車型の発電装置を浮かべ、「災害や停電が発生した時など、緊急充電用の電源として地域のために役立てたい」としている。
照井堰用水は、藤原秀衡の家臣照井太郎高春が平安末期に開削したとされる用水路。清水会長は、古くから水田へのかんがいや生活用水として重宝されてきた同用水を有効活用できないかと長年にわたり模索。東日本大震災発生時の大規模停電によって地域住民の生活に大きな支障が出たことを教訓に、2011年からたった一人で水力発電の研究に乗り出した。
専門外の分野のため、発電装置を造るまでに試行錯誤。最初は自転車のライトが点灯する仕組みを参考にしていたが、家庭で主に使用されている交流電源への変換がうまくいかず断念。九州の協力者から「船の発電装置を参考にしては」と助言を受け、元造船業者や一関高専教授らの手を借りながら5年がかりで小水力発電装置(発電量100ボルト、120ワット)を開発した。
装置は高さ約4メートル、縦横約2メートルで、重さは約300キロ。浮き輪と水車、ダイナモ発電機が取り付けられている。15年8月から同社南側の用水路に浮かべ、試験的に運用を開始。緩やかな水の流れで水車を回し、敷地内にある街灯などに電力を活用してきた。
冬場は農業用水が流れないため装置を取り外しているが、研究は怠らない。清水会長は「ゆくゆくは2台、3台と装置を増やし、電気をためておく仕組みも考えたい。震災時のような思いをしないためにも、多くの電力を供給できるように努めていく」と目標を語る。
2016/12/26
2016年12月26日掲載
伊那市春富土地改良区の農業用水路を活用した春富6号地区小水力発電所の工事が、同市富県の現地で順調に進んでいる。発電所棟も姿を見せ、間もなく発電機本体の据え付けも始まる予定という。事業主体の県上伊那地方事務所によると、発電所完成後の2017年4月から試験発電に入り、9月までテストを行った後、運営主体の同土地改良区に移管する。
県営かんがい排水事業の一環で整備する。斜面に設置されている階段水路をバイパスする形で導水管を設け、高低差を使って発電する仕組み。同地事所農地整備課の説明だと、現場の有効落差は約22メートルで、最大使用水量は毎秒1・12立方メートルになるという。最大出力は約195キロワットを見込んでいる。かんがい期の4~9月に発電し、全量を売電する。
15年秋に起工した。工事では、取り入れた水をいったんためて、流量を調節したり砂やごみを取り除いたりするコンクリート製の水槽(ヘッドタンク)を上部に設置。下流側に建設する発電所棟と長さ約40メートルの導水管でつなぐ。設計・施工を合わせたプロポーザル(企画提案)方式での発注で、ヤマウラが請け負っている。事業費は約4億円。
農業用水路を管理する土地改良区の多くは、施設の老朽化等に伴い、維持管理の負担が大きくなっているという。春富土地改良区の織井秀夫理事長は「国県の事業に基づいて始める発電事業なので、売電による利益は土地改良区の施設の改善に使うのが基本になる。利益はきちんと留保し、土地改良事業の主要幹線の工事の地元負担を減らし、水源設備の保全対策に使っていきたい」と話している。
同地事所は13年度に上伊那地域農業生産基盤再生可能エネルギー活用研究会を設置し、農業用水路を活用した小水力発電の可能性を検討。春富と上伊那美和(同市長谷)の2カ所の土地改良区で実現性が高いと判断し、事業化された。上伊那美和の小水力発電所(最大出力12・2キロワット)は既に運用が始まり、通年発電に入っている。