2016/12/17
2016年12月17日掲載
経済産業省資源エネルギー庁は、有田川町を「ありだがわ次世代エネルギーパーク」として認定した。県営ダムの放流水を利用した小水力発電など、同町が進めるエコ施策を評価したという。県内では、関西電力が整備した御坊市の日高港新エネルギーパークに次いで2件目。点在する複数の取り組みを評価する「広域連携型」としては県内初となる。【稲生陽】
エネ庁は、再生可能エネルギーなどの利用を促進するため、全国で次世代エネルギーパークを認定している。有田川町は64件目。
同町は08年ごろからごみ分別を徹底し、現在は資源として売却益を出すなどの実績を上げている。今年2月に始めた県営二川ダムでの小水力発電でも、従来は単に流すだけだった放流水を使った発電で年間4000万円以上の利益を見込む。さらに、これらの収益を基金化し、生ごみを資源化するためのコンポストの無料貸与や、県内でも珍しい太陽光発電設備の設置補助などに利用している。
今月9日に同町を訪れ、中山正隆町長に認定証を手渡した近畿経済産業局の永山純弘・資源エネルギー環境部長は「企業のイベントでなく、町ぐるみで熱心に取り組んでいるのが素晴らしい。他の自治体のお手本になる」と評価。中山町長は「町民の協力あってこその結果。今後は収益を使って環境教育にも取り組んでいきたい」と意気込んでいた。
2016/12/14
2016年12月14日掲載
和歌山県有田川町が小水力発電所など多様な再生可能エネルギーを使って「エコのまち」づくりを進める計画が、経済産業省資源エネルギー庁の「次世代エネルギーパーク計画」に認定された。
町は2月、県営二川ダム(有田川町二川)の維持放流水を利用して最大出力約200キロワットの町営小水力発電所を完成。売電で年間約4300万円の売り上げを見込み、2600万円の純利益を「環境」基金として積み立て、ごみの減量化や環境教育につなげる。
このほか町内には小中学校など公共施設での太陽光発電設備の導入を進めている。
認定された計画は、町内に点在する再生可能エネルギー設備を、環境教育や観光スポットとしてアピールし、地域全体をエネルギーパークとする内容。本年度の認定は全国唯一で、累計では全国で64例目、県内2例目となる。
2016/11/15
2016年11月15日掲載
和歌山県を通って太平洋へ流れる川の上流で小水力発電所が運転を開始した。流域にある町がダムの放流を利用して発電事業に取り組む。県内最大の和歌山市では下水の汚泥を燃焼させた廃熱で2段階に発電するバイオマスプラントが稼働した。風力と太陽光でも大規模な発電所の建設が続々と始まる。
[石田雅也,スマートジャパン]
歌山県の内陸部にある有田川町(ありだがわちょう)には、東西に広がる町を横断して有田川が流れている。川の上流にある「二川(ふたかわ)ダム」の直下で、町が建設・運営する小水力発電所が稼働中だ。
2016年2月に運転を開始した新しい発電所で、ダムから下流の枯渇を防ぐために放流する水を取り込んで発電する。水流の落差は35メートルになり、水量が最大の時には199kW(キロワット)の電力を作ることができる。年間の発電量は120万kWh(キロワット時)を見込み、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると330世帯分に相当する。
発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に4000万円の収入を得られる想定だ。20年間の買取期間の累計で8億円になる。一方で建設にかかった事業費は2億8600万円だった。この事業費は町内の家庭から排出するゴミの分別・減量によるコスト削減で捻出したものである。今後は小水力発電で得た収益を生かして、ゴミを減量する機器の購入費や再生可能エネルギーの導入補助費を確保していく。
発電設備には落差の大きな水流に適した横軸フランシス水車を採用した。水力発電では最も一般的な方式で、流れ込む水が横軸を中心に垂直方向に回転して発電機を回す構造になっている。発電した後の水は従来と同様に放出するため、下流の自然環境には影響を与えない。
