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2015/10/18

県内一部で送電網限界 再生エネ発電施設の接続困難【大分合同新聞】

 大分県内の一部地域で九州電力の送電網の受け入れ能力が限界に達し、再生可能エネルギー発電施設(出力50キロワット以上)の新規接続が困難になっている。接続には送電網の増強工事が必要で、国のルールで巨額の費用負担を求められる事業者は「資金力のない中小では無理」と嘆く。対象地域には地熱や小水力など資源が豊か。開発が活発化してきた温泉熱発電をはじめ、再生エネ先進県の導入拡大に影を落としている。

 九電大分支社によると、送電網に余力がないのは日田・九重、湯布院・別府・三重、日出・杵築の3エリア。周辺の電力需要が少なく容量の小さい送電網に太陽光発電の接続が急増したことが要因。接続が増えるほど、より費用の掛かる増強工事が必要になっている。
 元治水井路土地改良区(由布市)は売電収入を農村再生に充てようと小水力発電(350キロワット)の整備に着工したが、1億円以上の増強工事費を求められている。さらに膨らむ可能性もあり、佐藤高信理事長は「水利権の協議など6年以上も前から進めてきた。ようやく形になってきた段階で莫大(ばくだい)な費用を出せと言われても…」と頭を抱えている。
 各エリアとも巨額の増強工事費を示され、事業継続か断念するかに悩む事業者は少なくない。既に多額の投資をし、後に引けない事業者もいるという。
 こうした現状を踏まえて、九電は太陽光発電が本格稼働せず送電網に余力がある時間帯(原則午前9時~午後3時以外)に限った接続の受け付けを始めた。
 増強工事費は不要だが、温泉熱発電を計画している別府市の事業者は「売電時間が短く採算が合わない。設備も調整に手間がかかり簡単には止められない」。新制度が困っている事業者の役に立つかは不透明だ。
 一方、50キロワット未満の施設は接続に大きな制約はない。とはいえ、別府市の別の事業者は「小規模の温泉熱発電だけでは事業が成り立たない」と指摘。「地域資源を生かせる新たな産業と挑んだのに、これでは成長の芽が育たない。国は『3・11』を教訓に再生エネ普及を目指したはず。こんな中途半端でいいのか」と憤っている。

普及見通しづらく
 阿部博光別府大学教授(環境エネルギー政策)の話 送電網の問題は、固定価格買い取り制度の開始当時から指摘されており、国は並行して対策を講じておくべきだった。開発に時間がかかる地熱・温泉熱発電や小水力発電はようやく実績が出始めたのに、割を食った格好だ。早急な対策が必要だが、来春に電力自由化を控えることもあり動きは見えない。再生エネ普及は見通しづらくなっている。

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2015/10/18/001804186

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