従来と比べて違う点は放流する水の勢いだ。小水力発電所を建設する以前には、ダムの壁から横向きに勢いよく水をはき出していた。発電に利用した後では水のエネルギーの多くが電力に変わるため、放流の勢いは大幅に弱まる。これまで生かすことができなかった再生可能エネルギーを有効に活用している状況が見た目にもわかる。
下水処理場に革新的なバイオマス発電
和歌山県にはバイオマス発電の先進的なプロジェクトもある。人口が35万人を超える県内最大の和歌山市では、下水の汚泥を利用した高効率の発電設備の実証に取り組んだ。国が推進する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の一環で導入した設備である。
市内に3カ所ある下水処理場の中で最大の「和歌山市中央終末処理場」の構内に2014年に完成した。下水の汚泥を脱水してから、焼却処理する時の廃熱を回収して蒸気で発電する。さらに発電した後の温水を使って、低温の熱でも効率よく発電できるバイナリー方式で2段階に電力を作ることができる。
1日あたり35トンの下水汚泥を燃料に利用した場合に、発電能力は2つの発電機を合わせて120kWになる。小型の蒸気タービン発電機とバイナリー発電機を組み合わせる方式を採用したことで、従来は発電設備の導入がむずかしかった小規模な下水処理場にも設置できるメリットがある。
さらに汚泥を焼却して廃熱を回収する設備に低消費電力の技術を導入した(図8)。階段式の焼却炉と廃熱ボイラーを組み合わせたもので、従来の方式と比べて消費電力を4割も低減できる。このエネルギー回収設備で電力を消費しても、廃熱を使って発電した電力の余剰分が生まれて売電が可能だ。
下水汚泥のもつエネルギーから電力と熱に高効率に転換できるシステムの効果が実証運転を通じて検証できた。国土交通省は下水処理場のエネルギー消費量を削減できる革新的な技術として、和歌山市の事例をもとに導入のガイドラインをまとめて全国各地に普及を図る。
沿岸部と山間部に巨大なメガソーラー
和歌山県では風力発電の導入も活発だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で第7位である。内陸部の広川町から日高川町に連なる山の尾根には、「広川・日高川ウィンドファーム」が発電能力20MWで2014年に運転を開始した。
海に近い印南町(いなみちょう)では、大型風車13基を配置する「印南風力発電所」の建設が進んでいる。発電能力は合計で26MWになり、2018年6月に運転を開始する予定だ。大阪ガスグループが再生可能エネルギーの電力を拡大する長期計画の一環で建設する。
風力発電に加えて太陽光発電の取り組みが急速に広がってきた。中でも和歌山市の山間部で2016年2月に運転を開始した「DREAM Solar 和歌山市」の規模が大きい。以前に関西国際空港を埋め立てる土砂を砕石した場所で、36万平方メートルの広さがある。この用地に合計で8万4000枚の太陽光パネルを設置した。
発電能力は21MWに達して、年間の発電量は2360万kWhを見込んでいる。一般家庭の6500世帯分の使用量に相当する電力になる。固定価格買取制度で関西電力に売電して、年間に8億4800万円の収入を得られる想定だ。20年間の累計では170億円に達する。この売電収入のうち3%を和歌山市の公園や緑地の整備に生かすことが決まっている。
南部の白浜町の海沿いにある県内で唯一の「南紀白浜空港」でも、メガソーラーを建設する計画がある。滑走路の脇に残っている南西向きの斜面を利用して太陽光パネルを設置する予定だ。県が事業者を公募して2.8万平方メートルの用地を貸し付ける。
このほかに北部の紀の川市では、ゴルフ場の跡地で大規模なメガソーラーの建設が進んでいる。合計で38万平方メートルの用地を使って発電能力は15MWになる。総事業費は50億円を見込んでいて、2016年11月中に運転を開始する予定だ。
太平洋に面した和歌山県は日射量が豊富で、太陽光発電に適した場所が多い。県内の全域には森林が広がっていて、バイオマス発電を開発できる余地も大きい。自然環境の保全に配慮しながら再生可能エネルギーの拡大が続いていく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1611/15/news028.htmlL
2016/11/15
2016年11月15日掲載
和歌山県を通って太平洋へ流れる川の上流で小水力発電所が運転を開始した。流域にある町がダムの放流を利用して発電事業に取り組む。県内最大の和歌山市では下水の汚泥を燃焼させた廃熱で2段階に発電するバイオマスプラントが稼働した。風力と太陽光でも大規模な発電所の建設が続々と始まる。
[石田雅也,スマートジャパン]
和歌山県の内陸部にある有田川町(ありだがわちょう)には、東西に広がる町を横断して有田川が流れている。川の上流にある「二川(ふたかわ)ダム」の直下で、町が建設・運営する小水力発電所が稼働中だ。
2016年2月に運転を開始した新しい発電所で、ダムから下流の枯渇を防ぐために放流する水を取り込んで発電する。水流の落差は35メートルになり、水量が最大の時には199kW(キロワット)の電力を作ることができる。年間の発電量は120万kWh(キロワット時)を見込み、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると330世帯分に相当する。
発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に4000万円の収入を得られる想定だ。20年間の買取期間の累計で8億円になる。一方で建設にかかった事業費は2億8600万円だった。この事業費は町内の家庭から排出するゴミの分別・減量によるコスト削減で捻出したものである。今後は小水力発電で得た収益を生かして、ゴミを減量する機器の購入費や再生可能エネルギーの導入補助費を確保していく。
発電設備には落差の大きな水流に適した横軸フランシス水車を採用した。水力発電では最も一般的な方式で、流れ込む水が横軸を中心に垂直方向に回転して発電機を回す構造になっている。発電した後の水は従来と同様に放出するため、下流の自然環境には影響を与えない。
従来と比べて違う点は放流する水の勢いだ。小水力発電所を建設する以前には、ダムの壁から横向きに勢いよく水をはき出していた。発電に利用した後では水のエネルギーの多くが電力に変わるため、放流の勢いは大幅に弱まる。これまで生かすことができなかった再生可能エネルギーを有効に活用している状況が見た目にもわかる。
下水処理場に革新的なバイオマス発電
和歌山県にはバイオマス発電の先進的なプロジェクトもある。人口が35万人を超える県内最大の和歌山市では、下水の汚泥を利用した高効率の発電設備の実証に取り組んだ。国が推進する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の一環で導入した設備である。
市内に3カ所ある下水処理場の中で最大の「和歌山市中央終末処理場」の構内に2014年に完成した。下水の汚泥を脱水してから、焼却処理する時の廃熱を回収して蒸気で発電する。さらに発電した後の温水を使って、低温の熱でも効率よく発電できるバイナリー方式で2段階に電力を作ることができる。
1日あたり35トンの下水汚泥を燃料に利用した場合に、発電能力は2つの発電機を合わせて120kWになる。小型の蒸気タービン発電機とバイナリー発電機を組み合わせる方式を採用したことで、従来は発電設備の導入がむずかしかった小規模な下水処理場にも設置できるメリットがある。
さらに汚泥を焼却して廃熱を回収する設備に低消費電力の技術を導入した。階段式の焼却炉と廃熱ボイラーを組み合わせたもので、従来の方式と比べて消費電力を4割も低減できる。このエネルギー回収設備で電力を消費しても、廃熱を使って発電した電力の余剰分が生まれて売電が可能だ。
下水汚泥のもつエネルギーから電力と熱に高効率に転換できるシステムの効果が実証運転を通じて検証できた。国土交通省は下水処理場のエネルギー消費量を削減できる革新的な技術として、和歌山市の事例をもとに導入のガイドラインをまとめて全国各地に普及を図る。
沿岸部と山間部に巨大なメガソーラー
和歌山県では風力発電の導入も活発だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は全国で第7位である。内陸部の広川町から日高川町に連なる山の尾根には、「広川・日高川ウィンドファーム」が発電能力20MWで2014年に運転を開始した。
海に近い印南町(いなみちょう)では、大型風車13基を配置する「印南風力発電所」の建設が進んでいる。発電能力は合計で26MWになり、2018年6月に運転を開始する予定だ。大阪ガスグループが再生可能エネルギーの電力を拡大する長期計画の一環で建設する。
風力発電に加えて太陽光発電の取り組みが急速に広がってきた。中でも和歌山市の山間部で2016年2月に運転を開始した「DREAM Solar 和歌山市」の規模が大きい。以前に関西国際空港を埋め立てる土砂を砕石した場所で、36万平方メートルの広さがある。この用地に合計で8万4000枚の太陽光パネルを設置した。
発電能力は21MWに達して、年間の発電量は2360万kWhを見込んでいる。一般家庭の6500世帯分の使用量に相当する電力になる。固定価格買取制度で関西電力に売電して、年間に8億4800万円の収入を得られる想定だ。20年間の累計では170億円に達する。この売電収入のうち3%を和歌山市の公園や緑地の整備に生かすことが決まっている。
南部の白浜町の海沿いにある県内で唯一の「南紀白浜空港」でも、メガソーラーを建設する計画がある。滑走路の脇に残っている南西向きの斜面を利用して太陽光パネルを設置する予定だ。県が事業者を公募して2.8万平方メートルの用地を貸し付ける。
このほかに北部の紀の川市では、ゴルフ場の跡地で大規模なメガソーラーの建設が進んでいる。合計で38万平方メートルの用地を使って発電能力は15MWになる。総事業費は50億円を見込んでいて、2016年11月中に運転を開始する予定だ。
太平洋に面した和歌山県は日射量が豊富で、太陽光発電に適した場所が多い。県内の全域には森林が広がっていて、バイオマス発電を開発できる余地も大きい。自然環境の保全に配慮しながら再生可能エネルギーの拡大が続いていく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1611/15/news028_3.html
2016/10/01
2016年10月1日掲載
和歌山県有田川町が、既存のダムに新たに設置した小水力発電所が大きな成果を上げている。川の流量維持のためダムが常時放流している「維持放流水」を利用し、利益は毎月400万円近くに上る。国内ではほとんど利用されてこなかった水流に着目した町の担当者は、「今までエネルギーを捨てているようなものだった。利益はエコの取り組み支援に充てたい」と意気込んでいる。
1967年に町内の有田川の水害対策と発電の多目的ダムとして建設された二川ダムに設置し、「町営二川小水力発電所」として今年2月に稼働を始めた。資源エネルギー庁によると、ダムを設置した都道府県が主体となり、所在地の市町村と小水力発電所を設置する例はあるが、市町村が単独で取り組む例は聞いたことがないという。
下流の水質維持のため、二川ダムは98年以降、毎秒0.7立方メートルの水を維持放流水として放出している。ダム湖にある取水口と下部の放出口との間には約30~50メートルもの落差があって、強い水流となる。このエネルギーに着目した町は2009年、ダム施設の大部分を所有する県に発電設備建設を提案した。
だが、小水力発電は治水ダムの目的外使用となって多額の負担金が発生することなどから、計画は頓挫しかけた。転機となったのは、11年3月の東日本大震災による電力不足だった。県との協議が再開され、14年8月に許可が下りた。
町は、資源ごみの分別の徹底によって得た売却益を繰り入れた基金なども利用し、総事業費約2億8600万円をかけて発電所を建設。放出口付近に作った建屋に放流水を引き込み、水車を通過させて発電、再び放流する仕組みだ。放流する水量自体は変わらないため、下流への影響はないという。
町営発電所の年間発電量は、一般家庭約330世帯分に当たる120万キロワット時以上。再生可能エネルギーとして電力会社が20年間全量を買い取る制度を利用しているため、町は7年ほどで事業費を回収できると見込んでいる。
県と交渉を重ねてきた町環境衛生課の中岡浩課長は「小さな町でも工夫すればいい取り組みができると信じてきた。小規模自治体のモデルケースになれればいい」と話している。【稲生陽】